環境管理の技術的進展 特集論文 フタル酸エステルの スクリーニング技術 中 慈朗* 宮園友利江** 黒川博志** 中川康幸* 村岡克生** Screening Method of Phthalate Esters Jiro Naka, Hiroshi Kurokawa, Katsunari Muraoka, Yurie Miyazono, Yasuyuki Nakagawa 要 旨 2006年に始まったRoHS(the Restriction of the use of FT−IRを用いたスクリーニングは,前処理として樹脂 certain Hazardous Substances in electrical and electronic 試料からフタル酸エステルを溶媒抽出後,撥水(はっすい) equipment)指令が第2段階を迎えようとしており,新た 性基板上で濃縮し,水滴状のフタル酸エステルについて, に4種類のフタル酸エステル類が規制対象物質になる可能 FT−IRスペクトルを取得し,その形状の違いから4種類 性が高いとされている。これらは電源コードや電線被覆等 のフタル酸エステル類を判別する手法である。また,規制 に用いられる塩化ビニル等の可塑剤として使用される物質 対象物質にならないフタル酸エステルと区別する方法も見 であり,多くの製品に樹脂が用いられるため,含有の有無 いだした。 を判定する評価対象数は多いと考えられる。判定を効率的 樹脂試料を用いて,FT−IRを用いたスクリーニング技 に行うには,精度は高いが時間を要する詳細分析を行う前 術と精度の高い詳細分析法で得た結果を比較し,妥当性を に,短時間で判定可能な分析法を確立し,スクリーニング 確認した。このスクリーニング技術を活用して,効率的に 手法として用いる必要がある。ここではFT−IR(フーリエ 対象物質の含有判定を進めるとともに,必要に応じてより 変換赤外分光分析)を用いたフタル酸エステルのスクリー 精度の高い詳細分析を用いることで確実な判定を実施し, ニング技術について検討した結果を示す。 RoHS指令の適合性を担保していく。 溶媒抽出 濃縮処理 FT−IR測定 含有の判定 判定困難な場合 【主な特徴】 ・溶媒抽出と濃縮処理によってフタル酸エステルを抽出 ・FT−IRのスペクトル形状から種類を判定 詳細分析 Peak 2 CH3(2,955cm−1) Peak 1 −1 CH2(2,925cm ) ベースライン Peak1/Peak2(CH2/CH3)強度比 フタル酸エステルのスクリーニング手順 1.0 DEHP 0.9 DINP 0.8 0.7 0.6 DEHP DINP (規制候補物質)(規制候補外物質) 規制候補/候補外物質のフタル酸エステル類の含有判定事例 DEHP:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル) DINP:フタル酸ジイソノニル フタル酸エステルのスクリーニング手順と判定事例 4種類のフタル酸エステル類を判別するためのスクリーニング手順と最も判別が困難なDEHP(規制候補物質)とDINP(規制候補外物質)の判 定事例である。 * 三菱電機㈱ 先端技術総合研究所 **菱電化成㈱ 15 (753)
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