コロイダルシリカ表面の化学修飾に関する研究

〔平成 16 年度〕
コロイダルシリカ表面の化学修飾に関する研究
(新潟大学工学部)坪川紀夫
(日産自動車株式会社)甲斐康朗
つぎに、反応温度を変化させて、コロイダルシ
リカ表面のアミノ基とエポキシ樹脂との反応につ
いて検討した。その結果、エポキシ樹脂を反応さ
すでに我々の研究室では、シランカップリング
せたコロイダルシリカのIRスペクトルには、1510
剤処理による、シリカナノ粒子表面への各種官能
cm-1のベンゼン環に由来する特性吸収が観察され、
基の導入と、粒子表面へ導入した重合開始基から
吸収強度は反応温度の上昇と共に大きくなり、逆
の各種モノマーのグラフトについて報告してきた。
にアミノ基に由来する 1580 cm-1の吸収強度が減少
また、この様なシリカナノ粒子はポリマーマトリ
した。したがって、コロイダルシリカ表面に導入
ックス中へ容易に分散することも見出した。
したアミノ基とエポキシ樹脂が反応していること
しかしながら、コロイダルシリカ表面へ導入し
が分かった。
た各種官能基のキャラクタリゼーションは十分に
また、150℃で反応させたコロイダルシリカでは、
行われていない。そこで本研究では、アミノ基を
120℃で反応させたものに比べ、ベンゼン環由来の
導入したコロイダルシリカ、およびビスフェノー
吸収が減少し、1650 cm-1付近にカルボニルに由来
ル A 型のエポキシ樹脂をグラフトしたコロイダル
する吸収が観察できた。したがって、高温で反応
シリカ表面の化学構造を詳細に検討した。
させるとコロイダルシリカ表面へグラフトしたエ
ポキシ樹脂末端が熱分解することが示唆された。
2. 成果の概要
さらに、TG-DTAの結果より、反応温度が上昇
本実験に用いたコロイダルシリカは、日産化学
するにつれて、質量減少量は増加し、120℃で最大
工業(株)製のMEK-ST(粒径 10〜15 nm)である。 値を取った後、減少する傾向を示し、IRの結果と
コロイダルシリカ表面へのアミノ基の導入は、コ
よく一致していた。また、同様の結果が29Si-NMR、
13
ロイダルシリカをトルエン溶媒中、シランカップ
C-NMRの解析からも得られた。
リング剤の 3-アミノプロピルトリメトキシシラン
以上の結果から、コロイダルシリカ表面に導入
(APTMS)で処理することによって行った。また、
したアミノ基を介して粒子表面へエポキシ樹脂を
コロイダルシリカ表面へのエポキシ樹脂のグラフ
グラフトできることが確認できた。
トは、アミノ基 を導入したコロイダルシリカを
DMSOを溶媒に用いてエポキシ樹脂で処理するこ
3. まとめ
とにより行った(Scheme 1)。また、得られた生成物
コロイダルシリカ表面へのエポキシ樹脂のグラ
の化学構造の解析はFT-IR、 29Si-NMR、 13C-NMR、
フト化がFT-IR、29Si-NMR、13C-NMR、などのスペ
及びTG-DTAを用いて行った。
クトルデータやTG-DTA分析により確認できた。今
コロイダルシリカをAPTMSで処理すると、粒子
後は、この様なエポキシ樹脂をグラフトしたコロ
表 面 へ ア ミ ノ 基 が 導 入 で き る こ と が FT-IR 、
イダルシリカの各種樹脂中における分散性や硬化
29
Si-NMR、13C-NMRの解析で確認できた。
物の特性について評価する予定である。
1.
研究の概要
O
Me O
OH + Me O Si (CH2)3 NH2
Me O
O
H2
O Si (CH2)3NH2 + H2C CH C O
O
O
O
H2
H2
O Si (CH2)3 HN C CH C O
OH
O
O Si (CH2)3 NH2
O
CH3
C
CH3
CH3
C
CH3
H2 H
O C C CH2
O
H2 H
O C C CH2
O
Scheme 1 Reaction of epoxy resin with amino groups on colloidal silica