債 権 法 の 構 造 (事務管理:条文別)

「事 務 管 理」 の 構 成
債権
第一章 総則
第二章 契約
事務管理
第697条 管理者の管理義務
第698条 緊急事務管理
第699条 管理者の通知義務
第三章 事務管理
第700条 管理者の管理継続義務
第四章 不当利得
第701条 委任の規定の準用
第五章 不法行為
第702条 管理者の費用償還請求権
事務管理とは
• 事務管理というのは、義務がないのに他人の
事務を管理する行為(697条)
具体例
(1)契約外財産管理
隣人の旅行中に、台風で傷んだ屋根を修繕する行為
(2)表見的事務処理契約に基づく処理
委任・雇傭などに基づいて事務処理を開始したが、無効または取り消された
場合
(3)救助行為
川で溺れかけている人をみて救助する行為
事務管理の成立要件
(はじめての債権各論より)
•
•
•
•
•
本人の事務の管理を始めたこと
事務を管理する義務がないこと
本人のためにする意思のあること
事務管理が他人のために不利であることが
明らかでなく、本人の意思に反することが明
らかでないこと
管理者の行為能力がされていないこと
事務管理の要件
(民法Ⅳ債権各論:松本恒雄教授執筆)
•
•
•
•
1.他人の事務の管理
2.他人のためにする意思(事務管理意思)
3.法律上の義務の不存在
4.本人の意思および利益への適合
事務管理の効果
(はじめての債権各論より)
• 不法行為責任は生じない。
• 事務管理は、本人の意思に従う必要がある。もしくは、本人
の利益になるように適切な行為をする。
• 緊急事務管理は、悪意・重過失の場合のみ責任を負う。
• 事務管理者は管理開始を本人に通知しなければならない。
• 事務管理者は管理を継続しなければならない。
• 本人は事務管理者に有益費用を償還する義務を負う。
• 本人の意思に反する事務管理の場合、現に利益を受ける限
度で償還する。
事務管理の効果
• 対内的効果
– 違法性阻却
– 管理者の義務
•
•
•
•
•
管理義務
管理継続義務
情報提供義務
引渡し・移転義務
利息・賠償義務
– 本人の義務
• 費用償還義務
• 管理者の損害賠償請求権
• 管理者の報酬請求権
• 対外的効果
– 管理者の名における行為
– 本人の名における行為
事務管理の論点
• 事務管理の追認
• 準事務管理
「不 当 利 得」 の 構 造
不当利得
債権
第703条 不当利得の要件と効果
第一章 総則
第704条 悪意の受益者の返還義務
第二章 契約
第705条 非債弁済
第三章 事務管理
第706条 期限前の弁済
第四章 不当利得
第707条 他人の債務の弁済
第五章 不法行為
第708条 不法原因給付
不当利得とは
• 不当利得は、正当な理由なく利得を得た者が、
そのために損失を受けた者に対して利得の
償還をする制度(703条)
• 不当利得は、公平の原則から見てその利得
が不等な場合に損をした者に返させようとい
う制度。
不当利得の成立要件
•
•
•
•
他人の財産・労務によって利益を受ける者
がいる
法律上の原因がないのに利得があること
その利益によって他人が損をしている
利得と損失の間に因果関係がある
不当利得の一般的成立要件
• 1.他人の財産または労務によって利益を受
けたこと(受益)
• 2.他人に損害を与えたこと
• 3.受益と損失との間に因果関係があること
• 4.法律上の原因がないこと
不当利得の類型
• 1.侵害利得
– 物が本来その帰属すべき権利者にではなく、無
権限者によって使用・収益・消費・処分などがさ
れた場合に利益を金銭で償還させる場合。
• 2.給付利得
– 一定の法律上の原因の存在を前提として給付が
なされたがその前提が存在しなかった場合。
不当利得の効果
• 受益の返還
– 可能な場合は原物返還
– 善意の受益者
• 現存利益 利益の存する限度(703条)
– 悪意の受益者
• 利息支払義務、損害賠償義務
非債弁済
•
•
•
1.債務が存在しないのに存在すると思って
弁済した場合
2.期限前の弁済
3.他人の債務の弁済
不法原因給付
• 給付が法律上の原因を欠くため本来ならば
不当利得返還請求権が成立する場合でも、
不法の原因のための給付であるときは、原則
として返還請求をすることができない(708条
本文)。
• 例:賭博で負けて支払った金銭(90条違反)
• 立法趣旨:クリーン・ハンドの原則