中心静脈カテーテルの 挿入準備と管理 平成21年5月25日 東病棟7階 四宮広美 目 的 1.中心静脈カテーテル法の目的が理 解でき、患者の安全に留意しバリアプ リコーションを遵守した挿入介助がで きる。 2.中心静脈カテーテル法に伴う合併 症が理解でき、観察と管理ができる。 目 標 1.中心静脈カテーテル法の目的が理解できる 2.必要物品が準備できる。 3.バリアプリコーションを遵守した挿入介助 ができる。 4.挿入に伴う合併症が理解できる。 5.観察と管理のポイントが分かる。 適 応 ・末梢血管からは投与できない高濃度 の輸液(高カロリー輸液など)を投与 する場合。 ・緊急時などで末梢静脈の確保が困難 な場合。 ・手術やICUなどでCVP(中心静 脈圧)などをモニタリングする場合。 禁 忌 ・血栓を形成している静脈への穿刺。 ・出血傾向が強い場合。 選択される穿刺血管 ・長期留置時には一般的には右鎖骨下静脈 (穿刺が難しい場合などは左鎖骨下静脈) ・内頚静脈(手術時の第一選択) ・外頚静脈 ・上腕尺側皮静脈 ・大腿静脈 患者へのオリエンテーション 1・同意書が必要 2・事前に挿入時の手順と概要を説明 する。 *処置中に動くことは危険。 *痛い時は手を動かさず声で知らせる。 *医師の声かけに合わせ息を止めたり、顔 の向きを変えたりする。 *事前に排尿は済ませておく。 起こりやすい合併症とその対策① ・気胸:穿刺時に誤って肺などを刺すことによ り起こる。 (症状)胸痛、背部痛、咳そう、呼吸困難 穿刺側の呼吸音減弱~消失 酸素飽和度の測定、必要時酸素吸入 必要時胸腔ドレーン挿入準備 ・皮下気腫 *必ず胸部X線撮影でカテーテル先端の位置を 確認する。(先端が第2肋間、気管分岐部の辺 り) 起こりやすい合併症とその対策② ・血胸、皮下血腫 穿刺時に誤って血管を損傷することにより起こる。 穿刺部位からの出血、動脈血の逆流 医師による圧迫止血 ・不整脈 カテーテルで心臓が刺激されることにより起こる 動悸や不整脈、呼吸困難 一時的であることが多いため様子観察 その他の起こりやすい合併症 ・動脈穿刺 ・空気塞栓 ・胸管損傷 ・神経損傷 ・位置異常 ・カテーテル遺残 ・血栓形成 ・抜去 ・カテーテル破損、閉塞 ・敗血症 ・輸液の血管外漏出 ・静脈壁穿孔 ・感染 ・血栓 必要物品の準備 ・中心静脈カテーテルセット (シングルルーメン、ダブルルーメン、トリプルルーメン、 14G~18G、20cm~70cm) ・局所麻酔薬(1%キシロカインポリアンプ) ・注射器(10ml、20ml) ・注射針(18G、23G)カテラン針(23G又は21G) ・生理食塩水(20ml) ・ヘパリン生食 ・絹糸(2-0) ・眼科用セーレまたは外科用クーパー ・持針器、外科用針セット ・覆布 ・穴あきシーツ、処置用シーツ ・ガーゼ ・消毒液 ・固定用テープ 体 位 ・ベッドの場合は柵を外し、高さを調節する。 ・膝に枕やタオルケットなどを入れ軽く頭部 を下げる(トレンデンブルグ体位) ・患者の顔は軽く穿刺側と反対側に向ける。 ・不必要な露出は避ける。 ・体の下に処置用シーツを敷き込む。 挿入準備 処置時のポイント ・マキシマルバリアプリコーションを 遵守する。 *医師:マスク、帽子、滅菌ガウン、滅菌手袋 *看護師:マスク、帽子、手袋 *患者:覆布や穴あきシーツにて全身を覆う。 ・処置の手順を把握しておく。 ・処置の進行に合わせ患者に声をかける。 ・挿入中の患者の様子を観察し、合併症の早 期発見に努める。 挿入介助 ①皮膚消毒と滅菌布での覆布 ・事前にシャワーをするか消毒範囲を清拭する。 ・鼠径部の場合は必要時除毛する。 ・顔と滅菌覆布の間に空間ができるように配慮。 ・穿刺部位を中心に広範囲に消毒を行う。 ・ポピドンヨード液は消毒後十分乾燥させる。 挿入介助 ②局所麻酔と試験穿刺 ・疼痛などの異常を感じた時は声を出し て知らせるよう説明する。 ・適宜進行状況を患者に知らせる。 ・顔面に近い操作であり、恐怖のため 清潔野に患者が触れてしまうことが ある。 看護師が声をかけたり、患者の手に触 れていることは有効である。 挿入介助 ③本穿刺 ・呼吸困難、咳そう、動悸の出現に注意する ・内針を抜去するタイミングで患者に息を 止めてもらう。 カテーテルを2~3cm挿入したら呼吸を再開 してもよいことを伝える。(通常Drが行う) ・穿刺後患者の顔を楽な方向へ戻す。 *穿刺中に起こりやすい合併症は、気胸と不整脈であ る。息を止めてもらうことで血管内への空気の引き込 みを予防する。 カテーテルの固定 ・カテーテル挿入後絹糸で皮膚に縫合し固定する。 ・出血の有無など刺入部の観察後異常がなければ固定 する。 ・刺入部の観察が容易であるフィルム型ドレッシング 材を用いる。 ・IV3000などは通気性に優れているため、 ドレッシング材の四方全てをテープで固定しない 方が望ましい。 ・刺入部から浸出液や出血がある場合はパッド 付きフィルム型ドレッシング材が便利である。 X線撮影と点滴接続 ・固定後、カテーテル先端位置を確認 するために胸部X線撮影を行う。 ・X線撮影にて異常がなければ医師の 指示に基づき、点滴を接続し開始する。 ・点滴ミキシング時や点滴ライン接続 時には無菌操作で行う。 カテーテル留置後のポイント ・カテーテル留置後の日常生活での注意点につ いてオリエンテーションを行う。 *シャワー浴、外出、外泊、血液逆流予防 感染対策など ・ADLへの影響は最小限にする *輸液ラインの長さを調節し、引っ張られる ことがないように、刺入部だけでなく衣類 などに固定しておくと事故抜去予防になる。 カテーテル挿入部のケア ~ドレッシング材の選択~ ・カテーテル挿入部を覆うために滅菌ガーゼ、 もしくは滅菌半透過性ドレッシング材を使 用する。 ・著明な発汗や出血、浸出液がある場合は ガーゼが望ましい。 カテーテル挿入部のケア ~ドレッシング材の交換頻度~ ・フィルムドレッシング材 定期的な交換は7日毎に行う ・滅菌ガーゼ 定期的な交換は2日毎に行う *出血や浸出液、発汗などで汚染した場合はそ の都度交換。 ガーゼ保護の場合で挿入部の観察が必要な場 合も交換。 カテーテル挿入部のケア ~ドレッシング材交換時の注意点~ ・挿入部の観察をする カテーテルの固定糸が緩んでないか 発赤、浸出液、疼痛、臭気、テープかぶれの有無 カテーテルの抜去、感染の兆候の有無 ・スタンダードプリコーションの遵守 手指衛生後、手袋の着用 無菌操作 ・消毒は広く行う 刺入部、カテーテル、縫合部 消毒は2回以上行う 消毒液は十分乾燥させてからドレッシング材を 貼る。 輸液ラインの交換頻度 ・CDCガイドラインによると、 72~96時間毎に交換する (48時間毎の交換よりも安全とされ ている) ・血液製剤や脂肪製剤を使用した輸液ライン は輸液開始から24時間以内に交換する。 ・三方活栓はできれば中心静脈ラインには 組み込まないことが望ましいが、必要時 は閉鎖式のものを使用する。 TPN開始に伴う合併症の観察 ・輸液速度を指示通りに調整する。 (TPNが急速な速度で投与されると 血漿浸透圧が上昇し、浸透圧利尿 や高血糖が起こる。) ・水分バランスを観察する。 (INとOUTの計算と定期的な体重測定) ・電解質、血糖、蛋白、脂肪代謝に関する 検査データに注意する。 ヘパリンロック ①クランプ後、輸液セットを連結部で外す。 ②清潔操作でヘパリン加生食を注入する。 ③血液が逆流しないように軽く圧をかけたま ま、クランプし注射器を外す。 ④閉塞式でない場合先端にキャップをする。 ⑤必要時先端をガーゼで保護し固定する。 記 録 ・カテーテルの種類、太さ、挿入した 長さ(固定位置)、挿入箇所 ・挿入中、挿入後の患者の状態や刺入 部の観察事項 ・X線写真結果など
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