筆記が目標達成に及ぼす効果の研究 2008/07/11 石山 裕菜 1.序論 健康な人の健康促進 ユビキタスな方法 安価な方法 暴露拒否のクライエントにカタルシス効果を出 す ↓ 筆記療法に注目 2.筆記療法とは? Pennebaker が行った実験(トラウマ体験者にト ラウマ体験を記述させると健康に効果がある) から生まれた一連の研究的知見から生まれた 療法(レポーレ&スミス;2004) 3.先行研究 最善の自己を記述すると健康が改善する(King;2001) 日本においては、最善の自己を先行研究の様に集中筆記させ ても、作業記憶は増加しない(Yogo & Fujihara;2008) ⇒日本人はポジティブな自己をイメージするのが難しいため 臨床的なケースにおいてクライエントが毎回自己の筆記を見直 し、物語的なものへと変化させることで治療効果を出している (Pennebaker;2007) ↓ 自己の視点から書く物語筆記によってイメージ化を促し、日本 人においてもポジティブな筆記に効果がでるのでは? 4.仮説 自己の生成したルールに従う(ルール支配行動) による自己統制が起きる 書くことで自己を客観視することができる。明確な 未来のイメージが喚起され実行に移しやすくなる。 ↓ 上記2つの仮説と臨床的な知見から、物語集中筆 記と物語筆記を比較検討することを目的とした 5.先行研究との相違点 指標を健康ではなく目標行動に変化させること でよりルールを具体的なものとして作成する 臨床的な場面への般化を考え、実験者が在室 する 臨床的な場面への般化を考え、インタビューを 行う 6.独立変数 筆記 インタビュー 7.従属変数 筆記内容(量・字・感情表出など) *内容確認もインタビューで行う インタビュー 精神的健康パターン診断検査(ストレスとQOL) セルフエフィカシー(自己効力感)尺度 8.実験デザイン 個人間・個人内比較のプレ・ポスト 9.参加者 立命館大学に通う大学生60名。以下の4つの群に 15人ずつランダムサンプリングされる。 1)15分間、目標行動を実行している姿を、自分を主人公 にした視点から物語筆記してもらう群。 2)15分間、目標行動を実行している姿を、集中筆記して もらう群。 3)15分間、日常の自分の生活を、自分を主人公にした 視点から物語筆記してもらう群。 4)15分間、日常の自分の生活を、集中筆記してもらう群。 10.手続き <セッション1回目> 質問紙を2つ行う 社会的に望ましいとされている行動で普段した いと思っているけれどもなかなかできない行動 を書き出しその中から一つ選ぶ インタビュー 筆記 インタビュー 10.手続き <セッション2~3回目> 前回までの筆記内容を読み直してもらう インタビュー 筆記 インタビュー 10.手続き *セッション3終了から2週間後 <セッション4回目> インタビュー(行動の報告など) 質問紙2つ 10.手続き *セッション4終了から2ヵ月後 <フォローアップ> 目標行動がどの程度維持されているかメール で報告してもらう 11.現在の状況 参加者30名程度 ・目標行動筆記群と日常行動筆記群の目標行動 達成率に差はない ↓ 日常行動の中に目標行動をする時間が含まれ ており、日常行動を見直すことで自分の生活習 慣の見直しができる 11.現在の状況 物語筆記群と集中筆記群に差!! ↓ 集中筆記群は「今」のみを記入するのに対し、 物語筆記群は「過去・現在・未来」を考え、ポジ ティブな自己が喚起されやすい 12.参考・引用文献 Frattaroli, J.(2006). Experimental disclosure and its moderators: A metaanalysis. Psychological Bulletin, 132, 823-865. Frisna, P.G. et al. (2004). A meta-analysis of the effects of written emotional disclosure on the health outcomes of clinical population. The Journal of Nervous and Mental Disease, 192, 62 Journal of Nervous and Mental Disease, 192, 629-634. King.L.A.(2001).The health benefits of writing about life goals. Personality and Social Psychology Bulletin,27,798-807 河合隼雄(1995)『河合隼雄著作集12 物語と科学』 岩波書店 (編)武藤崇(2006)『アクセプタンス&コミットメントセラピーの文 脈』ブレーン出版株式会社 12.参考・引用文献 森岡正芳(2002)『物語としての面接~ミメーシスと自己の変容 ~』 新曜社 日本行動分析学会(編)(2001)『ことばと行動~言語の基礎か ら臨床まで』 ブレーン出版株式会社 (編)坂本真士・丹野義彦・安藤清志『臨床社会心理学』東京 大学出版会(2007) (編)S.J.レポーレ&J.M.スミス(2004)『筆記療法』 北大路書房 坂本真士・丹野義彦・安藤清志(編)(2007).臨床社会心理学 東京大学出版会 Sloan,D.M. & Marx,B.P. (2004). Taking pen to hand. Clinical Psychology: Science and Practice,11,121-137. 早野順一郎(2005)休息不全の時代 心身医学 第45巻第3号 12.参考・引用文献 杉森信吉・坂本陽香(2007)筆記療法の効果の分析 日本社会心理学第49 回大会発表論文 (編)津田彰,J.Q.プロチャスカ(2006)『新しいストレスマネジメントの実際~ e-healthから筆記療法まで~』現代のエスプリ469,至文堂 やまだようこ(2000)人生を物語ることの意味-なぜライフストーリー研究か教育心理学年報 vol,39 146-161 余語真夫・尾上恵子 (2001). 抑制されたトラウマの告白と健康―筆記法の 効果― 日本心理学会第65回大会発表論文集, 540 Yogo,M & Fujihara,S (2008) . Working memory capacity can be improved by expressive writing: A randomized experiment in a Japanese sample. British Journal of Health Psychology, 13, 77-80. ご清聴ありがとうございました
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