スライド 1 - Psychology Department, Ritsumeikan

自己・他者志向傾向の
個人・社会的リスク行動の
可能性推定への影響
1613070045-8
北村知佳
★問題・目的
私達は社会の様々な場面で行動の選択を迫ら
れる。
⇒他者との共存共栄 or 自らの利益どちらも満た
すことができない状況がある。…社会的ジレンマ
 社会的ジレンマとは、上記の2つのうちどちらを
優先するのかで悩んでしまう状況である。
Ex. 路上の迷惑駐輪

★先行文献
出口(2004)は社会的迷惑行為の認知と頻度の
関連について、社会志向性と個人志向性に着目
して調査を行った。
⇒社会・個人志向性いずれか片方のみが高い者
は迷惑認知と行為の頻度とが比較的対応してい
る傾向があること
⇒社会的志向性が高いことで社会的迷惑行為に
対して否定的な認知を行う傾向があること
などを示した。

★
迷惑と感じるという事は、
自分がその行動を起こす可能性も
低くなる???

社会・個人志向性は同様に、これからリスクを伴
う行動を自分が起こすかという可能性推定には
影響するのか?
という観点から実験を行った。
★方法:実験参加者
参加者
大学生27名(男性12名、女性15名)
※分析対象は24名分(男性11名、女性13名分)
⇒未記入および教示に従わない回答があったも
のは省いた。
 平均年齢は21.17歳

★方法:材料
材料
社会・個人志向性調査…

出口(2004)の研究で用いられた伊藤(1993)の
個人志向性・社会志向性尺度(P尺度)を用いた。
社会的・個人的リスク行動の可能性推定調査…
高木(2007)の個人的リスク行動、社会的リスク行動を
参考に作成。それぞれのリスクで2つずつ行動を提示し,
その行動に関する経験の有無を尋ね、これからとる可
能性を10%刻みのパーセンテージで推定してもらった。
★方法:材料②:提示したリスク行動
提示したリスク行動は以下の通り。
 社会的リスク行動
「信号無視をすること」
「約束を破ること」
 個人的リスク行動
「飲み会などでイッキ飲みをすること」
「パチンコ、競馬などの賭け事をすること」

★方法:手続き
手続き



質問紙での調査を行った。
データの扱いなどに関して実験のデータ分析以
外には用いないことや個人を特定することはな
いことを伝え、卒業論文に向けた予備実験であ
ると伝えて協力をお願いした。
制限時間などは設けず、個人のペースで回答し
てもらった。
★結果


社会的リスク行動の可能性推定値を社会的リス
ク得点、同様に個人的リスク行動のそれを個人
的リスク得点と呼ぶこととした。
社会志向性と個人志向性の得点をそれぞれ中
央値に基づいて、高-高群、高-低群、低-高
群、低-低群に対象者を4分した。
(平均得点:社会志向性32.92、個人志向性18.75)

提示した行動の経験も得点化した。
★
社会 2.5
個人
100.0
90.0
社会
個人
2.0
80.0
70.0
1.5
60.0
50.0
1.0
40.0
30.0
0.5
20.0
10.0
0.0
0.0
個-高
個-低
社-高
個-高
個-低
社-低
図1 リスク行動得点の平均値
(エラーバーは標準偏差)
個-高
個-低
社-高
個-高
個-低
社-低
図2 リスク行動経験数の平均値
(エラーバーは標準偏差)
★






図1より…
どの群でも社会的リスク得点のほうが高い。
個人的リスク得点に関してはどの群でも50を超
えることはなかった。
図2より…
経験得点でも社会的リスク行動のほうが高い。
社会・個人志向性別で見ても法則性などは見ら
れない。
★



独立変数を社会志向性×個人志向性とし、従属
変数を社会的リスク得点として、2×2の分散分
析を行った。その結果、2要因の交互作用が有
意であった。
下位検定の結果、個人志向性が低い時の社会
志向性要因の単純主効果が有意であった。
他個人的リスク得点などに関しても同様に分析
を行ったが、有意な結果は得られなかった。
★考察
今回統計的に明らかにできたのは、社会的リスク得
点における、個人志向性が低い時の社会志向性の
効果だけであった。
 予想に反して、全体を通して社会的リスク得点のほ
うが高かった。
⇒提示したリスク行動が、社会的リスク行動のほうが
日常的に遭遇する頻度が高いと推測された?
 また社会・個人志向性の高-高群と低-低群のほ
うが社会的及び個人的リスク得点の差は大きかっ
た。

★
高-高群の人は自身や周りへの影響などをよく
考えて行動する人、低-低群の人は行動に伴う
影響などをあまり深く考えることなく行動を起こ
すと考えられる。
 どちらかだけが高い群(高-低群と低-高群)の
間ではリスク行動得点の高低が逆になると考え
ていたが、そのような傾向はなかった。
(ともに社会的リスク得点のほうが高かった)

⇒多様な集団の中で生活し、比較的協調性が高いと
言われる日本人の傾向?
★

個人志向性高群の人のほうが低群より個人的リ
スク得点が高かった(=個人的リスクを冒しやすい)
今回提示したリスク行動の質が問題?
⇒2つとも(考え方によっては)
後に利益をもたらしうる行動であった(!)
(割合として高いものではないが)
個人的志向の高さ≒自信、冒険心の旺盛さにつながっている?!
→リスクを冒しても後に得られる利益を重視
★反省と今後

尺度に一定の内的整合性が確保できなかったこ
と、4群に分けたにかかわらず1群5、6人しかお
らず、実験参加者の不足が挙げられる。

自身の考えていた卒論に向けた発展的展望は、今
回の結果をみると関連要因が多々あると思われた
ので、文献を読み焦点を絞りながら整理してまた練
り直す必要があると感じられた。
★引用・参考文献




出口拓彦 (2004) 社会的迷惑行為に対する認知と頻度の
関連 藤女子大学紀要第42号第Ⅱ部 pp.59-64
高木彩 (2007) 大学生のリスクテイキング行動と社会的規
範の知覚との関連 日本社会心理学会代48回大会発表論
文集 pp.744
伊藤美奈子 (1993) 個人志向性・社会志向性尺度の作成お
よび信頼性・妥当性の検討 心理学研究,64 pp.115-122
野村理朗 (2007) 社会的ジレンマゲームにおいて他者感情
が協力行動に及ぼす影響 東海女子大学紀要,26
pp.199-204