PowerPoint プレゼンテーション

シナリオ5
変性疾患大嫌いの
あなたに挑戦
日常生活の中の神経学
(C) TAKARA CO. , LTD
神経変性疾患:話の方針
• 背景が難しいので,まず一般論から入って,そ
の後症例を解説
• 震え,筋力低下,脳神経症状といった症状を問
診でどうやって捉えるか
• これだけで二つのシナリオが必要
• パーキンソン病で一つ
• SCDとALSを一つの組にするか?
– 構音障害と嚥下障害が主訴ということで
あらすじ
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まず,神経変性疾患は案外多いことを強調
典型的な病歴を示して病歴だけで診断可能
しかし,完成された病歴を見ればわかるが
その技術をどうやって取得するのか?
迷路みたいに思える.しかし迷路の出口から逆をたど
ればいい→これが病歴聴取
• ではそのノウハウを教えましょう
• “転ぶ”という病歴の解析から始める
変性疾患が嫌いな理由
フロアに向かって質問:変性疾患が嫌い
な理由を挙げてみてください
変性疾患が嫌いな理由
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まれな病気だから自分には縁がない
ドイツ人名,神経病理,神経伝導路
ハンマーを使う難しい診断が嫌
治らない病気は勉強したくない
神経内科医が偉そうな顔をする病気
でも,実は変性疾患は
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まれではない
神経伝導路なんか知らなくたって,
ハンマーを使わなくたって診断できる
病気は治らないけど,患者さんを支える
偉くない神経内科医が教えます
プライマリケア医と神経変性疾患
知っておくべき理由
意外に多い神経変性疾患
5万人
神経変性疾患
同頻度の膠原病
パーキンソン病
SLE
1.8万人 脊髄小脳変性症
5000人
サルコイドーシス
筋萎縮性側索硬化症 大動脈炎
受診まで長期間悩む患者
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52歳男:事務職,徒歩,バス,電車で通勤100分
02年6月 食事の時,手の震えを家族が指摘
03年1月 前かがみ,小股歩行を自覚
03年5月 朝の身支度に時間がかかる
はっきり発音ができない
最寄の駅まで時間がかかる
• 03年9月 本人は膝が悪いと思い整形外科受診
食わず嫌い?
• 鑑別すべき疾患の種類は少ない
• 診察,検査よりも病歴が決め手
• 系統変性:病歴がそのまま病変を反映
→病歴がわかれば,伝導路は自ずからわかる
• 根治療法はないが支持と管理が重要
でも自信ないけど・・・
まずははじめに言葉ありき
→変性疾患の名前を3つ挙げてみよう
それだけで十分!!
これだけでいい:○○系
• パーキンソン病系:錐体外路型
• 脊髄小脳変性症系:運動失調型
• 筋萎縮性側索硬化症系:筋力低下型
訴えを聞くだけで変性疾患を診断できる!
神経変性疾患
なぜ病歴だけで診断できるのか
• 感度の良さ:運動・日常生活の自然の負荷
• 緩徐進行
– 経過が長いから病歴が豊富:手がかりの宝庫
• 系統変性に対応した症状が出てくる
– 黒質変性と振戦,固縮,
– 小脳変性と運動失調
– 前角細胞の減少と筋萎縮,筋力低下
病歴症候学
むずかしい症候学を病歴で代用
• 脳神経麻痺:複視,構語障害,嚥下障害
• 筋力
– 上下肢の遠位筋,近位筋徴候
• 運動失調:立位,歩行
• 感覚障害:PQRST:Provokation, Quality,
Region, Severity, Time
• 膀胱直腸障害
次に各疾患の典型例を示す
病歴の重要性を理解してもらうため
56歳男性メッキ工場勤務
• 52歳: 両手から前腕のこわばり感があって服
を着るのに時間がかかった
• 53歳: 仕事場で機材を運ぶのが遅くなった
風呂で体を洗う,洗髪,歯磨きが困難
歩行時に前かがみ,腕を振らなくなった
整形外科を受診したが症状は改善せず
• 54歳:両上肢に安静時に振戦が出現した
69歳女性:主訴 歩くときふらつく
• 62歳:階段を下りるときふらつくので手すり使用
右耳が聞こえにくくなる
• 63歳:平地歩行でふらつく,シルバーカー使用
• 64歳:喋りにくくなり電話で度々聞き返される
包丁:切り身が不揃い,指を切りそうになる
• 65歳:平地で転びそうになる.料理をやめる
• 66歳:酔っ払いが歩いているようだと言われる
65歳女性
• 63歳:2月右足が動かしづらい.歩行時杖使用
• 64歳:3月椅子,洋式トイレでの立ち上がり困難
5月右下肢を引きずる,左下肢が動きにくい
6月両腕が肩まで上がらなくなった
9月階段を上がれなくなった
• 65歳:春着替えが一人でできなくなった
6月トイレまで歩けなくなった
神経変性疾患診断のための病歴聴取
における日常生活動作障害の意義
神経疾患の訴えの多くは日常生活動作
障害だから,病歴聴取の際にもその点に
注目することを述べる.まずは導入
病歴が重要なのはわかったが
その病歴を聴取する能力を取得するのが
むずかしいのでは?
→実は簡単
病歴聴取は迷路じゃないの?
出口から逆にたどれば・・・
でも病歴の出口って?・・・
よく転ぶんです
電車内での転び方一つでも鑑別
• パーキンソン病:足が出ずに棒のように倒
れる.ふらつかない!!
• 脊髄小脳変性症:倒れる前から足を広げて
いるし,足も出るが,ふらついて倒れる
• 筋萎縮性側索硬化症:倒れる前に疲れて
しまう
神経変性疾患の病歴と日常生活動
作障害
症例と具体的な障害を述べていく
69歳男性,数学教師
• 57歳:板書の文字が小さくなる
• 58歳:車のハンドル操作がぎこちなくなる
• 65歳: 1月 右のカフスボタンが留めにくい
左手でのキーボード入力が下手
左足が靴にうまく入らない
6月 じっとしていると左手が震える
53歳女性、主婦
• 49歳:
• 50歳:
• 52歳:
ジョッギング中、まっすぐに走れない
後ろから呼び止められると転倒しそう
階段を下りるのが怖くなり、手すり使用
お茶を持って運ぶとこぼれる
字が汚く、喋りにくいと感じるようになる
電話で相手から聞き返されるのが頻回
パーキンソン病の姿勢反射障害
通勤電車内での負荷と問診
• 混んだ電車に乗れない
– →混んだ時間帯を避け,空いた時間帯に乗る
• すくっと立てなくなる
– 前に人が立つと、特にだめ
– 一つ前の駅で立って,ドアの前で待つ
日常生活での立位歩行の負荷水準
1.
2.
3.
4.
好きなスポーツ
通勤
階段昇降
負荷のある平地歩行
方向転換,狭いところ
5. 負荷のない平地歩行
去年サッカーをやめた51歳男性
何の病気でしょうか?
• 45歳:右上肢が動きにくいと感じたが,職場では
サッカー選手として試合に出場
• 50歳:走るのが遅くなり,攻撃の後守りに戻れな
い,首を後ろに反らせず,ヘディングができない
→試合に出場できなくなった
去年サッカーをやめた51歳男性
パーキンソン病
• 45歳:右上肢が動きにくいと感じたが,職場では
サッカー選手として試合に出場
• 50歳:走るのが遅くなり,攻撃の後,守りに戻れ
ない,首を後ろに反らせず,ヘディングができな
い→試合に出場できなくなった
• 51歳:右手が震え,字が書きにくくなった
68歳元歌手の男性
パーキンソン病
• 60歳:趣味のヨットを断念←甲板上のバランス悪化
• 62歳:声の張りがなくなり,歌の指導中止
• 63歳2月:右のカフスボタンがかけにくくなった
68歳元歌手の男性
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60歳:趣味のヨットを断念←甲板上のバランス
62歳:声の張りがなくなり,歌の指導中止
63歳2月:右のカフスボタンがかけにくくなった
63歳11月はじめて左手の震えを自覚
振戦が発症する前に,趣味・職業・日常生活動作の障害が出ている
立位・歩行の問診
地面,側面の状況の負荷
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広い平地を直進する
方向転換をする:
狭いところを通り抜ける
階段昇降
電車内で座位から立位になる
構語障害問診の感度
ー負荷の重さの違いー
• 軽:家族と直接話す
• 中:他人と直接話す
• 重:他人と電話で話す
電話での会話障害の問診は感度がずっと高くなる
57歳男性,ALS:進行性球麻痺型
• 55歳,9月:親戚が電話の声が聞き取りにくいと
指摘
– 妻の話:聞き取りにくさは徐々に進行
– 本人は自覚がなく,トラックの運送業務を継続
• 56歳,1月:話しにくいと自覚,食事にも時間がか
かるようになった
電話が嫌いになる
ー聞き取りにくいと文句を言われ
るー
• 声が小さい・早口:PD
• 酔っ払い:SCD
• 声がかすれる:ALS
嚥下障害の負荷:量と質
• 量と速度の負荷
– ペットボトル,缶から直に
– ストロー,コップに移し替えて
• 液体,麺類,固形物の正常
– 脊髄小脳変性症:麺類が苦手.ストローも?
– 筋萎縮性側索硬化症:麺類は得意
書字障害の問診
量・質の負荷
• 大量に書く:年賀状
• 他人にわかりやすいように書く
– お客さんへの領収書
– 教師の板書
電車通勤でわかること
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徒歩で駅まで要する時間:筋力低下+固縮寡動
駅前の放置自転車の間を抜ける:姿勢反射
駅の階段を上る,降りる:筋力・痙性,運動失調
車内で立っている:姿勢反射
つり革に掴まる:上肢筋力
網棚に荷物を上げる:上肢筋力
座席から立ち上がる:姿勢反射+(下肢近位筋)
日常生活動作障害問診の利点
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普遍性:必ず答えが得られる
具体性:明確な回答,記憶に残りやすい
自然な負荷試験:診察が不要
理解しやすい,質問しやすい
教育に応用
予診への組み込み
日常生活動作負荷を左右する因子
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書く:職業,読む人,量
話す:聴く人,直接・間接(電話)
歩く:傾斜,昇降,広狭,
着替える:スカート&ズボン,ボタンの位置
トイレ:部屋の広狭
移動:乗り物(自転車,電車,自動車運転)
日常生活動作障害
通勤で待ち受ける障害=負荷試験
自転車の運転
• 脊髄小脳変性症:ふらつきで危険
• パーキンソン病:
–走り出し,とっさの停止ができない
自動車の運転
パーキンソン病
脊髄小脳変性症
• ハンドル:遅い
• アクセル:遅い
• ブレーキ:遅い
• ハンドル:切りすぎ
• アクセル:踏込み過ぎ
• ブレーキ:急
パーキンソン病診断の原則 I
片側性の発症とN字型の進展:初診で,“両手が
震える”のはパーキンソンではない
→本態性振戦(両側上肢同時発症)との鑑別
パーキンソン病診療の原則 II
抑うつは初期からつきもの
病前性格:几帳面,真面目,冗談不得手
パーキンソン病における鬱症状
薬理学的な共通点:モノアミン仮説
治療における共通点:MAO阻害薬
パーキンソン病診療の原則 III
脱力の訴え(特に下肢)の裏にすくみ現象あり
→すぐに力が入らないため
脱力ではなく,重い,動かしにくい
→鉄の鎖をつけたようだと表現する患者
パーキンソン病での日常生活動作障害
(必ず片手 or 片足から始まる)
• 更衣:着替えに時間がかかる,ボタンをかける
• 整容:歯磨き,整髪
• トイレでの動作:狭いところで複雑な動き
– トイレ内での体位変換,後始末,ズボンを履く
• 入浴:洗髪,体を拭く,着替える
• 調理:米をとぐ,千切り
• 声が小さくなる,字が小さくなる(小さいミミズ)
脊髄小脳変性症でのADL障害
(左右差は目立たない)
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料理:大きさが不揃い,指を切る,配膳でこぼす
車の運転:ハンドル,アクセル測定過大
自転車:ふらつき
書字:字が汚くなる(大きいので目立つ)
読書/新聞:飛ばして読んでしまう
電話が嫌いになる
脊髄小脳変性症の歩行
筋萎縮性側索硬化症でのADL障害
左右差は目立たない
• 飲食:缶飲料が開けられない、舌で,口の中がう
まく掃除できない
• 通勤:網棚に荷物が上げられない,つり革に掴
まっていると疲れる
• 洗濯物を干すのに腕が疲れる
• 痩せる
• 趣味の運動が下手になる:ゴルフ,テニス
鑑別診断スコア表例
PD
アクセル
足りない
ブレーキ
遅れる
ハンドル
足りない
自転車
問題なし
電話嫌い
ぼそぼそ
階段苦手
降りる?
シルバーカー 無効
SCD
ふかしすぎ
急ブレーキ
切りすぎ
ふらつく
酔っ払い口調
降りる
有効
ALS
問題なし
問題なし
疲れる
問題なし
嗄声
上る?
無効
病歴,症候を科学する
これからの課題,みなさんの課題
• それぞれの病歴,症候の感度・特異度
• 重症度で層別尤度比が出るか?
• 効率良い病歴聴取のアルゴリズム
夢
ゲームセンターの自動車競走シミュレーター