ス ペ ク ト ドパミン神経の状態を見る SPECT検査 〔検査の受け方〕 検査前 診察を受けます 疑問や不安がありましたら、納得がいくまで確認しておきましょう。 検査の予約をしてください ス 検査に使う薬は検査当日しか使えませんので、 確実に来られる日に予約してください。 ペ ク ト 新しい SPECT検査の画像 注意事項、指示を確認して おきましょう 検査当日 パーキンソン病 の 診断 と治療って? 検査室に入り準備します 検査に必要な薬を注射します 3∼6時間待ちます 検査をします 装置のベッドに仰向けに寝ている間に検査します。頭の周りをカメラが 回ったり、 トンネルのようなカメラの中に頭を入れたりして撮影します。 検査中は頭を動かさないでください。約30分で終わります。もし気分 が悪くなったら我慢せずお申し出ください。 健康な人 パーキンソン病 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 MRI検査の画像 当日、または後日、 検査後 担当医から結果の 説明を聞きます 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 医療機関名 早期からの診断・治療で、大きな支障なく生活できます。 提供:日本メジフィジックス株式会社 URL http://www.nmp.co.jp/ 2014.12月作成 (TA-1412-G01) 国立精神・神経医療研究センター パーキンソン病・運動障害疾患センター センター長 村田 美穂 Q パーキンソン病は どんな病気? A 体の動きに障害があらわれる 病 気です。 パーキンソン病は、脳の異常のために、体の動きに障害があらわれる病 気です。現在、日本には約15万人の患者さんがいるといわれています。 高齢者に多くみられる病気ですが、若い人でも発症することがあります。 パーキンソン病 の 代表的な症状 動作が 遅い・少ない・小さい しん せん 手足が震える (振戦) ゆっくりと進行するのが特徴です。 パーキンソン病は、何年もかけてゆっくりと進行する病気です。以前は、 「パーキンソン病を発症すると、10年後には寝たきりになる」といわれ ていました。しかし、現在は効果的な治療薬もあるため、発症から長 い年数にわたり、よい状態を保つことができます。 それだけに、早い段階からきちんと治療を始めることが大切です。 パーキンソン病 の 進行の度合い(ヤール重症度分類) 軽度 1度 症状は片側の手足のみ。 日常生活への影響はごく軽度です。 歩く速度が遅くなり、歩幅も狭くな ります。腕の振りも小さくなります。 安 静 にして い る 時 に 、手 や 足 に 細かな震えが 生じます。 きん こ しゅく バランスがとれない (姿勢反射障害) 筋固縮 2度 症状が両側の手足に。 多少の不便はあっても、従来どおりの 日常生活を送ることができます。 3度 歩行障害や姿勢反射障害があらわれ ます。活動がやや制限されますが、 日常生活は自立しています。 4度 両側の手足に強い症状があり、 早く 治療を始めれば、 良好な状態が保たれ、 大きな支障なく 生活することが できます。 S T O P! 自力での生活は困難。 介助が必要なことが多くなります。 2 患者さんの腕や足を動かそうとす ると、関 節 がカクカクするような 抵抗が感じられます。 重心がぐらついたときに、姿勢を 立て直すことができず 、そのまま 倒れてしまいます。 重度 5度 一人で立つことができなくなり、 車椅子での生活や寝たきりになります。 全面的介助が必要。 3 Q なぜ パーキンソン 病になるの? A 原因は、脳内のドパミン神経の 減少です。 私たちが体を動かそうとすると、脳の「大脳皮質」から全身の筋肉に、 運動の指令が伝わります。このとき、私たちの意図どおりに体が動くよ うに、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質の「ドパミン」です。 ドパミンは、脳の奥の「黒質」にある「ドパミン神経」でつくられています。 パーキンソン病になると、このドパミン神経が減少し、ドパミンが十分 につくられなくなります。その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、 体の動きに障害があらわれるのです。 さまざまな神経の障害に伴い多彩な症状が現れます。 パーキンソン病では、黒質のドパミン神経の減少に加え、他の中枢神 経や自律神経もダメージを受けます。これにより、手足の震えなどの 代表的な症状に加え、精神症状や自律神経の障害があらわれること もあります。 精神症状 体を動かすときの 脳の働き 線条体から大脳皮質に 運動を調整する 指令が出されます。 自律神経障害 線条体 ドパミン 大脳皮質 3 黒質のドパミン神経でつくられた ドパミンが線条体に送られます。 1 パーキンソン病になると ドパミンが不足 3 指令を受けた 大脳皮質から、 全身に運動の指令が 伝えられます。 4 最も多いのは 「便秘」 で、 患者さんの8割程度にみられます。 多岐にわたるパーキンソン病の症状 黒質 2 「抑うつ」 や 「幻覚」 を伴う場合があります。 また、高齢で重度の患者さんでは、 「認知症」 を合併することもあります。 2 うまく 伝わらない 運動を調整する 機能が低下 1 ドパミン神経が減少 全身への運動の指令がうまく伝わらなくなり、 体の動きに障害があらわれます。 抑うつ ドパミン神経の 減少に伴う 代表的な症状 (2ページ参照) 認知症 幻覚 頭痛 嗅覚障害 睡眠障害 異常な発汗 起立性低血圧 腰痛 便秘 頻尿 立ち上がったときに ふらついたり、 めまいがする 5 Q どのように 診断す るの? A 新しい画像検査が 実施できる ようになりました。 まず医師が患者さんに、 「手足の震えや歩きにくさなどの症状がいつご ろからあり、どのように進行したか」 などについて質問します (問診) 。 次に、医師が患者さんの腕や足を動かして、筋固縮や姿勢反射など、 パーキンソン病に特徴的な症状があるか調べます (神経学的診察) 。 ここまでの診察でパーキンソン病が疑われる場合には、MRIやSPECT (スペクト) による画像検査で脳を詳しく調べます。2014年1月からは、 新しいSPECT検査が保険診療で実施できるようになりました。 診察の流れ 問 診 神経学的診察 手足の震えなどの 症状を聞きます。 関節の動きや 身体のバランスを チェックします。 画像検査 ドパミン神経の状態を直接見ることができます。 ス ペ クト 新しいSPECT検査により、従来の検査では調べられなかったドパミ ン神経の状態を、画像で確認できるようになりました。 ス ペ クト 新しいSPECT検査の画像と仕組み ドパミン神経には、ドパミンを再び取り込み、ドパミン量を調整する部 分(ドパミントランスポーター)があります。ドパミン神経が壊れると同 じくドパミントランスポーターが減少します。この変化を画像でとらえ ているのです。 健康な人 白く見える部分( ドパミン神経。パーキンソ ス ペ クト (MRI、SPECTなど) ン病ではドパミン神経が 脳の形や 働きを調べます。 P9参照 ) が パーキンソン病 脳の断面を 映しています 減 少 するため、健康な人 の場合と比べて白く見え 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 た部分が小さくなります。 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 脳の中で起こっていること ドパミン神経 ドパミン ドパミントランスポーター ドパミントランスポーターは ドパミンが 多く伝わりすぎないように 再取り込みをする。 6 ドパミンが 減るとともに 減少 この変化を 画像で とらえて います 7 Q 新しい 画像検査で 何が変わるの? A パーキンソン病の早期発見や、ほかの病気との区別がしやすくなります。 パーキンソン病があっても、MRIやCTなど脳の形を見る画像検査で は、健 康な人との区 別が ほとんどつきません。これに対し、新しい ス ペ クト SPECT検査は、パーキンソン病の原因となるドパミン神経の減少が 目で見てわかるので、早期診断、早期からの治療開始に役立ちます。 脳の形を見る検査ではわからない異常を 見つけられる場合があります。 また、手足の震えなど、パーキンソン病に似た症状があらわれる別の 病気もあります。これらの病気とパーキンソン病では治療の内容が違 うので、 しっかり区別することが大切です。こうした“鑑別診断”にも ス ペ クト SPECT検査が用いられます。 パーキンソン病に似た症状があらわれる病気(状態) 正常 MRI 検 査 の画 像 健康な人 減少 ドパミン神経 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 ほんたいせいしんせん 本態性振戦 健康な人とパーキンソン病の人との区別がほとん どつきません パーキンソン病 動作をするときに震えが生じる 病気です。 パーキンソン病 しんこうせいかくじょうせいまひ 薬剤性パーキンソニズム 薬の副作用が原因で症状が あらわれます。 脳の黒質、視床下核などの神経細胞が 減少することにより、動作の遅れ、 歩行障害などが生じます。 脳血管性パーキンソニズム 8 進行性核上性麻痺 たけいとういしゅくしょう 脳梗塞など、脳血管障害の後遺症として 多系統萎縮症 症状が発生します。 特に 線条体黒質変性症 動作が遅くなったり、 筋肉がこわばり転びやすくなる などの症状がみられます。 同じ時期の ス ペ ク ト SPECT検査 の 画像 健康な人 パーキンソン病 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 パーキンソン病での脳内の変化(ドパミン神経の 減少)がはっきりと確認できます。 9 Q どのような 治療を するの? A 大きく分けて3つの治療法 が あります。 1 薬物療法 ドパミン系を補充する薬を始め、様々な薬があり、 年齢や症状により組み合わせて使います。 以下に代表的な2剤をご紹介します。 L-ドパ 脳内でドパミンに変化して、不足しているドパ ミンを補います。治療効果が高く、速効性に 優れているのが特徴です。 ドパミンに似た作用をもつ薬です。治療効果 ドパミンアゴニスト がやや弱く、ゆっくり効くので、1日中穏やか で安定した効果を得られます。近年は内服薬 に加え、注射薬と貼付薬も登場し、治療の選 択肢が広がりました。 早期からの薬物治療の有効性が確認されました ── ELLDOPA study(イーエルドパ試験、2004年)── 初期のパーキンソン病の患者さんを、L-ドパを服用するグループ と、プラセボ(有効成分を含まない見かけだけの薬)を服用する グループとに分けて症状を比較しました。その結果、服用中だけ でなく服用中止後も、L-ドパグループのほうがプラセボグループ よりも良好な状態が維持されました。初期からのL-ドパ投与に より、病気の進行が抑制された可能性があり、あらためて早期 診断・早期治療の有効性が示されたといえます。 10 2 手術 薬物療法の副作用が強かったり、症状のコントロールが難しい 場合には、手術が選択されることもあります。主に行われる 「脳 深部刺激療法」 では、脳の奥のドパミンに関係する部位に電極を 埋め込み、弱い電気刺激を与えることで運動機能を改善します。 3 リハビリテーション パーキンソン病と診断されたら、すぐにリハビリテーションを始め ることが大切です。有酸素運動やストレッチなどを積極的に行うこ とで、生活に支障のない状態を長く保つことができ、薬の使用も 最小限ですみます。 また、パーキンソン病になると、口の周りの動きの影響で、 「 声が小 さくなる」 「 早口になる」 「 声がかすれる」 などの障害があらわれる こともあります。これらの症状にもリハビリテーションが有効です。 バランスや筋力を保つ運動 親指を 上に向ける できるだけ 高く上げる 話し言葉のリハビリテーション 本や新聞を 大きな声で読む カラオケで 大きな声で歌う 11
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