解剖が好きな病気と嫌いな病気

“You can not teach anyone
anything, you can only help
them find it within
themselves.”-
本日のお話→公演スライド集
質問・録音・録画・撮影全て自由
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知識を授けることではありません
知識は誰でも検索可能な時代です
「物知り」が尊敬される時代は終わりました
本日のお話は「気づく」ことです
– 自分自身の面白さに気づく
– 自分が持っている資源に気づく
– 自分が実行してきた考え方に気づく
目から鱗は自分が素敵
美しい自分との出会い
自分が神経内科が苦手で
あるとするエビデンスは?
バルサルタンの「降圧を超えた効
果」以上のエビデンスがあるのか?
↓
「神経内科が苦手」という「信仰」
自分は神経内科が苦手である
とする「信仰」
神経内科を苦手にするこつ
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神経内科が苦手だと思う
少し神経内科を勉強する
でも苦手意識がなくならない
もう少し勉強する
まだ苦手意識がなくならない
もっと勉強する
それでも苦手意識がなくならない
やっぱり自分はだめなんだと思う
非専門医の方が難しい環境に
=鍛えられる&上達する
より雑多な集団を常に相手にしているから
医者は易者ではない
話を聴かなければ話にならない
• 問診しなければ診断できない
– 最も基本的、最も重要な情報源
– 除外診断の99.99%以上は問診による
– 病歴の感度の高さ
– 問診しなければ診察できない
• 病歴聴取→鑑別診断リストの作成→診察→検査
「問診なくして診断なし」
という「自尊心」!
自分はMRIのような能なしではない
人間不信と機械信仰からの脱却
患者さんが教えてくれる
「朝目がさめる。起きて顔を洗う、歯を磨き、
ひげをそる。家族と話しながら朝食をとる。
コーヒーを飲みながら新聞に目を通す。ネクタ
イを締め、洋服を着、クツをはいて出かける。
いつも混んだ電車に乗り、幸い足も踏まれずに
駅におりる。さあ、会社では山積みの仕事だ。
こんな日常のなんでもない生活や動作の、どれ
ひとつをとってみても、脳や神経系の働きなし
にはうまくできないものばかりです。・・・」
(『日常の中の神経学』 より)
苦手意識の根本原因
ー診察の嘘と問診の真実ー
問診に対する苦手意識→興味への変換
• 神経診断の鍵は神経診察である
→嘘!病歴8割,診察2割
→嘘!問診無くして診察なし
• 問診は職人芸である
→嘘!患者さんが教えてくれる
病歴の感度
Lou Gehrig
の場合
43歳の男性:無呼吸を疑われ紹介来院
3ヶ月前から瞼が何となく重く(閉じるまでいかない)睡
眠不足かと思っていた。 まぶたをあげようと努力して
いるので同僚から人相が悪くなったといわれる。左 へ
振り返ったときに一瞬ものが二重に見えることが時々
あり、片目をつぶればはっ きり見える。同じ頃からか
らつばやものが飲み込みにくいと感じる事がありのど
が狭くなった(少し体重が増えたので)と思った。1ヶ
月前から食事(特に量の 多いとき)の後半になると顎
が疲れてうまくかめなくなり時間がかかるようになっ た。
(やすめばもどる)同時にこのころからシャンプーをし
ていると右手が重く なり支えないと頭まであがらなく
なる。(休めば治る)
三手詰
脳卒中はどちら?
• 昏睡
• 81歳男性
• 昏睡
• 18歳女性
脳卒中はどちら?
• 昏睡
• 81歳男性
• 昏睡
• 18歳女性
年齢・性別という人間軸
脳卒中はどちら?
• 65歳男性
• 今朝起床時に
左の手足に力
が入らない
• 65歳男性
• 半年前からペッ
トボトルの蓋が
開けにくくなった
20
脳卒中はどちら?
• 65歳男性
• 今朝起床時に
左の手足に力
が入らない
• 65歳男性
• 半年前からペッ
トボトルの蓋が
開けにくくなった
経過という時間軸,場面という空間軸
55歳男性:二次会のカラオケの
最中に急に頭が痛くなって救急
外来にやってきた
予診票の段階ですでに膨大な
除外診断が行われている
除外診断
鑑別診断背景にある除外診断
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卵巣癌の脳転移
脳梗塞
髄膜炎
筋収縮性頭痛
帯状ヘルペス
側頭動脈炎
脳腫瘍
それぞれの意義
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バイタルサイン
髄膜刺激症状
瞳孔・眼球運動
徒手筋力テスト
感覚検査
腱反射
協調運動
長谷川式痴呆スケール
CT/MRI
66歳 主婦
「急に歩けなくなった」
それだけでわかるわけないよ
解剖が好きな病気と嫌いな病気
解剖が好き:えり好みする
解剖が嫌い:所構わず
• 運動か感覚のどちらか。意
識は障害しない
• ほとんどが慢性の経過
• 脳
• 運動も感覚もそして時には
意識も障害
• 多くは急性
– 多くの神経変性疾患
• 脊髄・末梢神経
– 筋萎縮性側索硬化症
• 神経筋接合部
– 重症筋無力症
• 筋疾患
– 血管障害
– 炎症
– 脱髄
• 慢性の経過は限られている
– 腫瘍
– 栄養障害
解剖好き
神経筋固有の炎症
(ギラン・バレ症候群
多発筋炎)
神経変性疾患
重症筋無力症
筋疾患
慢性
急性
脳血管障害
全身性血管炎
脱髄
腫瘍
栄養障害
解剖嫌い
66歳 主婦
「急に歩けなくなった」
第二象限か第三象限かが診断の初
めの大切な分岐点
それぞれの意義
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バイタルサイン
髄膜刺激症状
瞳孔・眼球運動
徒手筋力テスト
感覚検査
腱反射
協調運動
長谷川式痴呆スケール
CT/MRI
日常生活動作
家の中と外
プラレールの病歴
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徒歩で駅まで要する時間:筋力低下+固縮寡動
駅前の放置自転車の間を抜ける:姿勢反射
駅の階段を上る,降りる:筋力・痙性,運動失調
車内で立っている:姿勢反射
つり革に掴まる:上肢筋力
網棚に荷物を上げる:上肢筋力
座席から立ち上がる:姿勢反射+(下肢近位筋)
自動車の運転
パーキンソン病
• ハンドル:遅い
• アクセル:遅い
• ブレーキ:遅い
脊髄小脳変性症
• ハンドル:切りすぎ
• アクセル:踏込み過ぎ
• ブレーキ:急
ではリカチャンハウスで
は?
リカチャンハウスでのチェックポイント
トイレ動作の障害
トイレ動作のチェックポイント
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立ち上がり:洋式,和式
手すりの位置:左右・縦横
お尻を拭けるか
下着を下ろす動作の速度
部屋の広さの影響
風呂場,
洗面・脱衣所での障害
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湯船の出入り
右手(左手)で頭をうまく洗えない
頭を洗うとき腕が疲れやすい
シャンプーが目に入ってしまう
顔を洗うときふらつく
着替えが遅い
パンツを下ろす:立って?座って?
ダイニングキッチンの障害
台所での障害
• パーキンソン病
–米をとぎにくい
–生卵をときにくい
–炒め物が苦手
• 脊髄小脳変性症
–漬物の切り方が不揃い
電話
電話が嫌いになる
ー聞き取りにくいと文句を言われるー
• 声が小さい・早口:パーキンソン病
• 酔っ払い:脊髄小脳変性症
• 声がかすれる:ALS
会話の負荷と問診の感度
• 負荷軽:家族と直接話す→感度低
• 負荷中:他人と直接話す→感度中
• 負荷重:他人と電話で話す→感度高
電話での会話障害の問診は感度がずっと高くなる
書斎での障害
書字障害の問診
量・質の負荷
• 大量に書く:年賀状
• 他人にわかりやすいように書く
– お客さんへの領収書
– 教師の板書
• キーボードの神経学はこれから
着替え,整容
• ボタンをはめにくい
– 手の筋力低下
• ズボン・スカートを立って穿けずに座って穿く
– 体幹失調 or 下肢近位筋筋力低下
• 上着の袖を通すのが困難
– 上肢近位筋力低下
• 着替えそのものが遅くなる
• 髪を梳かす
神経疾患問診鑑別診断バッテリー