地下天気図 ーRTM 法とはー - LaCoocan 初期ページ

地下天気図
ーRTM法および関連する技術ー
2011.7
東海大学
地震予知研究センター
長尾年恭
大地震の前に何が起こるか?
• 昔から、大地震の前には地震活動が変化す
る可能性が指摘されていた
• 特に顕著な前兆現象と考えられていたのは
大地震の前に通常より地震活動が低下する
現象(地震活動静穏化)の存在
• 今回提示する方法は、地震活動の微細な変
化を効率的に抽出する方法である
RTM法とは(1)
• RTM法とは、東海大学が開発した新しい地震
活動評価のためのアルゴリズム
• Rは距離(region) 、Tは時間(time) 、Mは地震
の大きさ(magnitude)を表す
• RTMの値はR, T, Mの積として定義される
• 解析対象地点の近傍で最近大きな地震が発
生するとRTMの値が大きくなる
RTM法とは(2)
• RTMの式
・RTMの値は過去一定期間内の地震活動の推移を示す指標となる
・負の値が大きいほうが地震活動が静穏であることを意味する
RTM法の特徴
• R, T, Mの3つのパラメータは標準偏差によっ
て規格化(normalize)されており、さらに平均
値を差し引いているため、異常がなければ常
に0となる
• 上記の3つの値の積を計算しているため、結
果としてほとんどの期間でゼロ近辺を示す
⇒ この結果、RTM値は異常があると大きく変化する
RTM計算に必要なパラメータ
・r0:特性距離
・r_max: 計算打ち切り距離
・t0: 特性時間
・t_max: 計算打ち切り時間
ri
exp( )
r0
t  ti
exp(
)
t0
・M_min : 計算に使う最小のマグニチュード
RTMの具体的な計算法
空間
時間
評価地点
(x,y)
Rmax=n・r0
Tmax=n・t0
past
i 番目の地震の
震源
i 番目の地震の
n は倍率:通常は2から4
発生時刻
ti
t
現在
RTM法の利点
ー2000年鳥取県西部地震を例としてー
RTM/RTL値
地震発生!
地震活動活発化
地震活動静穏化
積算の地震数
Huang and Nagao (2002) GRL
下の図は地震活動の評価でよく使われ
る発生した地震の積算数のグラフ.上の
グラフと同じデータを使っている.RTM法
がいかに鋭敏かわかる
RTM法における結果の例
阪神大震災(1995)前の
RTMの値の変化
地震発生!
2007年,能登半島の地震
(M:6.9)
地震発生!
2008年,岩手宮城内陸地震
(M:7.2)
地震発生!
東日本大震災前
に観測されてい
たRTM値の異常
(震源近傍での地震
活動の活性化)
グレーの部分は地震活動が存在し
ないため評価できない地点
東日本大震
災前に観測さ
れていたRTM
値の異常
(日本列島全域
にわたる地震活
動の静穏化)
グレーの部分は地震活動が存在し
ないため評価できない地点
RTMの異常(時系列変化)
釧路沖
震源
紀伊半島沖
まとめ
• 1995年の阪神淡路大震災以降に発生した被
害地震(鳥取県西部、十勝沖、中越、中越沖、
能登半島、岩手・宮城内陸、駿河湾)等で顕
著な異常を抽出。現在さらなる解析を進めて
いる
• 2010年のハイチの地震でも顕著な異常を抽
出
• 現在、さらなる手法の開発と自動異常判別の
アルゴリズムを開発中
さらなる発展のために(1)
• RTM法は地震活動の数年から数か月という
時間についての評価法
• さらなる地震発生時期の特定のためには、臨
界現象の物理学を応用したNatural Time (NT)
解析を使用
• より長期(5年ー)の評価法としてはロシアお
よびアメリカで開発されたM8というアルゴリ
ズムを併用
Natural Time 解析とは
• ギリシャで発見された臨界現象を扱う新しい
時間概念
• アテネ大学のバロストス教授が発見
• すでにギリシャの地震予知で地震前兆電磁
シグナルと併用して、数日の精度での予測に
成功
• 長尾年恭は1991年にバロストス教授のもとに
1年間留学
臨界現象を地震活動に適用した解析
Natural time analysis
アテネ大学、東京学芸大学、
東海大学による解析
↓阪神大震災前
↑ 東日本大震災前
横軸は地震の個数
NT解析による東日本大震災前の異常
横軸を通常の時間軸とした
3月9日
赤線が実際のデータ
それ以外の線は検証のためのデータ
2011年1月
さらなる発展のために(2)
• より長期、広域的な予測のためにロシアおよび
アメリカで開発されたM8(Magnitude 8)アルゴリ
ズムの併用
• M8は地震活動度、そのゆらぎ、地震の集中度
などのパラメータを評価し、異常が一定基準を超
えた場合に5年間の期限を切ってどの領域でM
8クラスの巨大地震が発生するかを評価する手
法
• 日本では東海大学が研究の窓口となっている
東日本大震災に関連したM8の予測
M8グループでは2006年1月に警報を発令、その期限は2011年1月であった。
厳密に言えばこの予測は失敗ではあった。しかし5年というのは機械的に決めたルール
であり、我々は評価できるのではないかと考えている。
M8の予測の結果(時空間分布)
過去25年間の西太平洋域のすべてのM8クラスの地震についての結果
(M8での重要な点は空振りはあっても見逃しは無いという点と評価している)
空間的
時間的
発生したが
領域失敗
予測失敗
False alarm
RTM法の広域的な異常の
時間的変化(抜粋)
参考資料
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2年前
1年前
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半年前
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地震発生!