LORC第4班の取り組みから 考える社会変革の可能性 斎藤 文彦 LORC第4研究班代表 4班活動の背景と意図:参加 途上諸国においては、今までのトップダウンの経済成 長路線への反省から、人々の参加を重視するボトム アップの人間重視の開発へとの大きな転換が1980年 代にみられた。 参加型開発は1種の流行にもなり、弊害・誤用も見ら れたが、参加と社会変革の重要性への意識は定着。 しかし、参加を実現することは容易ではない。ましてや 長期にわたり(持続的に)「参加疲れ」を避けることは 大きな課題 2 4班活動の背景と意図:分権化 1990年代以降の冷戦後の世界的民主化 参加を容易にする行政機構改革。 1980年代以降の「小さな政府」を重視する国際援助 機関の政策変化。 当初は分権化政策は、「当然よいこと」という価値を内 包していたため、無批判に援助機関によって実施。 近年にいたり、分権化の再検討・再評価が進みつつ ある。 3 4班の研究 アジア:インドネシア、インド・ケーララ州、スリランカ アフリカ:ウガンダ、ガーナ、南アフリカ 比較研究の視点:アクターを重視し、利害関係者 (stakeholders)の関係性の動的変化を見る。 4 Foundations for Local Governance: Decentralization in Comparative Perspective(Springer 2007/8) 5 成功例と失敗例から考える インド・ケーララ州 1993年の憲法改正以前に市民リーダーによる社会運 動が起こる。1つの運動が次の運動へと展開。 背景には、高い教育水準などの社会的背景あり 行政もこのような社会運動のリーダー達の協力を求める パートナーシップの成立 6 ウガンダ 86年の現政権成立時に、国家機構が崩壊 制度的真空状況において新しい地方自治制度がしかれる local councilの仕組みが定着。人々は村レベルのcouncilの役割 を評価。 しかし、国全体の大きな政治状況の変化により、地方はその社会 改革の可能性がしぼみつつある?? 政権の長期独裁化 国際的評価の低下による支援凍結や延期 分権化は社会のためではなく政権の道具に。 7 Foundations for Local Governance: Decentralization in Comparative Perspective(Springer 2007/8)の結論 分権化とは中央ー地方関係の再定義であり、国家・政府・行政 の「社会変革」における役割の見直しである。 「小さい政府」ほど良いという意味ではない。 分権化政策は基本的には政治的課題であり、他国の成功を簡 単に移植・輸入できない。 分権化の動機はどこから来るのか? 援助機関側(外部者)主導の「改革」は成功しない。どの程 度内発的に意識されるか。 分権化の目的は何か? 中央の利益のためかあるいは地方の利益のためか? 8 3つのセクター論 公共セクター改革 政府 市場 民営化・市場の拡大 NPM 市民社会 貧しい人々のエンパワーメント 9 地域変革の総合的調整の必要性 今までの改革や支援の傾向は以下の3つが独自の論理 でしかもばらばらに実施 政府・行政機構には分権化を マーケットには民営化や市場開放を 市民には草の根レベルのエンパワーメントを この3つを調整・統合する役割が地域に求められている。 分権化それ自体が最終目的ではない。それは広い意味 での持続的社会の構築にある。 10 3セクター論の限界 アジアの開発独裁体制 政府が主導し、民間はそれに依存、市民社会は萎縮 3つのセクターの適度な緊張関係が崩壊し、社会全体には無 理を強いる体制 それゆえ歴史的には一定の役割を果たすが、現在同様の国 家は世界的には是認されない アフリカの新家産主義国家 指導者の個人的利益の搾取と、「レント」を媒介にした支配・ 被支配の関係 3つのセクターで社会を見るという見方それ自体が「近代的」で アフリカにはなじまない 11 アジアの開発独裁国家 政府の影響力は絶大。市場は政府に依存し、市民社会 は政府におびえる。 政府 国家が市民 社会の活動 範囲を規定 縁故型資本主義? 市民社会 市場 分権化と地方経済の繁栄 などの課題が未解決 12 単純化したアフリカの現状 パラドックス:政府は「大変強権的」であるがこれは「機能不 全」の裏返し、しかし政府は「最も近代的組織」 : る形 寡態 占の 政府 かす らり 外替 国え 企ア の「 未民 業フ 分間 にリ よカ 化」 と る政 「 市場 市 寡府 民 占に 」 へよ 民営化しても「民間」企業家が存在せず、 市場は外国の多国籍企業が牛耳る 国家が市民社 会の活動範囲 を規定 市民社会 市 民 社 会 の パ ラ ド ッ ク ス 近代的側面:外国NGOの支援 などへのさらなる依存 伝統的側面:地縁組織・血縁組 織 13 アジアやアフリカからの示唆 アジアの開発独裁体制は、日本が越えようとし、越え なければならいない「旧パラダイム」と酷似 アフリカの現状は、セクター間の協働の難しさを如実に 示す 他方、レントを介した繋がりは、個人の利益を社会の 公益に優先する、ねじれた社会関係を示す ↓ ともに変化することの必要性を強く示唆 14 結論の意味するところ 地域変革のビジョンを作る ビジョンが利害関係者に共有される仕組みを作る 変革への動機付けを持ち続ける 変革の担い手が「既得権益」を抱え込まない Bebbington and McCourt 2007 15 全体のまとめ 政府・市場・市民社会という3セクターを横断的・統合的 に考察する視点の重要性 協働が機能するためには? ビジョンと制度的仕組みの両方が必要 広い視野にたちセクター横断的に、「公益」を再定義 する必要性 日本も他の諸国同様、パラダイム転換という歴史的転機 にある 総合的考察や討論が重要 16
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