J. Plasma Fusion Res. Vol.85, No.1 (2009)3 1‐35 小特集 トリチウムの挙動を知る 6.トリチウムの移行過程を知る 深田 智,波 多 野 雄 治1),原 正 憲1) 九州大学大学院総合理工学研究院,1)富山大学水素同位体科学研究センター (原稿受付:2 0 0 8年9月1 6日) 気体中(あるいは液体中)のトリチウム移行過程を知るためには,気体中(液体中)のトリチウム濃度の空 間的および時間的変化を正確に測定する必要がある.気流中トリチウム濃度の高精度な測定は,核融合炉プラン ト中のトリチウムの流れを把握する上でも,また作業者の内部被曝や環境中へのトリチウム漏洩を防止する上で も不可欠である.主な測定方法には,"ガスクロマトグラフィ,#直接あるいは間接的に "線強度を測定する方 法,$質量分析計による方法などがある.本節では,それぞれの手法の特徴および測定の具体例を示す. Keywords: tritium, transfer, height equivalent to a theoretical plate, separation factor, gas chromatography, BIXS, ionization chamber, mass spectrometry 6. 1 ガスクロマトグラフィ(GC) が高く,特にラジオガスクロマトグラフィと呼ばれる.ア 6. 1. 1 概説 ロカがガスクロ用比例計数管を取り扱っている.TCD使用 トリチウム移行過程を知るため,共存する他の化学種や 上の注意事項に,キャリアガスと試料ガスの熱伝導率の差 水素同位体成分からトリチウム(水,ガス)を分離し,ト を定量分析に利用するので,Ar キャリアで H2は1ppm レーサレベルのトリチウム(水素同位体)を感度よく測定 程度まで分析できるが,Heキャリアでは100 ppm程度まで する必要がある.その手法の一つとしてクロマトグラフィ 感度が落ちる.クロマトグラムの面積あるいはピーク高さ がある.異なったガス種あるいは液種を分離分析するクロ と供給試料量との間に,通常広い線形性が見いだされるの マトグラフィの基本原理は,20世紀初頭に考案され,その で,定量性にも優れた分析方法である.次節にガスクロマ 後約100年間に著しい進歩が見られ,現在この分離分析技 トグラフィの理論的説明と実施例を説明し,さらに最近の 術は,工学,化学,生物学,生理学等の広い分野で利用さ トピックスを紹介する. れ,特に重要な貢献に対して田中耕一氏も含めてノーベル 6. 1. 2 ガスクロマトグラフィの理論と実施例 賞がこれまで3回与えられてきた.クロマトグラフィは, H-D-T の分離分析は,実験室規模で現在行われている. 分離対象気体や液体と固体吸着剤間の相互作用の違いを利 本説では,77 K ゼオライト吸着材を使った低温ガスクロマ 用してバッチ式で成分を分離するものである [1, 2].被分 トグラフィによる水素同位体間分離分析と,常温付近のPd 離試料の供給方法の違いにより溶離,置換,先端(破過)ク や Pd 合金粒子による水素同位体分離分析例を紹介する. ロマトグラフィの方法があり [3],水素同位体分離分析に 吸着作用を利用するが,多くの吸着ガス濃度 # (mol/ $ は,吸着剤を使ったガス相分離が主な利用形態である.本 cm3)と吸着剤上の吸着質濃度 %$ (mol/cm3)間に,低濃度 章では特に用途の多い溶離ガスクロマトグラフィに的を絞 (Henry 則)がある.溶 領域において %$"!$!## $の線形関係 る.気体供給系,分離カラム,測定器の三つからなる小型 離ガスクロマトグラフィでは,決められた体積のガス混合 装置を使って,異相間の吸着力や化学作用の違いを簡単な 物をパルス的に供給し,吸着剤と相互作用しない不活性ガ 操作で巧みに重畳させ,化学作用の違いを成分分離に効果 スキャリアで押し流し,各成分に分離する.不活性ガス流 的に導く.操作は,適当な吸着剤を充填した塔入口に,数 量を '(cm3/s) ,吸着剤カラム体積を "(cm3)とすると, cc の試料ガスを注入し,その後不活性ガスキャリアで押し カラム出口に現れる各吸着質の平均滞留時間 & $は一般的に 流す.吸着や吸収の化学作用には,同位体効果が含まれる # % & '!"! $"で表せる.式中の偏微分に Henry 吸着則 $""! # # $ " を代入すると & の一定値を得る.吸着係数 $" '# "!!$!#$ ので,同位体分離が可能である.測定器には熱伝導型検出 器(TCD)や水素イオン検出器(FID)を使う.その他質 量分析器(MS)を使う GC/MS も最近よく用いられる.FID は高感度であるが,水素ガス検出には適さない.H2‐D2検 !$!# は通常1に比べて十分に大きいので,二成分の流出時 出には TCD がよく使われ,T2分析には比例計数管の感度 間の比は吸着係数の比(分離係数)になり,この値が大き 6. The Way to Know Tritium Transfer Process in Gaseous and Liquid Phases FUKADA Satoshi, HATANO Yuji and HARA Masanori authors’ e-mail: [email protected], [email protected], [email protected] 31 !2009 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.1 January 2009 いほど分離が速やかに進行する.吸着質と吸着剤との間に 3(b)に表す[3, 10, 11].平衡関係が非線形なため,図2と は,吸着速度,充填層の混合拡散,水素同位体交換等が作 は違って左右非対称なクロマトグラムになるが,実験と計 用して,パルス的に供給したガスが吸着剤内を進行すると 算との間に比較的良好な一致が見られる.核融合炉からの ともに充填層内を広がる.流出ガスピークの広がりを標準 排ガス処理を目的にした H-D-T の完全分離には,置換クロ 偏差 (#(cm2)でまとめ,(#を充填層高さ %で割った値を マトグラフィが有効であり,JET の D-T 実験後の排ガスの 一理論段高さ(height equivalent to a theoretical plate)HETP 精製に使用された[12]. ("(#" * の形にまと %)と定義すると,HETP"!!"*!#" 6. 1. 3 水素同位体水分離への適用と今後の展開 水系(H2O-HTO-T2O)で水素同位体分離を行う研究も過 めることができる[3].この HETP を物理的に説明すると, 去より何例か行われ,例えば,ゼオライト吸着剤を使うと 例えば,重水素が気相から気固界面を通して固体内に拡散 輸送される際の全体の物質輸送速度を,充填層からの流出 常温で 1.1‐1.3 程度の H-T 同位体分離係数が得られている ガスの広がりで表したもので,HETP が小さいほど物質輸 [13].最近 Iwai らは,分離係数,吸着係数の同位体間の違 いを増加させるため,ゼオライト吸着剤の SiO2/Al2O3比 送速度が速いことを示している. 図1はPd粒子層にH2+D2混合ガスを注入し,H2‐D2の分 を2‐10の範囲で変え,H2O-HTO 間の分離に NaY10吸着剤 離を HETP で整理し,実験値と計算値の流量と温度依存性 がよい性能を示すことを示した[14]. を比較したものである.各項と吸着速度,混合拡散係数, 分離の効率化の観点から見れば,同位体間の吸着係数比 同位体交換率との関係は,理論的に求められており,流量 が最も大きな吸着剤を選び,HETP が最少になるように流 と温度依存性とも実験と計算はよく一致している[4 ‐9]. 量を設定するのが最適条件である.最近,HETP を小さく 従って分離係数が大きい吸着剤を使用し,HETP を最小に するようなマイクロガスクロマトグラフィやキャピラリー する様に流量を設定するとよい分離分析が可能となる.図 ガスクロマトグラフィ装置が販売されている.いずれもご 2は6成分(H2,HD,D2,HT,DT,T2)水素同位体混合 く細いカラムを使い,吸着剤量をできるだけ減らし,サン 物を77K の MS‐5A で分離した結果である.H2については プル量を少なくし,バックフラッシュ機能を備えつけ,分 o-H2と p-H2の核スピン異性体まで分離できており,うまく 析カラムが常に正常な形に保持される機能がついた小型卓 条件が整えば,水素同位体混合物をすべて一括して分離可 上型の装置が販売されている.今後トリチウム分離分析に 能である. 利用されることが期待され,核融合工学分野への寄与も増 えると考えられる. Pd は常温でH-D同位体分離係数が2程度にもなり,水素 同位体分離に適した金属であるが,水素同位体と Pd 間の "! $ 単成分平衡関係は低濃度で Sieverts 則('&"$&!%& )に従 & 6. 2 #線強度測定法 い,非線形クロマトグラフィになる [2, 3].したがって,ク 6. 2. 1 電離箱 ロマトグラフ流出時間 ) &も濃度により変化する.多成分水 トリチウムから放出される #線による電離電流を測定す 素ガスの溶解平衡関係を理想溶液モデルで表し,6成分水 る方法の代表例として,電離箱[15]について述べる.この 素同位体分離も計算されている[10].Pd等の水素吸蔵金属 方法では,数百ボルトまでの電圧を印加した電極を有する を充填したカラム内では H2+D2=2HD 等の同位体平衡が 測定空間内にトリチウムを含むガスを直接導入し,電極に 生じるので,図2のような6成分の完全分離は難しい.H2 +HD+D2三成分分離実験と計算結果の比較を図3(a),図 図1 HETP と流速あるいは温度との関係[9] . 図2 32 水素同位体混合物のクロマトグラフィ分離[3] . Special Topic Article 6. The Way to Know Tritium Transfer Process in Gaseous and Liquid Phases S. Fukada et al. 図3(a) Pd 充填層の H2-HD-D2 混合物の流出クロマトグラフィ の数値計算(横軸は,無次元時間,縦軸は無次元濃度) [1 0] . 図4 一定量のトリチウムを含むアルゴンガスを電離箱で測定し た場合の電離電流値と全圧の関係. より変化する.また,イオン対生成に必要な平均エネル ギー(W 値)はガス種に依存するため,雰囲気ガスで感度 が異なる.つまり,電離箱によりトリチウム濃度の絶対値 を知るためには,測定条件が変わるごとにキャリブレー ションを行う必要がある. インラインモニタとして使用する際には,電離箱内のガ ス流路についても工夫する必要がある.図5は6. 1で示し たガスクロマトグラフ法による水素同位体分離装置の下流 に電離箱を設置し,いわゆるラジオガスクロとして用いた 場合の結果である.(a)は TCD 検出器の出力であり,各水 素同位体分子に対応するピークが現れている. (b)は電離 箱を(c) に示すように配管に垂直に取りつけた場合であ る.トリチウム含有分子に対応する“山”は見られるもの 図3(b) Pd-Pt 充填層の H2-HD-D2 の流出クロマトグラフィの実 験曲線. の,時間分解能が低いためピークが分離されておらず,試 料ガスが電離箱内に滞留していることがわかる.そこで, 流れる電離電流を測定する.電離箱は大気圧で動作可能で (f) のように電離箱内で一定方向へガスの流れができるよ あり,検出感度も良好なため作業環境中のトリチウム濃度 う流路を工夫したところ, (d)のような明確に分離した 測定に広く用いられている.また,トリチウムプラント内 ピークが得られた. のインラインモニタとしても使用される.ただし,電離電 加えて,いわゆるメモリ効果についても注意する必要が 流はトリチウム濃度のみならず電離箱の容積にも依存する ある.トリチウムは容易に配管材料の表面に吸着し,内部 ので,一つの検出器を両方の目的に兼用できるわけではな へも溶解する.高濃度にトリチウムを含むガスを測定した い.作業環境モニタの場合には検出感度を高めるため測定 あとに低濃度ガスを測定すると,配管から脱離したトリチ 空間を大きくした方が有利であるのに対し,インラインモ ウムが混入し,トリチウム濃度を過大評価する危険性があ ニタとして高濃度トリチウムを測定する場合にはトリチウ る.特に,水蒸気状のトリチウムは材料表面に吸着しやす ムインベントリや時間分解能などの観点から極力体積を小 く厄介であるが,吸着 HTO と気相中の H2O の間で比較的 さくする必要がある[16, 17]. 容易に同位体交換が起こるので,H2O を含むガスでパージ 図4は一定分圧のトリチウムを Ar ガスと混合して電離 するとメモリ効果を軽減することができる[18]. 6. 2. 2 !線誘起 X 線計測法 箱へ導入した際の,全圧と電離電流の関係を示している. 全圧30kPa 以上の領域では出力は一定であるが,それ以下 本法は固体中のトリチウムを測定する方法として3. 3に の領域では電離電流値が圧力の低下とともに減少してい も紹介されているが,ここではガス測定へ応用する場合に る.これは !線が Ar に衝突する確率が減少するためであ ついて述べる.ガス状トリチウムを測定する場合には,低 る.このように,電離箱の指示値は共存するガスの圧力に 原子番号材料である Be を窓材として用い,トリチウムと 33 Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.1 January 2009 接する側の表面にごく薄い Au 層を成膜する.トリチウム 全圧が 1 kPa 以下であれば共存ガスの影響を受けず,出力 から放出された !線は Au 層に入射し,X 線を誘起する.こ がトリチウム分圧のみに依存する.すなわち,一度キャリ の X 線の強度を Be 窓越しに計測する.Au を用いるのは高 ブレーションを行えば,組成がわからない試料ガス中のト 原子番号であり X 線の放出率が高く,またトリチウムが吸 リチウム分圧を直ちに知ることができる.測定下限はトリ 着し難いためメモリ効果が小さいことによる.3. 3節では チウム分圧 10−2 Pa 程度である.電離箱の出力が全圧や共 X 線の検出に半導体検出器が用いられているが,この場合 存ガス種に敏感に依存し,測定条件毎にキャリブレーショ にはエネルギースペクトルは必要ないので,固体シンチ ンを必要とするのとは対照的である.図6はトリチウム分 レーションカウンター(NaI など)を用いる方が安価かつ簡 圧と検出器出力の関係を調べた例であるが,4桁に渡って 便である.さらに,半導体検出器に比べ大面積のカウン 直線関係が得られている[19].一方,1 kPa以上の圧力領域 ターを使用できる. ではガス中での !線の吸収が無視できなくなり,図7に示 !線誘起 X 線計測法では,電離ガスを必要としないため 図5 図6 すように検出器出力がトリチウム分圧に比例しなくなると 電離箱の時間応答性とガス流路の関係.各図の説明については,本文を参照のこと. ガス中のトリチウム濃度と !線誘起 X 線計測器のカウント 数の関係. 図7 34 !線誘起 X 線計測法における検出効率と全圧の関係. Special Topic Article 6. The Way to Know Tritium Transfer Process in Gaseous and Liquid Phases S. Fukada et al. ともに,共存ガスの影響を受けるようになる [19].また, な条件下においてトリチウム濃度を正確かつ迅速に測定で NaI は潮解性があり,経年劣化に注意する必要がある. きる手法の開発に向け,今後もさらなる努力が求められ る. 6. 3 質量分析法 全圧が10−3 Pa以下の領域におけるトリチウム測定には, 参考文献 質量分析計が広く用いられている.特に,小型で真空装置 [1]J.C. Giddings, Dynamics of chromatography (Marcel Dekker, 1965). [2]F. Helfferich, Multicomponent chromatography (Marcel Dekker, 1970). [3]深田 智:水素吸蔵合金による水素同位体の分離技術 (エヌティエス出版,2 0 0 0) . [4]S. Fukada, T. Nakahara and N. Mitsuishi, J. Nucl. Mater. 171, 399 (1990). [5]S. Fukada, T.Yamasaki, H.Matsuo et al., J. Nucl. Sci. Technol., 27, 642 (1990). [6]S. Fukada, H. Matsuo, T. Okunaga et al., J. Nucl. Mater. 195, 191 (1992). [7]S. Fukada and N. Mitsuishi, J. Nucl. Sci. Technol. 30, 171 への取りつけが容易な四重極型が利用される場合が多い. 上述の放射線を検出する方法ではトリチウム分圧のみが測 定されるのに対し,質量分析法では共存する非放射性ガス の分圧を同時に知ることができる.四重極質量分析計の測 定原理は一般の教科書に詳述されているので[20],ここで はトリチウム測定に特有の問題についてのみ触れる. トリチウムが単独で存在することはむしろ稀で,多くの 場合に軽水素や重水素と共存する.すなわち,マススペク ,HD トルには最大で H(M/e=1) ,H2および D(M/e=2) および "(M/e=3) ,D2お よ び HT(M/e=4) ,DT(M/ (M/e=6)の6つのピークが現れることになる. e=5),"! (1993). [8]S. Fukada, K. Fuchinoue and M. Nishikawa, J. Nucl. Sci. Technol., 32, 556 (1995). [9]S. Fukada, K. Fuchinoue and M. Nishikawa, J. Nucl. Mater. 226, 311 (1995). [1 0]S. Fukada, Separation Sci. Technol. 34, 2699 (1999). [1 1]K. Watanabe, M. Matsuyama and T. Kobayashi, Fusion Eng. Des., 39-40, 1001 (1998). [1 2]R. Laesser, A.C. Bell, N. Bainbridge et al., JET-P(98)76. [1 3]F. Ono and M. Nakazawa, J. Nucl. Sci. Technol. 17, 721 四重極質量分析計における各水素同位体ガス種の感度係数 などが文献[21]に報告されており,解析の参考となる.ま た,長期間保管されていたトリチウムガスを分析する際に は,娘核種である3He が共存するので注意が必要である. ヘリウムと水素同位体は高分解能の質量分析計であれば分 離して測定することができる.また,一部のトリチウムは, 例えば HTO(M/e=2 0)などの他の化学形に変化している 可能性もあるので,M/e=7 以上の領域も測定することが望 ましい. (1980). [1 4]Y. Iwai and T. Yamanishi, J. Nucl. Sci. Technol. 45, 532 二次電子増倍管を用いた質量分析計では,トリチウム吸 着によるノイズレベルの増大についても考慮する必要があ (2008). [1 5]G. F. Knoll:放射線計測ハンドブック(第3版) (日刊工 業新聞社,2 0 0 1)など. [1 6]M. Matsuyama and M. Hara, Fusion Sci. Technol. 54, 182 (2008). [1 7]M. Matsuyama and K. Watanabe, Fusion Eng. Des. 18, 91 (1991). [1 8]M. Nishikawa, T. Takeishi, Y. Matsumoto and I. Kumabe, Nucl. Instrum. Meth. Phys. Res. A278, 525 (1989). [1 9]M. Matsuyama, K. Watanabe and M. Yamazaki, Fusion Technol. 28, 1045 (1995). [2 0]堀越源一:真空技術(第3版) (東京大学出版会,1 9 9 4) など. [2 1]K. Watanabe, H. Miyake and M. Matsuyama, J. Vac. Sci. Technol. A 5, 237 (1987). [2 2]H. Miyake, K. Ichimura, M. Matsuyama, K. Ashida, K. Watanabe, S. Nakamura and T. Hayashi, Fusion Eng. Des. 10, 417 (1989). る[22].特に,水蒸気状のトリチウムは元素状に比べ吸着 しやすく,ノイズレベルの増大幅も大きい.先述のように 共存ガスの分圧を同時測定できるのが質量分析計の大きな 特長であるが,ノイズレベルの増大は微量不純物の測定を 困難にする.このようなニーズがある場合には,あらかじ め除染方法を検討しておく必要がある[22]. 6. 4 おわりに 気相中のトリチウム濃度測定については古くから研究が なされ,トリチウム濃度や全圧を考慮して適切に手法を選 択すれば高い信頼性を有する測定が可能である.しかし, 核融合炉システムで取り扱うトリチウムの濃度は 105 から 1017 Bq/m3 程度の1 2桁に渡って変化し,その化学形や共存 ガスも様々であり,現状では多くの計測器を複雑に組み合 わせて用いなければならない.また,キャリブレーション も煩雑である.広いダイナミックレンジを有し,かつ多様 35
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