ITERプラズマの 高ベータ化の新領域

ITERプラズマの
高ベータ化の新領域
小関隆久a)、小野靖b)、高瀬雄一b) 、杉原正芳a)
日本原子力研究所a) 、東京大学b)
謝辞:藤堂泰、矢木雅敏、岸本泰明、JT−60チームの方々
のご協力に感謝します。
日本物理学会年会、2004年3月30日、九州大学
ITER運転領域:高β化に向けた課題
複合的不安定性:α加熱主体、ブートストラップ電流主体の
プラズマでの安定性
規格化プラズマ圧力
6
5
4
3
装置限界
(JT -60U )
2
1
0
BT =1~2T
装置限界
(C -M od )
0
IT E R
定常運転
(Q >5)
BT =~ 4T
10
装置限界
(JE T )
20
保持時間(秒)
•
•
•
•抵抗性壁モードRWM
(βN>3)
•ディスラプション(ベータ限界、
密度限界、ロックモード、高
li等に起因)の評価、緩和、
予測
IT E R
誘導運転
(Q >10)
400
3000
アルフェン固有モード(α粒子による不安定性)
新古典テアリングモードNTM(低規格化小半径r*)
磁気リコネクション(高磁気レイノルズ数RM)
新領域は?
I. βαの増加
II. 磁気レイノルズ数の増加
III. ラーモア半径の減少
IV. 燃焼プラズマの複合的安定特性
I. 高βαによるα粒子挙動と不安定性
D + T -->3He(3.5MeV) + n
•
(α粒子)
βαの上昇による高エネル
ギー粒子による不安定化?
•
単一粒子挙動
– トロイダル磁場リップル損失
– 大軌道粒子損失
集団的粒子挙動
– Fishbone不安定性
– Sawtoothの安定化/不安定化
– アルフェン固有(TAE)モード不安定
性と粒子損失
– アルフェン乱流
TAEモード(波ー粒子相互作用)
1.2
シヤーアルフェン・ス
ペクトラム
1.0
m=1
0.8
 w 
  0.6
wA 
2
wA 
m=1
m=2
ギャップ
0.2
0.25
vA
2qR
アルフェン
固有モード
0.4 スペクトラム
0
0
0.50
r/a
0.75
3.0
Em2.0
1.0
m=2
00
1.00
波ー粒子の共鳴条件
・イオン速度 v||
w 
>磁力線方向の位相速度  
k || 
モードの励起
・反磁性ドリフト w*
>波のポロイダル方向
位相速度 (wA r/m)
逆ランダル減衰効果
TAEモード
m

w

w
*
A
 r

アルフェン固有関数
4.0
成長率
0.25
0.50
r/a
0.75
1.00
モード減衰
・イオンランダウ減衰
・連続スペクトラム減衰
・放射減衰

9  w
1  v  
   *  F A  D
wA 4  wA 2  v  wA
ITERプラズマTAE発生領域
[K.Shinohara, et al Nucl. Fusion 2001]
高エネルギー粒子による
TAEモード励起
• NBI加熱:接線入射、JT60負イオンNBI、~350keV
• ICRF加熱:歳差運動、
~数MeV、
• α加熱:等方的速度分布
3.5MeV
(ITERによるα加熱主体における
TAEモードの発生)
TFTR(DT実験)にて減衰効果を下げる
ことによりα加熱粒子によりTAEモード
を励起
ITERプラズマのTAEモード安定性
現在のトカマク(多くの場合低nモード、単一モード)
ITERでは(nはトロイダルモード数)
1)/の増加により不安定化:増による成長率増加、相対的
にバルクプラズマのランダウ減衰率の減少
2)低r:より高nモードが不安定。 FLRによる安定化(n ~
)
r
q2r
HINTコードによるTAEモードの線
形成長率(0=0.7%, ne0=1020m3, T =19.3keV,
/r0=39.1, i0
=5%)
[Gorelenkov, et al Nucl. Fusion 2003]
ITERでは、中間nモード(n~10~20)が、大きなポロイダルモー
ド数mが不安定(~ n x nq ~ 100-400)
周波数掃引現象
• JT-60UでのFrequency Chirping mode
(100-200ms) [Kusama et. al, Nucl. Fusion 1998]
• (有力候補RSAE)非単調増加q分布、大き
な粒子起動、トロイダル効果
• 平衡の変化(q分布の変化、電流拡散時
間)が、モード周波数の速く大きな変化を
起こす。
[Takehi et. al, IAEA conf. 2002]
DfRSAE=(vAmDq/2pRq2)
5
q =2.8
min
4
3
2
800
600
400
200
0
0
ITERでは、殆どの不安定アルフェンモード
は、高nモードであるり、平衡(q分布)の僅
かな変化が、
1)周波数の大きな変化や、
2)モード数の変化となる。
RSAE
RSAE
0.2 0.4 r0.6 0.8
アルフェン・カスケード現象となるか
1
流体的-運動論的(波-粒子)非線形現象
速い周波数掃引の観測
1〜5ms上下に10-20Hz変化
粒子(Vlasov)-MHDシミュレーション
[Y.Todo and T.Sato, Phys. Plasmas 1998]
0.3
0.3
1.1
ww
1.0
0.9
0.7
0.5
0.8
200
[K.Shinohara, et al. Nucl. Fusion. 2001]
•
高速イオン圧力が小さい場合
(0~0.8%)周波数が上下に分離
(上方へ~7kHz、下方へ~12kHz )
400 600
wAt
800
1.高速粒子によるアルフェン固有
モードの不安定化
2.固有モードのポテンシャル井戸
が粒子を捕捉、吐き出し
3.周波上昇と下降を発生
ITERにおけるアルフェンモード
• Multi time scaleの不安定性
– AE不安定時間(MHD不安定性時間)
– α粒子の捕捉と吐出し時間(捕捉粒子の周回時間)
– α粒子輸送時間
プラズマの空間勾配
• Multi modeの不安定性
外部制御システム
加熱・電流分布
– 多数の高nモード、モード間結
合
– 高と高nモードの不安定化に
よるアルフェン乱流の可能性
– アルフェンモードはプラズマの
燃焼を飽和させるか?
DT核燃焼
α粒子生成
(α粒子勾配の変化)
D 
ff
D MHD
カスケード現
象、乱流
高n,多数
TAEモード
( α粒子の吐出し、
再分配、損失)

新たな分布の形成
( 飽和、周期、減衰)
•流体的 - 運動論的非線形性
–高エネルギー粒子による固有モードの励起、固有モードに
よるポテンシャルでの粒子捕捉・吐出し
D orbit
波-粒子非線形現象
ポテンシャル井戸
のα粒子捕捉
D trans
II:磁気レイノルズ数の増加
 0LVA LTe3 2B
RM 
 12

n
• 太陽フレア
1012-1014
• ITERプラズマ
~1010
• 磁気再結合装置
~103
磁気リコネクションは?
• リコネクション速度(なぜ理論より高速?)
• リコネクションのエネルギ解放(イオン加
熱?)
V
Xポイント
u
u
シート電流
ITER
粒子の加速
磁力線の
つなぎかわり
磁気圧の上昇
太陽フレア
14m
磁気レイノルズ数: RM
V
磁気再結合装置TS-3
プラズマ合体を用いた磁気
リコネクション実験
(TS-3/4による合体実験)
0.3
Anomalous
resistivity
(<ri)
0.25
0.2
Bx
0.15
0.1
F
F
0.05
-1
0
1
2
large ri
3
4
5
6
BX/B//
Reconnection rate as a function of Bx
異常抵抗によるリコネクションの高速化
電流シート幅がイオン
ラーマ半径以下に圧縮
されると拡散が急増
× (t)[mm]
高速リコネクション
[/ri](t)
Bxが異なる合体プラズマのトロイダル電流
jx密度の分布と磁気面、イオンラーマ半径ri,
(c)電流シートの実効抵抗のシート幅/ri依存性
ITERで想定される低ρi領域(例えばm/n=1/1モード)
異常抵抗なしの電流シートを過大に圧縮
電流シート(プラズモイド)放出現象
Sheet
Anomalous
Ejection
resistivity
0.3
Sheet Ejection
(<ri)
0.25
0.2
B z Vr
0.15
0.1
0.05
-1
0
1
2
3
large ri
4
5
6
BX/B//
Reconnection rate as a function of Bx
Ejection
Bz
>> riのMHD領域
ITERでの磁気リコネクション実験は?
• バルクプラズマと電流シートプラズマの磁気レイノルズ数の差が大:電流
シートの磁気レイノルズ数の効果の明確化。
• 異常抵抗に代わる速い磁気リコネクション機構解明の可能性。
イオンのダイ
ナミックス
電子慣性項、電子圧縮性
無衝突再結合過程
+
JxB
nee
ホール効果
Sp=5x104
5T
電 104
ITER
子
3
温 10
電子慣性主要
度 102 (r >  )
s
e
1
e 10
V 100 19
10
圧縮性主要
(rs > e )
e / rs =1.75
e / rs =5
1020
電子密度 m-3
1021
エ
ネ
ル
ギ
I
⌒
3
/
1
⌒
105
Sp=1x105
Sp=2x105
Sp=3.3x105
磁気エネルギー
KE
運動エネルギー
[Y.Ishii, et al. Phys.Rev. Lett.2002]
時間/ポロイダルアルベン時間
III:規格化ラーモア半径の減少
•
•
•
•
新古典テアリングモード(NTM)。
磁気島内でのブートストラップ電流の減少が磁気島を成長。
モードの発生には種磁気島が必要。
スケーリング則:N ∝ r*、r* の小さいITERでは、低N で不安定
化?ITERでのNTMの発生が大きな課題
L
w
d w  
 R   Dwrs  CBSrs s p q 2
2
dt rs 
s L p w  wd
ブートストラップ電流減少効果



wd   
//

1/4
磁気島内輸送効果
新古典テアリングモードの安定化
• NTMの成長:磁気島内のブートストラップ電流の減少
• NTMの安定化:磁気島内への電流駆動、ECCDによる局所電流駆動
• ITERでの安定化に必要なパワー:<30MW [N.Hayashi, Nucl. Fusion 2004]
ITERでは実時間制
御による安定化
[A.Isayama, Nucl. Fusion 2002]
新古典テアリングモードの発生機構
• 多くの装置で発生Nはρ* にほぼ比例。ITERでは低Nで発生。
モード発生のρ*スケーリングは正しいか?
JET [IAEA, Yokohama 1998]
DIII-D [Lahaye 2000]
ASDEX [Lahaye 2000]
JT-60 [IAEA, Sorrento 2000]
ν*依存性が装置間で異なる。複数装置データからスケーリングは困難。
NTMの発生の機構や未知物理パラメータの発掘が必要
ラザフォード方程式の精密化
• 磁場に垂直方向の異常粘性による安定化効果
の可能性
• イオンの反磁性方向の回転
• 垂直方向の粘性による安定化
効果は温度により増加
[S.Konovalov, JPS 2003]
ラザフォード方程式を越えた議論
4場簡約MHDモデル
• 線形解析:イオンの新古典粘性、電子とイオンの反磁
性ドリフトによるNTM安定化効果
[A.Furuya, M.Yagi, et al., JPSJ 72,313, 2003]
• 非線形解析:NTMが高ベータ乱流によって非線形的に
励起され る可能性。高nから低nモードへのカスケー
ド現象
確率論的な励起理論
[S.-I.Itoh, K.Itoh, M.Yagi, Plasma Phys. Contr. Fusion 2004]
• 線形安定なNTMが、微視的乱流ノイズにより 確率論的
に亜臨界励起
IV:燃焼プラズマの複合的安定特性
α加熱主体、ブートストラップ電流主体のプラズマでの安定性
fext=50% (Q=5)
f=50% (Q=5)
外部制御システム
・加熱分布
・電流分布
・運動量分布
核燃焼
内部熱源
プラズマの空間勾配
(圧力勾配の変化)
P
r
Sawtooth NTM ELM
電場・回転の
自己生成
電流の自己生成
D 
ff
*
磁場の構造
新平衡磁場の形成
マクロスケール
理想・非理想
MHD揺動
AEモード
流れ・回転の構造
Self-organization
波数空間における
緩和・カスケード現象
ミクロスケール
静電的・電磁的 揺動
N
新たな分布の自己形成
r*
Kink-Ballooning/RWM
•安定性改善からは平坦
圧力分布,ピーク電流
•しかし、ブートストラップ
電流は平坦分布、
• α加熱はピーク分布
自律性プラズマの理解
電流ホールプラズマの安定性
自律性の高いプラズマでの安定性?
電流ホールプラズマ輸送シミュレーション
実験結果を良く再現
Ti, Te [keV]
j [MA/m2]
電流分布形成
1.2 E36639, 5.40 s
1
0.8
0.6 cu rrent
0.4 hole
0.2
0
0 0.2 0.4 0.6 0.8
10
ITB
8
Ti
6
Te
4
(a)
0
0.2
0.4
r/a
0.6
0.8
(b)
1
•
2
0
電場分布形成
1
•
磁気シア反転付近での内部輸送障壁
形成による局所的ブートストラップ電
流、負の電場の形成
自律的な分布形成、巨視的不安定性
なし
自律性の高いプラズマの安定性
• β限界:低nの理想MHD安定性
• 圧力、電流分布の制御による高β
プラズマ達成の可能性
• 分布に敏感
1.0
120
p-profile
0.6
100
q-profile
A,B
0.4
A
B
C
80
60
40
0.2
0
0
C
0.2
0.4
q
P0/Pmax
0.8
β限界の向上
20
0.6
0.8
1.0
0
r/a
ITERでは
• さらにα加熱主体(圧力分布)
• 安定解が存在するか?制御性はどうか? 輸送、MHD、等々を含めた総合的解析
• アトラクター、リミットサイクル?
統合コード、研究グリット
まとめ
I. 高βαによる多数の高nモード不安定性:
– 核融合燃焼の飽和、高速イオンの損失、カスケード、臨界安定
性、アルフェン乱流
II.高磁気レイノルズ数プラズマ:実験室プラズマで、太
陽プラズマに迫るデータの取得が可能。
– 電流シートの磁気レイノルズ数の効果の明確化。
– 異常抵抗に代わる速い磁気リコネクション機構の発見の可能性。
III:規格化ラーモア半径の減少:
– ITERでのNTMの発生が大きな課題、Multi fieldMHDシミュレー
ション、確率論的アプローチ
IV:燃焼プラズマの複合的安定特性:
– α加熱主体、ブートストラップ電流主体の自律性の高いプラズ
マの安定性、総合的な安定性解析