斜入射軽イオンスパヅタリングの角度分布 山村泰道,滝口敬 (岡山理科大学理学部) 李 之 傑* 』(内蒙古民族師範学院〉 (1991年7月’11日受理) Angular Distributions ofSputtered Atoms at Oわ豆iq》e In鰐idence gf I。ow−Energy Light−lon YasumriYamamura,TakeshiTakiゆchiandZhijieLi* (R6ceivedJulゴ11,1991) Abstract The bombarding angle dependen¢e and the angular distributi6ns of the且ight」ion sphttering havebeeninvestlg漉dbythee・mpu伽si・uulationandthedirect−kngek一・utm晦1,wheretheNi 惚rget is bombarded by450eV and lkeV H.As a¢ompu重er simulation code we adopted the ACAT co4e.The㎜1血in琵ature of the liglht‘ion sputtering at oblique inciden(e is founJ to be d6scribed by the direct−knockrout診rocess. The interatomic po蘇}ntial is an impor訟nt fa¢ωr fbr the bo亘nbarding−angh dependence of the light−ion sputterinま ln the ea忌e of lkeV H+→Ni,the ’ACAT results of the bombarding−angle dependenee and.the angular distribution are in good 3g−entswithex圃ment餅Th“ex圃単en血lan酬ardistributi・ns・f450eV、H+一Niat 6blique incidehce(>800)cannot be∫explained by both the ACAT』simdlation and the direet− knock−out lnodel,and seems to be mu¢h influ“nced by the sur£ace『oughness. KeywordS l light−ion sputtering,bombarding−angle dependence angular distrbution of sputtere(l atom, direct−knock−out mode1)computer simulation, 軽イオンスパッタリング収量の入射角依存1生とスパッター原子の角度分布をモンテカルロシミュレーショ ン・コードACATと簡単なはじきだしモデルを用いて計算し,実験と比較検討した.軽イオンとしては軽水 素,標的物質としてはNiを選び,入射エネルギーとしては450eVと1k6Vを用いた. 0々のノσ勉αU勉∂6鴬めoゾ56勿π66,0勉yα窺α70(λ *Pεγ%zα%ω¢∫o‘ノ47εss’ノ勿%θ7Moπgolぎα.〈ろ07%zごzl〔乃2fびεzsづ砂,Phζys記s Z万ηプsづoη,028043,Chづ%α. 277 核融合研究 第66巻第3号 1991年9月 軽イオンが斜めに照射された場合のスパッタリング現象の主たる模相ははじきがしモデルで説明できる. スパッタリング収量の入射角依存【生については2体間ポテンシャルを適切に選べば実験を再現できる;すが わかった,直接はじきだしモデルによる角度分布は非常にはっきりした優先放出角を持ち,その理論値は 1keVの場合,シミュレーションの値,実験値とよい一致をみた.しかしながら,低エネルギーの450eVの 場合にはACATにタる角度分布も直接はじきだし過程に串る角度分布もともに実験よηはるかに大きい優先 放出角を持ち,実験では表面荒さの影響を強く受けている可能性がある. 1.はじめに プラズマ・壁相互作用(PWI)に関する種々の問題の中でも入射する軽イオンによる第一壁やダイバータ 板の物理スパッタリングによる損耗やスパッターされた不純物の炉心での蓄積等は,今日,核融合炉研究の 中心的課題の1つである,特にダイバータ板は熱応力を軽減させるため,磁力線に対して85。以上の角度を 持たしている場合がある,このことは軽イオンスパラタリング収量の入射角依存性のより正確な知見が要求 されることを意味している.また,不純物の炉心への混入という観点からみれば,スパッター原子のエネル ギー分布や角度分布の知見も必要≧なってくる, 軽イオンによるスパッタリングは中重イオンの場合と異なって入射イオンにより表面近傍に形成される衝 突カスケードによるのではなく,固体内部で反射された軽イオンが表面から出る時に表面近傍の標的原子を 叩きだすことによるL2).すなわち,軽イオンのスパッタリング収量は反射係数と反射イオンによる表面近 傍に付与された手ネルギ」に比例することになる3). スパッタリング収量の入射角依存性に関する理論は1969年Sigmundによって与えられた.すなわち, r(θ)/y’(0)ニcos一∫θ(∫士1∼2)4).,ッ方,山桓等は1983年,種々の実験データを解析し次の半実験式を提 案し参5)1す効わ・Y(θ)/玖θ)一X毛xp.[一1Σ(担)]・;こにX−1/c・sθ・スパッタリング1又量の入射 角依存牲に関する実験データは1959年のWehnerの実験6)以来多くの報告があるが軽水,重水イオンに関す るデータは1979年のBaゴa阜dB・hdanskyの論支7)が最初で,以降,核融合炉にお肪プラズマ・壁相互作 用という観点から主としてMaxPlank研究所(Garching)を中心に測定データが報告された8’9).最近, 甘aaSZ等によりグラファイトに関する軽イオンによるスパッタリング収量の入射角依存性の実験10)やRotk 等による低エネルギー(数百eV)軽イオンによるスパッタリング収量の入射角依存性の実験の報告がある11). 微分スパッタリング収量,すなわち,角度分布とエネルギー分布に関する理論的報告12・13),また,シ ミ亭レーションによる解析14−17),実験的報告は数多くあるが,軽イオンによるスパッター原子の角度分布 に関して言え1よやはり,Max P王ank研究所(Garching)を中心に測定データが報告されていぐ9’18’19). しかしながら,軽イオンによるスパッター原子のエネルギー分布に関してあまり報告例がない20’21). 本報告では軽イオンスパッタリング収量の入射角依存性とスパッター原子の角度分布をモンテカルロシ ミュレーション・コードACATと簡単なはじきだしモデルを用いて,計算し,実験と比較検討することによ 278 研究論文 斜入射軽イオンスパッタリングの角度分布 山村,滝口他 りそれらの量に及ぼす2体間ポテンシャルの影響について考察する.軽イオンとしては軽水素,標的物質と してはNiを,入射エネルギーとしては450eVと1keV選んだ. 2.直接はじきだし過程 軽イオンの入射角が小さいときは,軽イオンによるスパッタリングは中重イオンの場合と異なって入射イ オンにより表面近傍に形成される衝突カスケードによるのではなく,固体内部で反射された軽イオンが表面 から出る時に表面近傍の標的原子を叩きだすことによる.軽イオンを十分斜めから入射させた場合,入射軽 イオンと表面原子とのはじきだし過程が重要となる.はじきだし過程は図1に示すように大きく分けて直接 直接はじきだし過程 聞霊妻はじきだし遇程 (a》 (b) e e8 0 e ● ● β o B 3 δ 嫉△e匙 ^△e∼ 一 図1。斜入射軽イオンスパッタリングのはじきだし過程. 過程と間接過程があり・入射角轡さ1’に場合には問接はじきだし過程しか起こり斌大きい場合には直 接は時だし過程が主鮪る・また・問接はじ猷し過禾早には2種類の濁呈が考えられるが図におけ醐接 はじきだし過程(b)は確率的に低く無視できるであろう,−以後の議論においては間接はじぎだし過程と言え ば間接はじきだし過程(a).を意味することにする. 図1・における直接はじきだし過程は入射角θが約70。以上すれすれに照射した場合に重要な過程で,一 方,間接じきだし過程は.それにより小さい場合でも起こる.間接じきだし過程は直接はじきだし過程の変形 であって表面近傍の他の原子1;より入射イオンが散乱された衝はじきだし過程により原子がスパッターさ れる22・23). まず,理論的に取り扱いやすい直接ばじきだし過程によるスパッタリングを考える.スパッター原子の飛 び出す条件として面に対して垂直な表面ポテンシャルを仮定すると直接はじきだし過程により反跳原子が飛 び出すことが出きるたあには反跳角δは次の条件を満足しなければならない. C・S2δC。S2(θ+δ)≧92 (1) 279 核融合研究 第66巻第3号 1991年9月’ ここ1と,4=(佐/γE)1/2で,Eは入射エネルギー,佐は表面結合エネルギーで』また,1γは 4〃1焔 一(2) γ= (〃i+妬)2 (2)式における払,碗は入射イオンと標的原子の質量数である.(1)方程式の解とじて δ1≦δ≦δ2 (3) を得る22).ここに, π一θ一c・sて1(c・sθ+29) (4) δ1冠 2 π一θ+c。s−1(c・sθ+2σ〉 (5) δ2= 2、 gが†分小さいとδ1,δ2は簡単な表式で表 80 されるがここでは比較的低エネルギー軽イオ 70 ンを取り扱うため数値計算した結果を入射角 の関数として図2に示す.450eVH+→Niの ハ o o o 1000eV H6≦NI 60 o』 50 場合(g=0。385)には76.8。から直接1ヰじき u 40 だし過程が始まり,1keVH+→Niの場合(9 ゆ 30 450eV H。》NI δ 1 2 δ =O.259)には61.2。から直接はじきだし過 20 程が始まる. 10一 60 70 80 反跳角δは重心系の散乱角⑧とδ=(π一 Ang沁o奮匿ncロdence‘degree》 〇)/2の関係を通して散乱における衝突係数 図2.450eVH+→Niと1keVH+→Niにおいて 直接はじきだし過程が可能な反跳角δの 領域の入躬角依存性. ρに直接関係している.すなわち,散乱ポテ 90 ンシャルをべき乗近似を採用すると衝突係数 と反跳角δの間には 2…δ一(㌔号)伽 (6) ’280 斜入射軽イオンズパッタリングめ角度分希 研究論文 山村,滝口他 の関係が近似的に存在する.ここに,上式における吻は散乱ポテンシヤルのべき乗近似のべきである.し たがって,δ1,δ2に対応する衝突係数をρ1,地とすると次式を満足しなければならない. ク1<ρ<ク2<Rocosθ (7) ここ1こ・.鮮樗的φ平均格搾数である・ろ1{1ソ、タリン爆の不射角締断入身寸角に斌てプロツけ ると通常・θ・モ7ぴ∼8師傍にピrク・脅持つ・、その収早の最大値を与え、る謝隼暫・ptとす穂そ の角度はカ2=1∼oco$θに対膚して))る,,9グ十爾小さい時Oモは次のような簡単な表式で表され為.. ・評』☆焉. (3.) ここ1之おいオ,(6)1式め〃z=1,イ2を用いた1 次に,スパッ’タ賦原子あ飛び出す条件として面に対して垂直な表面ポテンシ㌔’ルを仮定しでと直接はじき だし過程による不パッタ、一原子の角度分布玖θ、)に?いて考察す為,1簡単奪計算め後,反跳角δと出射角 θ、の問には次の関係があることがわかる.すなわち, c。S2δsin2(θ+δ) sin2θ= (9) S C。S2δ一92 ここで,反跳角δが衝突係数ρの関数であることを考えれば,直接はじきだし過程によるスパッター原子 の角度分布玖θs)はイオンビームが一様であるので形式的に 吟断 (10) で与えられ,散乱に関してやはりべき乗を仮定すれば角度分布γ(θ、)は次式となる. sin2θS(c・s2δ一92)2tanl−n2δ y(θ、)㏄ (11) c。s3δsin(θ+δ){c。s3δc。s(θ+δ)一σ2c。s(θ+2δ)1 しだがって,直接はじきだし過程によるスパッター原子の角度分布の優先放出角θp,eは次の超越方程式の 281 核融合研究第66巻第3号 1991年9月 解として与えられた反跳角δmを(9)式に代入すればよい. {c・s3δmc・s(θ+δm)一92c・s(θ+2δm)1−0 (12) 図3は数値計算した優先放出角θp,eとδmを入射角の関数としてプロットしている、また, 図4には 90 1.2 /βpr9 80 1.0 O謝800 認 70 1000keV 1000eV 450eV ≡0・8 e冒700 ⇒ 60 》0.6 m 50 1−0.4 面 450eVH一》Nl 40 e旨800 居 《 匡 に 《0.2 1000eV H・》Ni 30 0.0 40 50 60 ’ 70 80 90 60 70 80 90 Ejeo量lon anglo(d●groe》 Angle of lnCldence{degree⊃ 図3.450eVH+→NiとlkeVH+帥Niにおける直 図4.450eVH+→Ni(θ=80。)と1keVH+→Ni 接はじきだし過程による優先放出角とそ れを与える反跳角δmの入鮒角依存性. (θ1=70。,80。)の場合の直接はじきだ し過程による角度分布. 図には450eVH+→Ni(θニ80。)と1000eVH+ (11)式を用いた角度分布玖θ、)の計算結果をしめしてある. 冨Ni(θ編70。とθ=80。)の場合についての結果を示した. この図からわかるように直接はじきだし過程に よるスパッター原子の角度分布は鋭いピークをもつ. 優先放出角θp,,に関する簡単な表式はgが小さい時限りδm∼δ2がいえるので θpre−sin−1〉一 (13) と言う近似表式を得る. 間接はじきだし過程は2個以上の表面原子が関与するが,図1においてA原子により∠θだけ入射角が傾 いてB原子に入射することに対応するので,およそ次の条件が成立すればB原子はスパッターされる. (14) ρ1(θ+刀θ)≦偽≦動(θ+∠θ) ここに,B原子に対する衝突係数♪Bは次式で与えられる。 ρB箕C・S(θ+∠θ)Ro一ρACOS∠θ (15) 282 研究論文 斜入射軽イオンスパッタリングの角度分布 山村, を竜ロ イ也 ゆえに間接はじきだし過程は直接はじきだし過程より小さい入射角で表面原子がスパッターされる機構であ り,∠θは0。から90。一θまで許されるので当然,間接はじきだし過程による角度分布r(θ、)は図4に示 される角度分布を重ね合わせた分布となり直接はじきだし過程の分布と比べて幅広くなることが予想される. 3.計算結果と議論 物理スパッタリングを計算機にてシミュレーションすることは多くの研究者によってなされてきたが,中 でもMax Plank研究所(Garching)のEcドstein等は実験グループとタイアップしてTRIMコードを用い て多くの研究成果を報告している24’25).しかしながら,θ’〉』70。の場合には,まだ,必ずしも良い一致を みない場合がある.本報告においては山村等によって開発されたACATコードを用いてシミュレーションを 行う.ACATコードは他のモンテカルロ・コードと異なって平均自由行程の概念を用いてなく,図5のよう に固定を一辺Roの単位立方格子に分け,その中に標的原子が無作為に分布していると仮定している,本 来,平均自由行程を定義しぬくい表面近傍のスパッタリング等の現象のシミュレーションに適していると期 待できる.ACATコードの詳細は既に他の論文に発表しているので本計算に必要な点だけを述べる. 本報告において用いたイオンは軽水素Hで,標的物質はNiであり,入射エネルギーは比較的低い450eV と1000eVを選んだ.水素原子の固体中での電子的エネルギー損失はZieglerのテーブルの半実験式と数値 を用いて評価した.2体間ポテンシャルとしては,WilsonのKr−Cポテンシャル,Moliereポテンシャル を採用しているが,遮蔽半径召の値としては通常に0.100Aを用いる.図6は垂直入射(θ=0。)の場合 のスパッタリング収量の入射エネルギー依存性をプロットしたものである.ポテンシャルとしてはKr−Cポ テンシャルを用いた.実験は旧プラ研グループにより提唱されさた半実験式の結果である.ACAT値は実験 と良い一致を示している.垂直入射の場合のスパッタリング収量のポテンシャル依存性は殆どない.すなわ ち,450eVH+に対しては玖Kr−C)篇0.011,r(Moliere)竃0.011である. 10’1 ・2 ^ 10 日・》闘1 φ o = o く 『ACAτ衰面 の E −3 ● ● ● ● ● ● ● ε ● ● ● ● ● ● ● ● 2 10 ● ● ● 〃 で 15 ・4 − 10 》 ● o 9 ● Empirk}al formula O + Kenknight&Wohner(1964》 O Roth et aL(1979》 ● ACAT ● 10。5 10 ● 1 102 103 104 105 Enorgy⊂eV》 図6.垂直入射の場合のH+→Niのスパッタ 図5.ACATコードにおける非晶系固体の シミュレーション. リング収量(atoms/ion)のエネルギー 依存性.ただし,ACATのポテンシャル はKr−C(α=・0.100A)である. 283 核融合研究第66巻第3号 1991年9月. .垂直入射の場合のスパッタリングは中重イオンの場合と異なって入射イオン!こより表面近傍に形成され為 衝突カスケードによるのではなく,図7のように固体内部で反射された軽イオンが表面かち出る時に表面近 傍の標的原子を叩き.だすこ.とによる。す奪わち,軽イオンのスパッタリ.ング収量は反射係数≧密桜な関係が ある.本報告では図7のような過程をランダム過程と呼ぼう.図7におけるdはスパッターを引き起こした 後方散乱イオンの最大侵入深さとして定義される量で,dに注目するとランダム過程か嫉じきガし過程によ るのかの識別がっく。 軽イオンスパヅタリング機構 311軽イオンスパッタリング収量の入射角依存 ● ,性 図8,9,10は4keV,,1keVシ450eVH+イオン 触 O をNiターゲットに照射.した場合の界パッタリ1 d ング収量の入射角依存性をプロットしたもので ある.図において1は実験ζACAT(Kr−C)による 0 計算結果を比較してある.ここに,遮蔽半径σ、 6《! ノ O の値は0.100Aであ,る.図における実線は次の・ 壷,. 半実験式を用いて実験値をベストフィットした,. 図7.軽イオンスパマタリングの機構の特徴図に おいてはdはスパッターを引き起こした後方 散乱イオンの最大侵入深さである. ものである.すなわち,・、 y(・θ)/y(0)一プe琴P、[一Σ(差1)] 、(16) 7 20 6 4keV H・》N懸 15 リャ ≧, O ACAT(K卜C》 ε4 o、騨聯ヲc》・,、 ^㌧10 91 Empi酷al formula(16) 5 Empirical formula(16》 ロ 1keV H■》M ヌ ≧ 翼・R・th・ta』119勘一 誕 Roth et al.(1979》 3 くつ 》・』 ・ヌ .O 2 5「 1 0 ・ 3q㌧、、60 90 0 0 30“ ’ 「『一 『60 90 Angle:o奮1りC塵de←ce僻9嘆》 み091e of、口ncl“ρn¢e ⊂deg『ee⊃ , 図8.4kevH+→Niσ)場合の実験看らびにAcA† 図9、撒eVH+」→Niの場合の実験ならびにACAT シミュレーション、(ドr7Cちα=0.100A)の規 格化されたスパッタリング収量y(θ)/y(o) シミュレーション(Kr−C,α=O.100A)の規 』の入射角依存性.図における実線は半実験 式(16)であり,各々のパラ・メターは表1を の入躬角依存性∫図にお一ける実線は半実験 式(16)であり,各々のパラメターは表1を 参照』 参照. 格化窃れたスパッタリング収量y(θ〉/y(0) 284 研究論文 斜入射軽イオ≧スパッタリ,ングρ角度分布 山村,妻竜ロ イ也 ここに,T=(1+。4sinθ)/cosθ,X=1/cos 4 θ.Tに含まれる.$inθ、の項ははじ.拳だし過’ 450◎V H一》、M 程の寄与,すなわち,ρノに対応している. それぞれ』の実験値に対する最適値は表1に示P oり 》・ してある』表1からわかるとおりエネルギー が増すにつれてはじきだし過程の寄与が大き O O 3 ,》へ Emplrk渇I formu口a(コ6》・, 0 0 ACAT(K卜C》 0 誕 Bohdansky(1982) 2 o》 O 1 くなっている. 図8,9,10を見て気付くことは4keV, 0 1keVについては実験値とACAT(Kr−q)の偉・ A論9暫e Of InC[denCe ⊂deg『ee》 の一致は満足べきものである。しかしながら, 図10.450eVH†→Niの場合の実験ならびにACAT 450eVについては実験値とACAT(KrrC)の シミュセーション(Kr−C,α=0.100A)の規 格化されたスパッタリング収量y(θ)/y(o〉 90 0 30 60 の入射角依存性.図に布ダる実線は半実験式 値の間には大きな差がある・導岬勿と・ ,(馨Φであり子各々のパラげターは表1を参照. とを指摘しなければならなレ1』ま菟貯” 近傍の玖θ)/玖0)値が実験値に比べて大き 1裏1.H+→Ni軽イオンスパッタリング いこと,また・ACATデータのθ。ptの値が 収量の入射角依存性の実験値に対 する半実験容式(16)の最適値 実験値に比べて大きい方にずれていることで・ Energy 450eV−1keV4やy ある・これら3つの図からいく?酋畦とカ1 A 0,0140,3140,459 f 1.571.531.50 Σ 0,4230,2580,167 考えられる.まず,1keV,4keVの場合に比 べて低エネルギーの450eVケースやすれすれ の入射角の場合には表面一層の原子との相互 作用が大きく,表面の粗さの影響を検討する『 4 必要がある・さら1もACATデ」塑961の 』、i450eV判・》M 値が実験値に比べて大きい方にずれているこ とは2体間ポテンシャルがKR−C(α=0。,10A)、 より遠距離まで及んでいる可能性がある. まず,2体間ポテンシャルのスパッタリン 3 −Em繭lf・r諭ula(16》 ●●● 翼 B・hdansky(1撃2》 PLε ミ12・ ヨ1 ● ACAT(獅lier?1》 ● .ロ ACAT(恥lier92》− ヌ 1 グ収量の入射角依存性に及ぼす影響を知るた ・めにMoliereポテンシャル、(α;0.100A)と 0 0 30 一 ・60 ・ 」go 』Moliereポテンシャルでも遷蔽定数を変えた Angle,oHnddeηce ldegre?》 場合,すなわち,グ0.116A・の結果を図11 図11.450eVH+→Niの場合の実験ならびにACAT に示した.図においてMoliere−1はαニ シミュレーション1(Mbliere)の規格化された スパッタリング収量y(θ)/y(0)の入射’角依 存性。図における実線は半実験式(16)であり, 0。100Aに対応し,Moliere−2はα=0.116A 各々のパラメーターは表1「を参照.. 285 一 核融合研究 第66巻第3号 1991年9月『 に対応している,MQlierer2と実験値とのr致はよ 表2.いろいろな2体間ポテンシャルに対する 450eVH+→Niのスパッタリング収量. い.なお,Mollere−2ポテンシャルの垂直入射の収 量はγ(Moliere−2)罵0.014である・(表2参照). 入射角 ポテン 0。 600 80。 シャル 3.2軽イオンによるスパッター原子の角度分布 ACATシミュレーションによる角度分布を入射角 Kr−C(α=0.100A) 0,010 0,024 0,037 Moliere(α=0.100A) 0,011 0,024 0,033 Mo聴ere(α=0.116A) 0,014 0,030 0,030 が0。,600,80。の場合について図12に示した. 圖 H→M ロロ 1Tv ↓ oo1 oo 300 ・3αo ・300 300 600 ・600 08 ・600 60。 goo goo ・goo 一goo 1 0.5 0 0.5 1 畏側 ・60。 1 0.5 0 0.5 1 oo oo ・300 300 300 600 ・600 goo ・goo ・goo 1 0.5 0 0.5 1 1 ● 600 の goo O.5 0 0.5 1 OO oo ・300 300 9300 300 −60。 600 ・600 ● 60。 80。 ● ⑲ \ ・goo 900 −goo goo 1 0、5 0 0、5 1 , 1 0.5 0 0.5 1 図12.450eVH+・→Niならびに1keVH+→Niの場合における実験の角度分布と ACATシミュレーション(Kr−C,α=0.100A)の角度分布の比較.入射角 として0。,600,80。を選んでいる. 軽イオンスパッタリングの機構から考えていくらエネルギーが低くても角度分布がunder−coslne分布を取 ることはない,図12において○は実験値であり,E=450eVの実験はBohdansky等のものであり,一方,E =1keVそれはRoth等の実験である.E翼450eVでθ=80。のケースを除いてACATシミュレーションと実 験値の一致はよい.θ=60。では,はじきだし過程によらないので分布は巾広い形である.E=450eVでθ =80。のケースは後に詳しく議論することにしよう. 角度分布へ与える2体問ポテンシャルの影響をみるために図13にKr−C(α=0.100A)とMoliere−2(σ= 286 研究論文 斜入射軽イオンスパッタリングの角度分布 山村,滝口他 0,116A)を用いてシミュレーションした結果を 450eVH一>Ni o Kr・C(a80.100A) θ=60。とθ=80。の場合について示した.表 一騨 Moliere(a壽o.116A) 2に示したようにスパッタリング収量は異なる が最大値を1一として規格化した分布はあまり変 わらない.特にθ薫80Qの場合に関しては同じ oo 300 。300 600 \ 0 600 一600 ように巾の狭い夢布をしている.これは直接は goo ・goo 1 0.80.60.40.2’0 0.20.40.60.8 1 じきだし過程の特徴であ.り,直接はじきだし過 程による角度分布はあまり2体間ポテンシャル oo 依存性がない.すなわち,図4の分布はポテン シャルに関係なく決まっている,しかしながら, E=450eVでθ=80。の場合,Kr℃(4=0.100 300 ・300 一600 800 60。 \ goo 一goo A)とMoliere−2(o=0.116A)による優先放出 1 .0.5 0 0。5 1 角は約70。であり,実験の約45。とかなり差が 図13.450eVH+→Ni(60。,80。)の場合におけるACAT シミュレーションの角度分布.Kr−C(α=0.100A) ある. とMoilere−2(α=0.116A)の比較. はじきだし過程の分布に対する寄与の割合を 知るために図7で定義されたスパッターを引き 450eV H一>Ni 起こした後方散乱イオンの最大侵入深さグをパ 〃・くdく25べ 〃・くdく蝋 戸・くdd・λ r・全収量 oo ラメーターとして分布を整理して図14,15に示 した.図14は450eVの場合であり,図15は1keV の場合である.図において0<4<2.5AはNi ・30。 36。 600 \ の平均定数Roが2.22Aであることを考えれば, ’600 600 はじきだし過程である.θ=60。の場合は理論 的にいっても間接はじきだし過程であり,θ= 。goo goo 1 0.5 0 0.5 1 80。は直接はじきだし過程であることが言える. 〃・くdく麟 E=450eVでθ=60。ではランダム過程がかな 脚・全収量 りの寄与をしており,とくに後方にスパッター oo ・300 される原子はランダム過程によることが明らか である.このことは図15のE=1keVでθ=60。 のケースではより顕著である. 図14は450eVでθ=80。の場合には表面一層 ・600 800 300 600 \ ・goo goo 1 0,5 0 0.5 1 でスパッタリングが起こっていること意味して 図14.450eVH+→Ni(θ=60。,800)の角度分布に おり,当然表面の状態に強く依存していること おけるはじきだし過程とランダム過程の寄与. ACATシミュレーション(Kr−C,α=0.100A)の 結果, 287 −. 核融合研究 第66巻第3号 1991年9月1 が予想される.表面に発達’し’だトポグラフィ,すなわ 署keVH一>Ni ち,表赫の粗さをシミュレーションに取り入れる方法は 〃・〈dく麟 グ・くdく瓢 いろいろ提案されてy’やが耀1鉱、一繭な取1扱いは ・〆・くdく1・λ }全収量 困難である・表即樫明度分御影響脚ま飢 隣の原子による緬効果鰯遡撒缶角がより小さ くなることが拠妬鯵騒が漢牛することも ’oo“』 ・300 300 60Q、 \ 600F ,1”60曳 考えられる.しかしながら,E=450eVでθ=80。の場 一goo 合に限って言えば,直接はじきだし過程の理論による優 90。、 1 10.5’ 0 O,5 1 先放出角(この理論には隣の原子による遮蔽効果は含ま ロ 0くdく2.5A れていない〉とシヤ屠シ拉磯先教出角幌全に 〃・くdく5試 〃 _全収量、 一致している,こ.と.か転隣ρ原子による葦蔽勘果によっ oo ・300 てよって実験とシミュレーシ『ヨンの分布が一致しないと は言え奪い』、 i60。 800 図12,13,14からもわかるようにシミュレーションの \ 300, 60F 一goo 、 goo 優先放出角は用いた2体間ポテンシャルに関係せず,ほ 11 0.5 0 0.5 1 ぼ,70。であり理論値72。、と良、く,r致している.間接は 図15、1keVH+→Ni(θ=60σ,800)の角度 じきだし過程による優先放出角は理論的に言って直接は 分布におけるはじき翠レ過程とランダ ム過程の寄与,ACATシ1ミュレーション (Kr−C,α=0.100A)の結果. じきだし過樗よる優先騨角より大きいはずである・ :【ON B2鋤 また,図12のE=4500Vでθ=800の場合の実験の分布 の特徴は分布の巾が比較的広いこと,』そして,後方にス 、\脳\ パッターされた原子がか誉り存在するごとであ為.この ことから・次あこ拷ぎられる1』入身撫よ8ぴでも表面 の粗さのため,1F図16に示すように実質的にはいろいろな .醸 角で表面を叩いている可能性がある.そこで,例えば, 図16.蓑面粗さの模式図. 図17に示すように入射角に秀布を持たすことよって,こ Rough su㎡ace (△1!△2》 こでは・粗さは(』峰)で特鯛ナている力俵面 の粗さをシミュレrシ「身ンするこ≧も可能である.その i一,一 △1 1△2 結果は図18に示頃.藁こ。尋・ポ門ンシ・ヤ)ヒはZ#一C(α ニo.100A)で』図に右、ける垣hd窃nsurfaceというのは 0 図17.表面粗さを考慮した入射イォンビーみの 「角度の広がり. 288 研究論文 斜入射軽イ、オンスパッタリングの角度分布・ 山村,滝口他 450eVH一>Ni 図5にあるACAT表面のことである.rough −ACAT(rand◎ms瞬ace)1 (40。/5。)は実験程,優先放出角は小ざく、ない 一 ACATイough(40。!50) が約1ぴACAT(rand・msurねce歴く奪つてい、r.『”』.』、』『7一「』gExpe「i嘩 るし,分布の巾も大きくなづている.訟お,E ・.・毎 伊’3伊 一45・eVでθ一8ぴの場合の収馴玖;and・血 、6び ・6び 800 0 surface)ニ0。037であり,γ[rough(40。/5。)] \・ o、 ニ0.026である. . ,、.、》 。go。 go優, f ・・5 σ α5 1 園18,表面粗さを考慮した島合の45・¢v甘+一Ni 4.まとめ 一 『 (6=8ぴ)の角度分布 イオンとしては軽水素,標的物質としてはNiを選び,軽イオンスパッタリング収量の入射角依存性とス パッター原子の角度分布をモンテカルロ・シミュレーションコードACATと簡単なはじきだしモデルを用い て計算し,実験と比較検討した.入射エネルギーとしては450eVと1keVを用いた. 軽イオンが斜めに照射された場合のスパッタリング現象の主たる様相ははじきだし過程で説明できる.は じきだし過程には直接過程と間接過程があり,入射角が小さいに場合には問接はじきだし過程しか起こりえ ず,大きい場合には直接はじきだし過程が主である.本報告でのイオンのエネルギーは比較的低いので数値 計算することにより,はじきだし過程による角度分布やその優先放出角を求めた. スパッタリング収量の入射角依存性については2体問ポテンシャルを適切に選べば実験を再現できること がわかった.直接はじきだしモデルによる角度分布は非常にはっきりした優先放出角を持ち,その理論値は 1keVの場合,シミュレーションの値,実験値とよい一致をみた.しかしながら,低エネルギーですれすれ 角で照射した場合はスパッタリングは表面第一層でしか起こっていなくて現実の角度分布は表面荒さに強く の影響されていることがわかった. 参 考 文 献 1) R.Weissmam and R.Behrisch:Rad.Eff.19(1973)69. 2) U.Littmark and S.Fedder:Nuc1.Instr.Meth.194(1982)607. 3) Y.Yamamura,N.Matsinami and N。Itoh:Rad。Eff.71(1983)65. 4) P.Sigmurld:Phys,Rev.184(1969)383。 Y.Yamamura,Y.Itikawa and N。Itoh:IPPJ−AM−26,Institute of Plasma Physics,Nagoya Univ.(1983). 5) 6) 7) 8) 9〉 G.K.Wehner:J.ApPL Phys.30(1959〉1762. 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B2 (1984) 606. W. Berres, D, Rusbuldt. E.Hintz and H.L. Bay : Appl. Phys. B35 (1984) 83. Y. Yamamura, Nucl. Instr.' Meth. 230 (1984) 578. Y. Yamamura : Rad. Eff, 80 ,(1984) 193: 24) W. Eckstein and J= P. Bi Fs ck : 25) W, Eckstein : IPP-Report, No. 58. Garching (1986) . Y. Yamamura, d. M, ossner and'H. Ochsner : Rad. Eff. 105, (1987) 31. 21) 22 ) 26) ucl. Instr. lvlath, B7/8 (1984) 727. I 2eo
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