2008年7月 2008年7月 外務省国際協力局多国間協力課 外務省国際協力局多国間協力課 経緯 高村外務大臣政策演説 「国際保健協力と日本外交−沖縄から洞爺湖へ−」 (2007年11月25日) ダボス会議における 福田総理大臣特別講演 サミットで『保健・水・教育』に焦点をあてる旨表明 (2008年1月26日) ➩国際保健に関する行動指針策定を提唱 ✦G8保健専門家会合を設置。3回にわたり開催。 ✦同専門家会合のアウトリーチとしてH8(世界保健機関、 世界銀行、国連児童基金、国連人口基金、 国連合同エイズ計画、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、 世界予防接種イニシアチブ、ゲイツ財団) 、ノルウェー、 AUの見解聴取 ✦学界、NGOからも様々な形で見解を聴取 1 行動指針(全体構成) I. 序章 本報告は、G8の過去のコミットメントの実績表を添付。年次レビューを 通じて、フォローアップを実施。 II. 現状 III. 行動原則 1. 2000年九州・沖縄サミット後の変化:二国間協力の増加、世界基 金創設、民間財団・市民社会の活躍 2. 感染症における一定の前進、但し課題は残る 3. 母子保健では、深刻な遅れ(特に妊産婦、新生児)。栄養不足の問 題。 1. 過去のコミットメントの履行 2. 保健関連MDGsに対する包括的取組 3. 人間の安全保障の視点:個人とコミュニティの保護と能力強化 4. 長期的視点:研究開発の推進 5. 全員参加型アプローチ、援助協調 IV. 取るべき行動 1.保健システム強化 2.母子保健(妊産婦、新生児、小児の保健) 3.感染症(エイズ、結核、マラリア、ポリオ、顧みられない熱帯病(NTD)) 4.他分野との連携 5.資金 2 国際保健協力の概念図 行動指針(概念図) 21世紀にふさわしい国際協力の枠組み構築 (「人間の安全保障」の理念、全員参加型) 途上国 G8・先進国 ポリオ HIV/エイズ 結核 その他感染症 (NTD、麻疹など) 非感染症 マラリア 子供と女性に焦点をあてたアプローチ 母子保健 国連・ 国際機関 民間・NGO 保健システムの強化 新興ドナー コミュニティに根ざした保健医療活動の拡充 学界 保健医療従事者の人材育成 水・衛生 教育 ジェンダー インフラ 3 行動指針(保健システム強化) 人材育成 (参考)WHOアフリカ地域事務局の管轄下の国46 カ国中、2.3人を満たしていない国は37カ国。 (平均は約1.9/1000人と推定される。) モニタリング・評価 適切な保健政策策定に不可欠。 新興感染症・自然災害など への対応能力向上 【参考】WHO地域の保健従事者(医師・看護師・助産 師に加え、コミュニティ・ヘルス・ワーカーや保健行政 官を含めた総数)の人口1,000人当たりの平均人数 アフリカ − 2.3人 (注:上記※の2.3とは異なる。) ヨーロッパ ・・・18.9人 東地中海 ・・・4.0人 南北アメリカ ・・24.8人 東南アジア ・・・4.3人 西太平洋 ・・・5.8人 世界 ・・・9.3人 熟練助産者が立ち合う出産のカバレッジ 「1000人当たり2.3人※の保健従事者 (医師・看護師・助産師)が必要」とする WHOが示す基準値達成に向けて努力。 出産時に熟練助産者の介入を保障するために必要な 保健従事者の人口密度 必要最低のカバレッ ジ・レベル 推計閾値 下限(2.02) 上限(2.54) 人口1,000人に対する熟練助産者(医師・看護師・助産師) 出典:ワールド・ヘルス・レポート 2006 (WHO) (解説)麻疹などの予防接種や熟練助産者立ち会いによる 出産などの基本的医療ケアについて、基準値である80% 普及を達成するためには、 2.3/1000人の基準値を満 たす必要がある。 参考:日本の取組 今後5年間でアフリカで10万人の人材育成を行う。 (TICAD IVで表明) 4 行動指針(母子保健) 母子保健は深刻な遅れ ⇒特に妊産婦、新生児 はしか, 4% エイズ, 3% 傷害, 3% 新生児死亡 新生児死亡, 37% 乳幼児死亡 の主な原因 肺炎 下痢 その他 マラリア はしか 下痢, 17% 5歳未満の幼児死亡率(1,000人あたりの死亡数) ・サブサハラ・アフリカ:166人 ・先進国平均:9人 2005年推定で、主に予防可能な原因から、1,000万人の子どもが 5歳になる前に亡くなっている。 ●【妊産婦】 妊産婦死亡率(女性が生涯で妊娠・出産時の合併症で死亡するリスク) ・サブサハラ・アフリカ:16出産に1人 ・先進国:3,800出産に1人 毎年、主にサブサハラ・アフリカとアジアで、50万人の 女性が妊娠中または出産中に死亡。 (出典:2005年ユニセフ統計/2007年MDGsレポート) マラリア, 8% その他, 10% ●【乳幼児】 傷害 エイズ 肺炎, 19% 新生児:出生後、28日未満の乳児 乳幼児:5歳未満児 S ourc e: UNIC E F "P rogres s for C hildren: A W orld F it for C hildren S tatis tic al 保健関連ミレニアム開発目標 ✦目標 4:乳幼児死亡率の削減 1990年と比較して、5歳未満児の死亡率を2015年まで に3分の1に削減させる。 ✦目標 5: 妊産婦の健康改善 1990年と比較して妊産婦の死亡率を2015年までに4 の1に削減させる。 5 行動指針(母子保健) 妊娠前、妊娠時、出産時、 乳幼児を通じた時間的・ 空間的に切れ間ないサービス (continuum of care)の提供が 重要。(熟練助産者のアクセス 拡大、地域の実情に応じた母 子健康手帳制度など)。 栄養対策 ✦生後24カ月以内の栄養不 良改善が決定的に重要。 ✦食糧価格高騰のもたらす影 響にも要考慮。 参考:日本の取組 今後5年間で、40万人の子供の命を救う。 (TICAD IVで表明) 思春期及び 妊娠前 出産 妊娠 分娩後 妊産婦保健 継続ケア(時間的一貫性) 継続ケア(時間的一貫性) 出産時期 幼児期 小児期 出産後期 出典:パートナーシップ・フォー・マターナル・ニューボーン& チャイルド・ヘルスケア(PMNCH) 【ICPD+5の目標】 「世界的に、2010年までに85%、 2015年までに90%の出産が熟 練助産者の立合いの下、行われる べき」 【現状】 世界:68%、アフリカ:46.5% (WHO) 注:1994年の国際人口開発会議(ICPD)の 5年後の国連総会における会議) 継続ケア︵ 空間的一貫性︶ 継続ケアの提供 保健施設(1次∼ レファラル施設) コミュニティ 家庭 パレスチナにて、日本の援助にて配布された 母子健康手帳「生命のパスポート」を使用する 母子と医師。提供:JICA 6 行動指針(感染症:3大感染症) 2.5 エイズ 開発途上国のHIV感染率 HIV/エイズのまん延を2015年までに阻止し、その後 減少させる。 マラリアおよびその他の主要な疾病のまん延を2015 年までに阻止し、その後減少させる。 (サブサハラ・アフリカ以外) 8 1.8 6 1.0 4 0.5 2 1990 1995 2002 大人(15−49歳)のHIV感染率(%) 2.0 エイズによる年間死亡者数(百万人) 保健関連ミレニアム開発目標 ✦目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他 の疾病の蔓延防止 10 サブサハラ・アフリカにおけるHIV感染率 ✦ユニバーサル・アクセス達成に向けた 取組強化の重要性。 ✦予防対策(特に母子感染)、ジェンダー 配慮、社会的ケア(HIV陽性者の 移動制限の扱いなど)。 サブサハラ・アフリカにおける年間エイズ死亡者数 2006 出典:2007年MDGsレポート 7 行動指針(感染症:3大感染症) 結核 ✦「ストップ結核世界計画2006-20 15」(2015年までに結核による死 亡率と有病率を1990年比で半減 させる)。 ✦DOTS(直接服薬確認療法)は保 健システム強化にも寄与。 ✦多剤耐性結核(MDR-TB)、超多剤 耐性結核(XDR-TB)や結核・エイズ の重複感染対策の重要性。 世界基金実績(2008年7月現在) ・プロジェクト承認額: 108億ドル (136カ国, 527プロジェクト) ・プロジェクトに対する支出額: 54億ドル (136カ国, 508プロジェクト) 成果 ・これまで250万人の命を救済 ・1日約3,000人以上の命を救済 参考:日本の取組 ・2005年2月、マラリア予防対策としての蚊帳をア フリカで 1,000万張配布することを誓約。2007 年末までに実施決定済。 ・世界基金への新規拠出表明5.6億ドル(2008 5月) ・NGOとの連携。国際結核シンポジウムの開催 (2008年7月24日−25日予定)。 マラリア 蚊帳、室内残留性散布、 早期診断、治療など による取組が重要。 提供:UNICEF 8 行動指針(感染症:ポリオ) ポリオ発生は歴史上最も 地理的に限定された状況。 野生株は4カ国に限定: ナイジェリア、アフガニスタン、 インド、パキスタン。 ⇒根絶(eradication)に 向けた取組が重要。 ✦発生国自身のコミットメント ✦ドナー国による支援 出典:グローバル・ポリオ・イラディケーション・イニシアティブ (GPEI) 参考:日本の取組 野生株国を中心として、ユニセフなどを通じたポリオ・ ワクチン投与のための支援を実施。 9 行動指針(感染症:NTD) 「顧みられない熱帯病」(NTD: Neglected Tropical Diseases) の統制または制圧に向けた 取組 ✦研究 ✦診断治療 ✦予防のための啓発活動 ✦安全な水と衛生へのアクセス向上 参考:日本の取組 【国際寄生虫イニシアティブ(橋本イニシアティブ)】 ✦寄生虫対策の拠点作り ✦ワークショップや推進連絡会議の開催 【その他の寄生虫関連の我が国の協力】 ✦ギニア・ワーム撲滅支援 ✦シャーガス病対策支援 ✦フィラリア対策支援 WHOが取組の対象とするNTD 疾病名 河川失明症(Blinding trachoma) ブルリ潰瘍(Buruli ulcer) ◎ シャーガス病(Chagas disease) デング出血熱(Dengue) メジナ虫症/ギニアワーム (Dracunculiasis / guinea-worm disease) アフリカ・トリパノソーマ症/アフリカ睡眠病 (Human African trypanosomiasis/sleeping sickness) リーシュマニア症(Leishmaniases) リンパフィラリア症(Lymphatic filariasis/elephantiasis) ◎ ハンセン氏病(Leprosy) オンコセルカ症 (Onchocerciasis (river blindness)) ◎ 住血吸虫 (Schistosomiases) ◎ 土壌伝播性蠕虫症 (Soil-transmitted helminthiasis) 回虫、鞭虫(べんちゅう)、鉤虫(こうちゅう) の3種 コレラ (cholera) ◎ ヨーズ (Yaws) 注:◎は、2008年2月、ブッシュ米大統領がアフリカ訪問の際に発表し たイニシアティブ(MDA(集団投与)による対応)の対象になっているもの。 10 行動指針(他分野との連携) 保健と以下の分野は密接に関連。 統合的アプローチが重要。 ✦水・衛生 ✦教育 ✦ジェンダー ✦気候変動 ✦インフラ(道路・電力・ICT) ミレニアム開発目標(MDGs) 水アクセス分野の達成状況(2002年) ○全世界で10.7億人(17%)が安全な飲料水へのアクセスなし (うち97%が途上国)。 ○アクセス率の低い地域は、オセアニア(52%)、サブサハラ(58%)など。 ミレニアム開発目標 目標2:普遍的初等教育の達成 ・2015年までに世界中のすべての子どもが 男女の区別なく初等教育の全課程を修了できる ようにする。 目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位 向上 ・2005年までに初等・中等教育における男女格差 の解消を達成し、2015年までにすべての教育 レベルにおける男女格差を解消する。 目標7:環境の持続可能性の確保 ・2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生設備を 継続的に利用できない人々の割合を半減させる。 出典:WHO/UNICEF 【ミレニアム開発目標(MDGs)ー衛生分野の達成状況(2002年)】 ○全世界で26.2億人(42%)が基本的な衛生へのアクセスなし(うち97%が途上国)。 ○アクセス率の低い地域は、サブサハラ(36%)、南アジア(37%)、東アジア(45%) など。 ○地方部での改善が特に遅れており、2015年のMDGsの達成は困難とされる。 11 行動指針(他分野との連携) 教育の現状−小学校に行っていない子どもの数 参考:日本の取組 【アフリカの水開発】 −650万人に安全な飲料水を提供する ための給水施設整備 −給水分野の人材5千人の育成 −「水の防衛隊」の派遣 全体における未就学児童数は、7,200万人(うち3,300万人はサブサハラ・ アフリカ) 東アジア・大洋州 中・東欧 (人) (人) 3,000 5,000 4,000 2,500 2,000 1,430 1,500 1,078 893 1,008 1,000 4,952 3,412 3,412 3,000 男 女 男 女 2,000 1,000 0 500 1999年 【教育と人材育成】 −小学校1,000校、約5,500教室の 建設 −全世界で30万人の理数科教員能力向 上(うちアフリカで10万人) −地域住民の参画を通じた1万校の学校 運営能力向上(「みんなの学校」) (TICAD IVで表明) 4,572 1999年 2005年 中央アジア 中東 (人) 5,000 3,673 3,165 2,449 3,000 南アジア・西アジア (人) 5,000 4,555 4,000 2,000 (人) 50,000 40,000 4,000 男 女 1,000 3,000 男 女 2,000 1,000 235 255 183 198 30,000 20,000 1999年 2005年 サブサハラ・アフリカ 15,07617,698 男 女 10,000 0 1999年 2005年 中南米 40,000 19,93922,484 男 女 2005年 (人) 50,000 30,000 20,000 5,811 11,281 0 1999年 1999年 21,689 9,745 10,000 0 0 2005年 2005年 出典:EFA グローバル・モニタリング・レポート 2008 (UNESCO) (人) 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1,654 1,941 1999年 1,241 1,192 男 女 2005年 12
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