厚生委員会(pdf形式 40KB) - 足立区議会

地方都市行政調査 報告書
委員会
厚生委員会
調査日
10月28日(月)
委
員
調査場所
委員長
白石
正輝
委
員
鈴木けんいち
委
員
ただ
福岡県福岡市
副委員長
委
員
岡安
佐々木
たかし
委
員
浅子けい子
まさひこ
委
員
馬場
信男
太郎
調査項目
生活保護における課題の解決へ向けた取り組みについて
調査の目的
厚生行政に関する先進事例を調査・研究し、区民サービスの向上に資するため。
調査内容
1.医療費適正化への取組み(セカンドオピニオンの義務付けや接骨院通院対応な
ど)、医療扶助のジェネリック医薬品の使用のための対応・対策について
(1)市の取り組みについて
①頻回受診の是正指導
厚生労働省の通知により、適正受診指導の対象者は、同一傷病について、同一月
内に同一診療科目を15日以上、連続して3ヵ月以上受診している者を対象とし
て、嘱託医や主治医意見をふまえ、是正指導することとされている。
福岡市においては、平成24年度より独自基準を設けており,同一月内に1ヵ月
でも同一診療科目を15日以上受診した者を検討対象としている。
※平成25年度以降については、15日以上受診している月が2か月ある者を検討
対象。
②他法(更生医療)の活用
人工透析等で更生医療の活用可能な者に対して、自立支援医療の適用を指導する
取組みを行っている。
③向精神薬の重複処方
向精神薬の重複処方者に対して、ケースワーカーによる是正指導や医療機関に処
方調整依頼を行い、是正改善向けた取組みを行っている。
(2)接骨院通院対応について
施術給付(柔道整復、あんま・マッサージ、はりきゅう)の適正化の取組みにつ
いては,平成24年12月より専門業者(レセプト点検)による2次点検を実施し
ており、頻回受診や往療加算、家族受診といった項目で点検し、ケースワーカーが
作業フローに沿って被保護者に指導を行い適正な受診を勧めている。
(3)セカンドオピニオンの義務付けについて
厚生労働省より、社会・援護局関係主管課長会議(H25.3.11)において、
「長期にわたり医療扶助を受給している場合には、原則として定期的に他の医療機
関等の検診を受けることとする(セカンドオピニオンの活用)」旨の説明を受けた
が、その後正式な通知等はないため、現在のところセカンドオピニオンについては
取り組んでいない。
なお、平成25年8月1日の実施要領改正により、検診命令がより円滑に実施で
きるよう、検診を行う医師等の範囲を公的医療機関に限らず選定できるようになっ
ており、今後、厚生労働省より指示があり次第、積極的な活用を図っていく予定で
ある。
(4)ジェネリック医薬品の使用のための対応・対策について
福岡市においては、平成25年10月より「処方医が一般名処方を行っている場
合または銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない場合に、後発
医薬品を原則として使用して頂く」取組みを実施しており、生活保謹受給者全世帯
及び指定薬局・医療機関に対し、取組みに関するリーフレットを送付している。
この際、特段の理由なく先発医薬品を希望する場合は、ケースワーカーが当該生活
保護受給者に対して取組みの説明及び協力をお願いすることとしている。
2.すぐに就労につけない人への段階的な中間就労のような取組みについて
(傷病等のない稼働年齢層に対する、就労などの自立支援の方法や生活・姿勢に対
する指導及びその内容等)
離職期間が長かったり、経験不足や偏りがある、対人関係に不安があるなど、す
ぐに就労につけない人に対しては、簡易的な作業から一般就労へ向けた段階的な支
援「ステップアップ型支援」を実施している。
内容:ボランティアなどの体験的・簡易的・貢献的活動から開始し、本人の状況(意
欲・自信・体調等)に合わせて、徐々に活動を拡大(回数や内容)、最終的に一般
就労に結びつける。
例として、
(1)切手整理活動…使用済み切手の周囲(封筒部分)を切り取る作業。
(2)清掃…神社境内や公園、商店街などの滑掃を行う。早朝から実施することで、
生活のリズムを整える目的もある。
(3)他のボランティア…上記以外のボランティア活動で、終日あるいは半日程度
の参加となる。
(4)職場体験…協力企業等にて就労の体験を実施
実績:平成24年度 実施回数:221回、延べ参加者数:1,330人
ほか
主な質疑
委員長所見・
区政に活かせ
る点等
(問)生活保護行政に任期付短時間勤務職員を配置しているが、担当世帯数はどの
程度か。
(答)生活保護を担当している職員は、平成25年4月時点で、正規職員275人、
任期付短時間勤務職員54人、計329名。担当世帯数は、勤務時間と、区の
裁量による。(国の標準世帯数は80世帯だが、福岡市の場合は現状で約10
0世帯。短時間勤務職員においては約60世帯と見込む)戸籍調査、年金受給
等の専門の嘱託員を配置しており、業務軽減を図っている。
(問)不正受給については、どの程度把握しているか。また、対策強化について伺
う。
(答)生活保護法78条、届出が無く、いわゆる不正受給と呼ばれるものは、1,
521件、金額では約4億5,800万円である。
(平成24年度)
また、届出時に、生活保護受給者の義務の説明を徹底している。また、年金
受給者への指導等を行っている。
足立区の平成24年度普通会計決算では、扶助費901億円のうち、生活保護費
は462億円を占めた。これは、当区の特別区税収入を上回る額である。リーマン
ショック以降の生活保護者数や保護費の著しい伸びは、当区の財政に重くのしかか
っている。
福岡市での取組み事例として、年間で約500人が参加している清掃ボランティ
ア等の中間的就労があげられる。就労までの長期的な取組みが求められる中で、生
活保護から脱却するために、行政からの様々なメニュー提供が必要と感じた。また、
医師会・薬剤師会と連携し、ジェネリック医薬品の推進・啓発等を進めており、関
係団体との普段からの協力体制の構築も求められる。
最後に、生活保護行政に関する国への要望は、1自治体だけでなく、多くの自治
体が一緒になって行動していくことが重要と考える。
地方都市行政調査 報告書
委員会
厚生委員会
調査日
10月29日(火)
委
員
調査場所
委員長
白石
委
鈴木けんいち
員
正輝
熊本県
副委員長
委
員
岡安
佐々木
たかし
委
員
浅子けい子
まさひこ
委
員
ただ
太郎
調査項目
糖尿病対策について
調査の目的
厚生行政に関する先進事例を調査・研究し、区民サービスの向上に資するため。
調査内容
1.糖尿病の現状
1.1 調査結果
平成23年度県民・健康栄養調査結果では、40歳から74歳の4人に1人が糖
尿病予備群・有病者である。74歳以上の方に至っては、3人に1人が該当するの
ではというほど、数が増えている。
[予備群推計 106,000人 有病者推計 73,000人]
<平成22年度の特定健診の結果>
全国平均に比べ、空腹時血糖、HbA1cが男女とも高くなっている。
<平成22年度の特定健診の40歳代男女の抽出結果>
この年代についても、空腹時血糖やHbA1cが高いということで、職域との連
携を含め、若い世代へ働きかけなければならない。
<空腹時血糖(100mg/dl 以上)の結果> ※保健指導が必要な値
全年代で全国平均を上回る。
<HbA1cの結果>
全年代で保健指導が必要である。
<HbA1c(JDS値8.0%以上)>※合併症が出る値
全年代で全国平均より高い。40歳から既に合併症が出ている。放置すると重症
化、透析、失明になるのではと危惧される。
県では、人口透析患者が多い。新規で糖尿病になった方は約4割、これは全国的
に同じ傾向にあるが、早期発見、早期対応で重症化を防げるため、重症化予防に取
り組んでいる。
●健康づくりの意識調査の結果から
受診中断の方が多く、糖尿病は自覚症状がない場合が多い。
熊本県保険者協議会から提供されたデータでは、患者を階層に分け、保健指導対
象者を明確にしている。疾患治療が無く、HbA1c6.1以上の方は3,848
人いる。この方々をまず優先的に受診させなければならないということが分かっ
た。また、疾患治療中であっても、糖尿コントロールがうまくいかない方も多い。
これらのデータは、医師会等でも報告されている。病院に行っているにもかかわ
らず糖尿病が改善されないという現状から、医師会の中でも糖尿病に関する勉強会
が始まっている。
行政としては、関係機関に情報提供し、問題提起を進めているところである。
1.2 生活習慣の状況
<生活・運動習慣>
成人の日常生活における1日あたりの歩数は、男性7,260歩、女性6,33
1歩と、国が定める基準より少ない。運動状況も芳しくない。
<栄養・食生活>
栄養状況においても、3歳児の段階で偏食、少食が24.5%を占めていること
や、成人の野菜摂取量が少ない。
<肥満状況>
肥満傾向の子どもの割合は全国平均と比べ、男子は6∼12歳、女子は7歳及び
15歳を除く全ての年齢で上回っている。学校現場でも、生活習慣病対策は重要テ
ーマということで取り組んでいる。
夜食をとる人や早食いの人、満腹になるまで食べる人が、そうでない人より肥満
者の割合が高い傾向が見られる。データからも、満腹まで食べないことが大事とい
うことが分かる。
周知・啓発については、別添「県民の健康・食生活のすがた」を使って、県民の
方へお知らせしている。
2.各団体との連携(一部抜粋)
【糖尿病対策推進会議 連携医制度】
医療保険者・市町村・健診機関、地域のかかりつけ医、熊大病院などが連携し、
全ての糖尿病患者を発症初期から綿密に診療する体制を構築している。
その中で、この制度は、一般医家で研修会受講により糖尿病診療スキルアップし
た医師を、連携医として熊本県糖尿病対策推進会議が認定するものである。県の糖
尿病専門医84名だけで、何万人もの予備群患者を診療するのは難しい。地域のか
かりつけ医が糖尿病患者の窓口になることが期待される。
ゆうゆう
【DM熊友パス(糖尿病地域連携パス)
】
患者が病院、薬局、保健指導を受けるときのデータを1つにまとめたもの。(お
薬手帳の糖尿病版のイメージ)
現在、1,000事例ほど、パスを使っている。パスを使っている人は血糖コン
トロールがうまくいっている。普段から携行していれば、災害時でも適切な薬を処
方することができる。
3.今後の取組みの方向性
○糖尿病の発症予防・早期発見対策の推進
○糖尿病の保健医療連携体制の整備(関係機関のネットワーク化)による重症化・
合併症予防対策の推進
○糖尿病治療や療養指導に携わる人材の育成
ほか
主な質疑
(問)地域医療連携パスはどちらかと言えば医療者側のものが多いが、「DM熊友
パス」はお薬手帳のようなものという認識でいいか。
(答)はい。ビニールカバーが付いており、
「お薬手帳」や「診察券」もはさめる。
市町村では家庭訪問で受診相談を行っている。その際、医療連携パスの使い方
等を教えている。仮にかかりつけ医が変わっても、これまでの糖尿病治療の受
診状況や、医療連携パスと一緒にはさんである「お薬手帳」等で状態を確認で
きるため、その人に合った治療が行われる。医療費適正化への意味でも重要と
考える。
(問)ショック療法的な治療法についてはどうか。
(答)子ども向けDVD作成にあたり、ペットボトル症候群をどうするか。運動後
の喉が渇いたときに、麦茶ではなくスポーツドリンクやジュースを飲んでしま
う子どもが多い。体内に脂肪が付いてしまうことを、子どもたちに教えていか
なければいけない。
(問)若い方には、糖尿病は少し他人事のように聞こえてしまう。若年層への啓発
には、どのような方策が考えられるか。
(答)糖尿病については、子どもを持ってから考える方も多い。糖尿病対策は赤ち
ゃんがお腹の中にいるときから考えていかなければならない。県では早産が多
いため、歯科と産科が連携し、早産予防を行っている。低出生体重児は、将来
的に肥満傾向にある。
対策は1つだけではなく、様々な要素が絡み合っている。ラッピングした市
電はポピュレーション・アプローチになる一方、広報で糖尿病の怖さを伝える
ことも必要。教室で話をすることはもちろん、ブルーサークルメニューは、コ
ンビニでカロリー表示に気をつけてもらえるきっかけになるなど、食環境の整
備につながる。
(問)運動環境について、県民を巻き込んだイベント等は行っているか。
(答)熊本城マラソンがはじまった。ただ、健康に関心のある方と無い方の差は広
がっている。日常的な運動についても、糖尿病対策の市民公開講座で、体に負
担のかからない運動方法を理学療法士に伝えていただく。公開講座では中高年
の方が多いので、がむしゃらに運動するのではなく、準備運動、運動後の整理
運動、動けない方には座ってできる筋力アップなど、多様な運動方法を広めて
いく。
委員長所見・
区政に活かせ
る点等
当区の健康寿命は都民平均より約2歳短い。その一因となっている糖尿病対策
は、喫緊の課題である。
熊本県では、関係機関と協力し、塩分・カロリーを抑えたブルーサークルメニュ
ーを紹介している。家庭でも調理できるため効果的である。また、特に目を引いた
のが、市内を走る糖尿病啓発を全面にラッピングした市電である。市民だけでなく
熊本市を訪れる方の目に必ず触れるため、全力で糖尿病に取り組んでいる姿勢が伝
わる。
糖尿病は歯周病との関連も大きいことから、医科歯科の連携が進んでいる。特定
健診から医療機関へつないだ方については、治療中断者であっても行政側で把握す
ることができる。保健師が糖尿病患者を個別訪問する自治体もある。包括的に取り
組めるよう、それぞれがつながる体制、ネットワークの構築が重要と感じた。
また、健康づくりの重要性、糖尿病の危険性を学校等で伝えていく工夫も大事で
ある。家庭で気軽に実践できる取組みを今後も進める一方、関係団体との連携で、
積極的な事業展開が必要と感じた。
地方都市行政調査 報告書
委員会
厚生委員会
調査日
10月30日(水)
委
員
調査場所
委員長
白石
委
鈴木けんいち
員
正輝
熊本市
副委員長
委
員
岡安
佐々木
たかし
委
員
浅子けい子
まさひこ
委
員
ただ
太郎
調査項目
こころの健康センターについて
調査の目的
厚生行政に関する先進事例を調査・研究し、区民サービスの向上に資するため。
調査内容
1.遺族の方などへの支援
来所・電話相談で、自殺を考えている方や、遺族からの相談に応じている。
また、自死遺族グループミーティング(2ヶ月に1回)を行っている。ご遺族の
苦しみを共有する場の提供。遺族は、悩みを抱えて孤立してしまいがちだが、それ
を防ぐことを目的とする。
平成24年度の自死遺族へのケアについては、「自死遺族支援を考える講演会」
「自死遺族支援者ワークショップ」
(県精神保健福祉センターと共催)を開催した。
市だけでの開催では、自分の住む地域で知られたくないという方も多いため、遺族
の方は参加しにくい。よって、県全域を対象とし、遺族の方が参加しやすくした。
講演会の内容は、自死遺族と支援者向けの2部構成である。
2.市自殺対策連絡協議会の主な協議内容について
[平成24年度]
・内閣府自殺対策推進室の特設サイトを活用した情報提供や、全国統一相談電話
による相談事業へも新たに加入し相談に対応
・自殺対策連絡協議会に国立熊本医療センター医師も参加。自殺未遂者の状況等
についても意見交換協議を実施 など
3.相談者へのサポート体制について
全庁的な体制…こころの健康センターが中止となって包括相談会の実施や常時の
相談に対応。精神保健福祉室、各区役所保健子ども課で対応。また、
自殺対策連絡会により意見交換、情報共有を行っている。
関係団体…自殺対策連絡協議会で意見交換、情報共有。その他、NPO法人でんで
ん虫の会と連携。
※NPO法人 でんでん虫の会
・ひとり暮らしや孤立感を抱えている人々へのヒアリング
・講演、自殺予防フォーラムの実施など。
4.今後の取組み方針について
第2次健康くまもと21基本計画や熊本地域医療計画での目標数値
◆自殺者数の減少19.3(平成17年)→15.4(平成28年)
※自殺総合対策大綱に基づく数値
今後の検討課題として、若年層への対策。未遂者対策。
以下、政令市に照会した「若年層や自殺未遂者への対策」をまとめる。
<若年層>
・教職員等の若年層と関わる支援者等を対象とした研修会等の実施
・小学生へのストレスマネジメント教育の実施や大学生を対象とした講演会・ゲー
トキーパー養成研修等の実施
・web サービス等の若年層が目にしやすい普及媒体を活用したメンタルチェックシ
ステム等の導入
・啓発ポスターの大学等への掲示
<自殺未遂者対策>
・自殺企図者への対応状況調査等の実施
・医療機関関係者等を対象とした研修会等の実施
・カードやリーフレット等を活用した未遂者への情報提供
・警察からの情報提供や救急外来との連携を図った未遂者への個別相談等
ほか
主な質疑
(問)来所相談できない方がいる。また、電話相談については、精神障がいの方は
昼夜逆転の生活のため、電話しづらい部分があるがどうか。
(答)ご家族から電話相談を受ける機会が多い。家族を通じて、できるだけ本人と
話せるよう努めたい。深夜には、インターネットで「自殺」を検索する方が多
いため、今後、ネット相談を考えていきたい。
(問)こころの電話相談事業について、ボランティアの方が 10 時から 22 時まで電
話相談とあるが、どういった方が対応されているか。
(答)熊本県精神保健福祉協会の事業で、こころの均衡を失い精神的危機状況にあ
る方に対し、ボランティアカウンセラーによる電話相談を実施している。6ヶ
月ほどかけ精神保健関係の研修を受け、カウンセラーの養成を行う。取組みを
始めてから30年ほど経過している。
委員長所見・
区政に活かせ
る点等
本人はもちろん、ご遺族の方への心のケアも求められている。
当区においては、悩みを抱えた方を受け止めるゲートキーパーに加え、社会的に
孤立しない、孤立させない取組みも、引き続き拡充していく必要がある。
自死理由は多岐にわたる。家族など周囲の方からの連絡にも対応できるよう、事
業内容の広報、相談体制の充実が必要と感じた。