黄色高圧ナトリウムランプによるバレイショ大規模露地圃場のヤガ類被害

[成果情報名]黄色高圧ナトリウムランプによるバレイショ大規模露地圃場のヤガ類被害防止法
[要約]黄色高圧ナトリウムランプを1ha の大規模露地圃場両側周縁部に6灯設置すること
により、圃場内の大部分の箇所において照度を 2.5 ルクス以上に保つことができ、ヤガ類
によるバレイショの被害を低減できる。
[キーワード]黄色高圧ナトリウムランプ、大規模露地圃場、バレイショ、ジャガイモ、ヤガ
類
[担当]農林技術開発センター・環境研究部門・病害虫研究室
[代表連絡先]電話 0957-26-3330
[区分]総合・営農、いも類
[分類]普及
-------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい]
黄色灯利用によるヤガ類被害防止法は、トマトやカーネーションなどの施設野菜や花き
類の生産現場では普及しつつある。しかし、大規模露地野菜圃場においては、被害防止効
果が出る照度を得るためには、これまでの黄色蛍光灯等では圃場内に設置しなければなら
ず、これがトラクターによる耕うんなどの農作業に支障をきたすことから普及していない。
そこで、新たに開発された大出力の黄色高圧ナトリウムランプを用いることにより、圃
場内の照度を確保し、秋作バレイショ大規模露地圃場におけるヤガ類の被害低減技術を確
立する。
[成果の内容・特徴]
1.黄色高圧ナトリウムランプ(270W)を1ha(100m×100m)の大規模露地圃場の両側周
縁部に、35m間隔、高さ5m、内向き水平方向照射で3灯ずつ計6灯を配置すること
により、ヤガ類の活動低下に必要とされる光源方向に対する最大照度2.5ルクス以上を
圃場内の大部分の箇所において確保できる(図1、2)。
2.上記方法により、秋作バレイショにおいて、シロイチモジヨトウ等のヤガ類幼虫の発
生数およびそれらによる茎葉の被害を低減できる(図3、4)。
[成果の活用面・留意点]
1.本情報は、1区画が100m×100mの大区画露地圃場の試験による。また、黄色灯の照
射時間は、植付け7日前から11月下旬まで毎日、日没直前から日の出直後までである。
2.供試品種ニシユタカの生育への影響は達観では認められないが、ホウレンソウ、エダ
マメなど作物によっては生育異常や品質低下等を招くことがあるため、周辺作物に配
慮する。
3.本設置法に使用した照明器具は、(株)パナソニック電工製の総称:HID イエローガ
ード(灯具:YAH54165、ランプ:NH270F・L-4、安定器:3002HA-14G)である。
4.黄色灯1灯に係る経費は約 20~25 万円(設置工事費除く)で、電気代は 1 日 12 時間
点灯で、約 65 円/日である。ランプは、紫外線領域の波長がカットされており、コガ
ネムシ類などの昆虫の灯火(電球)への飛来は、黄色蛍光灯に比べて少ない。また、
黄色灯本体内にランプを取り付ける構造であり、ランプの寿命は 24,000 時間である
[具体的データ]
100m
照度測定地
10m 20m
黄色灯
0m
100m
5m
35m
0m 10m 20m 30m 40m 50m
図1黄色高圧ナトリウムランプ
(270W)使用の黄色灯
※高さ 5m、水平方向に設置
2.2
4.1
6.0
6.4
5.9
4.9
2.2
2.5
2.9
9.6
29.3
67.3
9.7
18.9
23.8
8.3
11.2
12.8
6.3
7.2
7.9
5.0
5.4
5.6
0m 10m 20m 30m 40m 50m
図 2
黄色灯の大区画効率的設置法による圃場内の
照度測定(lux)
※測定方法:地上2m の位置で測定器を光源に向
け、最大照度を求めた。
100
黄色灯区
無灯区
10
5
0
10/2
10/9
10/16
10/23
10/30
11/6
11/13
月/日
4
10茎当たり寄生虫数
黄色灯区
無灯区
2008年
80
60
40
20
0
2009年
3
被害茎率(%)
10茎当たり寄生虫数
20
15
0m 5m 10m 20m
拡大
2008年
2
黄色灯区
無灯区
1
2009年
図4 バレイショのヤガ類による被害茎率
2008年 調査日:10/31,調査数:180茎
2009年 調査日:10/30,調株数:120茎
0
10/1
10/8
10/15
10/22
月/日
10/29
11/5
11/12
図3 バレイショのヤガ類寄生虫数の推移
※発生種はシロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウ、オオタバコガ
[その他]
研究課題名:諫早湾干拓地における環境保全型大規模生産技術体系の構築
予算区分:国庫
研究期間:2007~2009 年度
研究担当者:高田裕司、寺本健、福吉賢三、松尾和敏、柏尾具俊(九州沖縄農研)