GCI Global View

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2012 年 9 月 18 日
【目次】
● 石炭産業について
P.1
● Global Markets
1.オーバービュー
P.5
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当 資 料 は、株 式 会 社 GCI アセット・マネジメントが情 報 提 供 を目 的として作 成 したもので、投 資 家 に対する投 資 勧 誘を目 的 とす
るものではありません。当 資 料 は、当 社 が信 頼 できると判 断 した情 報 データに基 づき作 成 しておりますが、その内 容 の完 全 性 、
正 確 性 について、当 社 が保 証 するものではありません。当 資 料 における見 解 は作 成 時 点 のものであり、今 後 予 告 なく変 更 される
場 合 があります。
巻頭レポート
石炭産業について
石炭産業は、近年の原子力発電に関する議論を背景とした火力発電のニーズや、
中国経済成長鈍化懸念、石炭の代替原料となりうる天然ガスについてなど何かと話題にの
ぼることが多い産業のうちの一つです。石炭は主に製鉄や火力発電に使用されることから
先進主要国・新興国含め各国の住宅建設需要動向や火力発電需要動向を把握する必要があ
ります。今回は、読者皆様のご参考までに、石炭産業の現状や見通し、そして石炭のメリ
ットと今後の課題についてまとめさせて頂きたいと思います。
・
石炭の使用用途
—
—
—
・
石炭の使用用途は主に火力発電、製鉄、その他各種工業用燃料(セメント、鉄道・
船舶暖房など)の3つに大別されます。そのうち、石炭使用量の大半は火力発電
と製鉄が占めています。
火力発電は、燃料別に LNG(天然ガス)燃料、石油燃料、石炭燃料の3つに分類
されます。
製鉄では鉄の原料である鉄鉱石から酸素を取り除く必要があるため、石油等の燃
料ではなく鉄鉱石と石炭から作ったコークスを使用する必要があります。
石炭の需給動向
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—
—
—
—
IEA(International Energy Agency)によると、2000 年~2010 年の 10 年間にお
けるエネルギー消費増加分の半分近くが石炭によるものでした。2010 年において
世界の石炭消費量のうち中国が約 45%を占めています。また、2000 年から 2010
年の石炭消費増加量のうち約 80%を中国が占めています。(下記チャート参照)
また、世界の石炭生産量では、2000 年から 2010 年の増加分の約 70%を中国が占
めています。(下記チャート参照)
石炭火力発電による国別の発電量は、IEA(International Energy Agency)の Coal
Information 2011 によると、米国が約 2000TWh と日本、EU を上回っています。
また、総発電量における石炭火力発電量の割合では中国が約 7 割と他国より高い
水準となっています。
米国においては、環境汚染物質や二酸化炭素の排出抑制が推進されていること、
シェールガス開発の進展により天然ガス価格が低位で推移していることを主因に
石炭発電は減少傾向にあり天然ガス等による発電が増加傾向にあります。
石炭火力発電所の数は 2035 年までに約2倍になると言われており、主に中国・
インドがその需要を牽引すると言われています。
近年における鉄鋼業での石炭消費量の多い国は豪州・カナダ・中国・インドネシ
アが挙げられます。
-1-
【石炭消費量の推移】
・
【石炭生産量の推移】
石炭需要見通し
—
—
長期(2009 年~2035 年):IEA World Energy Outlook 2011 EIA International
Energy Outlook 2011、そして IEEJ 世界・アジアエネルギーアウトルック 2011
によると、石炭の需給見通しは 2009 年の実績値と 2035 年予測で約 45%~65%
の増加が見込まれています。また、IEA は 2035 年には石油に代わり石炭が一次
エネルギー消費の最大のシェアを占めると予測しています。
中期(2009 年~2016 年):IEA によると、OECD 諸国は全体的にみてほぼ横ば
いである一方、中国とインドが需要を各々1.2 倍、1.4 倍に増加すると予測して
います。
【長期(2009 年~2035 年)】
-2-
【中期(2009 年~2016 年)】
・
その他
<石炭のメリット・デメリット>
— 石炭は他燃料と比較すると経済性に優れ、豊富な資源量と供給に安定性があるこ
とを特徴としています。その一方で石炭のデメリットとしては、温室効果ガスの
問題が一番大きく、大気汚染を引き起こす物質を排気ガスの中からある程度は除
去する技術が普及しているといっても、公害問題は克服されていません。
— 二酸化炭素(CO2)の回収・貯留する技術として、CCS(Carbon dioxide Capture
and Storage)が注目されています。CCS は、工場や発電所で発生する CO2 を捕
えて、地中貯留に適した場所まで運び、貯留する技術です。CCS は早期に Co2 を
大規模に削減することを可能にする重要な温暖化対策と期待されています。
<石炭の代替原料>
— 火力発電における石炭の代替原料として天然ガスが挙げられますが、近年シェー
ルガス採掘技術の進歩により特に米国で生産量が急増しているほか、天然ガス資
源が乏しい地域でも豊富な埋蔵量が見込まれています。化石燃料の中で最もクリ
ーンな環境特性や供給安定性など多くの利点を持つ天然ガスが今後エネルギーオ
プションの一つとして重要性を高めていくとの声も聞かれますが、利用拡大に向
けたインフラ等の整備も重要課題として挙げられます。
— 製鉄においては、石油からもコークスを作ることもできるため石炭の代替原料と
なりえます。ただ、現在ある高炉は石油コークスを前提とした設計となっていな
いので石油コークスを使用すると様々な問題を引き起こす可能性があります。
石炭価格(燃料炭)は、足元 FOMC や ECB 金融政策決定会合の結果をうけ、やや上
昇に転じているものの、欧州財政問題を背景とした需要減退観測や中国経済成長鈍化懸念
などを材料に、昨年 8 月末から今年 8 月末で約 27%下落しています(下記チャート参照)。
-3-
【Coal, Australian thermal coal:Data Source World Bank】
以上、簡単ではございますが石炭産業についてまとめさせて頂きました。石炭産
業の需要動向をモニタリングするにあたり、中国・インドの石炭需要による影響が大きい
ため両国経済成長に石炭価格・石炭関連業者業績が振らされやすい側面を持ち合わせてい
ること、特に米国においてシェールガス開発の技術が飛躍的に向上していることによって
天然ガス価格の低下していること、製鉄・火力発電において石炭の代替原料となりうる天
然ガスや石油向けのインフラ整備動向など多くの切り口があり興味深い分野であると思い
ます。また当産業に関わる業種も多いことから石炭産業をモニタリングする意義も大きい
と思います。今後も引き続きモニタリングして参ります。
(インベストメントグループ 溝河)
-4-
Global Markets (9 月 10 日~9 月 14 日)
1.
オーバービュー
週初はギリシャが救済 融 資条 件を満たすことに苦戦しているとの観測から売りが優勢となったものの、その後はド
イツ憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性を条件付きで認めたことや FOMC での量的金融緩和
第三弾(QE3)の決定を受けリスク回避姿勢が後退、世界株式市場は総じて買いが優勢に。
【各国株価インデックスの 2008 年末からの変化率の推移】
2.20
2.00
ブラジルBOVESPA
指数
1.80
インドNIFTY指数
香港ハンセン指数
1.60
シンガポールST指
数
1.40
ドイツDAX指数
1.20
米SP500指数
1.00
英FT100指数
0.80
東証株価指数
0.60
伊FTSE MIB指数
ドイツ連邦憲法裁判所がESMの批准を認めたことや、FOMC で Q3 実施が決定されたことを受けドル安が大幅
に進行。ドル円相場は日銀によるレートチェックが行われたとの観測から円買いは限定的に。
【各国通貨の 2008 年末からの対ドルでの変化率の推移】
1.60
1.50
ブラジルレアル
カナダドル
1.40
豪ドル
1.30
日本円
スイスフラン
1.20
ユーロ
1.10
英ポンド
シンガポールドル
1.00
韓国ウォン
0.90
南アフリカランド
ドルインデックス
0.80
-5-
米欧主要国国債市場は、ドイツ連邦憲法裁判所による ESM 合憲性の認可を受け欧州財政危機に対す
る懸念が緩和したことや、FOMC で QE3 実施が発表されたことが市場に安心感を与え安全資産の需要
減退から売り が優勢。 イタ リアなど 高債 務国利回りには低下圧力がかかったものの、スペインについて
は同国救済を巡る議論が難航していることなどを受け国債利回りは週次ベースでやや上昇。
各国10年国債の利回り推移
8.0
7.0
6.0
英10年国債
独10年国債
米10年国債
日10年国債
伊10年国債
西10年国債
利回り(%)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
スワップスプレッドは欧米で縮小。
2年物スワップスプレッドの推移
180
160
USD
2年物スワップスプレッド (bp)
JPY
140
EUR (Germany)
120
100
80
60
40
20
0
-6-
FOMC の結果をふまえて先進国並びに欧州周縁国ともに CDS スプレッドが大幅に縮小。
主要先進国ソブリン5年物CDSスプレッド推移
300
France
CDS スプレッド(bp)
250
Japan
United Kingdom
200
United States
Germany
150
100
50
0
ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリア5年物CDSスプレッド推移
1,800
1,600
CDS スプレッド(bp)
1,400
1,200
Portugal
Ireland
Spain
Italy
1,000
800
600
400
200
0
-7-
ゴールドは QE3実施が決定されたことを材料に上昇。原油は FOMC の結果に加え、中東や北アフリカでの反米
デモも買い材料となり買いが優勢。
商品市況の推移(2006年末からのドルベースでの騰落率)
3.00
2.75
2.50
2.25
原油(WTI)
金
CRB
騰落率
2.00
1.75
1.50
1.25
1.00
0.75
0.50
ブレークイーブンレートは欧米で上昇。
各国ブレークイーブンレートの推移
ブレークイーブンレート(%)
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
英国債2017年満期
米国10年債
フランス国債2017年満期
-1.0
(インベストメントグループ)
-8-