労働紛争処理(中田成徳、芝野彰一) 1 2、3年 前・後期 選択必修 2単位 15回 科目内容・目標 この講義は、「雇用と法」2 単位を履修した者もしくは労働法に関する一定の知識を有する者を対象に、実務上 の労働紛争処理の理論及び実践について講義する。「雇用と法」においては、労働法に関する基礎的な知識の 習得を中心としたが、この講義では現実の具体的紛争において、法律家としてどのように考え、判断し、事件処 理を行うかについて検討及び議論を行うものである。また、紛争処理という観点から、紛争が発生した場合の事 後処理だけではなく、予防的紛争処理(事前対応)についても検討したい。 また、労働紛争処理をめぐる問題は多岐に及び、労働法以外の法的知識や紛争解決能力が要求されるため、 この講義では学生の総合的な法的思考力を涵養することも目的とする。なお、労働紛争処理は事案毎、実務家 毎、更には依頼者毎、様々であるので、一般的な解説はするものの、事案における「正解」というものは必ずしも 1 つに限らないことは述べておきたい。このように、紛争解決方法は 1 つとは限らないので(1 つの場合もあるが)、 他の考え方や解決方法もあるといった意見については積極的に述べて貰いたい。もっとも、実務家を目指す以 上、理論のない価値判断だけでは説得力がなく、他方、理論倒れで具体的妥当性のない結論というのも意味が ない。このため、判例の考え方や結論の妥当性についての検討・配慮についても必要であることも当然である。 2 講義の基本方針 本講義は既に労働法に関する基本的知識を習得していることを前提にするのであるから、その知識をもとにし て「自分はこの様に考えるから、この様な処理・結論になる」といったような意見が好ましく、また、そのような意見 に対する反論についても大いに歓迎する。 本講義全 15 回のうち、初回を除く 14 回分については事例演習問題の検討を中心とする予定である。 事例演習問題は事前に学生諸君に提示するので、学生諸君はその問題を検討して次週の講義に臨んでもら いたい。事前学習としては、①事例演習問題における法的問題点を抽出すること、②抽出した問題点について の処理方法を検討すること、③その際、問題となる論点、判例等の検討をすること、④事実認定に関する問題点 については、自分としてはどう認定するのか、その理由の検討、といった学習が必要になる。 講義当日は、出席者各人が事前学習(演習の検討)をしていることを前提にして講義を進めるので、適宜学生 を指名のうえ意見発表・発言を求めることを予定している。 本講義では、いわゆる論点や判例に対する知識というものは重要であるが、それ以上に、なぜその問題が問 題になるのか(問題の所在といわれるもの)や考える筋道というものの重要性、さらには結論の妥当性ということ について考えてもらいたいと思っている。 3 成績評価 期末に実施する論文式筆記試験の成績を重視するが(70%)、普段の講義における取り組み姿勢(質問に対 する発言内容、受講態度、提出物の内容等)を加味した(30%)、総合判断による。 -1- 4 教材 桐蔭横浜大学法科大学院教育叢書①「労働法講義録」 本講義の解説部分はこの講義録を中心に講義を行う予定であるが、必要に応じて別途レジメ等を配布する予 定である。なお、本講義録は雇用と法でも使用しているので初学者の入門書としての利用も可能であるし、演習 問題も比較的多数掲載しているので応用書としても使用可能である。 ただ、上記講義録のみでは不足する部分も生じるので、別途労働法の教科書(参考書)は最低限必要である。 なお、労働法の教科書は既に各人が使用しているものがあればそれで構わないが、新たに購入する場合には 以下の書籍を推奨する。 (教科書・基本書) 菅野和夫「労働法・第 10 版」(弘文堂):労働法の第一人者による著作として従来から定評のある本であり、司 法試験受験科目として労働法選択を予定している者は必須といってもよい。 荒木尚志「労働法第 2 版」(有斐閣):十分な内容で、比較的読みやすい著作である。 (参考書) 労働判例百選 8 版(有斐閣):判例の重要性は言うまでもなく、司法試験対策としても必携である(本講義でも 必携とする)。 労働事件審理ノート(第 3 版)(判例タイムス社) 荒木尚志・菅野和夫・山川隆一「詳説労働契約法第 2 版」(弘文堂) 山口幸雄・三代川三千代・難波孝一編「労働事件審理ノート」(第 3 版) 土田道夫・豊川義明・和田肇「ウオッチィング労働法(第 3 版)」(有斐閣) 岩出誠、「実務労働法講義(第 3 版)」(上・下)(民事法研究会) 5 講義計画 全 15 回の講義については、労働紛争処理の全体像を把握する講義(第 1 回)の後に、各回の事例演習(14 回・進行度合いに応じて小テスト 1 回実施する予定)によって、具体的事件における紛争の処理について学生に よる検討・討論を行う予定であるが、全般的理解度に応じて小テストの実施回数を増減することもある。 第 1 回 労働紛争処理の概要 労働紛争処理の全体像(発生する紛争の種類・法的な紛争処理制度の状況)について、学生の有する基礎知 識の確認とともに学習する。 第 2 回~第 15 回 事例演習 *第 2 回~第 15 回の講義については、具体的な紛争事例(演習問題)をもとに学生の事前検討を踏まえて、講 師の見解、他の学生の見解を交えながら事例検討を行う予定である。 -2-
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