雇用と法(中田成徳、芝野彰一) 1 2、3年 前・後期 選択必修 2単位 15回 科目内容・目標 この講義では、労働法における基本的な知識及び理論の習得を目標とする。 法曹実務家には、日々発生する具体的問題の解決を図る能力が必要であり、学生諸君は、そのような能力を 身につけることが必要となる。労働法に関する分野でいえば、労働基準法、労働契約法、労働組合法、その他 関連する法規及び判例に関する基本的知識、並びにこれらを前提にした紛争(問題点)解決能力の習得というこ とである。但し、この講義は未修者の 2、3 年生を対象とする 2 単位講義であることから、第一目標として、基本的 知識の習得ということに重点をおく。また、判例(裁判例)が重要であることは言うまでもないが、労働法の分野に おいては、とりわけ判例(裁判例)の重要性は高いので、著名判例(裁判例)については可能な限り多く紹介をす る予定である。 基礎的知識・理論の習得及び判例の検討の中において、労働関係というものが複雑多岐にわたり、民事法、 刑事法、さらには公法といった複雑な側面を有することについても理解して貰いたい。もっとも、難しく考える必 要などはなく、個別的労働関係法については民法の基礎的理解があれば十分に理解可能であり、団体的労働 関係法についても、憲法や民法の基礎的知識というものが理解の一助になるはずである。本講義の内容は、大 別して、個別的労働関係及び団体的働関係における各問題点であるが、近時の判例・実務における問題意識 の傾向からすると必然的に個別的労働関係法の説明に重点を置くことになる。 2 講義の基本方針 ロースクールの授業というものは単に知識を得るだけではなく、思考力、実務感覚及び具体的処理能力を涵 養することを目指すべきである。実務家登用試験である司法試験も同様であるべきである。もっとも、思考力、実 務感覚、及び具体的処理能力も、正確な基本的知識の存在が不可欠の前提であることは否定できない。それゆ え、「1」の目標に示したとおり、この講義は、まず基本的知識の理解、習得を目標とする。ただし、講義は 2 単位 (全 15 回、1 回 90 分)の限られた時間で実施されるため、学生諸君には講義当日に全くの白紙で臨むのではな く、該当箇所につき十分な予習をしていることが前提となる。具体的には、(1)講義録及び事前示した資料は一 読して基本的部分の理解をしていること、(2)講義録またはレジメ記載の参考判例については事案・判旨を検討 していることが必要になる。 講義においては、講義録及びレジメに従って基本的知識の説明をすることになるが、単に知識の披歴だけで はなく、可能な限り具体的設題や実務上の観点を含めた解説を心懸ける予定である。学生に対しては、適宜質 問をすることもあり、質問に対する回答及び対応の内容については期末成績の考慮対象になる。なお、講義の 進行具合にもよるが、レポート等の提出を求めることもありうる。 3 成績評価 期末に実施する主に論文式による筆記試験に重点を置くが(70%)、講義への取り組み姿勢を加味する (30%)。講義への取り組み姿勢については評価の 30%を与えるため、前記「1」のとおり、質問に対する回答及 びその内容、提出レポート等の内容、その他講義に対する姿勢等を総合して考慮する予定である。 -1- 4 教材 【教科書】 桐蔭横浜大学法科大学院教育叢書①「労働法講義録」 過去の講義レジメを講義録化したたものであり、入門書としての使用するほか、掲載の演習問題はある程度実 力が付いた後においても参考にすることが可能である。 【参考書】 自分の使いやすい本であれば何でも構わないが、未だ決めていない人には(1)を推奨する。(1)は、学界の 第一人者による従来からり定評のある著作であり、司法試験対策としてもこれ 1 冊で十分である。(2)は労働法の 入門書としては好適であり、簡明で使いやすいが、司法試験対策として使用する場合には、他の書籍での補充 が必要と思われる。特に団体的労働関係法については(1)、(3)等による補足が必要である。(3)はやや大部で あるが非常に分かりやすくまとめられた本であり、司法試験対策としても十分といえる。(4)の判例百選は講義に は必携とする。司法試験対策としても判例百選の検討は必須である。(5)は労働法における要件事実について 述べられている本であり、実務的にも有益であり、司法試験の選択科目として労働法を考えている者にとっては 有用であるが、初学者には難解であり、本講義では必携とはしない。 (1)菅野和夫「労働法第 11 版」(弘文堂) (2)下井隆史「労働法第 4 版」(有斐閣) (3)荒木尚志「労働法第 2 版」(有斐閣) (4)「労働判例百選第 8 版」(有斐閣) (5)「労働事件審理ノート・第 3 版」(判例タイムス) その他、適宜講義用のレジメ・資料を配付する。 5 講義計画 全 15 回の講義は、教科書を各自が十分予習してくることを前提として講義を中心に行うので、十分な予習をし てあることが必須となる。全 15 回の予定は以下のとおりとするが、学生の理解度に応じ、各回の予定について多 少の調整をすることはあり得る。なお、講義の進行具合によっては、レポート等の提出を求めることもある。 (全 15 回の予定) 第 1 回 総論 労働法とは何か、労働基準法上の基本原則、就業規則 *労働法の勉強方法、労働法の全体像、労働法の法源・類型、労働法の基礎概念、労働関係における基本原 則、労働基準法及び労働契約法の効力、就業規則の基本知識 第 2 回 採用・内定 *採用の自由、内定・試用の法的意味、内定取消・本採用拒否 第 3 回 賃金 *賃金の意義、賞与と退職金、賃金に関する諸原則、休業手当 第 4 回 労働時間(1) *週 40 時間制の原則、労働時間の概念、労働時間制の弾力化・柔軟化 -2- 第 5 回 労働時間(2) *休憩、週休制の原則、時間外労働、適用除外(管理監督者)、年次有給休暇 第 6 回 懲戒 *懲戒権の根拠、懲戒事由、懲戒の有効要件 第 7 回 人事異動 *配転・出向・転籍、昇級・昇格、降級・降格、休職(病気休職・起訴休職) 第 8 回 労働関係の終了 *解雇、解雇権濫用法理、解雇と賃金、解雇以外の終了事由、解雇・リストラに関する諸問題 第 9 回 団体的労働関係、労働組合 *団体的労働関係総論、労働組合の概念と要件、労働組合の組織と運営、ユニオン・ショップ協定、チェック・オ フ等 第 10 回 団体交渉 *団体交渉の意義、団体交渉の主体・対象事項・手続き、団交拒否に対する対応策 第 11 回 労働協約 *労働協約の法的性質、労働協約の成立要件、労働協約の効力、労働協約の一般的拘束力、労働協約の終了 第 12 回 団体行動 *争議行為と組合活動、団体行動に対する法的保護、正当性のない争議行為、使用者の対抗措置 第 13 回 不当労働行為(1) *労働紛争の解決手続について、不当労働行為救済制度の意義・目的・成立要件 第 14 回 不当労働行為(2) *不当労働行為の私法的救済手続、行政救済手続 第 15 回 総まとめ(問題演習) *問題演習を通じて、労働法に関する問題点を復習するとともに具体的な検討をする。 -3-
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