地方自治法(早川和宏)

地方自治法(早川和宏)
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2、3年前期
選択必修
2単位
15回
科目内容・目標
地方公共団体は、住民にとって最も身近な行政主体である。出生届(転入届)の提出(考えようによっては、母
子健康手帳の交付)から、死亡届(転出届)の提出に至るまでの間、住民の日々の生活を地方公共団体と切り離
して考えることはできない。しかし、日常的に地方公共団体との関係を意識している住民は、ほとんど居ない。
地方公共団体と住民とが、良好な関係を維持しているのであれば、あえて「関係」を意識する必要はないかも
しれない。しかしながら、住民が自覚しているか否かはともかくとして、法的に見た場合に「良好ではない関係」
が散見されることも事実である。
そこで、本科目では、地方自治法を題材として地方自治制度全般を概観することにより、地方公共団体の組
織・任務や、地方公共団体と住民との関係等を、法的に捉え直すことを試みる。これによって、地域における法
的紛争を見出し、解決策を提示する能力を得られると考えるからである。
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授業の基本方針
授業は、下記の授業計画に従い、宇賀克也『地方自治法概説〔第 6 版〕』(有斐閣・2015 年 3 月刊行予定)を使
用して、講義形式で行う(授業計画は、授業の進行予定を示すものであり、必ずしも1回の講義ごとに対応してい
るわけではない)。講義の順序は、テキストと一致するわけではないので、予習についてはレジュメで指示する。
講義形式をとりつつも、憲法、行政法等の基礎的な知識につき適宜発言を求め、議論することにより、ゼミのよ
うな授業にしたい。
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成績評価
レポート(70%)と平常点(30%)を総合して、厳格に評価する。
平常点は、授業における積極的参加の程度(発言内容等)によって評価する。
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教材
(1) 教科書(購入必須)
宇賀克也『地方自治法概説〔第 6 版〕』(有斐閣・2015 年 3 月刊行予定)
(2) 判例集(購入必須)
磯部力・小幡純子・斎藤誠編『地方自治判例百選〔第 4 版〕』(有斐閣・2013 年)
(3) 六法:各自常用のもの必携。PC 持ち込み可。
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授業計画
第1 回
地方自治の考え方
地方自治の意義、地方自治の担い手、地方自治の本旨、地方自治の現代的役割、地方自治の阻害要因、地
方自治の行方等につき、検討する。
第2 回
地方公共団体の種類
地方自治の担い手たる地方公共団体について、その組織法上の位置付け、権限等を検討する。
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第3 回
地方公共団体のしごと
地方公共団体が行う各種行政作用について、住民との関係、法的分類等を検討する。
第4 回
地方公共団体の組織(1)~基本原理・議会~
地方自治法が、地方公共団体の組織につき定めるにあたって採用している基本原理を学ぶ。また、議会に係
る地方自治法の規定を読み、正確に解釈できるようにする。
第5 回
地方公共団体の組織(2)~長・その他の執行機関・地方公務員~
地方自治の主たる担い手である、首長、各種執行機関、地方公務員について、法令上の地位・権限等を検討
する。
第6 回
地方公共団体の活動形式(1)~法令の執行者として~
地方公共団体が法令に基づく各種権限を行使するにあたって留意すべき事項、当該権限行使に対する国等
からの関与の種類・限界につき検討する。
第 7・8 回
地方公共団体の活動形式(2)~立法者としてⅠ・Ⅱ~
条例の意義・効力・実効性確保手段を学ぶとともに、条例制定権の範囲に関する判例を詳細に検討する。
第 9・10 回 地方公共団体の活動形式(3)~調整者・給付の提供者としてⅠ・Ⅱ~
現代の地方公共団体が担っている地域的利害の調整作用が、いかなる手法を用いてなされているのか、具
体例を挙げながら検討する。また、地方公共団体が担う給付行政作用につき、各種法令を参照しながら、正確に
理解できるようにする。
第 11 回 地方公共団体の財政(1)~予算から決算まで~
地方公共団体の財政作用につき、収入を規律する法令、支出を規律する法令、予算・決算に関する法令、財
産管理に関する法令をもとに、具体的に検討する。
第 12・13・14 回 地方公共団体の財政(2)~住民監査請求・住民訴訟Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ~
地方公共団体が行った財政作用につき疑義が生じた場合の解決方法として、監査制度、住民監査請求、住民
訴訟を検討する。
第 15 回 地方公共団体を育てる?~主権者の力~
地方自治の究極的担い手である住民が、地方公共団体といかなる権利・義務関係にあるのかを理解する。ま
た、平成 12 年以降全国に広がってきた自治基本条例を題材とし、住民が地方自治を担えるようにするための制
度を構想する。
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