工学部 通信工学科 高周波通信デバイス研究室 平面電磁界解析シミュレータを用いた 3次元構造インバータの解析 尾形拓也 (指導教員: 田中愼一) 小型で高出力な非接触給電に適したMHz帯インバータを実現する上でリンギング現象の抑制が重要課題の一つで、その対策 としては垂直なボードを有するインバータ構造も提案されている。本研究では、このような3次元構造のインバータの解析にあた り、シミュレーションの時間・コストの節減のためにマイクロ波回路設計用の平面電磁界シミュレータで解析する手法を検討した。 解析結果 背景 インバータでリンギングが発生すると瞬時最大電圧がFETを破壊する可能 性がある。リンギングの主要因はインバータ内の電流ループに沿う寄生インダ クタンス(Ltotal )が無視できずループの直列共振周波数(=リンギング周波 数)が下がることである。そこで対策として、FET近傍に垂直ボードを設ける 方法が提案されている[1]。このような構造は3次元であるが、波長が十分 に長ければ2次元平面回路電磁界シミュレータでも対応可能だが、例えば 垂直ボードの効果を扱うためには特別な工夫が必要となる。 バイパスボード付 Half Bridge型インバータ 垂直バイパスボードとFETモジュールを上下異なるレイヤーのメタルで模擬し たため、上下レイヤーをつなぐビアにインダクタンス成分(𝐿𝑣𝑖𝑎 )が含まれてしま う。𝐿𝑣𝑖𝑎 の効果を差し引くため、モジュールの向きを意図的に90°回転した場 合と回転前との差分をとり、𝐿𝑣𝑖𝑎 の影響を除去した。 電流相殺によるインダクタンス低減効果(ΔL)の見積もり方法 下図はこの方法でインダクタンスを解析した例である。この解析から見積もら れた寄生インダクタンスの値は実験結果とも概ねよく一致している。 解析方法 電磁界シミュレータとしてはSonnet emを用いた。2次元解析を行うため に、垂直バイパスボードとFETモジュールを水平なメタルで模擬し、両者の距 離間隔を上下メタル層間の空気層d(=4mm)の厚みで表現した。 電流ループに沿う寄生インダクタンス(𝐿𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 )は次式を用いて評価した。 𝐿𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 𝐿𝑏𝑦𝑝 ∙ 𝐿𝑝𝑐𝑏 = + 𝐿𝑚𝑜𝑑 − Δ𝐿 𝐿𝑏𝑦𝑝 + 𝐿𝑝𝑐𝑏 ΔLはモジュールとバイパスボードの逆向き電流が相殺することによるインダク タンス低減効果である。上式の各インダクタンス成分の抽出のためには、電 流ループの切断個所にポートを設け、電磁界解析から求めた2ポートYパラ メータを用いて次式から見積った。 解析結果 1 Y11 + Y22 + 2Y21 L 𝜔 = Im 2 𝜔 Y11 Y22 − Y21 垂直 バイパスボード 無 有 まとめ 寄生インダクタンスLtotal (nH) 本解析 実験 7.6 6.1 6.3 5.0 抽出した寄生インダクタンス値 垂直バイパスボードを用いる3次元構造インバータの解析に平面回路電磁 界解析を適用する検討を行った。解析結果は実験とよく一致し、同バイパ スボードによる電流相殺効果が解析上も有効であることが確認できた。 参考文献 電磁界シミュレーションの解析モデル[1] [1] Nguyen Kien Trung, 赤津観,"非接触電力伝送システム用1.5kW13.56MHz ClassD 共振インバータの設計", 平成26年度 電気学会産業応用部門大会 [2] K.Okada et al., “Modeling of Spiral Inductors,” intechopen.com, p.293-295
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