プロジェクト名 ポリ乳酸射出成形による自動車モジュール部品の新規開発

別紙2
プロジェクト名
研究背景
研究目的
及び目標
成果概要
ポリ乳酸射出成形による自動車モジュール部品の新規開発
(研究背景)
自動車の燃費対策としての軽量化、地球環境保護の観点からの脱石油資源や
二酸化炭素排出の削減を目的とし、原料が植物由来のポリ乳酸(PLA)を用いて自
動車部品をつくることが求められている。しかし、これまで PLA による自動車
部品の開発は、材料物性の問題から成形方法が圧縮成形に限られていた。
(研究目的及び目標)
PLA の弱点である耐熱性と耐衝撃性を飛躍的に向上させた複合化材と、射出
成形による自動車モジュール部品を新規に開発し、早期の実用化を図ることを
目的として、次の目標を掲げて研究開発を実施した。
引張強度:140MPa、曲げ弾性率:6GPa、熱変形温度:150℃、Izod 衝撃強度:
40kJ/㎡、2 分以内での結晶化度:50%、抗菌性:抗菌剤 2wt%添加での抗菌活性
発現、難燃性:UL 規格 V-0 相当の達成、ケミカルリサイクル:酵素分解評価法
の確立とケミカルリサイクルへの適用
本研究開発の 2 年間の実施によって、次のような成果を得ることができた。
(1)PLA 基材の物性改善
マトリックス材(母材)の物性改善のため、市販の PLA に結晶化促進核剤、
無機フィラー、他の生分解性ポリマーならびに相溶化剤等を添加した。
以下に、市販 PLA の物性値→改質材の測定値(目標達成度%)を示す。
・引張強度:70MPa→70MPa(50%)、曲げ弾性率:3.7GPa→5GPa(83%)、熱変形
温度:53℃→150℃(100%)、Izod 衝撃強度:3kJ/㎡→42kJ/㎡(100%)。
・マトリックス材候補の No.35 配合では、引張強度:50MPa(36%)、曲げ弾性率:
2GPa(33%)、熱変形温度:110℃(73%)、Izod 衝撃強度:7kJ/㎡(18%)で、現
行のガラス繊維強化ポリプロピレン(PP)のマトリック材の物性値をほとんど
の項目で上回っていた。
上記のマトリックス材とガラス長繊維との複合化を実施した。諸物性の測定
中であるが、マトリックス材で目標値が未達成であった引張強度と曲げ弾性率
の項目も、達成できる見込みである。
(2)射出成形・モジュール化技術の開発
・結晶化促進核剤の探索:本研究グループが開発した核剤(乳酸共重合物(3∼
6wt%添加))の結晶化促進効果が大で、2 分以内での PLA 結晶化が可能であっ
た(達成度:100%)。
・金型内での結晶化条件の検討:金型温度 110℃、保持時間 1 分、の成形条件
を確立した(達成度:100%)。
・複合化材モジュール化技術の開発:結晶化に必要な金型温度、保持時間、成
形サイクルの制約条件などを多面的に検討した。金型表面温度を制御する方
法として新規の「サイクル加熱冷却法」を選定し、ドア及びインパネモジュー
ル部品数点の試作品を作製した(下図写真参照、達成度:100%)。
・モジュール化材の性能評価:上記の試作部品を対象に、成形性(寸法変化、
結晶化度、短期耐熱性など)、信頼性(剛性、長期耐熱性、耐冷熱繰り返し性、
耐寒性、耐寒衝撃性など)の性能評価を行った結果、僅かに基準値を外れた
項目はあったが、ほぼ完全に満足できる成果が得られた(達成度:100%)
。
・2 分以内でのポリ乳酸複合化材の結晶化度:マトリックス材で検討した結果、
PLA 部分の結晶化度が 50%であった(達成度:100%)。
(3)その他の将来技術の開発
・抗菌化技術:スクリーニング試験で選定されたテルペン誘導体などの化合物
1
について、ポリ乳酸配合フィルムの作製から簡易評価方法までを確立するこ
とができた。複数のテルペン誘導体等を 5wt%添加することで、抗菌および
抗カビ活性を確認することができた(達成度:65%)。
・難燃化技術:No.35 配合に 18wt%以上のポリリン酸メラミンを添加すれば、
UL-94 規格の V-0 相当の難燃効果があることが確認できた。また、FMVSS 規格
に対しては、No.35 配合そのもので基準をクリアするが、1∼3wt%程度のポリ
リン酸メラミンを添加すれば、自己消火することが分った(達成度:90%)
。
・ケミカルリサイクル化技術:クリプトコッカス sp.S2 リパーゼを用いれば、
No.35 材は PLA 以上の分解性があることが分った。プロティナーゼ K はポリ
カプロラクトン(PCL)には作用しないことから、PLA 分解成分との分離を行え
ば、分解物のケミカルリサイクルが可能であることが分った(達成度 95%)。
ドアモジュール及びインパネモジュール
部品の試作例
本研究開発は概ね順調にすすみ、上述のように 2 年間で多くの研究成果を得
ることができた。今後1年間程度の補完研究を継続し、コスト、軽量化、物性
の長期信頼性確保などの検討を行い、早期の実用化に結びつける計画である。
なお、本研究開発の成果である、生分解性結晶化促進核剤、生分解性相溶化
剤、部分生分解性強化繊維などによる PLA の改質について、特許を 3 件出願し
た(特願 2005-209019、2005-209020、2005-235102)。
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財団法人ひろしま産業振興機構(担当;山縣)
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