平 成 26 年 度 6 学 校 総 合 評 価 今年度の重点課題に対する総合評価 医療機関が隣接する病弱特別支援学校である本校には、県内各地から児童生徒が在籍している。 訪問教育を受けている児童生徒には、病気の状態の多様化や、障害の重度・重複化がみられる。 また、訪問教育を除く小学部・中学部・高等部では、従来の慢性疾患が減少し、適応障害が増加 している現状がある。適応障害の児童生徒のなかには、不登校による学習空白から基礎学力が備 わっていない場合もある。学習空白を補うとともに、自己肯定感を高め、基本的な生活習慣を身 に付けて、社会自立に向けた生活習慣や規範意識等を育てることが必要である。 このような児童生徒の実態を踏まえて、今年度は、3項目の重点課題を取り上げた。年度初め に設定した数値目標の達成を目指して取り組み、3項目とも目標を達成することができた。 (1)グローバル教育 通信ソフトウェアを活用して、外国の人々と交流を図ったことで、児童生徒の世界が広がっ た。特に、人と関わることが苦手な児童生徒にとって、外国の人々とコミュニケーションをと ることができたことは、貴重な経験となった。また、カード交換を通して、訪問教育を受けて いる児童生徒も、外国の方々との交流を図ることができた。 (2)基本的生活習慣の確立を目指す支援 昨年度に引き続き、重点課題として取り上げた。日常生活に関することは、児童生徒それぞ れの自覚を育て、高めていくことが大切である。取組を積み重ねることで、朝食の摂取と歯磨 きについての意識は着実に高まった。なかでも、保健委員会の児童生徒が考え、制作した「朝 食を食堂でしっかり食べよう」の啓発ビデオは、演劇を通して自覚を高めるよい方法であった。 (3)個に応じた進路計画および社会自立・職業自立支援 校内では元気だが、校外に出るとうまくいかない生徒が多い。人の支援があれば頑張ること ができるが、一人になるとくじけてしまう。在学中から、困った時にサポートを得ることがで きる場所を作っておくことは大切である。進路学習を通して、学校や家庭以外の人と関わる機 会を多くもつことができた。 7 次年度へ向けての課題と方策 <課題> ① 長期間の学習空白や、認知面で困難さのある児童生徒が多く、学習に対する拒否感や学習 意欲の低下がみられる。 ② 基本的な生活習慣がなかなか身に付きにくい。病院との連携を一層密に図り、一人一人に 応じた支援が必要である。 ③ 年齢や発達段階に応じた進路学習の内容や方法、就業体験の実施等に工夫が必要である。 ④ 病気の状態の多様化や障害の重度・重複化に対応した指導を行うために、更なる教員の専 門性が求められる。 <対策> ① 学習環境の整備に努めるとともに、児童生徒の実態を多面的に把握し、一人一人の習熟度 に合わせた学習内容を設定する。また、認知面に配慮して教材・教具を工夫する。 ② 基本的な生活習慣の定着を目指して、病院関係者や保護者と連携を図りながら、児童生徒 が社会生活を送る上で必要な内容を考え、数値目標を設定して取り組む。 ③ キャリア教育の視点をもって、発達段階に応じた進路学習に取り組む。 ④ 外部専門家を招いた研修会を充実させるとともに、本校教員同士の校内研修の場で、学部 を超えた研修等を通して、互いの専門性を高める。 8 学校アクションプラン 平成26年度 富山県立ふるさと支援学校アクションプラン ― 1 ― 重点項目 学 習 活 動 重点課題 グローバル教育 現 状 達成目標 ・病院で生活しているため社会経験が限定されており、学習や進路に対して広い視野をもつこ とができない。 ・興味・関心をもつことができる対象の幅が狭く、自ら学ぶ意欲や姿勢をもちにくい。 ・小集団での生活が中心であり、対人関係において苦手意識のある児童生徒にとっては、相手 を理解したり、自分の意見を伝えたりするコミュニケーション能力を高める機会が少ない。 E-mailやSkype(テレビ会議システム)を 個々の授業で学んだ内容を共有したり、興味・関 活用し、海外の地域の人々と交流する機会 心をさらに高めるために、「ニュースレター」を発 をもつ。 行する。 交流する海外の地域5か所以上 方 策 「ニュースレター」の発行年3回以上 ・世界中に学習支援者や交流相手を求め、E-mailやSkypeを活用して交流する。 ・これらの活動を通して、海外の様子を学ぶことにより、学習への興味・関心や意欲を高め、 幅広い視野を養う。 ・地域の外国人留学生や海外経験者を訪ねたり、学校に招いたりして、異文化に対する理解を 深める。 ・インタビューをする活動や、学んだことを発表する活動を通して、コミュニケーション能力 を高める。 100% 達成度 5月 ・「ニュースレター1号」を発行した。 ・中学部と高等部の生徒が、アメリカ合衆国オレゴン州の高校で日本語を勉強している生徒 たちと、文通を開始した。訪問教育の一部生徒も、担任の支援を受けながら参加した。 6月 ・ドイツ連邦共和国の大学に留学している日本人の学生(国内の大学院在籍)から送っても らった資料を使って、中学部2年の生徒がドイツについて学習した。授業の最後に、Skype を使って、質疑応答を行った。 7月 ・「ニュースレター2号」を発行した。 ・ブラジルの学校で日本語を教えていた本校教諭が、中学部2年の授業でブラジル事情を紹 介した。 9月 具体的な 取り組み状況 ・「ニュースレター3号」を発行した。 ・中学部2年の生徒がオーストラリアの院内学級で学んでいる児童とSkypeを使い交流を行 った。 10月 ・東京外国語大学教授を講師として招き、「日本語再発見」と題した講演会を行った。 ・社会見学で富山大学に行き、小グループに分かれて留学生にインタビューを行った。交流 の最後に、インタビュー内容をグループ毎に発表した。 12月 ・アメリカ合衆国オレゴン州の高校で日本語を勉強している生徒たちとカード交換をした。 全児童生徒が参加した。 ・「ニュースレター4号」を発行した。 3月 ・地域の外国人留学生と交流を行った。 ・「ニュースレター5号」を発行した。 評価 A ・カード交換、インタビュー、Skype、特別授業など、様々な方法で実施し、交流相手 国は12か国に達した。 ・「ニュースレター」を5回発行した。 学校関係 者の意見 ・Skypeを活用した取組は、児童生徒の世界が広がる試みである。人と関わることが苦手な子 どももいるので、情報通信機器をうまく使うことは、有効である。直接、人とコミュニケー ションを図ることが難しくなっているなかで、外国の人たちと、分け隔てなく関われるよう になることは大切である。 ・情報機器を通信手段として活用する場合は、情報リテラシーを教え、十分留意することが 必要である。 次年度へ 向けての 課 題 興味・関心の幅を幅を広げ、コミュニケーション能力を育てるという点で、大きな成果が見 られた。地域との連携や、本校が培ってきたICT技術の活用という面でも、有意義であった と考える。今年度と同じ形態で実施することは難しいかもしれないが、授業や学校行事などの 中にグロバール教育の内容を取り入れて、取組を継続していきたい。 (評価基準 A:達成した B:ほぼ達成した C:現状維持 D:現状より悪くなった) 平成26年度 ふるさと支援学校アクションプラン ― 2 ― 重点項目 学 校 生 活 重点課題 基本的生活習慣の確立を目指す支援 現 状 ・基本的生活習慣が確立しておらず、なかでも朝食をしっかり食べることができていない児童 生徒が多い現状を受け、昨年度は、朝食の摂取に焦点を当て取り組んだ。アンケートを実施 し、朝食の摂り方を振り返る機会を設けた上で、一斉指導及び個別指導を行った。また、病 院栄養士による講話を親子で聴く機会を設けたり、朝ごはんコンテストを行い、朝食の摂取 率が向上した児童生徒を表彰したりしたことで、66.7%の児童生徒が朝食の摂取率を向 上させることができた。 ・昨年度の取組の成果により、全体的に朝ごはんを食べようという意識は向上してきたが、ま だ十分とはいえず、さらに継続的な支援が必要である。 ・歯磨き習慣の定着や正しい歯磨き方法の習得ができていない児童生徒が多い。 朝食の摂取と歯磨きに関する取組を実施する。 達成目標 方 策 年7回以上 ・「起床、洗顔、歯磨き、着替え、朝食、排便」という朝の一連の行動を児童生徒自身が振り 返り、見直し、生活リズムを整えることが、心身共に健康な生活につながり、一日を気持ち よくスタートすることができるという意識をもつことができるように、昨年度の成果を継承 し、朝食の摂取と歯磨きに焦点を当てた取組を行う。 ・各学期に1回ずつ、「起床、洗顔、歯磨き、着替え、朝食、排便」という朝の一連の行動に ついてアンケートを実施する。アンケートの結果を基に、一斉または個別指導を行い、児童 生徒が自分自身の朝の行動を振り返り、見直す機会を設ける。 ・保護者に呼び掛け、夏季休業中に児童生徒が家族と朝食作りをする機会をもてるように働き 掛ける。また、児童生徒が保護者とともに楽しみながら朝食を見直す機会として、「朝ごは ん集会」を行う。 ・各学期に1回ずつ、「歯磨き週間」を設け、歯磨き習慣の定着を図る。また、正しい歯磨き 方法を習得するために、「歯科保健講習会」を実施する。 100% 達成度 具体的な 取組状況 評価 ・朝の生活習慣と朝食摂取についてのアンケートを3回実施した(5月、9月、12月)。 ・保健担当者(保健主事・養護教諭等)が、病棟での児童生徒の朝食や身支度の様子を参観す る機会をもった(6月)。 ・「朝ごはん集会」をPTA研修会を兼ねて実施した。保健委員会児童生徒が意欲的に発表に 取り組んだ。あわせて、栄養管理室長の講話を聴き、児童生徒が保護者とともに楽しみなが らながら朝食を見直す機会となった(9月)。 ・保健委員会児童生徒の自発的な発案で、「朝ごはん週間」を実施した。保健委員会児童生徒 が「朝食を食堂でしっかり食べよう」と呼び掛け、食堂での朝食摂取状況のチェック、朝ご はんPRビデオの制作と放映を行った。期間中は、教員が病棟に出向いて、朝食の様子を見 守った。(12月)。 ・「歯磨き週間」を3回実施した。昼休みに、各学級での「歯磨きタイム」を設けるとともに 「歯磨きカレンダー」を使って、自己チェックする取組を行った(6月、10月、1月)。 ・「歯科保健講習会」を実施した。歯科衛生士から歯磨き指導を受けるとともに、染め出しを した口腔内の写真を撮った(10月)。後日、その写真を活用して養護教諭が指導を行い (11月)、懇談の折に、保護者にも見てもらった(12月)。 A ・朝食の摂取に関する取組を6回、歯磨きに関する取組を4回、計10回の取組を実 施した。 ・取組を積み重ねることで、朝食の摂取と歯磨きについての児童生徒の意識は着実に 高まった。その中で、保健委員会児童生徒の自発的な発案や活動意欲の高まりがみ られるようになり、それを受けて、「朝ごはん週間」や「歯磨き週間」では、普段 よりもしっかりと朝食をとり、各学級で歯磨きに取り組む姿がみられた。 学校関係 者の意見 ・日常生活に関することは、本人の自覚を育て、高めていくことが大切である。保健委員会の 児童生徒が考えた「朝食を食堂でしっかり食べよう」のPRビデオのアイディアは、演劇を 通して自覚を高めるよい方法である。児童生徒が自覚をもって、意欲的に取り組むことは大 切なことである。 ・朝の排便の習慣をつけることは大切である。しかし、排便は、一人一人の内臓の働きが関わ っているので、行きたいときにトイレに行ける学校生活のなかの雰囲気が大切である。 次年度へ 向けての 課 題 取組を通して、朝食の摂取と歯磨きについての児童生徒の意識は着実に高まったが、生活習 慣としての定着には個人差があり、定着していない児童生徒の行動変容には必ずしも結びつい ていない。取組を継続し、生活の中での行動変容、習慣化が少しずつでも進むように働き掛け ていきたい。 (評価基準 A:達成した B:ほぼ達成した C:現状維持 D:現状より悪くなった) 平成26年度 富山県立ふるさと支援学校アクションプラン ― 3 ― 進 路 支 援 個に応じた進路計画および社会自立・職業自立支援 重点項目 重点課題 現 状 ・社会経験が不足しており、卒業後の生活や進路に対する自覚が乏しく、社会自立に必要な 事柄を積極的に学ぼうとする意欲に欠ける生徒が多い。 ・進路先での定着率が低く、退学・退職後家庭にひきこもったり入院したりする場合が多い。 外部講師による進路学習(高等部)を実施する。 年4回以上 達成目標 方 策 ・自分の進路についての具体的なイメージをもつことができるように、校外学習・社会見学 等の校外活動の機会を活用したり、関係機関が実施する企業見学会やセミナー等に参加す る。 ・個に応じた進路情報を提供するために、Skype(テレビ会議システム)を活用して、各自 の進路に必要な関係機関の担当者と話をする機会を設ける。 ・卒業生を招いた講話会を企画し、在校生が卒業生と懇談する機会を設ける。 ・関係機関から講師を招き、進路について学習する機会を設ける。 100% 達成度 ・6/18(水)総合的な学習の時間を利用し、外部講師によるに生徒及び保護者向けの進 路学習会を実施した。あわせて、保護者と教職員向けの研修会も行った。 ・7/31(木)「高校生等の福祉の魅力体験バスツアー」に3年生1名が参加し、生徒が 一人で参加し、学校外の人と関わる経験をした。 ・8/20(水)登校日を利用し、卒業生の話を聞き、懇談会を開催した。 ・8/22(金)富山労働局主催「就職ガイダンス」に、3年生4名が参加し、普通高校の 具体的な 取り組み状況 生徒に混ざって交流を行った。 ・夏季休業中に、中小企業家同友会主催の「仕事見学会」に参加した。生徒及び保護者が 希望する事業所を見学し、簡単な作業体験を行った。9月に就業体験を行った生徒もい た。 ・9/12(金)中小企業家同友会主催の「仕事見学会」を活用し、第1学年の校外学習と して、見学及び軽作業体験を行った。 ・3/27(金)富山労働局主催「就職ガイダンス」に、2年生3名が参加する予定である。 評価 A ・個々の生徒の実態・ニーズに応じて、外部のセミナー等に積極的に参加した。 ・公共交通機関を利用したり、家庭や学校以外の人と関わる貴重な機会となった。 学校関係 者の意見 ・学校内では元気だが、学校の外に出るとうまくいかない生徒が多い。人の支援があって 頑張れるが、一人になるとくじけてしまう。くじけた時に、戻れる場や頼れる連携先を 作っておくこと、サポートしてくれる場所を見つけ、そこへ自力で行ける力をつけるこ とが大切である。 ・卒業後も、心のケアを中心に、自己肯定感を高めてあげる支援が必要である。在学中に、 学校が窓口となってアフターケアしていくことを、生徒自身や保護者に知らせておくこ とが大切である。 次年度へ 向けての 課 題 ・生徒数は少ないものの、個々の実態とニーズが多様である。学部全体で実施する場合は、 内容を工夫する必要がある。 ・今年度アフターケアの結果より、家庭に戻り(配慮や支援が無くなり)、良い状態を維持 することが困難な事例が見られる。在学中の生徒の成果は、様々な配慮や支援の上に成 立していたとも言え、家庭の支援力を高めることも必要であると考える。 (評価基準 A:達成した B:ほぼ達成した C:現状維持 D:現状より悪くなった)
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