ボイジャー・オブ・ザ・シーズの旅(その 4)

ボイジャー・オブ・ザ・シーズの旅(その 4)
会長 池田良穂
基隆を出港して、船はしばらく北上してから、鹿児島の南端を目指して 23 ノット近くの
最大速力に近いスピードで航海している。フィリピン付近にあり、台湾に向っている台風
からできるだけ離れる戦略のようだ。
11 日の正午に、ブリッジから、船長が今後の台風予想と航海について船内テレビで説明
をした。内容としては台風からは 500km 以上離れての航海となり、心配はいらないという
ものであった。以前、カリブ海で 7 万総トン型と 16 万総トン型のクルーズ客船でハリケー
ンに接近した経験があるだけに、台風接近時の航海はぜひとも経験したいと思っていただ
けに、ちょっと残念な気持ちも。
午後になって、風は秒速 20m 近くまでに達し、ブュフォート階級も 7 から 9 へと次第に
増加しており、デッキでは立っていられないほどになってきたが、船は 23 ノットでひたす
ら台風から逃げている。船の揺れはほとんど感じないが、時々、床がゆっさゆっさと左右
に揺すられるのが感じられる。船内は、きわめて静穏で、各種の船内イベントが予定通り
行われていた。
この日の夕方には、ブュフォート階級も若干下がって 7~8 になり、船速は 16 ノット程
度に低下した。23 ノットで走り続けていては、神戸に早く着きすぎるからだ。高速で走っ
て、とりあえず大阪湾まで船を持っていくのかと思っていたが、そうしなくても十分台風
には対応できそうとの船長の判断なのであろう。
さて、航海日の午前中に、視察団のギャレー見学が用意されていた。エグゼクティブシ
ェフが、メインダイニングのギャレーを案内し、いろいろと説明をしてくれた。食の安全
性はもちろんだが、とにかく食材を有効利用して、無駄をなくすることに徹底するように
なっているとのこと。従来は、かなりの作り置きをして、迅速に食事を出すことが優先さ
れていたが、今は基本的にはダイニングルームでの注文が来てから調理に入るメニューが
多いとのこと。コンピュータ入力されたステーキの数が画面表示され、そこにはレアから
ウェルダンまで、焼き加減ごとの注文数が瞬時に表示されるようになっていた。料理は作
ってから 4 時間たつと廃棄することが決まっており、それをできるだけ減らす努力が続け
られているとのこと。毎日のメニューは、すべて、サンプルが作られ、シェフ全員が試食
をして味を確かめることも行われており、それも試させてもらった。
午後にはクルーズライターの上田寿美子さんのクルーズに関する講演会があり、ラウン
ジが満杯になるほどの盛況だった。
この日の夕方からはフォーマルナイトで、着飾った乗客で船内は華やいだ雰囲気となっ
た。19 時からプロダクションショーがあり、メインダイニングでの食事もスペシャルメニ
ュー。食後には、スタッフのパレードと、ダイニングルームの正面階段にシェフ以下、全
スタッフが集まって、挨拶とオーソレミーオの大合唱。クルーズのラストインプレッショ
ンをよくするための仕掛けだ。乗客の盛り上がりも最高潮となる。
夕食後のカジノは大盛況。ルーレットとブラックジャックのテーブルは大人気で、なか
なか席がとれないほど。
◆ 基隆出港後の海象の移り変わり(風速はノット表示。半分にすると m/s に換算できます)
11 日
・午後には、台風の影響か、若干揺れを感じるようになった。15 時、船内テレビでは、ブ
ュフォート BF7、風速 30~33 ノット、22.5~23 ノットで北上中。
・16 時、BF8、風速 35 ノット、速力 22.5 ノット、右舷斜め前方からの波。船体運動はな
いが、床がゆっさゆっさと左右に揺すられる。
・17 時、BF9、風速 41 ノット、速力 23.0 ノットで奄美大島の北を北上中。
・18 時、BF8、風速 36 ノット、南~南東の風。速力 16.5 ノット。
12 日
・7 時、BF6、風速 22 ノット、南風、速力 15 ノット。鹿児島県の沖を航行中。海上の白波
は少なくなり、波は穏やかになったがうねりがあり、昨日よりも船体運動を感じるように
なった。
・10 時、BF6、風速 24 ノット、速力 15.3 ノット。