市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 3 月 19 日(木)発行 No.054
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
米 CPI や FRB の講演に注目。ドル円は軟調な展開も
【高金利通貨】 南ア、CPI 鈍化も SARB の政策スタンスは変化なし?
お知らせ:
1. 3 月 26 日に新企画の WEB セミナー「4 月投資戦略の『探究』 マーケットリサーチ・レーダー」を開催します。翌月の相場
材料や注目点など皆様が投資戦略を立てる上で必要な情報を提供いたしますので、是非ご覧ください。
2. 市場調査部レポート(ウィークリー・アウトルックとマンスリー・アウトルック)は 4 月より金曜日発行となります(初回は 4 月 3
日)。一週間を振り返り、翌週の投資戦略を立てる上で、ご活用ください。
【アウトルック】 米 CPI や FRB 関係者の講演に注目。ドル円は横ばい~軟調な展開も
来週の注目通貨ペア:
ドル/円→
CPI 下ブレや FRB 関係者講演で、利上げ観測が一段と後退する可能性も。
<材料>2 月の CPI(24 日)、フィッシャーFRB 副議長の講演(23 日)など
ユーロ/ドル↑ ドイツの景況改善が示されれば、一時的に反発も。ギリシャ情勢は依然不透明。
<材料>チプラス・メルケル会談(23日)、ドイツ IFO 指数(25 日)
南アランド/円↓ 金融政策スタンスは変化なしか。
<材料>SARB の会合(26 日)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、結果を保証するものではありません)
今週のレビュー:米 FOMC は「忍耐強く」削除も、ドルはほぼ全面安
今週の為替相場は、18 日の米 FOMC の結果発表までは様子見ムードが強く、とりわけ米ドル/円は 121
円台前半でほとんど動きませんでした。それまで下落基調だったユーロ、南アランド、トルコリラは対ドルで上
昇。これは、米国の弱い経済指標を受けて利上げ観測が後退したことで、ドルが反落した面が強かったので
しょう。トルコリラの反発は、TCMB(トルコ中銀)が 17 日に政策金利を据え置いたことで、利下げを求めるエ
ルドアン政権からの独立性をアピールしたことも効いたようです。その一方で、カナダドル、豪ドル、NZ ドルは
対ドルで下落。いったん落ち着いていた原油価格が再び下落に転じ、上昇基調に転じていた乳製品価格が
反落、鉄鉱石価格が続落するなど資源価格が軟調だったことが背景とみられます。BOE(英中銀)の議事
録の中で、ポンド高による低インフレ長期化リスクが指摘されたことで、ポンドは対ドルで軟調でした。
FOMC の結果を受けて、ドルはほぼ全面安の展開となりました。声明文から「(利上げ開始まで)忍耐強く
(なれる)」との文言は削除されたものの、イエレン議長の会見などから、FOMC が利上げ開始に極めて慎重
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であり、かつ利上げのペースは緩やかになると示唆され、市場は「ハト」的と解釈したためです。政策金利
(FF レート)先物に基づけば、現時点で市場は今年 10 月の FOMC まで「利上げ」よりも「据え置き」の可能性
の方が高いとみているようです。
<詳しくは、3 月 19 日付スポットコメント「米 FOMC は『ハト』!? それでもドル円は122円を目指すのか」を
ご参照ください>
来週のプレビュー:米 CPI や FRB 関係者の講演に注目。ドル円は横ばい~軟調な展開も
FOMC の結果を受けて、6 月など早期の利上げ観測はいったん後退しました。再び利上げ観測が高まるた
めには、今後の経済指標によって、FOMC が声明文で掲げた「労働市場が一段と改善し、中期的にインフレ
率が 2%に回帰すると合理的に自信が持てる」必要があります。これには少なくとも 1~2 か月かかるかもし
れません。来週のドル円は 120 円前後での横ばい、ないしは材料によって軟調な展開もありそうです。
来週は、中古住宅販売件数、新築住宅販売件数、耐久財受注、CPI(消費者物価指数)など、米国の経
済指標がいくつか発表されます(いずれも 2 月分)。とりわけ相場材料になりそうなのは、2 月の CPI でしょう。
1 月分は前年比-0.1%と 5 年ぶりのマイナス、食料とエネルギーを除くコア CPI は同 1.6%と FRB の目標 2%
を下回ったままです。FRB が重視するのは、PCE(個人消費)コア価格指数であり、先行きの見通しが重要で
す。それでも、足もとのインフレ率が一段と鈍化するようであれば、利上げ観測は一段と後退するかもしれま
せん(=ドル安要因)。
既に発表された経済指標から住宅や鉱工業生産の弱さが示されたので、住宅販売件数や耐久財受注が
それらを裏付けるのか、あるいは修正を迫るのかにも注目したいところです。
また、来週は、複数の FRB 関係者の講演が予定されています。23 日は「ハト派」とみられるフィッシャー副
議長の講演があり、利上げに慎重な姿勢が改めて強調されるかもしれません。
英国や日本の CPI も発表になります。いずれも、インフレ率の低さが金融政策の懸念材料になりつつあるの
で、CPI が下振れするようなら BOE(英中銀)の低金利長期化や日銀の追加緩和の観測につながるかもし
れません。
欧州では、ギリシャとユーロ圏の交渉が続いています。19-20 日のEU首脳会談、23 日のチプラス首相と
メルケル首相の会談などを通じて、局面打開に向けた動きがでてくるか、依然として不透明です。ECB によ
る QE(量的緩和)の開始、ドイツ株の上昇、ユーロ安などを背景に、25 日の IFO 景況感が改善するようであ
れば、それまでの下落が大幅だっただけに、ユーロが一時的に反発するかもしれません。
26 日の SARB(南アフリカ中銀)の会合では、政策金利の据え置きが決定されそうです。クガニャゴ総裁は、
これまで「次の一手」は利上げ方向であることを匂わせていましたが、最近のインフレ率の鈍化を受けて、利
上げと利下げのどちらもありうるとする中立や、利下げ方向を匂わせるようであれば、南アランドは対ドルで下
落するかもしれません。カナダドルやオセアニア通貨に関しては、あまり大きな相場材料は予定されていな
いので、クロス円の相場は、ドル円の動きに大きく左右されるかもしれません。
(チーフアナリスト 西田明弘)
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【高金利通貨】 南ア、CPI 鈍化も SARB の政策スタンスは変化なし?
3 月 26 日(木)に SARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。南アフリカの CPI(消費者物価指数)
は鈍化しているものの、現行の 5.75%に据え置かれる見通しです。今回は、SARB のクガニャゴ総裁が会見
で、金融政策についてどのようなスタンスを示すのかが最大の焦点になりそうです。
◆前回会合では、政策スタンスは利上げ方向であることを示唆◆
前回 1 月 29 日の会合時にクガニャゴ総裁は会見で、金融政策について「現在の政策スタンスは適
切」と述べ、当面政策金利の据え置きを続ける可能性を示唆しまた。また、当時 ECB(欧州中銀)や BOC
(カナダ中銀)が金融緩和に踏み切っていたことや CPI 鈍化を受けて、市場で浮上していた利下げ観測につ
いては「利下げのハードルは非常に高い」とし利下げ観測を一蹴。反対に「政策のさらなる調整余地はある」
との見解を示し、政策スタンスは“どちらかといえば利上げ方向”であることを匂わせました(SARB は昨年 2
回利上げを実施しており、“政策のさらなる調整”=さらなる利上げと考えられます)。
◆CPI は前回会合時より一段と鈍化◆
SARB はインフレ目標を設定しており、中期的に CPI 上昇率を+3~6%の範囲内に収めることを目標にし
ています。南アフリカの CPI は、昨年 5 月と 6 月の前年比+6.6%をピークに鈍化傾向にあり、3 月 18 日に
発表された 2 月 CPI は原油安の影響などから前年比+3.9%と、1 月の+4.4%から鈍化、2011 年 2 月以
来 4 年ぶりの低い伸びとなりました。
南アフリカの CPI(前年比)と SARB の政策金利
(出所:Bloomberg)
前回 1 月会合時に明らかになっていた昨年 12 月の CPI は前年比+5.3%。それから上昇率は大幅に鈍
化しています。
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◆ランド安が原油安の影響を相殺◆
原油価格が供給過剰懸念などから足もとで再び下落しています。原油価格の下落は CPI の押し下げ要
因として作用します。ただ一方で、FRB の(米連邦準備理事会)利上げ観測を背景に、南アフリカランドは対
米ドルで下落基調にあり、先週約 13 年ぶりの安値をつけました。ランド安は輸入物価を通じて CPI 押し上げ
効果につながるとみられ、今後その効果が表面化することが考えられます。
米ドル/ランド(日足)
(出所:Bloomberg)
◆SARB は政策スタンスを維持か◆
CPI の鈍化や原油価格の下落の面からみれば、SARB は金融政策スタンスをこれまでの“どちらかといえ
ば利上げ方向”から“中立(利上げと利下げ、どちらもあり得る)”に変化させる可能性があります。
ただ、SARB は 1 月 29 日の会合時に、CPI は 2015 年 4-6 月に+3.5%で底に達するとの見通しを示し
ており、前年比+3.9%になった 2 月 CPI は SARB の想定の範囲内と言えそうです。また、ランド安による CPI
押し上げ効果を考えると、3 月 26 日のクガニャゴ総裁の会見では、1 月の「どちらかといえば利上げ方向」の
政策スタンスが維持されるとみられます。
ECB(欧州中銀)が量的緩和を開始し、RBA(豪中銀)なども利下げの可能性を残しているなかで、やや
利上げ方向の政策スタンスを維持することは、ランドの下支え材料になりそうです。
しかし、現在の市場の関心は FRB の金融政策にあり、FRB が早ければ今年 6 月にも利上げを開始すると
予想される状況では、ランドは対米ドルで一段と下落する可能性があります。その場合、対米ドルでの下落
に連れ安する格好でランド/円も値を下げるかもしれません。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
市場予想
前回値
0.2%
494万戸
-
482万戸
0.3%
【EU】チプラス首相とメルケル首相の会談
23:00 【米】中古住宅販売件数(2月)
3月24日 18:30 【英】消費者物価指数 前年比(2月)
3月23日
1月は少なくとも89年以降の最低の上昇率だった。原油安の効果により2月は一段と鈍化
しそう
21:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(2月)
1.5%
1.6%
1.6%
総合指数は前年比-0.1%と、2009年10月以来のマイナスだった。ガソリン価格は1月中
旬に底打ちしているが、ドル実効レートの上昇により輸入品を中心にコア物価上昇圧力
は鈍化も
23:00 【米】新築住宅販売件数(2月)
47.5万戸
48.1万戸
3月25日 18:00 【独】IFO景気動向指数(3月)
108.0
106.8
低迷するユーロ圏の中でもドイツは景気が比較的堅調。ECBのQE開始、ドイツを中心とし
た株高、ユーロ安による輸出押し上げ効果なども景気にプラスか
3月26日
21:30 【米】耐久財受注 前月比(2月)
【南ア】SARB政策金利発表
5.75%
0.6%
-
2.8%
5.75%
クガニャゴ総裁は、インフレ圧力抑制のためにきつめの政策運営を志向。足もとのインフ
レ率鈍化により、利上げ方向の政策スタンスに修正も
3月27日
8:30 【日】消費者物価コア指数 前年比(2月)
2.3%
-
2.2%
デフレからは脱却したとみられるものの、消費税増税の影響を除けば、物価上昇率はわ
ずかにとどまっている模様。円安は輸入価格の上昇を通じて物価押し上げ要因
市場予想はBloomberg、3月19日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年9月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
61%
39%
英国
0.50
22%
73%
5%
NZ
3.50
50%
50%
0%
カナダ
0.75
65%
35%
0%
ユーロ圏
0.05
62%
38%
0%
豪州
2.25
92%
8%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。3月18日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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