第一席 伝統を受継ぐ 広島市立戸坂中学校二年(広島県) 山田 愛 深 私は小学校六年生の十月に開催された、おやじサミットの舞台上 で青年の主張を発表しました。 曾祖母はお道具を手にしながらよくこう言います。 「私の大切なものだから、譲ってあげたい」私はこの時、伝統を譲 り受けるということは、物だけではなく、心持ちも譲り受けること ではないかと思いました。それからは前よりももっともっと真剣に 茶道のお稽古に取り組むようになりました。 茶道 の 言葉 の 中 に「 和敬清寂」と い う 言葉 が あ り ま す。「 和敬清 寂」とはその漢字一字一字に大切な意味があります。「和」はお互い に心を開いて仲良くすること。「敬」は尊敬の意味でお互いに敬うこ と。「清」は清らかという漢字を書きます。目に見える清らかさだけ ではなく、心の中も清らかであること。「寂」は寂しいという漢字を 茶道部は現在、三十人で活動しています。週に一度、山中先生に ご指導いただいてます。また、今年からボランティア活動として、 書きますが、どのような時にでも動じない心を持つことです。 立てて嬉しく思います。 中に「和敬清寂」という言葉が浮かんできます。茶道部で「礼儀」 その時浴衣姿でお客様にお茶の接待をされている茶道部の先輩方 を見て憧れました。そして今日また、着物姿でもう一度同じ舞台に 私が戸坂中学校の茶道部に入ったのは必然的なことだったと思い ます。憧れもあったのですが、茶道をしている曾祖母の影響を大き も学ばせていただきました。今では校外でも自然にいろんな方々に 毎朝、正門付近の清掃活動を行っています。掃除をしていると心の く受けているからです。 た私に、茶器やお道具の話をしてくれる曾祖母の笑顔はとても楽し 物にまつわる話もしてくれました。茶道部に入って、少し大人になっ たいと思います。そして、自分の心を大切にし、人や物に思いやり は絶えず学び続け、一つひとつの物事に集中して取り組むようにし 私は大好きな曾祖母や尊敬する山中先生のように、自分の知識や ふるまいを教え、伝えられるような人になりたいです。そのために 挨拶できるようになりました。 そうです。 の持てる人間になりたいと思っています。 曾祖母は茶道のことはもちろん、自分の体験談や四季折々の自然 について教えてくれます。着物を作る仕事をしていたので、よく着 茶道部では山中宗春先生のご指導のもと、浴衣を自分で着られる ようになりました。そのことを曾祖母に伝えると、嬉しそうに笑っ てくれました。私が着ているこの着物も曾祖母から譲り受けたもの です。
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