第一席 和 上西 嘉乃

第一席
和
神戸女学院高等学部二年(兵庫県)
上西 嘉
乃
翌日お抹茶を点てて余韻に浸りつつ文化祭を振り返りました。発
想の斬新さ、とことんまで拘った準備、お点前の猛特訓。どれも満
員御礼や優秀賞に大きく貢献しています。でも私は文化祭最後のお
席に、この成功が象徴されているような気がしたのでした。
亭主・半東ともにお稽古の成果を存分に発揮し、リハーサルで最
も苦心したお運びとの連携もスムーズ。目玉企画の体験教室も楽し
んでもらえた、まさに私が理想として心に描いていた通りのお茶会。
それぞれが与えられた役でベストを尽くしながらも、誰かが主張し
うようにできないのに、なぜその時はそこにいた全員が文字通り一
すぎることも掻き消されることもない心地良い調和。一人のお点前
忘れようにも忘れられない九月二十日。無我夢中で楽しんで、楽
しむ余裕もないほど忙しく、でもやっぱり楽しくて仕方なかった、
体となれたのか。これが和敬清寂の「和」ではないだろうか。「和」
一色 の 四 ヶ 月間 を 過 ご し ま し た。失敗 し て 落 ち 込 ん だ り 焦 っ て 空
ハーサルを繰り返し、本場京都にまで茶道体験に行きひたすら部活
道を教えてくださった先生がいて、一緒にお稽古した仲間がいます。
りません。たとえ一客一亭でも、お茶を飲んでくれる客がいて、茶
この「和」は私に、茶道は個人プレーではないということを教え
てくれました。お運びや裏方などたくさんの人が関わる大寄せに限
を重んじる茶道だからこその調和ではないか。私は最終的に、文化
ですら力を入れすぎたり手順を間違ったりとバラバラでなかなか思
そんな文化祭があった日の日記です。
祭を成功に導いたのは「和」であるとの結論に達しました。
「これから文化祭の準備のない生活を送るのが想像できない」
茶道部の部長になってはりきっていた私は、たくさんの新しいこ
とに挑戦しました。難しいお点前や体験教室の開催、リーフレット
回ったりする一方、茶道の知識を深めたり友達の隠れた才能を発見
そういうご縁の上に成り立っている自分を意識して初めて、結構な
の 作成 に 内装 の 充実 な ど で す。そ の た め に 五月 か ら 会議 を 重 ね リ
したりもして、自分なりに大きく成長できた一夏でした。
皆の努力が報われた気がしてほっとしました。賞状を受け取ったと
お茶席の満員御礼を実現し、そのうえクラブ優秀賞まで獲得して、
つも救われていたこと。満員御礼より優秀賞より大切な、今でも色
道部で良かったと言って笑う顔、そしてそういった皆の優しさにい
加えて文化祭では茶道においてだけでなく、茶道部の部長として
も皆に支えてもらいました。さりげない手助け、励ましの言葉、茶
お点前ができるのでしょう。
き聞こえた「おめでとう!」
「ありがとう!」という声は今でも耳に
褪せない私の一番の想い出です。こんな素敵な「和」に恵まれて本
文化祭当日はとにかく心配で仕方ありませんでしたが、頑張った
甲斐あって茶道部のお茶席は大成功を収めました。目標にしていた
残っています。
当に幸せでした。
次 の お 茶会 は 引退 の と き。亭主 は 私、お 客様 は 部員 の 皆 で す。
様々な追憶が頭を駆け巡るでしょう。茶道部で皆に出会えたこと、
一緒に泣いたり笑ったりしたこと、こんな私に付いてきてくれたこ
と。
「和」という絆で結ばれた皆への感謝を挙げるときりがありませ
んが、言葉では言い表せないほど大きなこの感謝をお点前を通して
伝えたいです。そのために残り少ない部活の一回一回を大事にしつ
つ、大好きな皆と共にこれからもお稽古に励みたいと思います。