HHT JAPAN 2015 iPS細胞によるHHTの疾患研究への期待 森崎隆幸 (もりさき たかゆき) 国立循環器病研究センター 研究所分子生物学部・臨床遺伝科 iPS細胞は2006年にマウスで、次いで2007年にヒトからも樹立された体細胞由来の多能性幹細胞 で、ほぼすべての種類の細胞や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力を持つ。iPS 細胞は、病気の原因の解明、新しい薬の開発、細胞移植治療などの再生医療への活用が期待され ており、昨年、日本でiPS細胞を用いて網膜疾患に対する臨床研究が開始された。 難治性疾患では、患者体細胞からiPS細胞を作製して、疾患に対応する細胞に分化させて機能を検 討して疾患原因を解明する研究の進捗が期待されている。さらに、こうした細胞を利用して薬剤の 有効性や副作用の評価を行う事により、新薬開発の進展も期待されている。 こうした研究の進捗に呼応して、国立循環器病研究センターは種々の心血管系の難病について患者 由来iPS細胞を樹立する疾患研究を開始し、そのなかで、熊本大学発生医学研究所江良択実教授と 共同で、HHT患者由来iPS細胞の樹立とその細胞を利用した研究を開始している。具体的には、江 良教授の開発した新規手法により、皮膚を用いず、採血により得られる血液細胞を用いて、センダ イウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行い、高効率にiPS細胞を樹立し、ついで、導入遺伝子 を除去することにより、患者状態を反映するiPS細胞を作製する。さらに、既に確立している血管 内皮細胞への分化系を用いて、HHT患者の患部に相当する細胞の検討が行える様にし、病態の細 胞レベルでの把握と、新薬開発につながる細胞モデルでの研究を実施する予定である。 今回、こうしたHHT患者由来のiPS細胞の作製とその応用研究について、現状と期待を紹介する Key words: iPS 細胞、細胞分化、遺伝子導入、疾患モデル Morisaki T
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