(公財)東京都保健医療公社 多摩南部地域病院 平成 27年3月 第80号 連携室レター たまなん 発行:多摩南部地域病院 地域医療連携室 TEL:042-338-5111(代表) http:/www.tamanan-hp.com/ 放射線科医の画像診断シリーズ 症 例:49 歳、女性 一週間前より右頚部から後頚部にかけての痛み出現。 ふらつき、めまいも加わったため、近医受診し、MRI 施行。 脳幹近傍に腫瘍が疑われたため、当院紹介受診。なお、神経学的所見なし。 解 説 橋前面(前橋槽内)に約 9×9×16 ㎜程の類円形の嚢 胞性病変が認められる。 嚢胞成分の信号は、T1 強調・T2 強調画像とも脳脊髄 液より軽度上昇しており、蛋白濃度もしくは粘調度が やや高い液体貯留が示唆される。また、fluid-fluid level が形成されていることより、沈殿物が存在して いることが示唆される。 この沈殿物は T2*強調画像での信号低下が認められな いことより、出血成分ではないと思われる。 橋および脳底動脈は、この嚢胞により軽度圧排されて いるが、浸潤は認められない。 なお、拡散強調画像での信号上昇は認められない。 T1 強調画像 矢状断像 T2 強調画像 横断像 T2 強調画像 矢状断像 ☞ 裏面に続きます T2*強調画像 矢状断像 診 神 断 経 腸 拡散強調画像 脳幹前面嚢胞性病変→ 性 嚢 部位および信号より、神経腸性嚢胞(neurentric cyst) として診断し、経過観察中。 胞 胎生期にみられる neurentric canal の遺残で、split notochord syndrome に分類される。腸管の細胞 に覆われた嚢胞で、中枢神経系では多くは脊柱管の硬膜内髄外に発生するが、時に脳幹前面(特に延髄 前面)にもみられる。 好発年齢はなく、男女差も認められない。 頭蓋内神経腸性嚢胞は非常に稀である。 症状は、頭部病変では偶然の発見か、頭痛であることが多い。 典型的な画像所見としては、延髄前面正中の境界明瞭な類円形の脳実質外嚢胞性腫瘤で、内容は脳脊髄 液より軽度高信号を呈する。壁時結節や充実成分は認められない。 小脳橋角部や斜台発生も見られ、稀に鞍上槽、四丘体槽、前頭蓋底に発生する。 脳幹前面の嚢胞性病変は比較的稀であり、その場合は類上皮腫、くも膜嚢胞、神経鞘腫なども鑑別に上 がる。 本症例では、拡散強調画像の信号より類上皮腫は否定的で、出血を呈したくも膜嚢胞としても T2*強調 画像でのヘモジデリン検出ができず、神経鞘腫としては完全の嚢胞であったことより、神経腸性嚢胞を 疑っている。 そ の 後 の 経 過 約一年半の経過観察であるが、著変を認めない。 医療連携懇談会のお知らせ ご案内と申込用紙を、2 月下旬 日 時:平成 27 年 3 月 26 日(木) 講 演:19:00~ 会 場:京王プラザホテル多摩 4階 アポロ に送らせていただいておりま すのでご確認ください。 内科 医員 本城 聡 「当院における糖尿病治療について」 皆様のご参加をお待ちしてお 懇談会:19:45~ ります。 ☆連携室レターを HP でもご覧いただけます(HP→連携医の方へ→ユーザ名(renkeii)→パスワード(tamanan)) ☆ご意見承り専用メールアドレス [email protected] もご利用ください! ☆当院は紹介予約制の病院です。救急の場合を除き、地域の医療機関からの紹介と予約が必要になります。 ☆当日の救急患者さんのご依頼は、各診療科救急当番医までご連絡をお願いいたします。
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