ケーススタディ6

ケーススタディ6
粟野裕貴、落合智徳、春谷千智、
小林祐太、佐々木明洋、武井裕、
中村博大、長谷川怜美、松村聡介、
吉田祥徳、石川太郎、宮弘子
課題文
• 【症例】32歳 男性
• 【主訴】右臀部から大腿後側面の痛みと
下腿外側から足背のしびれ
• 【現病歴】
数か月前から右下腿の違和感を感じていた。
2週間前から徐々に大腿外側の痛みが
増悪し、下腿から足部のしびれも強くなった。
立位、歩行が困難となったため、外来受診。
図1:単純X線
正面像
側面像
図2:腰椎MRI-T2強調画像
矢状断像
横断像
【問題】
1. 考えられる疾患は何か?
2. 本症例で起こることが予想される神経学的
異常について詳しく述べよ。
3. どのような治療法があるか、またその適応
について述べよ。
問1:診断
考えられる疾患
本症例では……
• 臀部及び下腿の痛み
• それに続く下腿の腫れ
を主訴としている。
よって
• 腰椎椎間板ヘルニア
または
• 腰部脊柱管狭窄症
が疑われる。
MRI所見
• 知覚神経部位が下腿
から足背→L5部位での
神経根障害
• 片側での急な経過での
下肢痛→ヘルニアの特
徴
• MRIでは、L4-5での椎間
板膨隆
↓
椎間板ヘルニア
問2:症状
腰椎椎間板ヘルニア
• 脱出した椎間板組織が神経根を圧迫
• またヘルニア腫瘤が神経根や馬尾を圧迫す
ると炎症が発生し、疼痛などの症状を示す。
神経症状
• 腰椎と、圧迫された神経根の支配領域に放散す
る下肢痛や感覚・運動障害。今回はL5神経根な
ので支配筋は前頸骨筋・長母指伸筋・長指伸筋
である。
• 排尿障害(尿閉・残尿・りきみによる尿漏れ)が
生じることもある
• 坐骨神経の走向に一致した坐骨切痕、大腿、下
腿後面中央部で神経刺激徴候陽性(ヴァレーの
圧痛点)。
問3:治療法
椎間板ヘルニアの治療法
• 保存療法
• 手術
保存療法の適応と特徴
• 絶対的手術適応がない場合は、手術侵襲の
ない保存療法を優先して行う。
• 保存療法ではほとんどの症例が3カ月ほどで
軽快するか、症状がやわらぐ
保存療法の方法(急性期)
• 安静にする
– 本来身体が持つ自然治癒力を引き出す。
• 薬物療法
– NSAIDs、筋弛緩薬の投与による疼痛のコントロール
• ブロック療法
– 局所麻酔薬を注射して感覚神経、運動神経のはたらきを鈍ら
せ痛みを和らげる
• コルセット
– 装着することで体幹を支える。
保存療法の方法(亜急性期・慢性期)
• 運動療法
– 筋力の強化によって腰部の支持の強化を図る)
• 理学療法
– 温熱療法(感覚受容器の閾値を上げたり、組織の代
謝を促進したりする効果がある)
– 低周波療法(筋委縮を防止する効果がある)
• 牽引療法
– 椎間板の内圧低下などが目的。
手術の適応
• 馬尾障害(膀胱直腸障害、性機能障害)があ
る症例(できるだけ早期に手術、絶対適応)
• 麻痺、強い痛み、著しい筋力低下がある症例
主な術式
• 後方椎間板切除術(Love法)
• 内視鏡下椎間板摘出術(MED法)
• 経皮的髄外摘出術(PN法)
• レーザー治療 経皮的髄核減圧術(PLDD)
後方椎間板摘出術(Love法)
• 従来から一般的で高い治療成績が期待できる確立
されている方法。
• 後方からのアプローチ。
• 椎弓を部分的に切除し、圧迫されている神経根を注
意深く排除、ヘルニア腫瘤を摘出する。
内視鏡下椎間板摘出術(MED法)
• 最近よく用いられるようになってきた方法。
• 切開も小さく低侵襲で、広い術野が確保できる。
• Love法が基本になる。
• 術後入院期間もLove法より短く、痛みも少ない。