大阪市立大学看護短期人学部紀 要 カ 1 第 3巷 ( 2 ( . 3) 看護職者の糖尿病患者 に対する認識 とその関連要因 大阪市立大学看護塩期大学部 東 ますみ CONTNBUTI NG FACI Y ) RSTO THE NURSESIRECOGNI TI ON OF PATI ENTSWI TH DI ABE TESMELuTUS Ma s umiAzUMA Os a kaCi t yUni v er s i t yCo l l e geo fNur s i ng 要 旨 本研究の 目的は,糖尿病患者 に対 して患者教育 を行 っている看護職者が,教 育の対象者であ る糖尿病患 者 をどの ように捉 えているのか とい う患者認識や,その認識 を形成す る要因 を明 らかにするこ とである. 大学病院で糖尿病専 門病棟 に勤務 す る看護職者6 8 名 を対象に質問紙調査 を行 った.質問項 目は独 自に作 0 項 目であ り, 4段階評定尺度法 を用いて回答 を求め,因子分析 を行 った. 成 した糖尿病患者 に対す る認識 1 対象者 の背景 と質問項 目との関係 はS pea ma nの順位相 関係数で求め,群 間比較 についてはWi l c o xon順位 r 和検定 を用いて分析 を行 った.その結果,糖尿病患者 に対す る認識 と して 「 心 理状態へ の理解 J 自己管 理 に対す る理解 と厳 しい評価 Jr 患 者 に対す る諦めJ の 3つの因子 が抽 出 され た. また,糖尿 病患者 に対 す る教育歴 と学生時代 の患者教育 についての受講の有無が,患者認識 に影響 を及ぼす要因であ ることが明 らか となった. キーワー ド:看護職者,糖尿病患者 ,患者認識 ,患者教育,教育歴 教育 され る側」 を挙 げてい る. この教育す る 育内容」「 は じめに 側 として看護職者 は教 育効果 に大 きな影響 を及ぼ してい 糖尿病 は,生活習慣病 ともいわれ,過食行動や運動不 る. さらに 「 教育方法」「 教育内容」を実践するのは 「 教 足,肥満,心理的 ・社会的ス トレス等 との関連が大 きく, 育す る側 」である看護 職者であることか ら,その影響 は 完全寛解が困難 な疾患であ る.そのため患 者 は,病気 と 計 り知れ ない. しか し,糖尿病患者 に関わる看護職者 か 向 き合い生涯 にわた り自己管理 を行 っていか なければな ら「 患者教育は難 しい」「 患者の意欲が感 じられない」「 わ らない.一方,糖尿病患者 に関わる看護職者 は,患者が かってい る と言 って も行動 レベルではで きない患者が多 疾患 を持 ちなが らも健康 な人 と同様 に社会生活 を送 り, い」 な どの声が聞かれ ることが多い. Qua l i t yo fLi eが維持で きる ように疾患 や治療方法, 日常 f わが国 における糖尿 病患者 に対す る患者教育 について 生活での実践方法 に関す る説明 を行 うな どの患者教育 を の研究 は,患者 に焦点 を当てた研究が ほ とん どであ り, 行 っている. 教育す る側 である看護職者 に焦点 を当て調査 を行 った研 患者教育についてWhbT u mらl) は 「クライエ ン ト教育」 究 は, 1 996年度 に学 会発表抄 録 と して尾形 3)と小林 4) とい う言葉 を用いて次 の ように定義 してい る. クライエ の 2件見 られるのみで ある.尾形の研究 は,糖尿病患者 ン ト教育 とは,健康教育活動 を行 う際のパ ー トナー とな に限定 しない患者教育全 体 についての意識調査であ り, る人 に対す る教育の過程であ り,学習す る者 と教 える者 小林の研 究 は,糖尿病 の事例 か ら保健指導 に対す る態度 とが互いに,教 えるべ き問題 を確認 し合 い,教育の過程 に関す る優先性 と積極性 を看護学生 と看護職者で比較 し をどの ように進めてい くか を決定す る と定義 している. た ものであ る. この よ うに, 2件の研 究 は糖尿病患者 に そ して, クライエ ン ト教育 とい う言葉 は,学習者の 自律 直接関わっている看護職者 に焦点 を当てた研究ではない. 性 と自己主導的 な役割が,高 まっているこ とを示す場合 また,患 者教育 を効率 よ く行 うため には, まずその患 者 が多い と述べている.このように定義 される患者教育は, をよ く知 ることが大切 である 51と言われているが,看護 慢性疾患が増加 している今 日では,看護 の必 要不可欠 な 職者が糖尿病患者 を どの ように捉 え,患者教育 を行 って 機能の一つ となっている.そ して,堀 内 2)は教育効果 に いるのか とい うことについて も, これ まで明 らかに され 影響する 4つの条件 として 「 教育する側」「 教育方法」 「 教 ていない.そこで今回,糖尿病患者 に関わる看護職者 に - 1」 大阪 前 t f _ 人草看 護短期 大学部紀 要 ( 第 3選 ( 2氾 . 3) 1 焦点 を当て糖尿病患者 をどの ように捉 えているのか とい にイ ンタビュー した結果 10) を参考 に した. また,筆者 う患者認識や, またその要因について検討 したので,報 が臨地実習で学生 と共 に糖尿病患者 に関わる中で,看護 告す る. 職者か らよ く聞かれる意見や,糖尿病患者 に関 わる看護 職者 のコ ミュニケーシ ョンに関す る研 究 11)12) を参考 に, 1 0項 目を独 自に作成 した.その 1 0項 目を 「非常 にそ う思 う」「そ う思 う」「あ ま りそ う思 わ ない」「 全 くそ う思 わ Ⅰ.研 究 目的 ない」の 4段 階評定尺度法 を用 いて調査 した. また,糖 尿病患者 についての イメージ,教育 の上手 く行 かない原 患者教育 を行 う側である看護職者 が,教育 の対象者で 因については 自由記述法 を用いて調査 した. ある糖尿病患者 を どの ように捉 えてい るのか, とい う患 者認識や,その患者認識 を形成す る要因を明 らかにす る 対象者の背景 と して,年齢,看護職者歴,糖尿病患者 ことを目的 とす る. 教育歴 を尋ねた. また,患者教育 の基礎 について学生時 代 に講義 を受 けたこと ( 以下,患者教育受講)があるか どうか,勤務病院以外 で開催 される糖尿病 に関す る勉強 Ⅱ.用語 の概念規定 会や研修等 に積極的に参加 ( 以下,勉強会参加 )す るか どうか,糖尿病教室で集団指導 を行 った経験 ( 以下,集 団指 導経験 )が あるか どうか について 「あ る」「ない」 患 者認 識 :教育心理学 新辞典 6)に よる と認識 には, あるいは 「 す る」「しない」 の 2つの選択肢 を設 けた. 理性的認識 と感性 的認識があ り,理性 的認識 とは,論理 的 に概念 を操作 し,それ を通 して対象の よ り本質的 な特 4.分析方法 徴 ・関係 を知 るこ とをい う.感性 的認識 とは,感覚 ・知 覚 を通 して対象の偶然的な ものを含 めた個 々の具体的な SI O. O Jを使用 し統計処理 を行 った.有意 デー タはSPS 特質や特徴 ・関係 を知ることをい う.そこで,本研究で 水準 は 5% として検定 した.質問項 目はグループ化 を行 は患者認識 を,看護職者が これまで学 んで きた糖尿病 に うため に因子分析 ( 主成分分析法 ,直交回転,バ リマ ッ ついての知識や,実際の看護場面での経験 か ら得 られた クス法) を行 った.質問項 目と年齢,看護職者歴,糖尿 ものの見方,考 え方 を通 して糖尿病患者独 自の性質や実 ea r ma nの 病患者教育歴 ( 以下,教育歴 ) との関係 はSp 体的 ・個別的な特徴 を知 ることと定義 した. 順位相関係数で求めた. また,各質問項 目と患者教育受 講の有無,勉 強会参加の有無,集団指導経験 の有無 につ いての群 間比 較 は ,Wi l c oxonの順位和検定 を用 いて解 析 した. 自由記述 につ いて は,同様 の 内容 をK J法 を用 Ⅲ.研 究方法 いてカテゴ リー化 し分析 を行 った. 1.調査対象および期間 対象施設 は,設置主体や規模の違 い による影響 を考慮 Ⅳ.研 究結果 し,大阪府内に所在す る 4つの大学病院 を選択 した.そ して, これ らの大学病院の中で糖尿 病教室 を開催 してい 1.対象者の背景 ( 表 1) る病棟 あ るいは糖尿病専 門病棟 に勤務す る看護職者 ( 准 看護婦 を除 く)の うち,研 究の説明 に対 して同意の得 ら 看護職者 の平均 年齢 は2 9. 2±9. 3歳 ( 2 2歳 ∼5 9歳)で れた乃名 を対象 とした.回収者数は7 2 名 ( 回収率9 6 . 0%) 4±9. 3年 (2年 -3 8年)であ あ り,平均看護職者歴 は8. であったが,解析 には患者教育 に対す る経験 の浅い 1年 った.教育歴 は 2-3年が最 も多 く3 3名 ( 4 8. 5%)であ 目の看護職者 を除 く6 8 名 ( 有効回答率9 0. 7%) を対象 と り,平均教育歴 は3 . 6±2. 2年であった. した. なお, 4つの大学病 院は糖尿 病指導マニュアル と 2.患者認識 に関す る内容の因子分析 チェ ック リス トを用いて患者教育 を行 ってい る. 調査期 間は1 9 9 7年 7月か ら 9月である. 患者認識 についての質問項 目をグループ化す るため に 因子分析 を行 った ( 表 2) .1 0項 目の うち共通性 の低 い 2.調査方法 2項 目 「入退院 を繰 り返す患者 は少 ない」,「病 院食以外 デー タ収集 は,無記名式 の質問紙調査法 を用いた.調 に隠れて食べ ている患者 は少 ない」 を削除 し, 8項 目と 査票 は看護部長 に対象への配布お よび回収 を依頼 した. した.そ して さらに因子分析 を行 い,固有値 1以上 の も 3.調査 内容 4. 3%であった. での累積寄与率 は6 の と して 3因子が抽 出 された.第 1因子 か ら第 3因子 ま 第 1因子 は 「 将来 に不安 を感 じてい る」「ス トレス を 質問項 目を作成す るにあたって,正木 7)8)9) が慢性病 患者の看護援助の構造化 を試みるため に分析 に用いた3 8 強 く感 じてい る」「 糖尿病 と診 断 され る と強い シ ョック 事例 の糖尿病患者 の言動や,筆者が入院中の糖尿病患者 を受 ける」の 3項 目か ら構成 された. これ ら 3項 目の回 -2- 大阪市 立大学看護短期 大学部紀 安 表 1 対象者の背景 思 う思 わ ない」「あ ま りそ う思 わ ない」 を合計 す る と.r 0%以 上 を占め た (図 2). そ こで r自己管 わ ない」が 9 ( ∩-6 8) 背 年齢 景 看護職者歴 教育歴 患者教育 受講 の有無 勉強会 参加 の有無 集団指導 構 成 2 0歳代 3 0歳代 4 0歳代 5 0歳代 5年未満 5-9年 1 0-1 4年 1 5-1 9年 2 0-2 4年 2 5-2 9 年 3 0年以上 2年未満 2-3年 4-5年 6-7年 8-9年 1 0-1 1 年 受講 した 受講していない 参加 す る 参加 しない 経験 あ り 01 . 3) 第 3巻 く 2 理 に対す る理解 と厳 しい評価 J と命名 した.第 2因子の 人数 ( %) 5 2(7 6 . 5) 7(1 0 . 3) 3( 4 . 4) 6( 8 . 8) 2 9(4 2 . 7) 2 5(3 6 . 8) 3( 4 . 4) 2( 2. 9) 2( 2 . 9) 3( 4. 4) 4( 5 . 9) 9(1 3. 2) 3 3(4 8 . 5) 1 5(2 2 . 0) 5( 7 . 4) 5( 7 . 4) 1( 1 . 5) 3 5(51 . 5) 3 3(4 8 . 5) 2 6(3 8 . 2) 4 2(61 . 8) 3 2(47 . 1) 2. 4%で あ った.第 3因子 は 2項 目か ら構 因子寄与率 は2 成 され 「い くら指導 を行 って も無駄 と思 う患者がい る」 「 指導終 了後 も疾患 を楽天的 に考 えてい る」 であった. 回答分布 は 「 非常 にそ う思 う」「そ う思 う」 を合計 す る と看護職者 の6 0%以 上 が 「思 う」 と回答 した (図 3) . そ こで 『 患 者 に対す る諦 め』 と命名 した.第 3因子 の因 子寄与率 は 1 6. 2%であ った. 3.患者認識 と年齢 ,看護職者風 教育歴 との関連 患者認識 との関連 をみ るため に相 関係数 を算 出 した と 糖尿病 と診断 される と強 ころ,第 1因子 の項 目である 「 い シ ョックを受 け る」, 第 2因子 の項 目で あ る 「 指導 が 上手 く行 か ない場合 は患 者 に問題 が あ る」「自己管理 が 上手 くで きて当然 であ る」 の計 3項 目 と,教育歴 との間 に,有意 な正の相関がみ られた ( 表 3) .患者認識 と年齢, 看護職者歴 との間 には有 意 な相 関 はなか った. 4.患者認識 と患者教育受講の有無,勉強会参加の有無, 集 団指 導経 験の有 無 との関連 患 者認 識 との 間の群 間比較 をWi l coxon順位 和検定 を 用 いて解析 した.その結果 「 指導が上手 く行 か ない場 合 は患 者 に問題 があ る」と患者教育受講 の有無 との間に有 答分布 をみ る と 「 非常 にそ う思 う」「そ う思 う」を合計 意差 が認 め られ た ( 表 4).勉 強 会参 加 の有 無,集 団指 5 %以上が 「 思 う」 と回答 した ( 図 1) . すると看護職者の8 導経験 の有無 との間 には有意差 は認め られ なか った. そ こで r 心理状態へ の理解 』と命名 した.第 1因子 の因 5. 7%であった.第 2因子 は 「指導が上手 く 子寄与率 は2 行 か ない場合 は患 者 に問題 が あ る」「自己管 理 は上手 く 5.糖尿病 患者 に対 す るイ メージ 無回答 を除 く6 2 名の記述内容の総数は1 6 1 項 目であった. 実際 自己管理 は上手 くで きている」 で きて当然である」「 看護職者 1人当た りの最少記述数 は 1項 目,最多記述数 全 くそ の 3項 目か ら構成 された. これ らの回答 分布 は 「 . 4 項 目であった.記述内容 を 「プ は 5項 目で平均 す る と2 表 2 糖尿病患者に対 する認識についての因子分析結果 因 子 名 と 項 因子 1 目 第 1因子 将来 に不安 心理状態への理解 を感 じてい る ス トレスを強 く感 じてい る 因子 2 因子 3 0. 9 27 -0. 1 2 0 0. 8 8 2 -0. 1 9 4 0. 0 0 3 0. 1 5 9 0. 8 7 3 0 . 8 41 0. 8 0 2 4 3 4 -0 0. 4 1 7 1 7 9 0. 7 4 9 0. 0 81 0. 6 9 08 1 0. 5 91 糖尿病 第 2因子 と診断 自己管理 される に対す と強 合 い は患 る理解 シ ョックを受 と厳 しい評価 ける 指導が上手 く行 かない場 者 に問題 が ある 自己管理 は上手 くで きて当然であ る 0 . 0 61 3 4 -0 . 1 5 5 実際 第3 因子 自己管理 患 者 は上手 に対す くで る諦 きてい め い くら指導 を行 つて も無駄 と思 る う患 者がい る 指導終了後 も疾患 を楽天 的 に考 えている -0 0 . 0 1 3 2 0 9 -0 0 . 2 6 2 1 3 8 -0. 2 0 4 0 . 0 0 4 0. 2 4 2 0 . 7 5 6 0 . 6 3 9 1 2 . 0 5 5 1 . 7 91 . 2 9 6 25 . 6 85 2 2. 3 8 6 1 6. 1 9 6 25 . 6 85 4 8. 0 7 1 6 4. 2 6 6 因子負荷量の 2乗和 因子寄与率 ( %) 累積寄与率 ( %) -3- 共通性 0. 6 4 5 1 3 7 0. 4 67 大阪市 立大学看護短期 大学部紀要 1 2 4 3 1 1: 全くそう思わない 2 4 3 2: あまりそう思わない 1 3: そう思う 2 3 01 . 3) 第 3巻 ( 2 4 4: 非常にそう思う 図 1 第 1因子の回答分布 1 2 1 4 3 1: 全くそう思わない 2 2: あまりそう思わない 1 4 3 3: そう思う 2 3 4 非常にそう思う 4: 図 2 第 2国子の回答分布 1 2 3 1: 全くそう思わない 4 1 2: あまりそう思わない 2 3: そう思う 3 4 4: 非, 削こそう思う 図 3 第 3因子の回答分布 」 ラスイメージ ( 患者 を良い イメージ として捉 えている) 目と4 5. 3%を占め以下,「治療 が守 れない」「自己管理が 「 マ イナスイメー ジ ( 患者 を悪 い イメー ジ として捉 えて 指 導 に耳 を傾 けない」 な どであ った. その で きない」「 」 「その他 」 に分類す る と,それぞれの記述数 が総 い る) 他は 「 心理 的負担 ・ス トレスが大 きい」「自分 自身の努 61 項 目に占める割合 は 「 プラスイメージ」5% ( 8 記述数1 力次 第」な どであった. 項 目),「 マイナスイメージ」6 5 . 8 % ( 1 ( 冶項 目),「 その他」 6.患者教育 が上手 く行 かない原因 29. 2% ( 47項 目)であった.各 イメージの内容 をみ る と プラスイメージで は 「 意欲 的 に頑張 る」が 6項 目と最 も 無 回答 を除 く6 6名 中の記述 内容 の総 数 は 1 85項 目であ 8 項 多 く,マ イナス イメージで は 「 性格 的 に難 しい」が4 った.看護職者 1人当 た りの最少記述数 は 1項 目,最多 -4- 大阪市 立大学看護短期大学 部紀 要 01 . 3) 第 3巻 ( 2 表 3 患者認識 と年齢 ・看護職者歴 ・教育歴 との相関 ( ∩-6 8) 年 齢 将来に不安 強いス トレス 襲いシ ョック 患者に問題 で きて当然 実際で きる 指導は無駄 指導後楽天的 看護職者歴 . 0 69 . 0 40 -. 01 3 . 0 37 . 05 0 -. 08 6 -. 01 0 -. 1 0 2 . 0 0 6 -. 0 45 -. 0 25 . 1 5 3 . 1 55 -. 0 0 4 -. 01 6 -. 1 09 教育歴 -. 06 0 -. 1 05 . 29 4* . 26 2* . 2 41* . 21 2 -. 1 95 . 01 8 * p<0. 05 表 4 患者認識 と患者教育受講の有無 非常 に そ う思 あまり そう 全 くそう 非常 に そ う思 う あまりそう 全 くそう 有意確率 受 うけ た 受 けていない そう思 う 思わない 思わない そ う思 う 思わない 思わない ∩( %) ∩ ( %) 将来に不安 強いス トレス 強いショック 患者に問題 で きて当然 実際で きる 指導は無駄 n( %) ∩ ( %) ∩ ( %) ∩( %) ∩ ( %) ∩ ( %) 1 2( 34. 3) 1( 60. 0) 2(5. 7) 0( 0) 9( 27. 3) 1 9( 57. 6) 4( 1 2. 1 ) ( 0) 0( 0 )1 2( 3 6. 4) 1 9( 57. 6) 1 ( 3. 0) 1 3( 37 . 1 ) 2( 6 2. 9) 0 7( 20. 0) 2 4( 68. 6) 4( ll . 4) 0 ) 8( 2 4. 2) 1 9( 57. 6) 6( 1 8. 2) 7 3. 5) 9( 26. 5) 0 ( 0) 4(12. 1) 2 6( 7 8. 8) 0( 0) 0( 0) 25( 0( 0 ) 2(5.7) 17(48.6) 16(45.7) 0( 0) 0( 0 ) 26(78.8) 0( 0) 0( 0 ) 2 9( 82. 9) 6( 1 7. 1) 0( 0) 0( 0) 27( 81 . 8) 3(8. 6) 25( 71 . 4) 6( 1 7 . 1) 1(2. 9) 6( 1 8. 2) 21( 63. 6) 6( 1 8. 2) 0 * p<0. 05 ( Wi l c o x o n順位和検定 1(3. 0) NS 1(3. 0) NS 0( 0 ) NS 3(9. 1) 0. 01 3* 7( 21 . 2) NS 6( 1 8. 2) NS 0( 0 NS ) NS: nots t a t i s t i c a l l ys i g ni f i c a nt r 記述数は 7項 目で平均すると2. 7項 目であった.記述内 理 に対す る理解 と厳 しい評価J 患者 に対する諦め」 の 患者側 に原因」「 その他」の 容を 「 看護職者側に原因」「 3つの因子 を抽出 した.すなわち,看護職者は糖尿病患 3つのカテゴリーに分類すると,それぞれの記述数が総 者が将来への不安やス トレスを抱 き,強いシ ョックを受 記述数185項 目に占め る割合 は 「看護職者側 に原 因」 けるとい う 『 心理状態への理解」を示 し,自己管理が上 6 2. 2% ( 1 1 5 項 目) ,「 患者側に原因」3 5. 1 % ( 6 5 項 目),「 そ 手 くで きな くて も当然であ り,指導が上手 く行かない場 7% (5項 目)であった.看護職者側 に原因の の他」2. 合 も患者 に問題があるとは考えていない r自己管理に対 内容は 「 生活様式の情報不足」1 3. 9% ( 1 6項 目),「 指導 する理解J を示 していることが明 らか となった. しか し 3% ( 1 3項 目)であ り以下,「 患者の 目標 能力不足」ll. その一方で,看護職者は糖尿病患者が指導終了後 も疾患 とのずれ」「 指導方法 に問題」「 個別性 に合わない指導」 を楽天的に考 え,い くら指導 を行って も無駄な患者がい などであった.患者側に原因では 「 指導を聞き入れない」 て,実際の自己管理 も上手 くで きていないと r 患者に対 が1 5. 4% ( 1 0 項 目)と最 も多 く以下,「 やる気の欠如」「自 する諦め」 の感情 を抱 き r自己管理に対する厳 しい評価J 分の知識 に対する自信」 などであった.その他では 「 生 を行 っていることも明 らか となった. 活習慣 を変更 しなければならない」などであった. また,糖尿病患者に対するイメージか ら,患者 をマ イ ナスイメージとして捉 えている記述が多 く6 5. 8%を占め V.考 ていた. しか もマ イナスイメージとして患者の性格 を問 題に挙げているものが多 く4 5. 3%を占め,「 楽天的」「自 察 己中心的」「 意志が弱い」 などであった.その他 に 「治 1.糖尿病患者に対する認識 r 指導 に耳 を傾 けない」などのイメージ 療が守れない」「 r 因子分析 を行 った結果, 心理状態への理解J 自己管 を抱いていた.これ らは 「 患者 に対する諦めJ や r自己 ー5- 大阪市立大学看護短期 大学部紀 要 管理 に対す る厳 しい評価 J の結果 とも一致す る. 01 . 3) 第 3巻 ( 2 家か ら教育方法や心理的アプローチの仕方 を学ぶ ことは, 看護職者 は,臨床 の場で 日々糖尿病患者 に対 して退院 看護職者の 自信 に繋が り,患者認識が よ り深 ま り,ひい 後の 自己管理がで きるように患者教育 を行 っている. し ては患者教育の効果 を上げることに繋が ると考 えられる. か し,実際は必ず しも患者がその知識や実践方法通 りに 3.患者認識 に影響 を及 ぼす要 因 行 動す る とは限 らない こ とを経験 してお り,河 口 13) も 同様 の こ とを述べ ている.そ して,看護職者 に限 らず医 患者認識 に影響 を及 ぼす要因 として,糖尿病患者 に対 療者 は患者全 てが 「 私 は病気であ る」とい う意識 を持つ す る教育歴が関係 していた.教育歴が長 くなるほ ど,忠 はず だ と思 い込み,「 患者 は治療 に専念す る ものだ」と 者は よ り強い シ ョックを受 ける と理解す る反面,指導が 考 えが ちであ り, ここにギ ャ ップ を生 じる 14) と述べ て 上手 く行かない場合 は患者 に問題があ る と捉 え, 自己管 いる.糖尿病患者 のマ イナス イメージとして 「 性格的に 理 は上手 くで きて当然 である と考 える傾向がみ られた. 難 しい」 と個人の資質 に問題 を兄 い出 していることか ら これは,今回の対象者が大学病 院に勤務 してい ることも も, ライフス タイルの変更 は困難である と客観的 には理 関係 している と思 われ る.大学病院に入院す る糖尿病患 解 していて も,患者教育の評価 と して,一生懸命そ して 者は,初発の教育入院 を除けば,すで に合併症 を併発 し 熱心 に教育 して も自分たちが望 む好 ま しい行動 に変容 し ている比較的重症度の高い患者や血糖 の コン トロールが ない ことに落胆 し,無力感 を感 じ, 自信 を失 ってい ると 安定 しないため入退院 を繰 り返す患者 な ど,様 々な背景 考 え られ る.そ して,つい患者の性格 に問題がある と考 の患者が入院 してい る.そのため,教育歴が長 くなるほ えて しまうのではないだろうか. しか し,看護職者が個 ど患者教育 に対 しての難 しさや,諦めの感情が大 きくな 人の資質 に問題 を兄い出 して しまうと,そ こか ら諦めの り,患者 に対す る認識 が厳 しくなると考 える. 気持 ちが働 き,ますます患者教育は上手 く行かな くなる. また,患者教育受講 の有無,勉強会参加の有無 ,集団 そ こで,看護職者はまず糖尿病 に雁息す ることが患者 指導経験 の有無 と患 者認識 との関連 で は,「 指 導 が上手 の身体的 ・心理的 ・社会的 に及ぼす影響 を再認識す る必 く行 かない場合 は患者 に問題がある」 とい う項 目と患者 要がある.血糖の コン トロールが悪い と,感情 の負担度 教育受講の有無 との間に有意差が認め られた. この患者 は高 くな り, よ り厳格 な血糖 コン トロール 目標 を立 てた 教育受講の有無 は,学生時代 の ことを思 い出 した上での 患者は達成度が同 じであって も,不幸せ感 が強 く,満足 回答であるため, カ リキュラム上 は受講 していて も,そ 度 が低 い 15) とい う報告が あ る よ うに,特 に心理面 す な れ を覚 えてい ない こ とも考 え られる.そのため,講義 を わち 「 患者の感情 」を理解す るこ とが重要であると考 え 受けた と認識 してい るか どうかが結果 に反映 されたこと る.「 患 者 の感情」 に傾聴 し寄 り添 うこ とで,患者 自身 になる.す なわち,学生時代 に患者教 育の基礎 を学 んだ が現状 に気づ き変化への意志が芽生 える ように関わって と認識 してい る看護職者の方が,指導 が上手 く行 か な く い く必 要がある.そのためには,看護職者 は心理的 なア て も患者 に問題があ る とは思 わない とい うことである. プローチ と して,認知行 動療法 16) な どの理論 を用 いた 看護基礎教育 の中で患者教育 についての位置づ けが明確 教育方法 を身につけ, 自信 を持つ ことが大切である. こ に されたのは,平成元年 5月の看護婦養成所の運営 に関 れが,「クライエ ン ト教育」 であ る学習者 の 自律性 と自 す る指導要領 に 「 指 導技術」として明示 されたのが初め 己主導的 な役割 を高める援助 に繋が ると考 え られる. てである.そ こで,慢性疾患 が増加 している今 日におい て看護基礎教育の中で,患者教育の基礎 について学ぶ こ 2.患者教育 が上手 く行 かない原 因 とは大切であ ると考 える. 自由記述の結果 は 「 看護職者側 に原因」とした記述が この ように患者認識 に影響 を及ぼす要因は,教育歴で 最 も多 く,「 患者側に原因」とした記述の約 2倍であった. あ り年齢,看護職者歴 とは関係がなか った. これは,患 その内容 は,「 生活様式の情報不足」「 指導能力不足」「 患 者教育 には看護職者 としての経験 よ りも患者教育 につい 者 の 目標 とのず れ」「 指導方法 に問題」 な どであった. ての学 びの方が重要であるとい うことを示唆 している. 糖尿病患者 をマ イナスイメージと して捉 えていて も,忠 4.本研究の限界 と今後の課題 者教育が上手 く行 かない原因を教育す る側 である看護職 指導方 者 自身に求めていた. これは,「 指導能力不足」「 今 回の研究対象 は,設置主体や規模 の違 いに よる影響 法 に問題」 とあるように教育方法 を十分 に学 び得ていな を考慮 し,大阪府内の大学病 院 に勤務 す る看護職者 を対 い ことによる自信 のなさが もた ら した結果 と考 える. と 象 としたが,結果 を一般化 してい くため には, さらに設 ころが,勉強会や研修等 に積極的 に参加す るか どうかを 置主体 を拡大 し対象者 を増や してい く必 要があ る. また 尋ねた結果 は, 6割以上の看護職者が参加 しない と回答 看護職者の学歴 は様 々であるため,看護基礎教育,現任 した.勤務 の関係上,勉 強会等 に参加 した くて もで きな 教育 の背景 を考慮 していかなければな らない. い状況や学習す る意欲が出て きた 3年か ら 5年 日頃 に行 患者認識 の質問項 目は,文献や筆者 の研 究結果 を参考 われる配置転換 のため専 門性が発揮 しに くい とい う現状 に した ものであるため,信頼性 ,妥当性 のある質問項 目 も関係 している と考 えられる, しか し,患 者教育の専 門 にす る必 要がある. これ らの限界 を踏 まえ, さらに研究 ー6- 大阪市立大学看護短期 大学部紀 要 氾 1 第 3巻 ( 2 ( . 3) 3)尾形悦 子 ,内海混 :患者教育へ の検討 一看護職 に施 内容 を充実 させ継続 してい くことが今後 の課題 であ る. 9 行 した意識調査 を通 して-. 日本 看護研究学会誌 1 ( 臨):1 73, 1 996. Ⅵ.結 三△ 4)小林淳子 :看護学 生 と看護職者の保健指導 に対す る i S F F t l 態度 に関す る研 究 . 日本看護学教 育学会第 6回学術 r 1.看護職者 の糖尿 病患 者 に対 す る認識 と して, 心理 r 2):1 1 0, 1 9 96. 集会講演集 6( 状態への理解 J 自己管理 に対す る理解 と厳 しい評価 J 5)池本久美子 :患者教 育.西崎枕,石滞晋 ( 編).新 ・ r 患者 に対す る諦めJ の 3つの因子が抽 出 された. ナ - シ ン ダ. plO2, 医 学 書 院 , 東 京 , 糖尿 病 2 000. 2.糖尿病患 者 に対す る イメー ジ と して, 「 性 格 的 に難 しい」「 治療 が守 れ ない」な ど,マ イナス イメー ジ と 6)牛島義友編 :教育心理学新辞典.7 2 7 7 2 8,金子書房, 9 88. 東京 , 1 して捉 えてい る記述 が多か った. 3.患者教育 が上手 く行 かない原 因は 「看護職者側」 に 7)正木 治恵 :慢性 病患 者 の看護援助 の構造化の試み . 糖尿病専 門外来看護 の臨床経験 を通 して ( その 1) あ る と認識 していた. 4.患者認識 に影響 を及 ぼす 要因の一つ は,糖尿病患者 看護研 究 26( 7):621 6 49, 1 9 93. 8)正木治恵 :慢性病患 者 の看護援助 の構造化の試み に対す る教 育歴 であ り,教育歴 の長 い方が患者 の心理 面 を理解す る反面 ,指導 の上手 く行 か ない場合 は患者 . 糖尿病専 門外来看護 の臨床経験 を通 して ( その 2) に問題があ る と捉 え, 自己管理 は上手 くで きて当然 で 看護研 究 2 7( 1):497 4,・ 1 99 4. 9)正木治恵 :慢 性病患 者 の看護援助 の構造化 の試み . 糖尿病専 門外来看護 の臨床経験 を通 して ( その 3) あ る と捉 える傾向がみ られた. 5.患者認識 に影響 を及 ぼす もう一つの要因 は,患者教 看護研 究 育受講の有無 であった.学生時代 に患者教 育の基礎 を 27( 2):335349, 1 9 94. 学 んだ と認識 してい る看護職者 の方が,指 導が上手 く 1 0)東 ますみ :糖尿病患 者 の心理 的 ・社会的特徴 一入院 行 か な くて も患者 に問題が あ る とは思 わ ない とい う結 患 者 に対す るイ ンタ ビュー を通 して -.大阪市立大 果であ った. 学 看護短期 大学部紀 要 1( 1 ):556 0,1 999. ll)野村 仁 美 ,鹿 間善 子 ,別宗 由美, 他 :対応 困難 な糖 尿病患者 に関わ る看護婦 の コ ミュニ ケー シ ョンの特 謝 辞 徴 . 第 27回 日本 看 護 学 会 集 録 (成 人 看 護 Ⅱ): 1 4 8-1 5 0,1 99 6. 本研究 にあた り調査 にご協 力下 さい ま した看護職者 の 1 2)大名 門裕子 ,野 口美和子 ,坂根喜代子 ,他 :糖尿 病 皆様 に深 く感謝 いた します. また, ご指導 い ただ きま し 患者 の コ ン トロール能力 を高 め るための看護援助 に た武庫 川女子大学大学 院臨床教育学研 究科 関 す る研 究 .千 葉 大 学 看 護 学 部 紀 要 祐宗省 三先 4:卜7, 1 9 82. 生 に心 よ り感謝 申 し上 げ ます . 1 3)河 口て る子 :心理 的 アプローチは糖尿病看護 に何 を 文 献 もた らすか 看護婦 の変容 か ら患者 の行動変容- . 看護学雑誌 63( 4):3 533 57,1 999. 1 4)前掲書 13). 1)W h i t ma n NI ,Gr a ha m BA,Gl e i tCJ,eta l :Tea c ho f es s i o na lmode l( l nd) . igi n nnur s ngp i r a c ic t e:Apr 安酸史子監訳.ナースのための患者教育 と健康教育. i zedSt udyoft wodi f f er e ntt rget l a e ve l so fgl yc em ic i血 nal e∝C印t a bl er wgei nt yp e 2di a bet飴. c on t r o lw Di a bet esCa r e 21:2 0 852 09 3, 1 99 8. p22 0,医学書 院,東京 , 1 99 6. 2)堀 内 1 5)Va nde rDos eFEE,Ne ei i ngJ ND,eta l.Ra n dom- 1 6)金外 淑 :行動変化 に役立つ心理学 の基礎知識 .看護 光 :糖尿病患者教育 の理論 と実際 .p 343 5, 9 85. 第一 出版 ,東京, 1 学雑誌 -7- 63( 4):342347, 1 9 99.
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