金ナノ粒子担持酸化チタ ンの触媒作用の研究

② 多 国 間型
金 ナノ粒子担持酸化 チタ ンの触媒作用 の研究
I
閉鎖循環式装置 を用 いて,金 微粉末上 の COお よび酸素
分子 の吸着量を明 らかに した上で,金 の粒径を 40nmま で
試 験 研 究 の 全 体計 画
1.研 究の趣 旨
固体触媒 は 20世 紀初頭 に登場 した科学技術 であ り, ア
ンモニ ア合成等 の無機合成化学 ,石 炭化学,石 油化学 の工
業 を発展 させて きた。現在,そ の産業 の舞台 は従来 の化学
産業か ら環境産業 ヘ シフ トしつつ あり,環 境浄化,環境調
和 プ ロセ スヘ の応用 が飛躍的 に増大 して い る。特 に貴金属
担持触媒 は燃焼排 ガス浄化用触媒 や燃料電池 の電極触媒 と
小 さくす ると,CO酸 化 の TOFが どの程度向上す るか を
定量的 に明 らかにす る。 この知見 はこれまでには全 く知 ら
れてお らず,世 界 の触媒化学・ 表面科学 の専門家 に注 目さ
れると予想 される。
(2 金 クラス ターの理論研究
金 クラスターの量子化学計算を実行す るために,
Au-0
を用 いて基底関数を選択 した上 で DFT(密 度汎関数法 )
この中で も金超微粒子担持触媒 は大阪工業技術研究所 で発
計算を実行 して,Au O系 の電子状態を解析す る。 その結
果 を用 いて,金 の価数変化 と吸着現象 の変化 との相関 を明
見 されたが,他 の貴金属担持触媒 には無 い特異 な触媒活性
らかにす る。
があることか ら,現 在多 くの研究機関,企 業 か ら注目を浴
2
して,時 代 の最先端 の技術分野 での応用が期待 されている。
金/酸 化 チタ ン粉末状触媒 のキ ャラクタ リゼー ション
び,悪 臭除去触媒 として既 に実用化 されているだけでなく
と性能向上
プ ロピレンの選択酸化 (特 にエポキシ化 )触 媒 などの実用
触媒 としての応用 も数多 く検討 されて いる。 このよ うに革
各種測定手法 を用 いて金ナノ粒子担持酸化 チタ ン粉末状
触媒上 での CO分 子 の吸着状態を解明す るとともに,酸 素
新的 な触媒 である金触媒 も,そ の物性発現機構 はいまだ詳
細 には明 らかにされて いない。 もし金触媒表面での吸着機
分子 の活性化 プ ロセスを明 らかにす る。特 に金ナ ノ粒子 の
形状 ,粒 径,接 合状態 と, これ らの特性 との関係 を明 らか
構 や反応素過程 が物理化学的手法 による解析 によって解明
されれば,他 の貴金属担持触媒 の開発 や改良 にも役立 つ多
に し,触 媒活性 の向上 を図 る。
,
くの指導原理 が得 られる。そ こで,金 触媒 の中で も実用的
に優 れた特性 を有す る代表的 な金ナノ粒子担持酸化 チタ ン
を モデル系 として,分 子・ 原子 レベルでの機能発現 のメカ
ニズムについて詳細 な検討 を行 うことに した。 この系 は
,
(1)電 子 スピン共鳴法
電子 ス ピン共鳴法 (ESR)を 用 いて,Au/Ti02(P 25)
粉末触媒表面 にお ける 02-等 の吸着種 を測定 し,同 触媒 を
用 いた CO酸 化 における活性酸素種 を直接的 に同定 した上
で,活 性酸素種 の生成条件を明 らかにす る。
金 ナノ粒子 および酸化チタ ンの各 々が単独 では目立 った触
媒特性 が無 いに もかかわ らず,両者 が複合 されて初めて数 々
(2
の優 れた触媒特性 が発現す る点 で,新 しい触媒 を開発す る
ために必要 な作業仮説 ,指 導原理 を得 るためには最適なモ
触媒 をフー リエ変換型赤外分光法 (FT― IR)に よって測定
し,CO分 子等 の吸着状態 を詳細 に解析 して,吸 着 サイ ト
デル系 である。
金ナノ粒子 の酸化状態等 の情報 を直接的に得る。 これによっ
て CO酸 化反応 における中間体 を特定 し,反 応機構 の解明
この研究 では,初 年度 に金 ナノ粒子担持酸化 チタ ン粉末
状触媒 の微細構造 を精密制御す るための手法 を開発 し CO
酸化 の反応機構 の解明 に着手す るとともに,金 ナノ粒子担
持酸化 チタ ンモデル触媒 の調製 を行 う。 そ して 2年 目以降
にはプ ロピレンのエポキ シ化 や NO分 解 の反応機構 の詳細
を明 らかに し,実 用化 へ の道を拓 くことを 目指す。
赤外分光法
CO,02,ま たは CO+02雰 囲気 に露出 した Au/Ti02粉 末
,
を目指す。
0)ラ マ ン分光法
表面増感 ラマ ン分光法 (SERS)に よって,Au/Ti02粉
末触媒を用 いたプ ロピレン部分酸化反応 に関 わる表面吸着
種 の同定 を行 い,中 間体 を解明す る。
14)高 分解能電子顕微鏡法
2.研 究概要
1.金 の表面吸着及 び触媒作用に対す る寸法効果 の解明
原子識別 まで可能な高分解能 の電子顕微鏡観察を行 って
Au― Ti02接 合界面 の面配向性 を明 らか に し,金 触媒 の活
CO酸 化反応 に対 して lμ m∼ 40nmに 粒径 を制御 した金
微粉末 を用 い,粒 径 の減少により触媒活性 (TOF;TurnOVer
Frequency,表 面露出原子 1個 当 たりの反応速度 )が 向上
性発現機構 に関す る知見を得 ることによ って,触 媒調製 の
す る度合 いを定量的 に把握す る。
た,原 子 レベルでの Au/Ti02触 媒界面 の構造解析手法 を
確立す るため,既 存 の装置 で基礎 デー タを収集す るととも
(1)閉 鎖循環式吸着・ 反応装置を用 いた金微粉末 の研究
,
指針 とす る。また電子顕微鏡高分解能電子顕微鏡法 (HR
―
TEM)と 電子 エネルギー損失分光法 (EELS)を 併用 し
―-725-―
に,サ ブÅ,サ ブ ev領 域での測定 が可能な新型装置 の開
および金 ―チタ ンニ元系表面 (金 ―
酸化 チタン接合界面 モデ
ル)の 構造解析を原子 レベルで行 い,よ く規定 されたモデ
ル構造を調整する。そのモデル構造 と吸着分子 との相互作
発設計を行 う。
15)メ スパ ウアー分光法
メスパ ウアー分光法を用 いて,酸 化 チ タ ン (P-25)粉
末 に担持 した金の酸化状態を解析 して,触 媒中の金ナノ粒
用を調 べ ることによ り,触媒活性発現機構 に対す る仮説 の
子 の酸化数を決定す る。 これによって,触 媒反応 の活性点
(1)実 用触媒 のモデル構造 の特性 の解析
証明を試みる。
とな りうる金 ナノ粒子 がどのよ うな電子状態 にあるである
Au/Ti02実 用触媒 のモ デ ル構造 と して,超 高真空 中 で
かを明 らかに出来 るので,触 媒反応機構解明に大 きく寄与
す ることが期待 される。さらに金 の酸化状態 と CO酸 化活
酸化 チタン単結晶表面に金を蒸着 し,走 査 トンネル顕微鏡
(STM)や 低速電子回折 (LEED)を 用 いて ,原 子 レベ ル
性 との相関 について検討す る。
での構造解析を行 い,金 のナノ粒子 がどのよ うに形成 され
(61 触媒性能 の向上
るかを確認す る。
調製法を変えることによって金ナノ粒子 の粒径 ,形 状
(2
逆担持 モデル構造 の特性 の解析
上記 とは担持物質・ 基板 の関係を逆転 させて,金 単結晶
,
散布度や接合界面構造を制御 した Au/Ti02粉 末触媒 の CO
酸化反応 に対す る活性を測定 し,最 大
TOFを 示す触媒 の
表面 にチタンを酸素雰囲気下で蒸着 し,STMや LEEDを
用 いて,原 子 レベルでの構造解析を行 い,酸 化 チタンのナ
調製条件 (調 製時 の pH,焼 成温度,担 持量 ,界 面活性剤
等 の添加 )を 探 る
(TOFの 3倍 向上 が 目標 )。 ここで得 た
知見 は,金 を用 いた他 の触媒反応 のみな らず,他 の貴金属
ノ粒子 がどのよ うに形成 されるかを確認す る。
G)金 ―酸化チタ ンの接合界面 モデルの特性 の解析
触媒調製 へ の指針 となることが期待 される。
超高真空中でチタ ン単結晶表面 に金を蒸着 し,二 元表面
3.モ デル構造 による触媒反応機構 の実証
合金 が形成 され るか否 かを調 べ るため,STM,LEEDに
金 を担持 した酸化チタ ン単結晶表面 (実 用触媒 モデル)
や,酸 化 チタンを担持 した金単結晶表面 (逆 担持 モデル),
よる構造解析を行 う。 この表面合金 は,金 ―酸化 チタ ン接
合界面 の,よ り単純 なモデル となることが期待 される。
3.年 次計画
研
究
項
目
12年
13年
度
14年
度
15年
度
度
金 の表面吸着及 び触媒 作用 に
1.
│
対す る寸法効果 の解明
(1)閉 鎖循環式吸着・ 反応装置
矧彙
愛
鼈
果の解明 (lnmま で
COと 酸素の吸着及び酸化反応に対する イズ効果の解明
(40nmま で)
│ (20nmま
で)
(10nmま で)
)
│
を用 いた金微粉末 の研究
(2)金 クラスターの理論研究
金 と酸素との相互作用
金クラスターの電子状態 と COと 酸素吸着に関するDFT計 算
1∼ 3個 )│(原 子数 5個 前後 )│(原 子数 13個 前後 )
(原 子数
金融 化 チタン粉末状触媒 のキ ャ
Au/Ti02(P-25)の CO酸 Au/Ti02(ノ 匠Fル 又はアナタ プロピレン部分酸化で
NO分 解反応での
ラクタ リゼーシ ョンと性能向上
化での活性酸素種の同定 ーセ型)の 活性酸素種の同定 の活性酸素種の同定
活性種の同定
(1)電 子 ス ピン共鳴法
Au/Ti02上 での
Au/Ti02で のm CO
金担持酸化チタン上で 同触媒上での NO及 び
(2
(3)
赤外分光法
ラマ ン分光法
CO吸 着種の解析
プロピレン部分酸化反応での
反応条件下での
―
吸着種同定の可能性の検討
吸着種の同定
Au― Ti02接 合界面
(4)
高分解能電子顕微鏡法
晰
の配向性の観察
サブÅ・ サブ
TEMの 設計
eV―
TEM,EELSに よるAu― TiOl
の原子レ゛枷
解析
サブÅ・ サブ ev
‐
TEMの 試作
P-25型 チタニアに担持し アナターセ型チタニアに担
(5)
メスパ ウアー分光法
触媒性能 の向上
た金の酸化状態の解析
金ナノ粒子の
散布度の制御
持した金の酸化状態の解析
エポキシ化助触媒の探
索 NO解 離条件の提案
―-726-―
の NO吸 着種の解析
酸素の共吸着状態の解析
反応条件下での
反応中間体の同定
反応中間体の
濃度変化の解析
モデル Au― Ti02系
に対する構造解析
粉末 Au/Ti02に 対す
る界面構造の解析
同 TEMの 試運転
と基本性能確認
同 TEMに よるAu/Ti02
界面構造の解析
ルチル型チタニアに担持 チタノシリケート
上に担持した
した金の酸化状態の解析 金の酸化状態と触媒活性の検討
エポキシ化活性劣化の
解決 NO分 解の実現
エポキシ化収率の向
上 NO分 解率の向上
究
研
3
12年
目
項
13年
度
14年
度
度
15年
度
モ デ ル構造 による触媒 反応機
構 の実証
(1)実 用触媒 の モ デ ル構造 の 特
Au/Ti02モ デル触媒表 同 モデルの COに 対
触媒表面の調製
面の金粒子の寸法制御
Ti02/Au逆 担持 モデ T102/Au逆 担持モデル触
性 の解析
(2
Au/Ti02モ デル
逆担持 モデル構造 の特性 の
解析
13)金 ―酸化 チ タ ンの接合界 面
ル触媒表面 の調製
媒表面のTiOaの 寸法制御
Au― Ti合 金表面 の調製
Au― Ti二 元系の
相図の完成
す る反応性 の解析
同 モデルの NO吸 着特
性 と分解機構 の検討
同逆担持 モデルの CO 同逆担持モデルのNO吸
に対す る反応性の解析 着特性と分解機構の検討
同合金 モデルの COに
対す る反応性の解析
同合金モデルの NO吸 着
特性と分解機構の検討
モデルの特性 の解析
所
要
経
費
(合
41百 万 円
計)
Ⅱ 平成 12年 度 にお ける実施体制
研
1.
究
項
目
担
当
機
関
研究担 当者
金 の表面吸着および触媒作用 に対す る寸法効
果 の解明
(1)閉 鎖循環式吸着・ 反応装置を用 いた金微粉 京都工芸繊維大学工芸学部
飯
塚
大阪大学大学院理学研究科
山
口
スペイ ン触媒・ 石油研究所
」.Sorla,
泰
雄
末 の研究
(2
金 クラスターの理論研究
金/酸 化 チタン粉末状触媒 のキ ャラクタリゼー
ションと性能向上
(1)電 子 ス ピン共鳴法
」.Conesa
(2
赤外分光法
トリノ大学理学部化学科
F.Boccuzzl
A.Chiorino
13)ラ マ ン分光法
ヴァージニアエ科大学
T S.Oyama
14)高 分解能電子顕微鏡法
通商産業省工業技術院大阪工業技術研究所
田
中
孝
治
秋
田
知
樹
那
須
二
郎
京都大学原子炉実験室
小
林
康
裕
通商産業省工業技術院大阪工業技術研究所
春
田
正
毅
奥
村
光
隆
上
田
通商産業省 工 業技術院大阪工 業技術研究所
南 カル フォル ニ ア大学
伊
達
京都大学大学院理学研究科
有
(5)メ スバ ウアー分光法
(0
3.
触媒性能 の向上
大阪大学大学院基礎工学研究科
モデ ル構造 による触媒反応機構 の実証
(1)実 用触媒 のモデル構造 の特性 の解析
(2
(0
逆担持 モデル構造 の特性 の解析
金 一酸化 チタ ン接合界面 モデルの特性 の解
析
4
厚
研究推進
科学技術庁科学技術振興局
―-727-―
正
和
哲
也
B.Koel
賀
Ⅲ 研究推進委員会
委
員
所
一義 啓
裕 夫 之 成 雄 輔
康 信 清
澤 中 倉 免 東 田
岩 田 寺 堂 板 和
○
東京大学
属
大学院理学系研究科教授
大学院工学研究科教授
名古屋大学
通商産業省 工業技術院産業技術融合領域研究所首席研究官
東京工業大学
資源化学研究所教授
科学技術庁 無機材質研究所総合研究官
三菱化学い
取締役総合研究所長
(注 :○ は研究推進委員長 )
―-728-―