研究課題:切除不能胆道がんに対する治療法の確立に関する研究 課題

研究課題:切除不能胆道がんに対する治療法の確立に関する研究
課題番号:H22-がん臨床-一般-013
研究代表者:国立がん研究センター中央病院肝胆膵腫瘍科 副科長
奥坂
拓志
1. 本年度の研究成果
(1)本研究の主目的は切除不能胆道がんの予後の改善を目指し、新規抗がん
剤である S-1 を用いた化学療法の有用性を、ゲムシタビンを用いた化学療法と
のランダム化比較試験にておいて検証することである。本研究班では、最初に
S-1 単独療法と S-1 とゲムシタビンの併用療法とのランダム化第Ⅱ相試験を実施
し、より有用性が期待できるレジメンを慎重に選択することとした。本試験は
JCOG0805 として 2009 年 2 月に登録が開始された。登録数 100 例、登録期間
2 年、追跡期間 1 年を予定したが、1 年 3 ヶ月で登録を完了し、現在追跡調査中
である。
(2)S-1 は切除不能胆道がんに対する 2 次治療薬としての期待も大きく、そ
の有効性と安全性を明らかにすることを目的として「ゲムシタビン耐性胆道が
んに対する S-1 の第Ⅱ相試験」を計画し、登録および追跡を終了した。奏効率
7.5%(3/40)、無増悪生存期間中央値 2.5 月、生存期間中央値 7.3 月、グレード
3 以上の毒性は食欲不振 10%、口内炎 8%、貧血 8%等であった。
(3)WT1 タンパクは胆道がんを含め多くのがんで過剰発現しており、切除
不能胆道がんにおける WT1 ペプチドワクチンによる生存期間延長の可能性を
探索することを目的として、ゲムシタビン+CDDP 療法とゲムシタビン+
CDDP+ WT1 ペプチドワクチン併用化学免疫療法のランダム化第 II 相試験を計
画した。本研究では CDDP 併用使用における安全性を確認するために,第 I 相
試験パートを行うこととした。現在各施設で IRB 審査中であり、まもなく開始
予定である。
2. 前年度までの研究成果
(1)
「S-1 単独療法と S-1 とゲムシタビンの併用療法とのランダム化第Ⅱ相試
験」については JCOG 試験として実施するため、JCOG プロトコールレビュー
審査会、
プロトコール審査委員会の承認を得たのち、2009 年 2 月より JCOG0805
として登録を開始した。
(2)「ゲムシタビン耐性胆道がんに対する S-1 の第Ⅱ相試験」については、
多施設共同第 II 相試験として計画し、2007 年 6 月より登録を開始した。
(3)WT1 ペプチドワクチンについては、切除不能胆道がん・切除不能膵が
んを対象としてゲムシタビン+WT1ペプチドワクチン併用化学免疫療法の第 I
相試験を実施し、ゲムシタビン併用における WT1 ペプチドワクチンの推奨投与
量が決定された(がん研究助成金指定班研究小班「科学的根拠に基づく免疫療
法の開発」の研究として実施)。
3. 研究成果の意義及び今後の発展
切除不能胆道がんに対してゲムシタビン単独療法は事実上の標準治療法とし
て位置づけられていたが、最近ゲムシタビン単独療法とゲムシタビンとシスプ
ラチンの併用療法との比較試験の結果が明らかとなり、ゲムシタビンとシスプ
ラチンの併用療法が標準治療と位置づけられた。一方、S-1 は本邦で開発された
新しい抗がん剤であり、切除不能胆道がんに対しても第Ⅱ相試験において良好
な成績が示されたことから新たな標準治療薬として寄与することが期待されて
いる。本研究では、最初に S-1 単独療法と S-1 とゲムシタビンの併用療法との
ランダム化第Ⅱ相試験を実施し、続いて標準治療であるゲムシタビンとシスプ
ラチンの併用療法との第Ⅲ相試験を実施し、切除不能胆道がんに対する標準治
療法を確立する。
WT1 タンパクはさまざまな固形がんにおいても過剰発現が認められ、免疫療
法の標的として期待されており、WT1 ペプチドワクチンの開発が進められてい
る。胆道がんにおいても約 8 割の例で過剰発現が報告されており、本疾患にお
ける WT1 ペプチドワクチン有用性を明らかにすることは重要と考えられる。
胆道がんは我が国のがん死亡数の第 6 位をしめている。50%以上の患者が
初診時にはすでに切除不能であり、切除可能例もその多くは早期に再発するこ
とが知られている。より有効な非切除療法が開発されれば、多くの患者に利益
をもたらすことができ、国民の福祉に大きく貢献すると期待される。
4. 倫理面への配慮
適切な症例選択基準、治療中止基準を設け、個々の症例の安全性を確保し、
試験参加による不利益を最小限にした。さらに、「臨床研究に関する倫理指針」
およびヘルシンキ宣言等に従い、研究実施計画書の施設内倫理審査委員会の承
認の得られた施設のみ症例登録を可能とした。患者には説明文書を用いて十分
な説明を行い、患者自身による同意を本人より文書で取得した。データの取り
扱いに関して、直接個人を識別できる情報を用いず、データベースのセキュリ
ティを確保し、個人情報の保護を遵守した。
5. 発表論文集
1) Okusaka T, Nakachi K, Fukutomi A, Mizuno N, Ohkawa S, Funakoshi A, Nagino
M, Kondo S, Nagaoka S, Funai J, Koshiji M, Nambu Y, Furuse J, Miyazaki M,
Nimura Y. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with
biliary tract cancer: a comparative multicentre study in Japan. Br J Cancer. 2010;
103: 469-74.
2)
Furuse J, Okusaka T, Bridgewater J, Taketsuna M, Wasan H, Koshiji M, Valle J.
Lessons from the comparison of two randomized clinical trials using gemcitabine
and cisplatin for advanced biliary tract cancer. Crit Rev Oncol Hematol. 2010 in
press.
3) Takashima A, Morizane C, Ishii H, Nakamura K, Fukuda H, Okusaka T, Furuse
J. Randomized Phase II Study of Gemcitabine plus S-1 Combination Therapy vs.
S-1 in Advanced Biliary Tract Cancer: Japan Clinical Oncology Group Study
(JCOG0805). Jpn J Clin Oncol. 2010 in press.
4) Soeda A, Morita-Hoshi Y, Kaida M, Wakeda T, Yamaki Y, Kojima Y, Ueno H,
Kondo S, Morizane C, Ikeda M, Okusaka T, Heike Y. Long-Term Administration of
Wilms Tumor-1 Peptide Vaccine in Combination with Gemcitabine Causes Severe
Local Skin Inflammation at Injection Sites. Jpn J Clin Oncol. 2010 in press.
5) Suzuki E, Furuse J, Ikeda M, Okusaka T, Nakachi K, Mitsunaga S, Ueno H,
Morizane C, Kondo S, Shimizu S, Kojima Y, Hagihara A. Treatment
Efficacy/Safety and Prognostic Factors in Patients with Advanced Biliary Tract
Cancer Receiving Gemcitabine Monotherapy: An Analysis of 100 Cases. Oncology.
2010; 79:39-45.
6.
研究組織
①研究者名
②分担する研究
項目
奥坂拓志
宮川宏之
浜本康夫
③最終卒業校・
卒業年次・学位
及び専攻科目
④所属研究機関及 ⑤所属研究
び現在の専門
機関における
(研究実施場所) 職名
切 除不能 胆道 が 岐阜大学医学部、 独立行政法人国立 肝 胆 膵 腫 瘍
ん に対す る治 療 平成2年卒、医学 がん研究センター 科副科長
法 の確立 に関 す 博士、肝胆膵内科 中央病院、肝胆膵
る研究(総括)
腫瘍科
第二消化器
切 除不能 胆道 が 旭川医科大学、昭 札幌厚生病院
科主任部長
ん に対す る新 規 和56年卒、消化器 消化器内科
抗 がん剤 を含 ん 病
だ治療法の検討
切 除不能 胆道 が 札 幌 医 科 大 学 医 栃木県立がんセン 化学療法部
ん に対す る新 規 学 部 、 平 成 7 年 ター 消化器内科 副部長
抗 がん剤 を含 ん 卒、医学博士、消
だ治療法の検討
化器
長瀬通隆
切 除不能 胆道 が 岐阜大学医学部、 自治医科大学
ん に対す る新 規 平成7年卒、医学 臨床腫瘍部
抗 がん剤 を含 ん 士、腫瘍内科
だ治療法の検討
山口研成
切 除不能 胆道 が 防 衛 医 科 大 学 校 埼玉県立がんセン 副部長
ん に対す る新 規 医学部、平成2年 ター 消化器内科
抗 がん剤 を含 ん 卒、消化器
だ治療法の検討
山口武人
切 除不能 胆道 が
ん に対す る新 規
抗 がん剤 を含 ん
だ治療法の検討
池田公史
切 除不能 胆道 が 熊 本 大 学 大 学 医
ん に対す る新 規 学部、平成6年卒、
抗 がん剤 を含 ん 肝胆膵内科
だ治療法の検討
石井
浩
古瀬純司
臨床腫瘍部
講師
千葉大学医学部、 千葉県がんセンタ 診療部長
昭和56年卒、医学 ー 消化器内科
博士、消化器病・
消化器内視鏡学
独立行政法人国立
がん研究センター
東病院 肝胆膵内
科
切 除不能 胆道 が 千葉大学医学部、 癌研有明病院
ん に対す る新 規 昭和61年卒、医学 消化器内科
抗 がん剤 を含 ん 博 士 、 腫 瘍 内 科
だ治療法の検討
(肝胆膵領域)
切 除不能 胆道 が 千葉大学医学部、 杏林大学医学部
ん に対す る新 規 昭和59年卒、医学 内科学
抗 がん剤 を含 ん 博士、肝胆膵内科
だ治療法の検討
肝胆膵腫瘍
科副科長
消化器内科
ペプチドワ
クチン担当
副部長
教授
地方独立行政法人 消化器内科
神奈川県病院機構 部長
神奈川立がんセン
ター消化器内科
大川伸一
切 除不能 胆道 が
ん に対す る新 規
抗 がん剤 を含 ん
だ治療法の検討
横浜市立大学医
学部、昭和 62 年
卒、医学博士、内
科学
田中克明
切 除不能 胆道 が
ん に対す る新 規
抗 がん剤 を含 ん
だ治療法の検討
横 浜 市 立 大 学 医 横浜市立大学附属 教授(消化器
学 部、昭 和 5 4年 市民総合医療セン 内科)
卒、医学博士、消 ター
化器内科
朴
切 除不能 胆道 が 東京大学医学部、 静岡県立静岡がん 消 化 器 内 科
部長
ん に対す る新 規 昭和62年卒、医学 センター
抗 がん剤 を含 ん 博士、消化器一般 消化器内科
だ治療法の検討
成和
名 古 屋 大 学 医 学 愛知県がんセンタ 部長
部、昭和51年卒、 ー中央病院
医学博士、消化器 消化器内科部
内科
山雄健次
切 除不能 胆道 が
ん に対す る新 規
抗 がん剤 を含 ん
だ治療法の検討
中森正二
切 除不能 胆道 が 大阪大学医学部、 独立行政法人国立 統 括 診 療 部
ん に対す る新 規 昭和57年卒、医学 病院機構大阪医療 長
抗 がん剤 を含 ん 博士、腫瘍外科学 センター 統括診
だ治療法の検討
療部
日本大学医学部
地方独立行政法人 副部長
切 除不能 胆道 が
大阪府立成人病セ
ん に対す る新 規 平成2年卒
ンター 検診部消
抗 がん剤 を含 ん
消化器内科学
化器検診科
だ治療法の検討
井岡達也
井口東郎
切 除不能 胆道 が
ん に対す る新 規
抗 がん剤 を含 ん
だ治療法の検討
九州大学大学院、
昭和56年卒、医学
博士、消化器内科
学
独立行政法人国立 臨 床 研 究 部
病院機構四国がん 長
センター 臨床研
究部
舩越顕博
切 除不能 胆道 が 九州大学医学部、 独立行政法人国立 消化器・肝胆
ん に対す る新 規 昭和45年卒、医学 病院機構九州がん 膵内科医長
抗 がん剤 を含 ん 博士、消化器
センター 消化器
だ治療法の検討
内科
伊藤鉄英
切 除不能 胆道 が 九州大学医学部、 九州大学病 胆・ 診療准教授
ん に対す る新 規 昭和57年卒、医学 膵・胆道内科
抗 がん剤 を含 ん 博士、肝胆膵
だ治療法の検討