成果の上がる口腔ケア② メディソフィア事務局 本編は、「岸本裕充編著 看護ワンテーマBOOK 成果の上 がる口腔ケア」(2011年 医学書院)をもとに作成しました 成果の上がる口腔ケア 第1章 「やるべきこと、やらなくていいことを見極める」(2) • 見直してほしい過剰なケア、無駄なケア • アセスメントの考え方 • 「過剰な口腔ケア」を見直す • 効率的な口腔ケアを提供し、成果を上げることができる。 • 「舌苔」は無理に取らない • 舌苔を取ろうとして、正常な粘膜上皮も傷つけていることが ある • 舌苔は、舌の表面の「粘膜上皮」の一部で、粘膜から剥がれた剥離 上皮、微細な食物残差、菌、代謝物、白血球などが含まれている。 • ある程度は清拭で除去することが可能だが、粘膜と正常な上皮の境 界が明らかではない部分も多い。 • 擦ってもはがれない正常な粘膜上皮があり、無理に除去すると、粘 膜を傷つけてしまう。 • 舌苔は取れる範囲で除去し、除去できない部分については、 無理をしないことが労力軽減につながる。 ゴール設定によってケアは変わる • 患者の全身状態・ケアの内容が変わる • 「明日が手術で、術後人工呼吸管理となる患者」 • 「抗がん剤を投与予定の患者」 • 人工呼吸器関連肺炎(VAP) • 抗がん剤による副作用(悪心・嘔吐、口腔粘膜炎など) 口腔ケアが困難になる 事前に通常より高いレベルの口腔ケアが求められる • 「絶食中の患者」 • 経口摂取しないことにより抗菌作用のある唾液の分泌が抑制される • 食物の嚥下によって物理的に胃に流れていた口腔内の菌が流され なくなる 口腔内の自浄作用が低下 口腔内の細菌数が増加 口腔ケアの必要性が高まる。 • 嚥下障害のある患者の場合、絶食中に不顕性誤嚥を 生じた際に肺炎を発症する危険性が高まる 歯磨剤・デンタルリンスの使用は ケースバイケースで • ペースト状歯磨剤もデンタルリンスも歯面清掃の補助に役立つ • 歯ブラシだけでも可能だが、補助的に作用 • 一般的に研磨剤や発泡剤を含むペーストの方が強力 • フッ素の作用 • ペースト状歯磨剤の多くに虫歯予防作用のあるフッ素が含まれている • 頭頸部がん放射線治療後、シェ―グレン症候群、高齢者などは唾液が減 少し虫歯になりやすいため、使用は有効 • 口内炎や粘膜に創傷を持つ患者や洗口・洗浄が困難な患者 • 口内炎や粘膜に創傷がある場合、ペースト状歯磨剤に含まれる発泡剤 や、デンタルリンスに含まれるアルコールが刺激になってしまう • 口腔ケア後、洗口・洗浄が困難な場合、ペーストに配合されている研磨 剤が口腔内に残ると硬まりやすい。また、吸湿作用があるため、口腔内 の乾燥を助長してしまう アルコールが含まれないデンタルリンスの使用が望ましい 唾液腺マッサージは不要 • 唾液腺マッサージで唾液のトータル量は増加しない • 口腔ケアでは口腔内の加湿が重要 • 唾液の分泌を促すために大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺に相当する部 位)をマッサージする「唾液腺マッサージ」が一部で行われている。 • マッサージによって排泄される唾液は、唾液腺体あるいは腺管内に貯留して いたものが圧迫によって出てくるだけで、唾液腺の圧迫をしてもトータルの分 泌量は増えない。 • 人工呼吸管理中の患者などは脱水傾向で唾液の分量自体が低下している • 唾液腺マッサージによって一時的に唾液を排出させるよりも、生理的に じわじわと分泌させたほうが、口腔内の潤いを保つためには有効。 気管チューブのカフ圧は 「適正圧」の確認のみでよい • 「汚染した洗浄液の垂れこみを防ぐために、一時的にカフ圧をあ げる」の有効性は明らかではない • カフは物理的に気管を塞いでいるため、ある程度誤嚥を防止する役割を 果たしているが、カフ上部に液体を注入すると、カフと気管壁の間から少 しずつ漏れることがわかっている。 • どの程度加圧すれば、液体の垂れこみを防げるのかは、不明。 • カフ圧が低すぎると、カフ上の貯留物が垂れこむことは確かだが、高すぎ ると気管粘膜の虚血や壊死、穿孔などの合併症を起こすこともある。 • 重要な事は、カフ圧計を使用して20~27mmH2O前後の適正 圧に管理すること • 垂れこみを防ぐという目的であれば、カフ上の吸引が可能な気管 チューブの仕様が有効。 • カフ圧の戻し忘れなどのリスクもあることから、口腔ケア時の カフ圧の一時的加圧は必ずしも行う必要はなく、適正圧であ ることの確認を行えばよい。 • ここで紹介するもの • ROAG(Revised Oral Assessment Guide) • Anderssonらの「ROAG」をベースに「開口量」「歯の状態」「口臭」を追加 • 口腔ケア自立度のアセスメントとしての「BDR指標」 初期評価→継続評価 患者のケア能力の評価 がん患者の口腔ケアの アセスメントのポイント • 症状が出る前からのセルフケアが重要 • 患者の訴えによるアセスメントがメインとなるが、訴えがなくても、歯肉炎の前 兆としての歯間乳頭部の発赤や腫脹を見逃さないことが重要 • 抗がん剤もしくは放射線の副作用での口内炎 • 口腔粘膜炎だけでなく、歯性感染症の急性化、カンジダ性口内炎、ウイ ルス性口内炎、褥瘡性潰瘍などが区別されなく評価されることがある 正しい評価・診断によって適切なケアを提供することが必要 引用文献 岸本裕充編著(2011)看護ワンテーマBOOK 成果の上がる口腔ケア、医学書院
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