39. 傾斜堤の法止めブロックの必要質量の算定法について Calculation Method of Toe Protection Blocks for Breakwaters 田辺 真(Tanabe Makoto) ABSTRACT : Toe block stability for breakwaters was examined by 2-D model tests, and flow patterns in front of breakwaters were analyzed by using CADMAS-SURF/2D.Based on the result of stability tests and numerical calculation, the stability number of toe blocks was formulated as the function of relative depth and sea bottom slope. The calculation method of toe protection blocks was proposed for breakwaters on steep foreshore conditions. まえがき 1. 傾斜堤では,法先部に設置した消波ブロックが不 安定となることによる被災事例が少なくない.特に 急勾配海底条件下においては,図-1 の左側に示すよ 法崩れ・沈下 対策工 法止め ブロック うに法崩れや沈下が生じやすい.その対策工として 同図の右側に示すような法止めブロックが提案され ているが,その必要質量の算定法は未だ確立されて 図-1 消波ブロックの被災及び対策工 おらず,これまでの経験に基づいて設計されている のが現状である.本研究では法止めブロックの必要 安定実験の方法 3. 質量の算定法について,数値波動水路 2 次元造波水路内に,前出した図-2 の傾斜堤模型 CADMAS-SURF/2D および水理模型実験により明ら を設置し,法先部の安定実験を行った.海底勾配は かにすることを目的としている. i=1/10 と 1/30 の 2 種類とし,前者の場合は法止めブ ロックを,後者の場合は法止め石を設置した. 数値計算による検討 2. 2.1 表-1 に実験条件を示す.各法先水深 h で通過波高 計算方法 H1/3 を計測した.図-5 は,法止めブロックの被害率 CADMAS-SURF/2D を用いて周期と海底勾配が流 13%と法止め石の被害率 1%の状況を示している.安 速に及ぼす影響について調べた.図-2 に計算領域を 定実験においては,被害率 1%に着目して安定限界 示す.計算は海底勾配 i=1/10,1/15,1/20 および 1/30 波高 Hc(m)を求めた. の 4 ケースとし,水深 h=8.9,13.3 および 17.8cm の 位置で通過波高を計測した.波浪条件は規則波とし, 造波境界 断面1(h=0.089) 周期 T=1.27,1.70 および 2.12s の 3 ケースとし,波 底面近傍流速の特性 0.60 2.2 エネルギー 減衰帯 0.62 スとした. 断面3(h=0.178) 流速測定点 1.00 高 H0’=7.0,9.0,11.0,13.0 および 15.0cm の 5 ケー 断面2(h=0.133) 縮尺:1/45 7.5 15.0 各水深条件に対する水平流速は,底面から高さ 2.0cm の位置で求めた.これを gh で除して無次元 図-2 計算領域 * 化したものを底面近傍流速 v と定義した. 図-3 に底面近傍流速 v*と相対水深 h/L の関係を示 1 0.9 流速の変化は小さい.一方,海底勾配 i=1/10 におい 0.8 ては,相対水深が小さくなるにつれ流速は速くなる 0.7 ことがわかる. 図-4 に底面近傍流速 v*と海底勾配 i の関係を示す. 海底が急勾配なほど流速が速いことがわかる.また, β は後述する法止めブロック質量算定式に用いた式 中の係数であり,以下の式(1)に示すように海底勾配 の関数で表すことができる. 2.91 tan 1.16 (1) 底面近傍流速v* す.海底勾配 i=1/30 の場合,相対水深が変化しても i V* 1/10あ 1/30 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0.04 0.05 0.06 0.07 相対水深h/L * 0.08 0.09 Unit:m 1.5 0.1 図-3 底面近傍流速 v と相対水深 h/L の関係 2 1/10 1/50 1/30 1/40 1 4 2 6 3 8 有義波高 H' 0 (m) 有義波周期 T 1/3 (s) 法止めブロック 及び石質量(t) 3.5,4.5,5.5, 6.5,7.5 12.0 24,30,38 9.00,12.0, 15.0 0.5,1.0,1.6 必要質量の算定法 4. 4.1 基本式 安定数 Ns の実験値は,以下に示す式(2)のハドソ V* 1.6 0.2 あ 0.4 β 1.4 底面近傍流速 v* 海底勾配 法先部 実験縮尺 i 断面No. 水深 h (m) 0.0 h/L=0.067 1.8 0.6 1.2 1.0 0.8 1.2 0.6 1.4 0.4 1.6 0.2 1.8 0 0.01 2.0 0.1 ン式の H1/3 に Hc を,M に安定限界時の質量を代入し 海底勾配 i 図-4 底面近傍流速 v*と海底勾配 i の関係 求める. M H 1 / 3 Ns 3 ( Sr 1) 3 (2) ここで,ρ は法止めブロック及び法止め石の密度 i=1/10 , h=6.0m , M=30t 法止めブロックの安定実験 i=1/30 , h=6.0m , M =1.6t 法止め石の安定実験 H1/3=6.68m , 被害率0% H1/3=3.70m , 被害率0% H1/3=7.06m , 被害率13% H1/3=4.03m , 被害率1% (t/m3),Sr はそれらの海水に対する比重である. 4.2 0.8 2.91 tan 1.16 1 β 表-1 実験条件一覧 安定数 谷本式を準用した法止めブロックおよび法止め石 の安定数 NS の算定式を式(3)に示す. 1 h 1 h Ns 1.6 Ns exp 1.5 (3) H H ここで,α は周期の影響係数,β は海底勾配の影響 2 0 1/ 3 1/ 3 係数として新たに導入したものである.κ は波数, Ns0 はブロック固有の基準安定数であり,ブロック Hc=6.87m の場合 2.2,石の場合 1.8 である. 図-6 に海底勾配 i=1/30 に対する水深波高比と安定 図-5 法止めブロック及び法止め石の被害状況 数の関係を示す.周期が長いほど安定数が小さい傾 4 T (sec) NS(exp) NS(cal) 向を示す.図-7 に周期 T=12s に対する水深波高比と 9 安定数の関係を示す.海底勾配 i=1/10 を i=1/30 の場 くなる. 図-6 および図-7 において,式(1)で示した係数 β および以下の式(4)に示す係数 α を用いることで,図 i=1/30 12 3 安定数 NS 合と比較すると,海底勾配が急なほど安定数は小さ Hc=3.87m 15 2 1 中の曲線に表す計算値と実験値はほぼ一致する. 20.4h / L 0.943 (4) 0 0 0.5 1 なお,α は従来の谷本式では一定値(α=1/3)であっ たが,相対水深で補正する必要性が明らかとなった. 1.5 2 水深波高比 h/H1/3 2.5 3 図-6 周期を考慮した安定数 4 i まとめ 5. 本研究で得られた結論は以下のとおりである. CADMAS-SURF/2D を用いて無次元流速に及ぼ す相対水深と海底勾配の影響を明らかにした. ② 安定数 NS の定式化を行い,海底勾配の影響を示 す係数 β を提案した. ③ T=12s 1/10 3 安定数 NS ① NS(exp) NS(cal) 1/30 2 1 安定数の算定における周期の影響を適切に評 価するためには,係数 α を相対水深の関数とし て与える必要がある. 0 0 0.5 1 1.5 2 水深波高比 h/H1/3 2.5 図-7 海底勾配を考慮した安定数 3
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