2015年度 記者説明会資料 不安定化する世界の食料市場と 国内農産物の安定供給の重要性 2015年5月27日 2011年10月18日 (株)資源・食糧問題研究所 代表 柴田明夫 はじめに.日本は食糧・生乳生産小国(食料輸入大国)=水の輸入大国 主要国の食糧生産(2013年) 出所:FAOSTAT 小麦 米国 中国 インド ロシア ブラジル アルゼンチン カナダ 豪州 フランス ドイツ 英国 スペイン イタリア 粗粒穀物 58 122 94 52 6 11 38 27 39 25 12 8 7 日本 1 世界 716 370 227 41 37 83 41 29 12 29 23 8 17 9 コメ(籾) (100万トン) 油糧種子 9 143 159 12 1 10 1,323 7 41 1 ,6 49 529 529 351 105 192 107 91 48 74 54 22 34 21 9,127 3,567 6,060 3,029 3,425 1,179 839 952 2,371 3,112 1,394 656 1,040 1,170 639 96 163 967 282 105 232 140 111 85 58 84 311 1,367 1,241 142 197 41 34 22 65 82 63 46 61 25.0 25.0 19.0 45.0 23.0 7.0 26.0 20.0 1.5 0.9 0.5 1.3 0.8 15.1 7.3 1.8 1.8 2.5 0.4 1.7 1.4 2.8 3.6 2.4 1.5 2.2 9 15 5 4 5 10 7 11 750 50 128 1 .0 5.9 3 63,557 1,883 ニュージーランド ◆日本は約3000万tの食糧輸入の 形で、600億トン強の水を輸入 (virtual water) 【日本の基本データ】 483兆円 (H25年度) GDP 農業総生産 4.8兆円 (H25年度) 226万人 (H26年) 農業人口 コメの生産量 8.7百万トン (H25年度概算) 4.5百万ヘクタール 耕地面積 耕地放棄地 40万ヘクタール 国土(日本比) GDP(2011) GDP(順位) 牛肉(万トン) 4,4 29 人口 (兆ドル) 生乳 ( 万トン ) 合計 92 37 57 16 91 55 24 9 6 6 2 9 4 (百万人) 6,398 73 億人 56 1 2 7 8 6 1 .4 億km 2 6 8 兆ドル (地球表面積:5.1億km 2 /陸地1.5億km 2 /日本38万km 2 ) 日本は不足(Food Problem) と過剰(Farm Problem)が併存 ピークは7.9兆円 (H 2年度) ピークは15百万人 (S35年度) ピークは14.5百万トン (S42年度) ピークは6.1百万ヘクタール (S36年度) 2 1.今世紀に入り一段と不安定化する世界の穀物市場 •2014年の米コーン、大豆の史上空前の生産を受け、穀物価格は急落。しかし、水準は上昇。 ドル/ブッシェル ニ ョ 現 象 ニ ャ 現 象 米 国 1 0 5 年 来 の 暖 冬 干豪 ミ ば州 シ つ1 シ が0 ッ 2 0 ピ 年年 川 連に 洪 続一 水 度 の ー ニ ャ 現 象 ○ ラ ニ ー ニ ャ 現 象 ● 史 上 最 大 の エ ル ニ ー ニ ャ 現 象 ー ○ ○ ラ ラ ニ ニ ー ニ ャ 現 象 ニ ョ 現 象 シ米 ッ産 ピ地 川の 大大 洪雨 水・ ミ シ な米 作中 付西 遅部 れ長 雨 で 記 録 的 ○ ラ ニ ー ー ニ ョ 現 象 ○ ラ ニ ● エ ル ニ ー ● エ ル ニ ー 19.00 18.00 17.00 16.00 15.00 14.00 13.00 12.00 11.00 10.00 9.00 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 米 国 5 0 年 ぶ り の 干 ば つ 米 中 西 部 乾 燥 天 候 ● エ ル ニ ニ ョ 現 象 州米 同国 時・ 干カ ばナ つダ ・ 豪 世 界 的 な 異 常 高 温 ぶ米 り中 の西 干部 ば半 つ世 紀 米 国 記 録 的 大 雪 大豆 小麦 トウモロコシ 3 (資料)CBOTより作成 2.世界の食糧市場を巡る動向 今世紀に入って市場規模・価格水準とも新たなステージに入った。 2012年以降、世界的な過剰流動性食糧市場の変動リスクが拡大。 1. 穀物価格の変動(ボラティリティ)リスクが高まる。 ⇒情報の透明性、投機マネー規制、輸出規制、共通備蓄による対応 2.穀物市場・価格のステージ変化に対応した世界的な農業開発ブーム ⇒新大陸型農業を目指した世界的な商品化、装置化、機械化、情報化、化学 化、バイテク化(生物工学)による供給力拡大 ⇒農業の工業化、脱自然化、普遍化、単作化 3.一方、農業は自然の領域に深く関わるもの ⇒地球温暖化・水不足・植物の多様性喪失 ⇒テールリスク(滅多に起こらないが、起こった場合の影響が甚大)への対応 4.需要面では、中国の大豆、トウモロコシ輸入拡大予想に加えて、中東・北アフリ カ地域の輸入拡大予想。 4 3.世界の食糧市場は飛躍的に拡大(需要ショック) 世界の穀物生産量・消費量&期末在庫率の推移 単位100万トン (出所)米国農務省需給報告2015.5 2,500.0 2,400.0 2,486.9 2,476.1 2,486.3 2,478.4 35.0% 穀物=小麦+粗粒穀物+コメ(精米) 30.0% 2,300.0 2,200.0 21.4% 25.0% 20.9% 2,100.0 20.0% 2,000.0 15.0% 1,900.0 1,800.0 生産量 1,700.0 消費量 1,600.0 期末在庫率% 1,500.0 10.0% 5.0% 0.0% 96/97 97/98 98/99 99/00 00/01 01/02 02/03 03/04 04/05 05/06 06/07 07/08 08/09 09/10 10/11 11/12 12/13 13/14 14/15 15/16 4.米国穀物:2015年の生産も過去最高を更新予想(米農務省5月予測) 米国の大豆・トウモロコシ生産 100万BU 米国産トウモロコシおよび大豆の単収(ブッシェル/エーカー) 171.0 180 170 160 150 140 130 120 110 100 90 80 70 10,000 166.8 50 47.8 トウモロコシ(左) 46.0 123.4 32.1 大豆 (右目盛) 14,407 10,000 35 大豆(右) トレンドイールド(傾向単収) トウモロコシ 14,000 12,000 45 40 39.6 16,000 30 単 収 8,000 6,000 3,958 4,000 2,000 0 年 大豆・トウモロコシの作付面積(万エーカー) 25 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 エタノール向け需要は堅調。 米環境保護局がエタノールなど再生可能 燃料の使用義務量の削減案(▲16%)を 発表。当初の144⇒130億ガロンへ 9,500 9,000 8,500 8,000 7,500 7,000 6,500 6,000 5,500 5,000 大豆 トウモロコシ 6 5.ブラジルの大豆は15/16年度も増産基調 ロジスティックが課題⇒如何に積み出すか(流通ロスも発生) 南米の大豆生産 南米および米国のトウモロコシ生産 予測 万トン 40,000 9,000 7,930 7,500 7,500 ブラジル 8,000 アルゼンチン 米国 右目盛 36,566 6,000 34,622 30,000 万トン 5,000 25,000 4,000 2,500 2,650 2,350 20,000 3,000 2,000 15,000 1,000 0 10,000 90/91 92/93 94/95 96/97 98/99 00/01 02/03 04/05 06/07 08/09 10/11 "12/13 14/15 万トン 7,000 35,000 10,000 9,500 9,000 8,500 8,000 7,500 7,000 6,500 6,000 5,500 5,000 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 予測 ブラジル(左) 9,450 9,700 アルゼンチン(右) 5,850 5,700 年度 7 6.世界のブタ 肉の半分を食べる中国 (出所)中国統計年鑑、米農務省(2015.2) 配合飼料 需要量が 4.4億トンとなる見通し 中国トウモロコシ需給 単位1,000t 228000 220000 生産量 200000 150000 輸入量 消費量 在庫量 100000 50000 0 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 中国の大豆需給 単位1,000t 90000 80000 70000 60000 50000 生産量 輸入量 消費量 在庫量 中国の搾油 工場の能力 は1.4億トン 89250 77500 73500 40000 中国の牛肉輸入(枝肉)1,000トン 900 800 500 400 20000 300 10000 200 0 100 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 664 700 600 30000 974 924 1000 0 567 628 821 774 721 515 460 412 99 8 870 7.ロシア:戦略としての乳製品禁輸&小麦の輸出規制 • ロシアの小麦輸出・輸入量 (1,000t) 25000 20000 • 20000 15000 ロシア政府は2009年、ベラルーシからの乳製品500品 目を禁輸 ロシア政府はウクライナ問題を契機に、2014年8月、E U、米国、豪州、ノルウェーからの乳製品を含む農畜 産物の輸入を(1年間)禁止。 ⇒国際乳製品需給(緩和)へ影響 11289 10000 • 5000 0 1987 1990 1995 2000 輸出量 (1000トン) 2005 2010 2014 輸入量 (1000トン) • ロシアの小麦生産量と消費量 70000 60000 50000 40000 • 30000 20000 10000 0 1987 1990 生産量 (1000トン) 1995 2000 飼料用消費量 (1000トン) 2005 2010 2014 食用その他 (1000トン) ロシア政府は2014年12月26日、小麦に輸出関税を設 定。期間は2014/15年度(小麦年度7~翌年6月)の後 半(15年2月1日~6月30日までの5か月間)。関税率 は税関新穀価格の15%に7.5ユーロを加算した額(但 し、合計でトン当たり35ユーロを下回らない額)。 この報を受け、シカゴ市場では年末にかけて小麦が 11月の1ブッシェル=5.42ドルから12月6.15ドルに上昇 。ただ、米農務省が1月の需給報告で、ロシアの小麦 輸出量が前年度の1,850万tより増加し、史上2番目の 2,000万tとの見通しを発表。小麦は再び5ドル台に反 落。ちなみに、ロシア税関データによれば、2014年7月 ~15年1月14日までの穀物輸出量は前年同月比31.6 %増の2,160万t。うち小麦は1,690万t。 ロシアでは、昨秋からの原油価格急落・ルーブル下落 により、食料品などのインフレが加速。インフレ率(消 費者物価上昇率)は10月の8.3%から1月には13.2% に上昇。一方、ルーブル安は、小麦を中心に穀物の 輸出競争力を強める。穀物の輸出が増加すれば、国 内向け供給が減少し、穀物価格に上昇圧力がかかる 。これを恐れたロシア政府は、逸早く輸出規制に踏み 切った格好だ。 8.世界の生乳・全粉乳市場の動向 (出所)USDA Dairy : World Markets and Tradeより作成 EU、アメリカ、インド、中国、ブラジルの生産が拡大。 ※EUは2015年4月より生乳クォータ廃止(生乳生産を 自由化) ニュージーランドの輸出が急増⇒中国 主な全粉乳輸出国 千トン 主要国の生乳生産量 万トン 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 2009年 2010 2011 2012 2013 2014 2015(予測) 2009年 2010 2011 インド、中国の牛乳消費が急増 2012 2013 2014 2015(予) 中国の輸入が急増 主要国の牛乳消費量 万トン 主要国の全粉乳輸入量 千トン 6,000 700 600 500 400 300 200 100 0 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 2009年 2010 2011 2012 2013 2014 2015(予) 2009年 2010 2011 2012 2013 2014 2015(予) 9.新たな課題:中東・北アフリカ地域の食糧問題 1. 急増する食糧(穀物・油糧種子)需要 ① ② 背景に人口増(人口爆発地域) 所得増(国によって所得格差大)、原油価格の高騰 2. 食糧(穀物・油糧種子)輸入への依存大 ① ② 国内生産基盤の脆弱性(耕地拡大の余地少ない、専ら単収の増加 で対応)、トルコ、イランが2大穀物生産国だが、年ごとの変動幅大。 水資源不足(地下水の枯渇問題) 3. 国際マーケットに影響⇔逆に国際マーケットからも影響 ① ② 高値波乱の穀物価格(食糧価格の高騰は社会不安を拡大、食糧市 場の安定は、同地域の政治的安定の必要条件) ランドラッシュ(進出先での農地争奪) 4. 日本との関わり ① ② ③ 輸入食糧の競合(トウモロコシ、小麦、大麦) 日本の農業技術協力(灌漑、農業開発、機械化) ポストハーベスト(食糧流通、保管)、モンスーン・アジアからのコメ 11 輸出協力 10.中東・北アフリカ地域の小麦・トウモロコシ事情 •北アフリカ:小麦単収は増加傾向(2000年1.8→14 年2.6トン/ha)、小麦生産が1,500~2,000万トンで頭打 ちの一方、輸入は2,000~2,500万トンで推移。 •中東諸国:小麦作付&単収共に変化大きく、減少傾向 (14年1,800~1,900万ha、1.9トン/ha)、小麦生産も3,500万 トンで頭打ち。一方、輸入は増加傾向にあり、14年は 2,500万トン予想。 原産地:メソポタミア (現イラク) •中東諸国:トウモロコシ作付面積&単収共に頭打ち(14年 100~120万ha、6トン/ha)、トウモロコシ生産も600万トンで頭 打ち。輸入は2000年600万トン→14年1,300万トンに倍増。 •北アフリカ:トウモロコシ作付面積は減少。単収は増加 傾向(14年7トン/ha)、生産が600万トンで頭打ちの一方、 輸入は2000年800万トン→14年1,400万トンに急増。 原産地:中南米メキシ コ、ボリビア近辺 12 11.自然界における気になる兆候 • • 特定の作物に依存する世界の食糧供給 未知の病気の発生(BSE<牛海綿状脳症>、口蹄疫、高病原 性鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、西ナイル熱、 エボラ出血熱) • GMOの急速な普及 • スズメ 何処行った • 昆虫の北進 • ミツバチが消えた(蜂群崩壊症候群) • 除草剤の効かないスーパー雑草の急繁殖 (NHKクローズアップ現代09.9.7) →日本:オモダカなど17種類 →アメリカでも農業技術を根底から揺さぶる事態 自然と如何に折り 合いをつけるか 12.世界中で多発する異常気象 2013年~15年3月 14年1月 欧州各地 で大寒波・積雪。 14年2月 イギリスで 大雨・高波により大 洪水。 14年2月 イラン北部 で50年ぶりの豪雪。 13年5月 ロシア南部で高 温乾燥。冬小麦の作柄悪 化。 15年4月、土壌水分不 足で50%が発育不良 15年3月 インド北部 で平年以上の降雨。 13年5月 中国中央部・ 南部で高温・乾燥。コメ の作柄悪化 13年5月 中国華北 平原で豪雨。収穫前 の小麦品質悪化。 14年2月 関東甲信・ 東北太平洋側で記 録的大雪 13年11月 フィリピン 中部に超大型台風 襲来。 13年12月 エジプト、 イスラエルで大寒波・ 積雪。 14年1月 豪州南東部で 連日40度を超える猛暑。 山火事相次ぐ 14年1月 米中西部 ~東部で記録的寒 波 2011年から干ばつ継続。 14年1月 カリフォルニア 州で過去100年で最悪の 干ばつ。 15年1月非常事態宣言 13年8~9月 南米中西部で 大雪・寒波。家畜に被害。ぺ ルーで非常事態宣言。 13.日本が追及してきた「3つの安定」が脅かされる 離れる農業→ブラック ボックス化 ①距離→遠距離化 ②時間→生産から口 に入れるまでの時間 ③付加価値→現地で 加工されて輸入 新興国の需要拡大 買い負け 価格 (安価) 東京円・ドル為替相場の推移 水不足 異常気象 400 360 350 300 258 250 200 180 150 144 100 102 84 50 品質 (FOOD SAFETY) 120 121 76 供給 (FOOD SECURITY) 15 • 14.円安は“両刃の剣” 円レートと物価指数(2010年=100) 130 135 輸入物価 国内企業物価 130 120 消費者物価 125 円/ドル(右) • 110 120 100 115 110 90 105 80 100 70 95 20062008201012/1 3 5 7 9 11 13/1 3 5 7 9 11 14/1 3 5 7 9 11 15/1 3 5 • 食品小売価格の動向 品目 食パン 即席めん 豆腐 食用油 みそ チーズ マヨネーズ バター 2012年平均 13年平均 97.6 107.4 101.5 90.8 118.0 113.0 99.6 106.0 96.2 106.6 99.3 91.2 117.2 111.0 103.7 107.6 14年平均 2014年1月 99.3 109.1 101.9 91.2 119.7 125.4 112.2 112.0 97.5 106.5 98.7 91.1 116.4 110.9 1 12 .5 107.4 3月 97.4 106.5 99.7 90.6 115.9 1 21 .5 110.9 107.9 2008年1月=100 6月 9月 100.1 102.9 110.0 110.0 102.3 103.2 92.1 92.1 121.2 120.9 129.0 129.2 113.0 114.5 111.7 112.5 資源価格が高止まりするなかで の円安進行は、輸入物価を押し 上げ⇒企業物価、消費者物価 の上昇につながる。 これまで企業は、人件費を抑え ることで円高デフレに対応。しか し、企業も我慢の限界。価格転 嫁を抑え切れなくなる。 – ex.原油(10円円安⇒7円上 昇⇒ガソリン・灯油価格へ の転嫁)、食料品、電気料 金などの値上げ。 更に問題は、アベノミクス⇒景 気回復⇒賃金への反映までにタ イムラグがあること。その前に、 インフレが来れば家計を直撃し かねない。 12月 103.0 110.0 102.8 92.7 120.7 129.0 111.9 114.2 2015年1月 102.9 110.0 103.2 92.1 120.9 129.2 114.5 112.5 2月 102.5 109.8 103.1 92.1 120.5 128.3 114.7 112.1 3月 103.0 110.0 102.8 92.7 120.7 129.0 111.9 114.2 3月前年比% 5 .7 3.3 3.1 2.3 4.1 6 16.2 0.9 5 .8 ◇食料品の値上げラッシュ 1月 即席麺、カップ麺(日清食品、エースコック、明星食品、東洋水産、 サンヨー食品など) 食用油、油脂製品(日清オイリオグループ、昭和産 業、J-オイル ミルズ、ホーソー油脂など) 家庭用パスタ(日本製粉、昭和産業、日清フーズなど) 生麺(都一)、輸入ワイン(キッコーマン)、 酒・紹興酒(キリン ビール、宝酒造) 2月 3月 家庭用冷凍食品(日本水産) 弁当(ほっかほっか亭) カレールー・レトルト製品(ハウス食品) 冷凍食品(味の素冷凍食品、ニチレイフーズなど) 瓶詰め(桃屋) 麺製品(シマダヤ)、 アイス(森永乳業、明治、森永製菓、江崎グリコ、ロッテアイス、井村屋、ハ ーゲンダッツなど) 4月 ワイン(アサヒビール) 17 15.農林水産業・地域の活力創造本部「農林水産業・地域の活力創造プラン」 (平成26年6月24日改定)における制度設計の全体像のポイント 1.米の直接支払交付金 ・激変緩和のための経過措置として、26年産(2014年)米から単価を7,500円(10アール)に削減 した上で、30年産から廃止する。 2.日本型直接支払制度(多面的機能支払)の創設 ・農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮を図るため、地域内の農業者が共同で取り組む 地域活動を支援。 3.経営所得安定対策 ・畑作物の直接支払交付金(ゲタ)…認定農業者、集落営農、認定就農者が対象 ・米・畑作モツの収入減少影響緩和策(ナラシ) 4.食料自給率・自給力向上に向けた水田のフル活用 ・水田活用の直接支払交付金により、飼料用米、麦、大豆など、戦略作物の本作化を進め、水 田のフル活用を図る。(飼料用米・米粉用米について数量払いを導入し、上限値10.5万円/10ア ールとする) 5.米政策の見直し ・需要に応じた生産を推進するための環境整備を進める。 6.米変動補助交付金 ・平成26年度から廃止 18 16.TPP交渉参加を巡るこれまでの流れ • • • • • • • • • • • • • • • • • • 2010年10月 2010年11月 2011年11月 2013年2月22日 管首相、衆参両院本会議の所信表明演説でTPP交渉参加を表明 「EPA(包括的経済連携)に関する基本方針」を閣議決定 野田首相、TPP交渉参加の方針を表明 安倍首相訪米。安倍・オバマ両首脳は、TPP交渉参加に際し「すべての関税撤廃 をあらかじめ約束することが前提にならない」とする内容の日米共同声明を発表 2013年3月15日 安倍首相、TPP交渉参加表明 2013年4月 日米事前協議決着。米通商代表部(USTR)、日本のTPP交渉参加を認める意向を 議会に通知 2013年7月 日本、マレーシアで開催の第18回交渉会合に合流 2013年10月 自民党が、外交・経済連携本部とTPP対策委員会の合同会合で、交渉の聖域とし ていた農産物重要5項目について、関税を撤廃できる品目がないか、検証開始 2013年11月 日米関税交渉。TPP交渉の年内妥結を狙う米国との間で農産物重要5項目協議 2013年12月 シンガポール閣僚会議 年内合意できず越年 2014年2月 シンガポールでのTPP閣僚会合決着持ち越し 2014年4月 日米首脳会談が打開への鍵? 日豪EPA大筋合意 2014年7月 シンガポール閣僚会議で大枠合意目指す 2015年1月 日豪EPA発効、米国で12か国の首席交渉間会合、 2015年2月 日米実務者会議(重要農産品の関税に関する事務レベル協議) 2015年2~3月 日米閣僚級協議 ⇒日米が大筋合意? 2015年4月 安倍首相が訪米し、日米首脳会談 19 2015年6~7月 TPA(Trade Promotion Authority)法案、米上・下院で採決? 17.TPP参加と日本農業(政府試算) 政府試算(3.15):TPPに参加し関税を撤廃した場合、10年後の実質GDPが+3.2兆円。 一方、農林水産物の国内生産は7.1兆円⇒4.1兆円へ、3兆円失われる。 TPP参加:農林水産省による各品目の生産減少率と減少額の試算 品目名 コメ 小麦 大麦 砂糖 でんぷん原料作物 生産減少率% 32% 日米協議 生産減少額 約億円 ▲10,100 99% 79% 100% 100% ▲770 ▲230 ▲1500 ▲220 牛乳・乳製品 45% ▲2,900 牛肉 68% ▲3,600 豚肉 70% ▲4,600 インゲン 23% ▲30 小豆 71% ▲150 落花生 コンニャクイモ※ 40% - ▲120 ー 茶※ - ー 加工用トマト 100% かんきつ類 8% ▲60 リンゴ 8% ▲40 パイナップル 80% ▲10 鶏肉 20% ▲990 鶏卵 17% ▲1,100 農産物合計 林水産物合計 農林水産物合計 ▲270 品目数 (タリフライン) 58 109 現在関税778% ⇒コメの輸入枠(関税ゼロで年間数万 トン受入)。米側はなお上積も 重要 5品目 131 586 188 51 6.5% 49 (注) 日本の関税品目 9,018 現在関税38.5% ⇒ まず20%に引き下げ、段階的に下 げる 現在高い価格帯で4.3% ⇒ 長い年月をかけて撤廃 内、関税を撤廃した ことのな いタリフライン 834 ▲26,600 ▲3,000 ▲30,000 (出所)農林水産省 ※印はTPP交渉関係国からの輸入実績がほとんどないことを考慮。 20 18.発効した日豪EPA協定(2015年1月15日発効) • 日豪EPAは、日本が締結した14番目のEPA。二国間EPAとしては最大の貿易相手国であり、農 産物輸出大国との初めてのEPA。 日豪間の貿易状況:2014年の日本⇒豪州への輸出額約1.5兆円(自動車、石油・ゴム製品など)、豪 州⇒日本への輸入額は5兆円強(LNG、石炭、鉄鉱石、非鉄金属鉱で約80%、農産物は約10%)で総額 6.5兆円。 この内、日本では、エネルギー・鉱物資源の輸入関税はゼロだが、農産物の輸入には比較 的高い関税を課している。 • 日本の国別牛肉供給量の推移 1200 1103 800 806 813 838 890 1000 800 738 600 600 536 450 400 365 今回の日豪EPA合意で、豪州から日 本に輸入される主要な農産物の概要 1200 937 898 1000 200 • (単位)1,000t 364 353 356 400 346 363 354 200 0 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 国産 米国産 豪州産 その他 輸入計(右) 供給計(右) ①牛肉―38.5%の現行関税を段階的に 引き下げ、冷凍肉(フローズン)を18年目 に19.5%へ半減。冷蔵肉(チルド)は15年 目に23.5%とする。 ②乳製品―プロセスチーズに条件付き 関税割当を導入、ブルーチーズについて は10年かけて関税を2割削減、 ③ワイン―7年目に関税をゼロにする。 ④小麦、砂糖、バター・脱脂粉乳などの センシティブな品目は、「将来の検討課 題」として先送り。 ⑤コメは関税撤廃等の対象から「除外」 19.日本の食料安全保障戦略 「食料、農業、農村」基本法(第2条)における食料安保 国民に良質の食料を安定的に供給 にもかかわらず、 基本計画(3/15)で は、10年後の自給 率目標(カロリー ベース)を50%⇒ 45%に引き下げ た そのための手段と現状⇒対策、戦略 生産力 自給率 備蓄 農業資源のフル活用 土地利用型農業の衰退 が止まらない (農業の多面的機能発揮) 自給力 事業仕分けで備蓄削減 水田農業(家族農業)の重要 性を認識 備蓄拡大、ASEAN+3 備蓄量、安定価格帯システム 輸入 伝統的輸出国としての 米国の信頼性低下 輸入先多角化 米国、南米、ロシア、ウクライナ 不測の事態への対応見直し(レベル0,1,2)⇒不足の事態への対応 22 20.日本の酪農市場の危機 •減少する酪農家戸数と生乳生産量 酪農家戸数は1963年41.8万戸⇒1.9万戸割れ (全国的に酪農家の離農が増加) •その結果、生乳生産量も減少傾向 •背景に、酪農経営の危機 ①牛乳乳製品消費の減少 ②飼料費の高止まり(国際穀物価格の上昇) ③乳製品(チーズ)輸入の拡大(2013年消費量29万 tのうちの24万t) •一方、国際乳製品需給はひっ迫し、価格上 昇⇒円安と相俟って国内価格も上昇へ •日本における酪農見直し(生乳生産の維持 拡大)が必要 23 21.改めてー「攻めの農業」の構図 中山間 平地 農産物輸出 産業 政策 地域 政策 6次産業化 攻めの農業= 農業の経済的価値追求 農地集積 生業としての農業= 農村社会の維持発展を目指した地域政策 農業の社会的価値(多面的機能)追求 (出所)農水省資料を基に筆者作成 24 ◇鶴見俊輔(哲学者)が指摘する「まるごと」 • 「まるごと(whole)」と「全体(total)」とは異なる。 • 「全体」はあくまでも均質集合としての意味で、その構成要素 に相互関連性は薄い。 • これに対し、「まるごと」は、その構成要素が相互に結びつい て、人間の手・足・指・頭・目などがそれぞれ有機的に働くイ メージ。 • 農村(地域経済)の生活においては、これまで農地、水、水 源涵養林、ヒトといった構成要素が、「全体」としてではなく「 まるごと」として有機的に働いてきた。 • それを維持・保全してきた最大要素が稲作農業である。 • しかし、米生産が800万tを割り込むようになれば、そうした国 土を「まるごと」保全していく機能が決定的に失われてしまう と思われてならない。 25 22.農業6次産業化と地域複合経営 •「ファームサイズ」と「ビジネスサイズ」 •規模拡大を導入してもそれは ファームサイズを拡大しているだ けであって、必ずしも農業経営が 良くなっているわけではない。 •本来は、ビジネスサイズの拡大 を目指すべき 農業機械を購入したらそれを 年間通じて如何に使い切るかと いう視点が重要。⇒農業機械を 年間に何回転もさせよ。 この視点で考えると自ずと複 合経営を模索する。 • 水稲ー畑作ー畜産・酪農を 中心とする地域での複合 経営 26 23.世界の食(加工・外食)の市場規模と日本食文化の普及 • • 世界の食市場規模は、2009年の340兆円⇒2020年680兆円へ倍増。 特に、中国・インドを含むアジアの市場規模は82兆円⇒229兆円へ約3倍。 680兆円 兆円 340兆円 229兆円 82兆円 流通・物流:需要と供給をつな ぐバリューチェーンの構築 27 (資料)ATカーニー社の推計、農水省資料を基に筆者作成 結び.「食」を支える萃点(すいてん)としての農業・農村を見直せ 農業・農村には多くの学問の領域が関わる ex.土壌学、微生物、生態学、化学(肥料・農薬)、 気象学、機械工学、電子技術、土木工学、情報工 学、動物学、植物学、経済学、農学、経営学、遺伝 子工学、農村社会学、物流・流通、ネットワーク 南方熊楠の萃点 イ 1.「自然の力を最大限発揮させ持続 させる」ー日本農学の思想。 ロ 2.「命」は「食」に支えられ、「食」は 「農」に支えられるー多様な農業と日 本の食材⇒2015年ミラノ万博へ 萃点 ハ ニ ホ へ 3.世界の食料市場に生じるあらゆる 問題は、その根本にある農業・農村に 凝縮されるー世界の「食」を支える「萃 点」としての農業・農村を見直せ 28
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