H26授業のエキスパート養成事業 小4 理科 水の3つのすがた 《本単元で重点をおく指導事項》A(2)ウ ● 水を熱したり冷やしたりするときに起こる変化を観察して、温度と水の状態変化を関連付け て考えるようにする。 ● 水は温度によって液体、気体、または固体に状態が変化するということを捉えるようにする。 ● 自然事象をそれに関わる要因と関係付ける能力や興味・関心をもって追究する態度を育て る。 《単元のねらい》 ○ 水を熱したり冷やしたりしたときの温度による状態変化を、見通しをもって調べようとす る。 【自然事象への関心・意欲・態度】 ○ 水蒸気や氷に姿を変える水の状態変化と温度を関係付けて考察し、自分の考えを表現する。 【科学的な思考・表現】 ○ 加熱器具などを安全に操作し、水の状態変化を調べる実験を行い、その過程や結果を記録す る。 【観察・実験の技能】 ○ 水は温度によって水蒸気や氷に変わることや、水が氷になると体積が増えることを理解す る。 【自然事象についての知識・理解】 ―単元の学習活動― ◇ 水を熱したときの様子や温度変化を調べ、水は約 100℃で沸騰し、湯気や大きな 泡が出ること、体積が減ることを理解する。また、沸騰して出てくる泡の正体を予 第 1 次 想して、検証実験を行い、泡は水が水蒸気に変化したものであることを解決する。 ◇ 水を冷やして凍る温度や体積変化を調べる。水が凍り始めてから全部凍るまでの 第 2 次 温度が0℃のままであることから、水の状態変化を温度変化と関連付けて考えたり、 自然界での水の状態変化について考察したりする。 指導のポイント ◇ 児童の実態把握 「沸騰した水から出てくる泡の正体は空気」と多くの児童は考えている。これは、水泳の授業で、 水中で息をはいた経験や、 「空気と水」などの既習事項から考えると、当然のことである。また、水 が水蒸気に変化するという知識がある児童でさえも、 「泡は空気」と答えており、知識と実際の現象 を結びつけて考えることができていない実態が伺える。したがって、目に見える形で水蒸気の存在 を意識させる実験ができれば、実感を伴った理解を図ることができるであろうと考え、本時の実験 を計画した。学習前の児童の実態を確実に把握することで、児童に身に付けさせたい力、その力を 育むために適した実験方法や学習形態 を選択することができた。 ◇ 予備実験の実施と自作教具の工夫 当初、学校にあるガラス製漏斗で予 備実験を試みたが、水蒸気により袋が 膨らんだり、冷やされて縮んだりする 様子が分かりにくかったので、実験道 具を自作することにした。何度も実験 をした中で、ガラス製漏斗ではなくペ 自作の実験道具 実験の様子(空気との比較) ットボトルとゴム栓、ガラス管による自作の漏斗であれば、漏斗の足の長さや太さを自在に変える ことができ、水蒸気が集まりやすいガラス管の形状を用意することができた。また、体積変化が見 えやすい袋の大きさや水の量、実験の手順なども明確になった。さらに、支持環を複数使ってビー カーを保持する方がよいことなど、安全面についても配慮することができた。空気で膨らませた袋 を用意し、水蒸気で膨らんだ袋との対照実験も効果的に位置付けることができた。 児童が実験した際には、全ての班の袋が水蒸気で膨らみ、内側に水滴が付き、火を消すとしぼむ 様子が観察できた。また、前述の対照実験をして比較させることにより、空気と水蒸気の違いに児 童自らが気付き、学習問題を主体的に解決する糸口とすることができた。さらに、予備実験による 試行錯誤や実験に適した教具を自作することで、児童により実感を伴った理解をもたらすことがで きた。 ◇ 言語活動の充実 本単元だけでなく、全ての授業において論点がはっきりするように学習問題を明示し、話し合う 活動を重視した。児童同士、児童と教師など、活動の形態は様々である。観察や実験を基に練り合 い、高め合い、 「なぜそうなるのか」 「そのことから何が言えるのか」を考えさせ、根拠を明らかに して結論を導き出すという科学的な見方や考え方を養う場を大切にした。特に、実験後には自分の 考えを学習カードにまとめ、一人一人が考えをもって班や全体での話合いに臨むことを習慣化した ことで、 既存のイメージによる感覚的な話合いではなく、 結果を基にした論理的な話合いができた。 本時は目に見えない水蒸気を扱うため、学習問題に対する予想や仮説をしっかり立て、見通しをも った上で実験を行わせる必要がある。そのために、問題に対する予想や仮説を検証する実験がどの ようなものであるかや、予想や仮説と結果の一致、不一致によって、結論の導出がどうなるかを考 えさせる時間を確保した。また、教師も話合いに参加し、児童が気付いたことを明確にしながら筋 道立てて話し合えるよう支援した。自分一人では考えがまとまらず、悩んでいた児童も、友達と話 し合う中で、袋が膨らんだのは空気の力ではなく水が関係しているという結論を導き出すことがで きた。 ◇ 個別学習 小集団学習 小集団学習 (学習カードの活用) (教師による指導) (小集団での話合い) 児童の学びを深め、定着を図る演示実験 実験教具を工夫し、実験結果を基に学 習問題を解決する話合いを行うことで泡 の正体に迫ったが、液体である水が気体 の水蒸気に変化するとは考えにくい児童 がいた。そこで、本時の学びを別の視点 から確認する方法として、演示実験を二 つ準備した。 演示実験 全体での話合い 一つは、水が沸騰している大きなビーカーにアルミホイルでふたをして、そのビーカー中に氷水 の入った試験管を入れ、ビーカー内の水蒸気が水滴になる様子が観察できるものである。もう一つ は丸底フラスコ内で水を沸騰させ、フラスコ内を水蒸気で満たしてから風船を被せ、いったん水蒸 気で風船を膨らませる。そして、アルコールランプの炎を消し、水蒸気が冷えて水に戻ることで風 船がフラスコ内に引き込まれる様子が観察できるものである。これらの実験を児童に見せる前に、 まずどのようになるのか予想させた。そして、実験結果のようになった理由を全体で話し合わせる ことで、水が温度によって水蒸気に変化したことを理解することができた。 どちらの実験も児童は驚きをもって見つめ、 「なぜ」「どうして」と思考する様子が見られた。知 的好奇心を喚起し、本時の学びを確かなものとする実験を提示することで、水蒸気についての理解 を深めるとともに、理科学習のおもしろさを味わわせることができた。 評価について ◇ 学習カードの活用 単元を通して学習カードに、自分の考えを記録させた。予想や実験 後の考察などを整理して書きやすくすることで、児童自身に自分の思 考の流れや変化を視覚的につかませることをねらいとした。また、教 師も学習カードを分析し、児童一人一人の思考の流れを把握し、指導 や評価に生かすことができた。学習カードの記述からは、毎時間、学 習問題を明確にした学習活動を展開していることの効果が見てとれた。 本時の学習カードにも、 児童は実験の記録を細かく、 具体的に記入し、 予想と照らし合わせながら学習問題を解決していった。自然事象への 関心・意欲・態度の観点を評価するに当たっては、学習カードの記述 と、授業での発言や実験の様子などを基に評価した。 学習カードの活用 授業改善に向けて ○ 問題解決的な学習活動が展開できる的確な学習問題を設定し、それを解決する過程で、よ り実感の伴った理解を図ることができる教具の開発や指導方法の一層の研究が必要である。 ○ より児童の意識の流れに沿った学習展開を目指し、言語活動と体験活動を充実させ、考察 を深めるための入念な単元構成や時間配分を行う。 ○ 水という身近な教材から学んだ知識や技能を、実際に活用して理解を深化させる活動を工 夫し、学習内容と生活とのつながりを実感させることで、理科学習の有用性を児童に感じ取 らせる学習内容や方法の研究を進める。
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