保健体育科

保健体育科
スポーツ文化享受能力を培う体育科・保健体育科教育の研究
-「わかる」と「できる」をつなぐカリキュラム開発-
1
研究の概要
スポーツ文化享受能力とは,生涯を通して運動を積極的に生活に取り入れ,人生を豊かにして
いく力であると定義し,テーマに迫る授業づくりを進めてきた。内容としては,
「カリキュラムデ
ザイン」や「学力デザイン」,「体育科・保健体育科連携プラン」(以下「連携プラン」)の作成に
取り組んだ。特に「連携プラン」では,種目ごとに9年間のつながりが見えるものを作成し,授
業実践を通して修正・改善を行ってきた。また,
「わかる」と「できる」をつなぐ手段としてのI
CTの効果に着目し,有効な活用法を探るためのアンケート調査や授業実践に取り組み,活用方
法についてまとめた。
2
(1)
今年度の取り組み
1年1・2組男子
-公開授業について-
「創作ダンス」秀島邦治
グループ毎に設定したテーマから表したいイメ
ージを捉え,変化と起伏のあるひとまとまりの作
品作りを行った(図1)。授業では,ペアのグルー
プとミニ発表会を行い,アドバイス活動や発表会
に向けての修正点をまとめた。作品を見る視点(①
4つのくずし,デフォルメ等が取り入れられてい
るか
②テーマがうまく表現できているか
③
図1
ダンスの授業の様子
「はじめ-なか-おわり」のひとまとまりの構成
になっているか)に沿って,アドバイスや撮影した動画を見て修正点の気づきを促した。
(2)
3年2組
「文化としてのスポーツの意義」岩永智子
スポーツの魅力を踏まえて,スポーツの意義や
オリンピックの価値についてスポーツ PR 文をつく
るというパフォーマンス課題を設定し,単元に取
り組んだ。授業では,オリンピックのシンボルマー
クの意味を県内在住のオリンピアンの話やソチオ
リンピックのエピソードを通して考えた(図2)。
オリンピックや国際的なスポーツ大会が国際親善
や世界平和に貢献していることなど,パフォーマ
ンス課題につながるキーワードやスポーツの魅力
について学んだ。
図2
体育理論の授業の様子
3
今年度の研究について
(1)
成果
表現・ダンスを通して,4つのくずし(体のくずし,リズムのくずし,人間関係のくずし,
空間のくずし)という観点を小中で共通して実践したことは,参観者から評価を受けた。4つ
のくずしの指導については,小中の発達段階を踏まえて,児童生徒の作品や動きから価値づけ
をしたり提示したりした。これは,
「連携プラン」を作成することで表現・ダンスにおける小中
連携の観点の一つとして取り組むことができた。
表現・ダンス以外の種目(領域)においても小中で連携して「カリキュラムデザイン」,「学
力デザイン」,「連携プラン」を作成する過程を通して,お互いの共通理解が進み,小中の違い
を意識したり,既習の学習を確認したりして授業づくりや授業実践ができた。
ICTの利活用について,創作ダンスの授業では,
「タブレットPCに保存した即興の動きを
作品作りに生かす」という活用方法を生徒に提示していたが,教師の意図に反して,生徒は作
品作りがほぼ完成した段階でタブレットPCを使用していた。ある程度構成が出来上がった段
階で,タブレットPCを使用することで作品の修正や思考を促すことに効果が見られた。生徒
も自分たちのニーズに応じてICTを利活用している姿が見られた。
これまで小中で情報交換やICT機器の貸し借りをしながら多くの単元で実践し,その有効
性を確認できた。保健分野や体育理論を含む体育分野の学習において,必要に応じて当たり前
のように活用できていることが生徒,教師にとって一番の成果であると考える。これまでの実
践を通して,条件や用途によっては不都合な点も併せて,授業場面ごとの目的や課題に応じた
活用法についてまとめることができた。
「わかる」と「できる」をつなぐために,授業の工夫やICTの利活用の視点をもって授業
を行ってきた。それらの手だてが有効であったかどうかを形成的授業評価や生徒の記述,達成
競争型のドリルゲームの結果の伸びから検証できたのではないかと思う。
(2)
課題
これまでに作成した「カリキュラムデザイン」,「学力デザイン」,「連携プラン」は児童生徒
の実態に合わせて随時,修正を行っていくとともに必要な種目について新たに作成し,活用し
ていきたい。
ICTについては,あくまでもツールであることを認識し,ICTの必要性や効果を踏まえ
た利活用やさらに運動の6つの学習過程(①自分の力に応じた課題や運動の選択,②どのよう
な動きであるかを知る,③その動きがどのような技術で成り立っているかを知る,④練習方法
を知る,⑤練習し,その結果を認知する,⑥つまずきを発見し,解決する)でどのような使い
方をすれば効果的かをさらに探っていきたい。
4
今後の展望
本研究で明らかになった課題に引き続き取り組むとともに,スポーツ文化享受能力を培う視点
で,小中連携をふまえた授業づくりの実践と検証を行っていく。ICTの設備も拡充してきてお
り,新しい機能をどのように活用していくかについても実践を通して検討していきたい。さらに,
平成 27 年度からの研究テーマである「21 世紀型能力の育成」に関しては,スポーツ文化享受能
力と体育科・保健体育科でいう 21 世紀型能力をどのように捉え,授業を通してどのような資質や
能力を身につけさせることをめざすのかを明らかにし,実践につなげていきたいと考えている。