IDF文献を仮訳

IDF文献を仮訳
乳業装置とエネルギー機器からの排気ガス
序文
乳業界においては今日のように一般に地球環境問題が注目を集める前から長期間にわた
り環境問題を重要な課題としてとらえてきました。
排気ガスに関する本ガイドは、環境影響の低減によって持続的な乳業界の進化を支える
ため作成されました。
アクションチームはIDF Standing Committee on Envirornment の後援により設立されま
した。この仕事は新しい業務として2006年のIDF National Committeesで了解されました。
アクションチームのメンバーは定義、発生源、法的要求事項、乳業における排気ガスコ
ントロールの技術的解決方法、エネルギー供給設備から発生する粉塵のコントロールの
概要について書き著し、承認を得るため最終草稿を2011年のSC on Environmentに提出し
ました。
本書に記されているデータは基本的に2010年までに収集可能であったものを使用してい
ます。本書では主に粉塵排出制御の技術的対策について焦点をあてています。IDFの専門
家は工場での管理的手法や技術(たとえばEuropean Union under the Directive on
Industrial Emmissions(IED)2010/75/EU)で書かれたBREF文書などで述べられている)
など他の手段があることを承知しており、追加すべき事項と粉塵排出制御に影響の大き
な手段についても著わしています。本書では分離された粉塵の回収や再活用については
取り扱っていません。これらの課題については乳業において粉塵排出が引き続き着目す
べき事項であれば、現行文書の将来的なアップデートの際に取扱うことになるかもしれ
ません。
IDFはこのプロジェクトグループの努力と成果に感謝したいと思います。 Mr.Rainer
Bertsch(DE)(チームリーダー),Dr.Jim Barnett(NZ),Ms.Karen Leov(NZ),Mr.Roeland H.
Peters(CA),Mr.Jan Turowski(PL)
Nico van Belzen,PhD
Director General of IDF
Brussels,2012年7月
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乳業装置とエネルギー機器からの排気ガス
1. はじめに
空気の品質は汚染物質の排出の影響を受けますが、それは点源からの排出と面源か
らの排出の2つがあります。面源からの放散がより大きな排出源となっています。
また、これらには自然からの発生(波しぶき、植生、土地被覆、農場の動物)と工
業、家庭、車両、などの人工的な排出があります。自然から排出される量は人工的
に排出される量に比べはるかに大きいと考えられています。
工業などの点源からの排出は面源からの排出よりもより明確です。点源から排出さ
れる粉塵の成分についてこの書では注目しています。
1.1 粉塵の定義
粉 塵 に は 浮 遊 し て い る 粒 子 (suspended particle) と 呼 吸 域 粒 子 (inhalable
particles)がありこれらは合わせて粒子状物質として「 粉塵(dust)」「微粒子
(particulate)」と言い換えて扱います。
粒子状物質についてはUS Environmental Agency EPA(Environmental Protection
Agency) で 発 行 し て い る 1987 National Air Quality Standard for Particulate
Matter(PM-Standardと呼ばれている)に定義されています。この基準書では排出物の
基本的評価について、以前から使用している全排出量による評価ではなく、全排出
量中の呼吸域粒子排出量の評価に変更しています。
粒子状物質はしばしば粒子サイズによって記述され、PM10や
PM2.5 と い う 言 葉 が 良 く 使 わ れ ま す 。「 浮 遊 粒 子 状 物 質
(Inhalable particulate matter)」もしくは「PM10」は直系
10ミクロン未満の粒子を指します。PM10を含むものとして煙、
鉱山、吹付加工、風による埃、海塩粒子などが挙げられます。
「PM2.5」は2.5ミクロン未満の粒子のことです。これらの微細
粒子は「微小粒子状物質(respirable particulate)」として
知られています。この微粒子はより呼吸器に与える影響が強く、
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粒子径によってその影響度が異なります(0.5μm未満の粒子について100%の強度、
2.5μm未満の粒子について50%強度、3.5μmを超える粒子は0%)
。
粒子状物質を測定する際には、微細な粒子の排出粒子全体へ影響度について考慮す
ることが重要です。
1.2 粉塵の人の健康に与える影響
自然や人工物から汚染物質が排出されることによって大気汚染がおこりますが、こ
れらの排出物の人間や環境への影響はその状況によって種々様々です。
ある決められた場所の空気の品質は以下によって決まります。
肺への微細粒子の
・自然の状況、近隣や関連する排出状況など
経路(Wikipedia)
・風、乱れを含む大気の状況、温度、人や植物などの受容側の排出物に対する感受
性など
微細な粒子は肺の粘膜を通過することができ、炎症やダメージを与えます。微細な
粒子は特にアレルギーやぜんそくを持った人には影響を与えやすいものです。
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1.3 粉塵発生源
自然からまたは人為的な粒子状物質の発生がありますが、優位となる発生源によっ
てその地域の状況が決まります。
以下のリストはドイツで定められた人為的な粒子状物質の発生源リストです。
・工業:60,000T/年
・個人住宅と一般消費者 33,000T/年
・道路交通(タイヤ、アスファルト、ブレーキ摩耗を除く)29,000T /年
・発電所:19,000T/年
・それ以外の交通:16,000T/年
・原料輸送:8,000T/年
・工業用発電所:6,000T/年
・鉄道輸送:6000T/年
情報源:ドイツ環境省
上のリストには道路交通におけるタイヤ摩耗は含まれていませんが、これは60,000T/年
(これらの10%がPM10となると考えられます)と見積もられています。ブレーキの摩耗に
よって5,500-8,500T/年(これらのほとんどがPM10)の粒子状物質が発生します。
アスファルトの摩耗についての見積もりはありません。
都市環境においては全粒子状物質の排出に対する交通からの排出割合はおよそ20%程度
と考えられます。ヨーロッパにおけるPM10の排出量データよれば、地方における交通か
らの排出量は9%であり、農業からの粒子状物質発生の約50%は家畜からのものと考えら
れます。
自然からの粉塵発生源としては
・砂漠からの粉塵
・原生生物、原生生物の破片、花粉
・石の摩耗(主に風と水による)
・木材の燃焼
・火山爆発
・海塩と海しぶき
公共の場所における喫煙場所の制限状況によりますが、ある限定した地域について言え
ば、たばこの煙は
大きな粉塵の発生
源となります。汚
染がひどい地域に
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ついて下の表に示します。
セクション3においては世界中の異なる地域における法的基準を示していますが、排出
濃度の制限値を下げることが大気中の汚染物質を減らすということが共通の認識です。
ヨーロッパにおいては大気汚染を改善するために段階的に粒子状物質の排出制限をして
います。たとえば
1.2005年1月1日から2009年12月31日までは、日平均のPM10測定値が50μg/m3を超える日
が年間35日以内
2.2005年1月1日から2009年12月まで、年間のPM10平均は40μg/m3以内
3.2010年1月1日から、日平均のPM10が50μg/m3を超える日が年間7日以内
4.2010年1月1日から、年間平均のPM10が20μg/m3以内
2. 乳業における粉塵発生源
2.1 乳製造における排気ガス
排気ガスの発生はダクト、拡散、一時的な漏れなどに分けられるが、対策が可能な
のはダクトからの排出のみである。拡散と一時的な漏れは最小限に抑えることは可
能である。
乳業における「ダクト」からの排出は
・プロセス機器の排気パイプからの排気や工程上排気が発生するもの(例:フライ、
煮沸、加熱プロセス)
・スタートアップやシャットダウンのみで使われる予備加熱機器からの排気ガス放
出
・貯蔵、移送などに伴い排出するもの、例:製品、原料や中間製品の輸送、積み込
み、積み下ろしなど
・炉、蒸気ボイラー、コージェネ、ガスタービン、ガスエンジンなどのエネルギー
供給からの排気ガス
・フィルター、熱酸化装置、吸収装置などの排出コントロール機器からの排出ガス
・野菜油抽出設備など、溶媒再生装置からの排気ガス
・安全弁からの放出
・一般的な空調装置からの排気
・建物などに囲われた場所に設置された拡散源などからの排気
乳業における「拡散」排出は
・プロセス装置を使用する上で発生するものや装置の使用することで必ず発生する
ようなもの、大きな表面からの放散や開放によるもの
・加工や貯蔵設備からの排出、ドラムやトラック、コンテナへの充填時など
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・炎からの発生
・廃棄物からの二次排出、排水中の揮発性物質、下水や排水処理装置や冷却水など
乳業における「一時的な漏れ」は
・貯蔵中のにおいの放散、大容量タンクへの出し入れ
・排水からの悪臭の除去を原因とする臭気
・貯蔵タンクの排気
・配管の漏れ
・燻蒸
・貯蔵時の蒸気ロス、溶剤タンクやドラムの出し入れやホースの付け外し
・バーストディスクや安全弁の吹き出し
・フランジ、ポンプ、シール、バルブパッキンからの漏れ
・窓やドアからのロス
・沈澱池
・クーリングタワーと冷却池
エネルギー製造設備などの補助的な活動からの汚染物質を除く乳業製造プロセスに
おける主な空気汚染物質は以下のようなものがある。
・粉塵
・揮発性炭化水素、におい
・アンモニアやハロゲンを含む冷却
・焼却からの生成物 CO2、NO2、SO2など
編者注:仮訳の前文は会員頁をご参照ください。仮訳の正確性、完全性、有用性等につ
いてはいかなる保証をするものではありません。参考資料として扱い、内容に疑義が生
じた場合は英文の原文をご確認ください。
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