第6章 新エネルギー導入の可能性検討 - 宮崎県

第
6章
新エネルギー導入の可能性検討
第6章
新エネルギー導入の可能性検討
1 新エネルギー導入の可能性検討の目的
第5章で検討した各新エネルギーの賦存量を基に、導入の可能性について検討し、後述
する新エネルギー導入の基本方針の策定および導入目標の設定を行う。
2 エネルギー種別毎の導入の可能性
(1) 太陽光発電・熱利用
県下に広く賦存しているエネルギーであり、県民のアンケート調査の結果からも、
「宮
崎ならではのエネルギー」として認識されている。
太陽光発電においては、導入促進のネックは価格面だけと考えられるが、現在の価格
はかなり下がってきており、国の助成制度が今後とも継続すれば、さらに導入が促進さ
れるものと見込まれる。
(2) 風力発電
今後導入促進を図るためには NEDO の風況マップから良好と考えられる山間部等を
対象に検討する必要があるが、適地は、自然公園法等による規制を受けた地区が多い。
環境省は、省内に検討会を設け、国立・国定公園内における風力発電設備のあり方に
ついて検討を行い、平成 16 年(2004 年)2月、風景や生態系への影響が軽微な場合等で、
公益性や必然性が高いと認められる場合は、特別保護地区等を除き、公園内での建設を
認めることを内容とする自然公園法上の審査基準や考え方を示した。
また、洋上風力発電が、島国日本における新たな取り組みとして全国的に注目されて
いる。
今後、国が示した審査基準、考え方との整合や、国内洋上風力の開発状況を見ながら、
導入の可能性を検討する必要がある。
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(3) 廃棄物発電・熱利用
ア 一般廃棄物
一般廃棄物処理施設のうち焼却施設については、県内を6つのブロックに分けて広域
的に整備することが計画されており、このブロック化に合わせて、現状の施設が集約
化される予定である。
このうち宮崎・東諸、西都・児湯ブロックでは、(財)宮崎県環境整備公社が現在建
設中の宮崎県廃棄物総合処理センター(仮称)に発電設備を併設中である。
他ブロックの具体計画は未定であるが、今後事業計画を検討する中で、廃棄物発電・
熱利用など、エネルギーとしての有効利用を図ることが期待される。
イ 産業廃棄物
産業廃棄物については、既設の処理設備に加え、2施設が建設中、または計画中で
ある。当面の計画はこれ以外にはないが、これらのケースをモデルケースとして、排
出事業者や産業廃棄物処理業者における、エネルギーとしての有効利用への取り組み
が期待される。
宮崎県の産業廃棄物発電導入状況と計画
区
分
事業者
設置箇所
燃
料
発電出力
供用開始時期
備
既設
建設中
計画中
(財)県環境
王子製紙(株)
整備公社
日南工場
小林市
宮崎市
日南市
一般廃棄物
一般廃棄物
木質系燃料(バイオマス)(*)
産業廃棄物
産業廃棄物
タイヤチップ
11,200kW
16,000kW
平成 17 年度(予定)
平成 18 年6月(予定)
九州北清(株)
270kW
(産業廃棄物分:209kW)
平成 11 年 7 月
県内外から燃料
調達予定
考
(注)1
2
3
4
九州北清㈱の産業廃棄分出力については、混焼率からの按分値(出典:資源エネルギー庁資料)。
県環境整備公社については一般廃棄物が主となるが、発電出力の燃料別内訳は現時点では不明。
王子製紙㈱日南工場については、発電出力の燃料種別内訳は現時点では不明。
王子製紙㈱の木質系燃料は木くず(産業廃棄物)である。
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(4) バイオマス発電・熱利用
平成14年(2002年)12月に閣議決定された「バイオマスニッポン総合戦略」において
は、1.地球温暖化防止、2.循環型社会の形成、3.農山漁村の活性化等の観点から、
家畜排せつ物、林地残材などのバイオマスの利活用を積極的に推進することとしており、
本政策を背景に以下のとおり有効利用が期待される。
ア 木質系バイオマス
木質系バイオマスについては、現在木質系燃料を使用した発電設備が建設中および
計画中である。
本県は全国有数の林業県であることから、木質系バイオマスが豊富に存在するが、
平成15年度(2003年度)に実施する未利用木質資源に係わる調査結果を踏まえ、発電
用燃料やペレット化等によるボイラー用等燃料製造など、有効利用が期待される。
宮崎県の木質系バイオマス発電導入状況
区
分
事業者
設置箇所
燃料
出力
供用開始時期
建設中
計画中
ウッドエナジー協同組合
王子製紙㈱日南工場
南郷町
日南市
木質系燃料(バイオマス)
木質系燃料(バイオマス)
タイヤチップ
1,300kW
16,000kW
平成 16 年 8 月(予定)
平成 18 年 5 月(予定)
(注)王子製紙㈱日南工場については、発電出力の燃料種別内訳は現時点では不明。
イ 家畜排せつ物
① 鶏ふん
県内では鶏ふん発電設備が1基稼動中であり、さらにもう1基が現在建設中であ
る。
この2つの設備で、県内で発生する鶏ふんのほぼ全量が発電用燃料として利用され
る見込みである。
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宮崎県の鶏ふん発電導入状況と計画
区
分
既設
建設中
南国興産(株)
みやざきバイオマスリサイクル(株)
設置箇所
高城町
川南町
燃
鶏ふん
鶏ふん
100,000t/年
132,000t/年
1,960kW
11,000kW
平成 14 年 3 月
平成 17 年 3 月(予定)
事業者
料
処理量
発電出力
供用開始時期
(注)処理量は計画値ベース。
出典:みやざきバイオマスリサイクル(株)資料
みやざきバイオマスリサイクル鶏ふん発電設備の概要
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② 牛・豚のふん尿
牛・豚のふん尿については、鶏ふんがほぼ全量発電用燃料として利用されること
から、鶏ふんとの混合利用ではなく単独利用となり、水分が多いことから、メタン
ガス発酵による発電燃料、または加熱用エネルギーとしての利用が考えられる。
本県は全国有数の畜産県であり家畜排せつ物が豊富に存在すること、また、家畜
排せつ物の適正処理を義務付けた家畜排せつ物法により、平成16年(2004年)11月
から
野積み・素掘り
が禁止されることなどを考慮し、発電用燃料、または加熱
用燃料としての利用拡大が期待される。
宮崎県の家畜排せつ物(牛・豚のふん尿)発電導入状況
区
分
建設中
事業者
㈲高千穂牧場
設置箇所
燃
都城市
料
牛のふん尿等
処理能力
6t/日
発電出力
30kW
供用開始時期
平成 16 年 3 月(予定)
出典:㈲高千穂牧場資料
高千穂牧場畜産バイオマス発電設備の概要
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ウ 焼酎粕
都城市の焼酎酒造者、飼料メーカ、牧場など6社でつくる「霧島リサイクル協同組
合」が、県内で排出される焼酎粕の約3割に当たる年間3.2万tを処理して飼料化する
プラントを導入している。本装置の中でメタンガスを発酵させ、工程中の加熱用熱
源として利用している。
今後、他地区焼酎酒造者からの同プラントへの持込み処理費用を含めた経済性の
検討を踏まえ、同プラントでの設備利用率を高めることや、同プラントをモデルとした
県内他地区での取り組みが期待される。
霧島リサイクル協同組合による焼酎粕飼料化の概要
事業者
霧島リサイクル協同組合(霧島酒造ほか5社)
処理対象物
芋焼酎粕および麦焼酎粕
年間処理量
32,000t/年(県内発生量の約3割)
プラント処理能力
300t/日
製品
牛・豚用飼料、土質改良材、肥料
供用開始時期
平成15年8月
出典:霧島リサイクル協同組合資料
霧島リサイクル協同組合焼酎粕飼料化プラントの概要
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(5) クリーンエネルギー自動車
最も導入が進んでいるハイブリッド自動車については、導入促進のネックは価格面だけ
と考えられる。
太陽光発電設備同様、国の助成制度や税制面での優遇措置があり、また、地球環境問
題に対する関心の高まりもあることから、今後さらに導入が促進されるものと期待され
る。
天然ガス自動車、電気自動車については、燃料供給インフラ(ガス充填ステーション、
電気充電ステーション)が整備されれば、導入が進むものと期待される。
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(6) 天然ガスコージェネレーション
本県には宮崎平野一体および日南海岸地区に天然ガスが広く賦存しているが、新潟県
や千葉県で実施されているようなパイプラインを整備しての大がかりな利用形態は考え
られない。
今後の利用形態を考えると、次の4ケースの利用拡大が期待される。
概
1
要
利用上の制約等
ガス田の近くにある、電気と熱(温水等)を利用
既設のガス田(鉱山)から周辺の対象施設に電気
する病院、ホテル、温泉センター等の施設に天然ガ
と熱を併給する場合、ガスの供給力に余裕があって
スを送出し、そこで電気と熱を生産し併給する形態。 も熱の利用量で発電設備の容量が決定され、また、
電気単独の利用では経済性は成立しない場合が大半
2
ガス導管敷設費用が高額であり、ガス田と
と考えられるので、事業化に当たっては対象施設の
需要地が近接している必要がある。
熱需要調査を行い、経済性を検討する必要がある。
温泉業者等が温泉とともに湧出する天然ガスを分
離し、電気と熱を生産し、「自家利用」する形態。
本ケースのように、湧出する天然ガスの利用に当た
って鉱山保安法の規制が適用される場合、安全面を
担保しつつ、構造改革特区の活用等により規制が緩
温泉等から湧出したガスを施設に供給し
和されば、事業化が期待できる。
利用する際には、自家利用であっても鉱山
保安法が適用され、ガス爆発対策等の保安
上の設備投資に加え、保安要員の設置義務
などが必要である。なお、利用に先立ち,
鉱業法の規定に基づき、鉱業権、鉱区を設
定する必要もある。
3
佐土原地区での伊勢化学工業㈱の実施事例をモデル
ガス導管敷設費用が高額であり、ケース1の場合と
に、比較的狭い範囲のプロジェクトとして利用者を
同様にプロジェクト全体の熱需要調査を行い、経済
集め、ガス導管を敷設して天然ガスを送出し、各消
性を検討する必要がある。
費先がそれぞれ自所で電気と熱を生産する形態。
4
ケース1、2、3のように地域に賦存するエネルギーを
ケース1の場合と同様に、実施に当たっては熱需要
利用するケースではないが、ガス会社の導管を通し
調査を行い、経済性を検討する必要がある。なお、
て天然ガスを購入し、電気と熱を生産し、
「自家利用」 本県では、平成15年10月現在、宮崎市、延岡市、都
する形態。
城市で天然ガスへの燃料転換が終了しており、これ
らの地域が利用可能対象地域となる。
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(7) 燃料電池
実証試験等による技術開発が進んでいる燃料電池については、利用対象施設は天
然ガスコージェネレーションの場合と同様に、病院、ホテル等が考えられる。経済
性を出すためには廃熱利用によるコージェネレーションシステムとする必要があり、
天然ガス等を燃料として使用する利用形態が考えられる。
また、ガス会社や石油会社等により、都市ガスやプロパンガス、灯油などから水
素を取り出すタイプの家庭用燃料電池の開発が進められており、平成16年度(2004
年度)にも市販化される見通しとなっている。今後、技術開発や低価格化が図られ
ることにより導入が進むものと期待される。
(8) 地熱エネルギー
地熱エネルギーの発電分野への利用としては、今後は従来のような大規模開発で
はなく、開発リスクを低減させ環境との調和を図るために、小規模開発の方が実現
の可能性が高い。現在、国において、地熱資源利用のための技術開発が推進されて
おり、その一環として、温泉水、未利用熱水を利用した小規模地熱開発用のバイナ
リー発電の研究が実施されている。
本県での具体的な導入可能性を評価するには、現在熱水等を汲み上げて利用して
いる地点に対し、本発電設備を適用した場合の経済性試算等を行い、検討する必要
があるが、適用熱源の温度としては、経済性から一般的には100℃以上とされている。
現在確認されている範囲では、100℃以上の熱水、蒸気が噴出する、えびの市白鳥
温泉の下湯が該当する。
*バイナリー発電
バイナリー発電とは、加熱源により沸点の低い液体を加熱・蒸発させてその蒸
気でタービンを回す発電方式である。加熱源系統と媒体系統の2つの熱サイクル
を利用して発電することから、バイナリーサイクル(Binary*-Cycle)発電と呼ば
れており、地熱発電などで利用されている。
地熱バイナリー発電では、低沸点媒体を利用することにより、媒体の加熱源に
従来方式では利用できない低温の蒸気・熱水を利用することができる。
発電システムとしては、加熱源としての蒸気・熱水サイクルとペンタンを用い
た媒体サイクルで構成されており、これに対し、従来方式は蒸気・熱水サイクル
のみで構成されている。
*:Binaryとは「2つの」という意味であり、Binary-Cycleは2つの熱サイクル
を利用しているという意味。
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(9) 中小水力発電
本県は、山間部の割合が高く豊富な降水量があり、全国で第 10 位、九州内では第
1 位の包蔵水力を有している。
今後は、未開発の中小水力が開発の中心と考えられ、これらの未開発地点は奥地
化、小規模化に伴いスケールメリットが得にくくなっているものの、詳細検討によ
りある程度の開発の可能性は見込める。
また、現在、都城盆地他で国が国営かんがい排水事業として農業用ダム群の整備
等を実施中であり、合わせてこれらのダム群から農業用配水路が整備中である。こ
れらの配水路の落差部等でマイクロ水力発電(100kW 以下)を実施することも考え
られる。
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