Document

医薬化学I
宮地 弘幸
医薬化学I 後半
生体分子を模倣した医薬品
授業
計画
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
6/8
6/15
6/22
6/29
7/6
7/13
カテコールアミンアナログ
アセチルコリンアナログ
ステロイドアナログ
核酸アナログ
ペプチドアナログ
抗がん剤
(SBO48)
(SBO49)
(SBO50)
(SBO51)
(SBO52)
(SBO53, 54)
生体内分子と反応する医薬品
第7回 7/27 抗菌剤
第8回 8/3 総括考査
(SBO55)
本日の講義内容
SBO48 カテコールアミンアナログの医薬品を列
挙し、それらの科学構造を比較できる
カテコールアミン
カテコールアミン (Catecholamine) とはチロシンから誘導された,カテコール
とアミンを有する化学種である.末梢神経系の一つ、アドレナリン作動系神経に
おける神経伝達物質等(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン) の基本骨
格になっている.カテコラミンとも呼ばれる.
カテコール
アミン
ドーパミン
アドレナリン
ノルアドレナリン
アドレナリン受容体 (カテコールアミン類の受容体)
アドレナリン受容体はα、βの二種が存在し,さらに分類される。.
5
アドレナリン受容体作動薬と拮抗薬
α、β共通の作動薬: アドレナリン、
ノルアドレナリン
α作動薬:メトキサミン、 フェニレフリン、 クロニジン
β作動薬:イソプロテレノール、 ドブタミン
アドレナリン受容体作動薬と拮抗薬
α、β共通の拮抗薬: ラベタロール、
α拮抗薬:
カルベジロール
プラゾシン、
β拮抗薬:プロプラノロール、
メトプロロール
カテコールアミン
生体内では、チロシンよりチロシン水酸化酵素によりドーパが生合成される。ドーパはドーパ脱炭酸
酵素によりドーパミンへ変換される。ドーパミンはドーパミンβ水酸化酵素によりノルアドレナリンへ変
換される。ノルアドレナリンは、アドレナリンへ変換される。カテコールアミンは輸送、貯蔵され、刺激
によって細胞外に放出され、多くが細胞内に再取り込みされる。一旦細胞外に出ると、Catechol-OMethyltransferase (COMT) によってメチル化されたり、細胞内で遊離した場合には、モノアミン
酸化酵素 (MAO) によってアミノ基が酸化的除去されたりして、速やかに分解される。
カテコールアミン類の構造活性相関
アルコール性水酸基部分のSAR
>
(R)
>>
(S)
アルコール性水酸基はR配置の方が高活性である. 水酸基を持たない場合(ドーパミン)
は活性は減少する. 水酸基は活性の強さに重要であるが必須ではない.
カテコールアミン類の構造活性相関
アミノ基部分のSAR
>
>>
アミノ基は生理的条件下プロトン化されている. 窒素原子を炭素に置き換えると活性
は激減するので陽電荷が重要.
窒素原子上の置換基の数も重要. 第一級,第二級アミノ基ではアドレナリン作動活性
があるが,第三級アミン,四級アンモニウム塩では活性無し.
カテコールアミン類の構造活性相関
カテコール部分のSAR
カテコール(類似)キレート構造は活性発現に必須.以下のアンフェタ
ミン,チラミン,エフェドリンは活性を示さない.
フェノール性水酸基の水素結合性が重要であり,特にメタ位の水酸基は,他の水素結合
性を有する置換基に変換しても活性は保持される.
Exa. CH2OH,
CH2CH2OH,
NH2,
NHCOCH3,
NHSO2CH3等
カテコールアミン類の構造活性相関
側鎖アミノ基α位置の置換基導入のSAR
カテコールアミン側鎖のα位に置換基を導入すると、
α作動活性、β作動活性ともに減少する.
a活性(瞬膜収縮反応) β活性(心拍数増加反応)
19
59
a活性(瞬膜収縮反応) β活性(心拍数増加反応)
5.9
活性無し
a活性(瞬膜収縮反応) β活性(心拍数増加反応)
4.3
0.65
a活性(瞬膜収縮反応) β活性(心拍数増加反応)
3.0
0.29
a作動薬クロニジンは何故α化成を示すのか?
α作用とβ作用を規定する構造要因は何か?
アドレナリンはαおよびβ受容体に対し同
等の活性を示す.
一方ノルアドレナリンはβ活性は弱く,α活
性が強い.
N-アルキル置換基の大きさがα/β選択
性に重要なのでは?
N-イソプロピル基を有するイソプレナリンはα活
性は示さないが,強力なβ活性を示すことが判明.
N-アルキル置換基の性質がα作用/β作用の割合を決め,
置換基が大きいとβ作用を示す!
β作用に基づく気管支喘息治療薬
β作動薬は気管支喘息治療薬として有用でありカテコールアミンの窒素置換基を種々変
換した化合物が合成され,イソプロテレノール以上に高活性な化合物が見出されている.
R
気管支拡張作用
1.0
2.1
0.5
2.0
7.7
(基準となる活性)
カテコールアミン構造以外のβ作用薬
カテコールアミンは生体内でMAO(モノアミンオキシダーゼ)とCOMT(カテコール O-メチ
ルトランスフェラーゼ)により代謝され速やかに不活性化されてしまう. そこで代謝的に
優れた気管支喘息治療薬創製を目指した変換も行われている.
COMT
MAO
COMT
ノルアドレナリンMAO
バニリル
マンデル酸
アドレナリンからサルブタモールへの構造展開
アドレナリン
α作用、β作用を示す(非選択的)。
作用持続時間が短い
サルブタモール
β2選択的作用
作用持続時間は4時間
COMTによる代謝を受けない
アドレナリンからサルブタモールへの構造展開
気管支喘息治療には、β2受容体選択的アゴニスト作用が好ましい。
アドレナリン
イソプレナリン
α作用、β作用の両作用
を示す(非選択的)。
α作用は示さない
β作用のみ示す(β1、β2の
双方に作用)
作用持続時間が短い
気道のβ2に作用するが、心臓のβ1にも作
用する(心血管系副作用)
アドレナリンからサルブタモールへの構造展開
イソプレナリンの副作用を回避するには、β2受容体選択的薬物の開発が必要
イソエタリン
アミノ基α位に置換基導
入するとβサブタイプの選
択性が得られる
β2に対し選択的作用
しかし、作用持続時間が短い
COMT
アドレナリンからサルブタモールへの構造展開
カテコールのメタ位水酸基を代謝を受けにくい置換基に変換
→当時メタ位水酸基の存在意義は不明→種々の置換基導入体を合成し活性を評価
(R)-ソテレモール
スルホンアミド基を導入
(R)-サルブタモール
ヒドロキシメチル基を導入
β2に対し選択的作用
を示し作用持続時間も長い
β2に対し選択的作用
を示し作用持続時間も長い
イソプレナリンと同等の気管支拡張作用を
示し、一方心臓に対する作用はイソプレナリ
ンの1/2000である。作用持続時間は4時間
COMTによる代謝を受けない。
β遮断薬(βブロッカー)への機能転換
β受容体の情報伝達の遮断は、不整脈、心不全、高血圧治療に有効であり、既存のβ受
容体作動薬の構造変換によるβ遮断薬の創製が行われた。
イソプレナリン
β作用のみ示す(β1、β2の双方に作用)
プロプラノロール
βナフトールとすることでβ拮抗作用のみを示す
完全なアンタゴニスト
活性はプロネタロールの20倍強力
ジクロロイソプレナリン
水素結合性水酸基を塩素に置換
β作用/β拮抗作用両方を示す(部分作動薬)
プロネタロール
塩素をより嵩高いベンゼン環に置換
β作用/β拮抗作用両方を示す(部分作動薬)で
あるが臨床使用されたβ遮断薬
β遮断薬(βブロッカー)の構造活性相関
二級アミノ基必須
酸素>>炭素,窒素
枝別れ状, 側鎖拡張
が高活性
(S)配置
水酸基
複素芳香環へ変換可能
ピンドロール
チモロール
b受容体アゴニストとアンタゴニストの構造比較
アゴニストとアンタゴニストによる受容体構造変化(推定)
アゴニストとアンタゴニストによる受容体構造変化(推定)
アドレナリンの合成法
(A)
アミノ化
フリーデル
クラフツ反応
光学分割
(B)
アセチル化
ニトロアル
ドール反応
加水分解
還元的メチル
化反応
光学分割
接触還元
医薬化学の範疇は薬剤師国家試験に直結している!
医薬化学の範疇は薬剤師国家試験に直結している!