平成23年度 AHT&サタッフセミナー 自律神経系と薬の作用 ーこれだけは知っておきたい基礎•基本ー 小森 成一 H23AHTsemi-1 自律神経系とは 不随意器官を支配し、心拍、血圧、呼吸、消化•吸収、 分泌など無意識のもとで営まれている生体活動を調節 する神経系。交感神経と副交感神経からなっている。 (J.N.ラングレイ、1905年に命名) 大脳 自律神経が支配する主な器官 涙腺 眼 (イヌ♂) 脳幹 脊 髄 血管 副腎 唾液腺 直腸 肺 気管 家畜比較解剖図説 養賢堂版 H23AHTsemi-2 肝臓 心臓 腎臓 胃 腸管 膀胱 陰茎 H23AHTsemi-3 主な自律神経薬 一般に、動物病院では20種類前後の自律神経薬が治療 や処置のために備えられている。 ☞要旨の薬リスト参照 自律神経薬 アトロピン ボスミン 成分名 アトロピン アドレナリン 臨床応用 徐脈の予防•改善 救急・蘇生処置 (エピネフリン) ドブトレックス ドブタミン 心機能強化 ミドリンP トロピカミド/ フェニレフリン 散瞳剤(眼底検査) ドミトール アンチセダン メデトミジン 鎮静•不動化 アチパメゾール 鎮静•不動化からの回復 はじめに (1)動物看護士(AHT)は「獣医師の診療活動を 直接支える唯一の存在」 (2)日頃、現場で手にする薬について理解を深めて いく必要がある そのために、まず必要な知識基盤は、 (3)自律神経系およびその関連薬の知識 (4)本日のテーマ 自律神経系と薬の作用 ーこれだけは知っておきたい基礎•基本ー H23AHTsemi-4 自律神経系と薬の作用 ーこれだけは知っておきたい基礎•基本ー 話 題 1. 自律神経系の支配形態 ー伝達物質と受容体ー 2. 交感神経と副交感神経の作用 ー拮抗的二重支配ー 3. 自律神経薬の作用と臨床応用 ーアトロピン、ボスミン、ドミトールなどー H23AHT semi-5 話 題 1 自律神経系の支配形態 ー伝達物質と受容体ー H23AHTsemi-6 H23AHTsemi-7 大脳 涙腺 眼 自律神経が支配する主な器官 (イヌ♂) 脳幹 脊 髄 副腎 血管 唾液腺 家畜比較解剖図説 養賢堂版 直腸 肺 気管 肝臓 胃 心臓 腸管 膀胱 陰茎 <脊髄拡大図> 椎骨 脊髄 神経の 起始部 中継点(神経節) 1番目 家畜比較解剖図説 養賢堂版 腎臓 神経の束 (節前神経) 2番目 (節後神経) 器官 神経細胞(ニューロン)のかたちと働きの基本原則 細胞体 細胞核 軸索(神経線維) 神経終末 細 胞 〜0.001 mm 0.03 mm 興奮 1 cm - 1 m 活動電位(神経インパルス) 器官 〜1 cm 伝達物質 の放出 細 胞 <基礎基本の1> 神経は伝達物質を放出して、支配下の 細胞に働きかける。 H23AHTsemi-8 交感神経と副交感神経の支配の違い 脳 幹 脳 幹 交 感 神 経 胸 髄 腰 髄 血管 新獣医薬理学(第二版) 近代出版 一部改変 H23AHTsemi-9 ①1番目の神経の スタート部位 副 交 感 神 経 ②2番目の神経の 長さ ③2番目の神経の 種類 重要 交感神経:赤い神経 副交感神経:黒い神経 仙 髄 赤:アドレナリン作動性神経 黒:コリン作動性神経 H23AHTsemi-10 1番目 副交感神経 2番目 ACh ACh < • 脳 脊 髄 < 交感神経 ACh:アセチルコリン NA:ノルアドレナリン 果 NA 器 ACh コリン作動性神経 < <基礎基本の2> アドレナリン 作動性神経 < 別名:ノルエピネフリン 交感神経の伝達物質☞ノルアドレナリン(NA) 副交感神経の 〃 効 ☞アセチルコリン(ACh) <メモ> 2006年日本薬局方 の改正により、ノル アドレナリンが日本 の正式名 H23AHTsemi-11 交感神経と副交感神経の支配形態の違い 脳 幹 脳 幹 交 感 神 経 系 胸 髄 腰 髄 血管 新獣医薬理学(第二版) 近代出版 一部改変 仙 髄 副 交 感 神 経 系 ①1番目の神経の スタート部位 ②2番目の神経の 長さ ③2番目の神経の 種類 ④血管の支配 *交感神経が支配 ⑤副腎髄質の支配 *交感神経が支配 *アドレナリン(AD) を遊離 別名:エピネフリン H23AHTsemi-12 伝達物質のまとめ 副交感神経 1番目 2番目 < ACh < 効 交感神経 ACh • 脳 脊 髄 ACh NA < < AD ACh < 血管を通って 副腎 髄質 『結合なくして、作用なし』 結合部位☞受容体(レセプター) 果 器 自律神経節および副交感神経末端部の仕組み <自律神経節> <副交感神経> H23AHTsemi13 1番目 神経イン パルス 節前神経 終末 ACh 2番目 神経インパルス ACh 節後神経 終末 効果器 ACh ACh 効果器細胞 M M N 節後神経 細胞体 ニコチン受容体 ムスカリン受容体 コリンエステラーゼ (ACh分解酵素) 新獣医薬理学(第二版) 近代出版 一部改変 ベニテングダケ 毒成分:ムスカリン H23AHTsemi-14 交感神経末端部の仕組み 1番目 ACh 神経インパルス 2番目 NA 効果器 シナプス小胞 節後神経 終末 NA 副腎 髄質 α2 モノアミントランス フェラーゼ 結合 AD 効果器細胞 α1 NA β アドレナリン受容体 新獣医薬理学(第二版) 近代出版 一部改変 話題1 まとめ 基礎基本の3:伝達物質とその受容体 交感神経 2番目の 神経 副腎 髄質 α2 ノルアド レナリン (NA) α1 β アドレナリン 受容体 < アドレナリン (AD) < 血管を通って 運ばれる 副交感神経 アセチルコリン (ACh) M ムスカリン 受容体 効果器細胞 H23AHTsemi-15 話題 2 交感神経と副交感神経の作用 ー拮抗的二重支配ー H23AHTsemi-16 H23AHTsemi-17 交感神経の機能 ☞『日中に優位』 身体的活動や闘争、興奮・緊張状 態にするよう効果器に働きかける。 効果器の反応 *運動をしている場合を想像する とわかりやすい。 眼 :大きく見開き(瞳孔の散大) 呼吸:換気早く(気管支の拡張) 心臓:ドキドキと早く、力強く(心機 能の亢進) 血管:収縮(血圧上昇) 胃腸:筋弛緩(蠕動運動の抑制) 血中:アドレナリン量多い 「カラー図解これならわかる薬理学」 メディカルサイエンスインターナショナル H23AHTsemi-18 副交感神経の機能 ☞『夜間に優位』 エネルギー補給や休息・安静状態 にするよう効果器に働きかける 効果器の反応 *食後など、くつろいでいる場合を 想像するとわかりやすい。 眼 :瞳は小さい(瞳孔の縮小) 呼吸:換気ゆっくり(気管支収縮) 心臓:鼓動はゆっくり(心拍数•心 収縮力の減弱) 胃腸:筋収縮(蠕動運動の促進) 膀胱:排尿筋収縮(排尿の促進) 「カラー図解これならわかる薬理学」 メディカルサイエンスインターナショナル H23AHTsemi-19 交感神経と副交感神経の調節作用 効果器 瞳 孔 心機能 交感神経 散大 心拍数 収縮力 副交感神経 他一 縮小 増大 減弱 気管支 拡張 収縮 胃腸運動 抑制 促進 収縮/拡張 − NA放出の 自己制御 − 血 管 神経終末 方方 がが ブア レク ーセ キル 、 <基礎基本の4> 双方の神経は一方がアクセル(促進)、他方がブレーキ(抑制) の役割をして、バランスをとって効果器を調節している。 ☞『拮抗的二重支配』 H23AHTsemi-20 双方の神経による効果器調節のメカニズム (副腎髄質) 交感神経(終末) 副交感神経(終末) アドレナリン ノルアドレナリン ①伝達物質 アセチルコリン NA ACh 放出 AD <メモ1> 鍵と鍵穴 AD NA AD NA β β α α アドレナリン受容体 <メモ2> NAとADの 反応は同じ。 ②受容体に 結合 ③受容体 刺激 ④細胞内調節機構 促進又は抑制 (アクセル又はブレーキ) バランス ACh 効果器 M ムスカリン受容体 効果器機能 ⑤ の調節 交感神経と 副交感神経 による 心臓機能の調節 心 臓 交感神経 副交感神経 ノルアドレナリン ACh アセチルコリン 副腎髄質 AD アドレナリン アドレナリン 受容体 心臓のβ受容体 →β1受容体 増大←心機能 ムスカリン受容体 促進 心機能 調節機構 抑制 増加 心拍数 減少 増加 収縮力 減少 心機能→減弱 H23AHTsemi-21 気管支に対する調節作用 交感神経 NA 気管支 平滑筋 副腎髄質 AD アドレナリン 受容体 副交感神経 ACh ムスカリン受容体 減少 細胞内 カルシウム 増加 余 談 筋肉:カルシウム なくして、収縮なし 気管支平滑筋 弛緩 気道径 平 滑 筋 収縮 拡張 気管支(気道) 縮小 H23AHTsemi-22 H23AHTsemi-23 瞳孔サイズに対する調節作用 虹彩 瞳孔 瞳孔散大筋 虹彩 交感神経 NA アドレナリン α1 受容体 瞳孔括約筋 副交感神経 ACh 瞳孔 M 細胞内 増加 カルシウム 増加 ムスカリン 受容体 筋収縮 筋収縮 散瞳 縮瞳 散大 瞳孔 縮小 交感神経の血管調節作用 交感神経 アドレナリン 受容体 NA AD 副腎髄質 皮下血管 腹部内臓血管 α1作用が優勢 α1 血 管 β 細胞内 増加 カルシウム 減少 血管収縮 骨格筋血管 冠状動脈 β作用が優勢 収縮 血管平滑筋 弛緩 血管収縮 (血圧上昇) 血管拡張 血管拡張 (血圧下降) H23AHTsemi-24 H23AHTsemi-25 話題2:交感神経と副交感神経の作用ー拮抗的二重支配ー ま と め 効果器 交感神経 副交感神経 NA(AD)→ アドレナリン受容体 ACh→ ムスカリン受容体 瞳 孔 心拍数 収縮力 増大(β1) 気管支 拡張(β) 胃腸運動 抑制(β) 血 管 縮小(M) 減弱(M) 相 反 収縮(M) 促進(M) 収縮(α1)/拡張(β) − 相反 神経終末 NA放出の (α2) 自己制御 欲を言えば、 これも覚えておきたい。 − これだけ覚えておけば、 自律神経系はほぼ完璧! 休 息 安 静 時 • 心機能 散大(α1) 話題 3 自律神経薬の作用と臨床応用 ーアトロピン、ボスミン、ドミトールなどー H23AHTsemi-26 自律神経薬とは 『交感神経あるいは副交感神経 の効果に影響をおよぼす薬』 <基礎基本の5> 神経 自律神経薬 伝達物質 重要 自律神経薬の多くは、神経伝達物質と 同じ受容体に結合して作用を発揮する! R ただし、作用の発揮の仕方により、 2種類に大別される 伝達物質の受容体 (レセプター) H23AHTsemi-27 (1)受容体作動薬 受容体 神経 受容体 受容体を刺激して、伝達物質 作動薬 伝達物質 拮抗薬 と同様な反応を引き起こす。 受容体刺激薬 〃 アゴニスト 伝達物質の 受容体 (2)受容体拮抗薬 伝達物質の結合を阻害して、 その効果を抑制する。 R R R × 反応 = 反応 受容体遮断薬 〃 アンタゴニスト H23AHTsemi-28 <副交感神経関連> アセチルコリン(ACh)→ムスカリン受容体 (1) ムスカリン受容体作動薬 (刺激薬) 補助•再現 (2) ムスカリン受容体拮抗薬 (遮断薬) 副交感神経の効果 副交感神経様作用薬 抑制•遮断 副交感神経効果遮断薬 <交感神経関連> ノルアドレナリン(NA)→アドレナリン受容体 (アドレナリン:AD) (α1、α2、β受容体) (1) アドレナリン受容体作動薬 (2) アドレナリン受容体拮抗薬 (遮断薬) (刺激薬) 補助•再現 交感神経の効果 交感神経様作用薬 抑制•遮断 交感神経効果遮断薬 H23AHTsemi-29 H23AHTsemi-30 主な自律神経薬 一般に、動物病院では20種類前後の自律神経薬が治療 や処置のために備えられている。 ☞要旨の薬リスト参照 自律神経薬 アトロピン ボスミン 作用機序 徐脈の予防•改善 α•β受容体作動薬 救急・蘇生処置 M受容体拮抗薬 ドブトレックス β1受容体作動薬 ミドリンP 臨床応用 M受容体拮抗薬 α1受容体作動薬 ドミトール α2受容体作動薬 アンチセダン α2受容体拮抗薬 心機能の補助強化 散瞳剤(眼底検査) 鎮静•不動化 鎮静•不動化からの回復 H23AHTsemi-31 アトロピン ①ムスカリン受容体拮抗薬の代表格 *動物医療の現場で最も繁用されている自律神経薬 ②薬理作用:副交感神経による効果を遮断 ③ナス科のベラドンナや朝鮮朝顔などの葉や根に多く 含まれ、古くから薬や毒薬として使われてきた。 ベラドンナ (貴婦人) 朝鮮朝顔 ハシリドコロ 瞳孔括約筋の麻痺→散瞳 <中世の時代> 女性はベラドンナの 葉の汁を眼にぬって、 舞踏会に出かけた。 「カラー図解これならわかる薬理学」 メディカルサイエンスインターナショナル ④臨床応用:徐脈の予防・改善 *麻酔の際にルーチンに使用する、使用しないにかかわらず、 麻酔中の徐脈や低血圧に対して用いる第一選択薬 ⑤使用する想定場面 1 過去に麻酔で徐脈を起こした個体なので、今回は 除脈が起きないよう麻酔前に処置しておこう。 2 全身麻酔下で犬を手術しているとき、心拍数が急 に50〜70にまで下がってきた。 *そんな時、『○○さん、アトロピン0.5cc静注して』なんて 言われたこと、ありませんか? H23AHTsemi-32 ⑥ アトロピンが徐脈を改善する仕組み <麻酔中> 交感神経 副交感神経 AD NA ACh β1 促進 作用 心臓 心拍調節系 心拍数 減少 (徐脈発生) <アトロピン投与下> NA AD M ACh M β1 抑制 作用 アトロピン 投与 促進 作用 アトロピン ムスカリン 受容体遮断 抑制 作用 心拍調節系 増加 (徐脈の改善) H23AHTsemi-33 ボスミン(アドレナリン/エピネフリン) ① アドレナリン受容体作動薬(刺激薬) αおよびβ受容体を刺激 ② 薬理作用 交感神経の効果と同じような効果を引き起こす α1刺激:血管収縮→血圧上昇(実験結果の参照) β1刺激:心拍数•心収縮力の増加→心拍出量の増大 β 刺激:気管支平滑筋の弛緩→気管支拡張 ③ 臨床応用 *心肺停止やアナフィラキシーショックなど、 いざという時(救急蘇生処置)の第一選択薬 H23AHTsemi-34 アドレナリンによる血圧の上昇(イヌ) 水銀マノメーター 記録ドラム ペントバルビタール麻酔下 大腿動脈 カニューレ 静注用 カニューレ 5分 α1作用 血圧記録法 25年前の記録 (by 小森) 2 6 アドレナリン(AD) 10 µg/Kg i.v. H23AHTsemi-35 ボスミン(アドレナリン) ① アドレナリン受容体作動薬(刺激薬) αおよびβ受容体を刺激 ② 交感神経の興奮時と同じような効果を引き起こす α1刺激:血管収縮→血圧上昇(実験結果の参照) β1刺激:心拍数•心収縮力の増加→心拍出量の増大 β刺激:気管支平滑筋の弛緩→気管支拡張 など ③ 臨床応用 *心肺停止やアナフィラキシーショックなど、 いざという時(救急蘇生処置)の第一選択薬 H23AHTsemi-36 ④ 使用する想定場面 『ボスミン持ってきて』と叫ぶ声がする、そんな切迫した 状況を経験したことはありませんか? 例えば、 1 交通事故で心肺停止の状態のイヌが搬送され てきた。 2 手術中に突然心停止に陥りそうな状態になった。 3 ワクチン接種をした後、アナフィラキシーショック があらわれた。 H23AHTsemi-37 ⑤マメ知識:アナフィラキシーショックについて *重篤な即時型アレルギー反応 *原因:ワクチン接種、昆虫刺傷、抗生物質投与など *症状:顔面浮腫(写真参照)、起立不能、呼吸困難、血管拡張、 血圧低下、心拍出量の減少、心停止 *治療:一刻も早いボスミンの投与 ワクチン接種前 呼吸•循環の改善 接種後 ミニチュア•ダックスフント (♂)5歳5ヶ月齢 5種混合ワクチン接種後、 顔面浮腫の発現 JSAVA no.46 (2006.3) 藤村 正人 H23AHTsemi-38 ⑥ ボスミンによる治療 →交感神経効果の補助•再現 ボスミン(アドレナリン) 気管支 血管 心臓 α1 β β1 筋痙攣の抑制 心拍数 収縮力 増加 血管収縮 拍出量の増大 血圧上昇 気管支の拡張 (気道開大) 呼吸•循環の改善 ショックからの回復 心肺蘇生 回復後、ドブトレックス (β1作動薬)を点滴して 心機能を補助、強化 H23AHTsemi-39 ⑦ 緊急時に備えて:動物看護士の心得 *アナフィラキシーショックの治療や心肺蘇生では、 ボスミンの一刻も早い投与が求められる。 10倍希釈薬液(静注) したがって、 ①ボスミンの保管場所 ② 〃 在庫量 ③希釈薬液の品質チェック ④投与量計算表の用意 など 体重(Kg) 1 2 3 4 5 10 15 20 25 30 投与量(ml) 0.1-0.2 0.2-0.4 0.3-0.6 0.4-0.8 0.5-2.0 1.0-2.0 1.5-3.0 2.0-4.0 2.5-5.0 3.0-6.0 『緊急時に直ちに使えるようにしておくこと』 H23AHTsemi-40 ミドリンP(点眼薬) *トロピカミドとフェニレフリンの合剤 ① 薬理作用 トロピカミド:ムスカリン受容体拮抗薬(遮断薬) フェニレフリン:α1受容体作動薬(刺激薬) ② 臨床応用 散瞳剤として眼底検査に使う ③ 使用する想定場面 視力障害が疑われる動物が来院。重度な白内障が ないので、瞳孔を開いて眼底を検査してみよう。 H23AHTsemi-41 ミドリンP点眼前後の瞳孔サイズ 点眼前 点眼30分後 名前:モドキ(雑種日本猫) 年齢:12歳と10ヶ月 体重:4.3kg <写真提供> 名古屋動物看護学院 副学院長 原 晋一郎 先生 H23AHTsemi-42 ミドリンPが散瞳を起こす仕組み 瞳孔散大筋 フェニレフリン 虹彩 副交感神経 交感神経 NA Ph 瞳孔括約筋 瞳孔 ACh α1受容体 刺激 To To M受容体 遮断 M α1 散大筋の収縮 トロピカミド 括約筋の麻痺•弛緩 (縮瞳力の喪失) 散瞳 散瞳 H23AHTsemi-43 ドミトールとアンチセダン ① 薬理作用 ドミトール:α2受容体作動薬(刺激薬) *NA放出の抑制(中枢および末梢) アンチセダン:α2受容体拮抗薬(遮断薬) *α2効果のブロック ② 臨床応用 ドミトール:鎮静•不動化 アンチセダン:ドミトールの効果をブロック ③ 使用する想定場面 1 レントゲン撮影とか、患部の精査をしたいが、興奮して いて手がつけられない。 2 麻酔薬との混合注射で去勢など短時間の手術をする。 H23AHTsemi-44 ドミトールによる鎮静•不動化とアンチセダンによる回復 ーその効果の発現機序ー NA 神経終末 アンチ セダン ドミトール D NA An α2 刺激 α2 抑制 α2 D ドミトール 筋注 NA An 抑制 α2 NA放出 NA放出 元気•活発 α2 遮断 NA NA D NA 抑制 NA放出 鎮静•不動化 An アンチセダン 静注 鎮静•不動化 からの回復 H23AHTsemi-45 H23AHTsemi-46 ネコの映像 ま と め 1 自律神経系 *交感神経☞運動•興奮•緊張状態にする(日中に優位) ノルアドレナリン→アドレナリン受容体→効果 (副腎:アドレナリン) (α、β受容体) *副交感神経☞栄養補給•休息•安息状態にする(夜間に優位) アセチルコリン→ムスカリン受容体→効果 *拮抗的二重支配☞一方がアクセル、他方がブレーキ 2 自律神経薬 作用点(結合部位):伝達物質と同じ受容体 *受容体作動薬 :受容体刺激→伝達物質と同様な効果 ムスカリン受容体あるいはアドレナリン受容体作動薬(刺激薬) *受容体拮抗薬 :受容体遮断→伝達物質の効果を抑制 ムスカリン受容体あるいはアドレナリン受容体拮抗薬(遮断薬) H23AHTsemi-47 おわりに 『基礎•基本はすべてに通じる』 自律神経系と薬の作用 ーこれだけは知っておきたい基礎基本ー 動物看護士(AHT) 『獣医師の診療活動を直接支える唯一の存在』 ご清聴ありがとうございました。 H23AHTsemi-48
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