Fragility Fracture Semina 2015年4月東京

2015年4月18日
Fragility Fracture Seminar
2015年4月18日、晴れたり曇ったりの土曜日に品川駅港南口にあるアレア品川で開催された、
Fragility Fracture Seminarへ出かけて参りました。
このセミナーは今回で2回目とのことですが、主催がフォルテオを販売するイーライリリーとい
うことでしたので、骨脆弱性骨折の治療より骨粗鬆症治療に重点が置かれるだろうと予想していま
した。実際の内容はたしかに骨粗鬆症治療にウエイトが置かれていたものの、骨折治療を契機に骨
粗鬆症治療をいかに戦略的に開始するかについて具体策が提示されていた点で、良い意味で予想を
裏切る内容でした。とくに富山や新潟の病院で実際に行われている多職種連携が紹介され、病院の
利益率を上げつつ総医療費は下がっていた、という内容に大変驚きました。
たった3時間の会でしたが、密度の濃い内容で非常に有意義でした。山近病院ではすでに脊椎圧
迫骨折に対してテリパラチドの導入を行っていますが、今後は大腿骨近位部骨折に関しても積極的
に導入を行う必要性を強く感じました。
座長:松下 隆
日本における脆弱性骨折の現状と課題
南里泰弘(富山県厚生連滑川病院)
•現在要介護期間(寝たきりor車椅子になってから死ぬまでの期間)は男性9年・女性12年となっ
ており、転倒に伴う医療・介護費用は7300億円にのぼっている。今や40歳以上の日本人の10%が
骨粗鬆症である。椎体骨折は50歳以上で増加し始め、米国白人と比較して本邦では60歳代で急激
に増加する傾向がある。大腿骨近位部骨折は70歳以上で急激に増加するが、米国白人女性の方が
増加率は激しい(大腿骨頸部が長いから?)。
•椎体骨折は心血管障害や脳血管障害以上にQOLを低下させる。
そのため最初の椎体骨折を予防したいところだが、現実的には
Life Time Risk
日本
スウェーデン
20%
23%
橈骨遠位端骨折
17%
21%
上腕骨近位骨折
10%
13%
37%!
15%
大
骨近位部骨折
初回椎体骨折から治療介入するしかないだろう。初回椎体骨折
はその後の椎体骨折や大腿骨近位部骨折の発生率を2.3倍増加さ
せるからである(→「既存椎体骨折は将来の骨折を予見する」)。
スウェーデンに比べ日本人の脊椎圧迫骨折のライフライムリス
クが際だって高い点に注意(右表)。
脊椎圧迫骨折
•大腿骨近位部骨折に関しては、2015年現在約20万人と見られ
ているが、2030年には約30万人を越える見込みである。
•大腿骨近位部全国調査によると、高齢化に伴い70歳代以降の骨折数が急激に増加している。しか
し諸外国では減少傾向にある! •70%が屋内転倒であり、屋内受傷数は増加中である。
•エビデンスのある予防法は、バランス訓練だけだった。
•入院日数は40日以下(米は5日)、術前待機期間は4日程度(米は1日)。
大腿骨近位部骨折に対する外科的治療の最前線
正田悦朗(兵庫県立西宮病院)
•ガイドライン改定で頸基部骨折が判りにくくなった。
•転子部骨折:大転子後方骨折を有する転子部骨折のうち、大転子と小転子が一塊となったものを
GL型と呼んでいる。このタイプでは前方の骨性支持を得るようにしている。前方から髄内にエレ
バを挿入して、かみ込んだ髄内型を外して髄外型にしている。最近はCHSで後方の大転子を固定す
る施設(昭和大学藤が丘など)もある。
学会報告 ーFragility Fracture Seminarー
1
第14回超音波骨折治療学会
Fragility Fracture Seminar
2008 年夏
2015年4月18日
偽関節率
骨頭壊死
LSC
非転位型
0-15%
4-21%
0-8%
転位型
4-40%
46-57%
26-41%
•頸部骨折:角度保持性を持つピン+ショートプレートが出現、今後の主流?
脆弱性骨折に対する多職種連携の実践
重本顕史(富山市民病院)
• 大腿骨近位部骨折術後一年の段階で、骨粗鬆症治療継続率90%以上を維持している
富山市民病院での取り組み。2012年では骨粗鬆症治療継続率が39%だったが、リエゾ
ン治療を開始して、2014年には95%を達成。病院を挙げての取り組みで多職種連携を
可能とした。
•同院は6人の整形外科医で年間1000件の手術をこなしている急性期病院で、救急担当
内科医が大腿骨近位部骨折患者全例を初療し、必要に応じ専門科に振り分けている。
•当初は内科医の協力を得ることが難しかった。しかし現在では整形外科・内科・精
神科・看護師・薬剤師・ケースワーカー・栄養士などのチームに、かかりつけ医も加
わって退院後も骨粗鬆症治療を続け、再骨折を予防している。
二次性骨折予防から始まる骨粗鬆症治療の普及と骨形成促進剤
山本智章(新潟リハビリテーション病院)
•「Stop at One」(1つで骨折を止めよう)の標語で、大腿骨近位部骨折を骨粗鬆症治療の始まり
にしている。日本では、骨折の入院を契機に骨粗鬆症の治療を行う施設はまだまだ少数派。しかし
英国ではブレア政権以降、骨粗鬆症治療や転倒防止指導を診療報酬に加えてすでに効果を上げてい
る。
• 医師・看護師・クラーク・薬剤師・理学療法師でチームを構成し、①骨粗鬆症薬開始の徹底・
②転倒予防を含めた術後リハ・③退院後の開業医へのバトンタッチ、を行っている。
• 武田製薬が作っている「再骨折予防手帳」が、開始のとっかかりとしては良い。
• 2014年10月から始まった認定資格制度である、「骨粗鬆症マネージャー」のレクチャーコース
を受講し、看護師が資格を取得した。これらの取り組みで退院後一年の時点での骨粗鬆症薬継続率
が75%となった。問題は老健施設入所時にテリパラチドが切られてしまう点である。
• ビス剤やプラリアなどの骨吸収抑制薬は活性化率(= turn
over)を下げて骨の石灰化を亢進させ、「骨の成熟度を上げ
る」。
• 骨形成促進剤であるテリパラチドは新生骨を増やして「骨
を作る」。
•座長からはテリパラチドが骨折治療を積極的に促進すると
いうエビデンスが得られないか、骨折治療学会が中心となっ
て検討中であるとのコメントあり。
学会報告 ーFragility Fracture Seminarー
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