OS0617 <M&M2009 カンファレンス・2009 年 7 月 24∼26 日> Copyright©社団法人 日本機械学会 傾斜機能材の破壊経路予測シミュレーション* 西岡俊久*1,西村一輝*2,藤本岳洋*1 Simulation of fracture path prediction in functionally graded materials Toshihisa NISHIOKA*3 and Kazuki NISHIMURA and Takehiro FUJIMOTO *3 Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University 5-1-1 Fukae Minamimachi, Higashinada-ku, Kobe 658-0022 Functionally graded materials (FGMs) are those whose composition and hence the properties vary gradually as a function of position. As the materials that the body surface and difference of temperature with the inside can bear a severe condition of 1,000 degrees Celsius, the use is expected to strong in heat and mechanics, in the field of aerospace that a concept of FGMs. However, The space mission using space shuttle heavily relies on the performance of FGMs, since space shuttle is protected by FGM panels. It's very important to understand fracture behavior of FGM. Up to now, the evaluation technique has not been developed, due to many complex behaviors of FGMs. In this paper, simulation technique of fracture path prediction in functionally graded materials was successfully developed. Key Words : Functionally Graded Materials (FGMs) 1. 緒 言 傾斜機能材とは,ひとつの材料の中で,組成や機 械的特性が連続的,または段階的に変化している材 料のことを指す.傾斜機能材の概念が提唱された航 空宇宙分野では,熱に強く且つ機械的な強さも併せ 持ち,機体表面と内側との温度差が 1000℃という過 酷な使用条件に耐えうる材料として,その適用が期 待されている.しかし,傾斜機能材は機械的特性が 2. 破壊経路予測シミュレーション 2・1 T*積分評価法 傾斜機能材では,物質点ごと に材料定数が異なる.そのため,変形エネルギー密度の 空間分布を評価し破壊力学パラメータを求める必要があ る.そこで,本研究ではNishioka・Atluri・Nakagakiにより 導出された経路独立T*積分(5)を用いた.T*積分の経路積分 式を次に示す. Tk* = 材料内各点の位置に依存して異なり,過酷環境下の 使用が多いため,事故発生時の被害が常に危惧され ている.そのため,破壊挙動に関する精密な評価手 法の確立は非常に有用である.本研究では,物性値 を傾斜させた材料モデルを作成し,その内部のき裂 進展挙動ををデローニ自動要素分割(1)(2)に基礎を置 く移動有限要素法(3)(4)によりシミュレートした. ∫ ⎡⎣W + Knk − tiui ,k ⎤⎦dS + ∫ Γ+ΓC VΓ −Vε ⎡⎣ ρ uiui.k − ρ ui ui ,k + σ ijui , jk − W,k ⎤⎦dV (1) ここでWは応力仕事密度,Kは運動エネルギー密度,ui, ti,は変位成分と表面力成分,ρは質量密度,nkは積分経路 上の外向単位法線ベクトルのXk成分を表す.( )は( )の時 間導関数を意味する.Γはき裂先端をとり囲む遠方場経 路,Γεはき裂先端をとり囲む近傍場経路,Γcはき裂面上 の経路を意味する.Γ+Γcで囲まれた領域をVΓとし,Γεで *1 , 正員, 神戸大学 (〒658-0022 神戸市東灘区深江南町 5-1-1) *2 学生員,神戸大学 海事科学研究科. E-mail: [email protected] 囲まれた領域をVεとする.T*積分のき裂先端直交座標系 成分 *0 Tへ l の変換は,次式(2)により表される. Tl*0 = αlk (θ0 )Tk* (2) ここでαlkは座標変換テンソル,θ0はき裂先端座標系と 全体座標系のなす角度である.本研究では,式(2)より * (6) るき裂の先端に対して,高密度の要素分割を保ち、 き裂面の境界条件を精度よく表すことができるため, 応力拡大係 求めたT 積分値と成分分離法 を用いて, 移動有限要素法は非直進き裂問題に優れた結果をも 数Kを求めた. 以下の式(3), (4)にその評価式を示す. たらす. ⎧⎪ ( 2µT *01 β 2 ) ⎫⎪ KI = δ I ⎨ ⎬ 2 2 ⎪⎩ AI (δ I β 2 *0+ δ II β1 ) ⎪⎭1 2 ⎧⎪ ⎫⎪ 2µT 1 β1 KII = δII ⎨ ⎬ 2 2 ⎪⎩ AII δI β2 + δ II β1 ⎪⎭ 12 ( ( ) ) (3) (4) Fig.2 Moving elements around a propagating crack tip ここでδⅠ,δⅡはき裂開口変位,AⅠ,AⅡはき裂速度 関数,βⅠ,βⅡはき裂速度パラメータ,µは横弾性係 数である. 2・3 解析モデル 本解析で用いた解析モデ (7)(8) を図 3 に示す.試験片の材料はEpoxyと ル (1)(2) 2・2 デローニ自動要素分割 (3)(4) 有限要素法 に基礎を置く移動 き裂進展に適用したデローニ自 Glass-richであり,図 3 に示すように,初期き裂を含 む中央部で(0≦ζ≦1)で上下に物性値を変化させて 動要素分割の概念図を図 1 に示す.デローニ自動要 いる.物性値の変化率(7)(8)を図 4,図 5 に示す.変化 素分割では,図 1(a)に示す外部境界点,図 1(b)に示 させた物性値はヤング率E,ポアソン比ν,破壊靭性 す内部指定点の情報を用いて図 1(c)に示すメッシュ 値KIC,質量密度ρの 4 種類である. が自動的に生成される. 22 5 5.5 120 P 37 60 P Epoxy graded region Glass-rich 5 (a) Exterior boundary points (b) Specified (c) Generated interior points mesh pattern Thickness:6mm Fig.3 analyze modulus Fig.1 Example of Delaunay automatic mesh generation ここで,き裂の上下面を区別するために,き裂面 の上下の境界点はき裂面に垂直に微小量 ∆ε ずつそ れぞれずらして配置している. また,き裂先端の応 力特異性を考慮し,図 1(b)のように,き裂先端を中 心にき裂先端に近づく程小さくなる多層の同心円を 設定し,それらの円周上に一定間隔で内部指定点を 設定した.これらの節点を用いたメッシュ生成によ りき裂先端近傍の特異応力分布を高精度で評価でき る.また,本移動要素法では,図 2 に示すように, Fig.4 Variations of Young’s modulus E (MPa) and き裂の進展と共に,き裂先端近傍の内部指定点群を Poisson’s ratio ν along the graded region (0≦ζ≦1) 移動させる.このように,任意方向に進展・移動す 応する破壊経路予測理論を解明するとともに,傾斜 機能材に対する他の実験でもシミュレーションを行 い,本プログラムの妥当性を検証する. Fig.5 Variations of fracture toughness KIC (MPa m ) and Mass density ν along the graded region (0≦ζ≦1) 2・4 解析方法 Fig.8 Experimental fracture path(7)(8) き裂進展経路数値予測シミ ュレーションは,デローニ自動要素分割に基礎をお Fig.6 Simulated fracture path く移動有限要素法を用いて行った.静的荷重・動的 T 1 *0 (N/m) 進展条件下で解析を行い,T*積分成分分離法により 求めた破壊力学パラメータKIの値が破壊靱性値KIC に達した状態からき裂が進展すると仮定した.但し Grad領域内では材料内各所によってKIC値も変化す ると考えられる.そこで初期き裂先端位置のEpoxy, 400 350 300 250 200 150 100 50 0 0 Glass-rich混合比からKIC値を近似決定した.破壊経路 2 4 6 PATH No. 予測は,KⅡが 0 の方向にき裂が進むと仮定する局所 Fig.7 Path independence of T* integral for propagating crack tip (9) 対称理論 を用いた.経路独立性を確認するため, T*積分値をき裂より同心円状の複数経路について 文 求めた. 3. 解析結果 4 点曲げの境界条件を図 3 に示し,破壊経路を図 6 に示す.き裂がEpoxy側に進んでいることがわかる. き裂位置を偏心させてはいるが,同じ境界条件の均 質材について行った解析では、き裂が直進した.よ って傾斜機能の影響により破壊経路が折進したと言 える.図 7 では複数の積分経路で評価したT*積分値 を比較している.これらのT*値は図 6 のき裂進展段 階で評価したものであり,優れた経路独立性が認め られる.このように,T*積分が傾斜機能材の破壊問 題評価に有効であることが確認できた.また,図 8 の実験結果(8)(9)では,初期き裂進展角度θ=7°が得 られ,数値解析ではθ=5.9°が得られた.この角度 の差の原因は何かを今後確認していきたい. 4. 結言 傾斜機能材に対する移動有限要素法のプログラムを 開発し,T*積分を用いてき裂先端の力学的状態を評 価した.また,成分分離法,局所対称理論に基づい て破壊経路を予測したところ,参考文献実験結果と よく一致する結果を得た.今後は,傾斜機能材に対 献 (1) Sloan, S.W. and Houlsby, G.T., An implementation of Watson’s algorithm for computing two-dimension Delaunay triangulation, Advances in Eng. Software, 6, (1984), pp. 192-197. (2) Taniguchi, T. (1992): Automatic Mesh Generation for FEM: Use of Delaunay Triangulation, Morikita Publishing, (Japanese). (3) Nishioka, T., The State of the Art in Computational Dynamic Fracture Mechanics, JSME Int. J., 37-4, A, (1994), pp. 313-333. (4) Nishioka, T., Computational Dynamic Fracture Mechanics Int. J. Fract., 86-1/2, (1997), pp. 127-159. (5) Atluri, S.N., Nishioka, T. and Nakagaki, M., Incremental Path-Independent Integrals in Inelastic and Dynamic Fracture Mechanics”Fracture mechanics,Eng.Fract.Mech.20,(1984),pp.209-244 (6) Nishioka, T. Murakami, R. and Matsuo, S., Finite Element Simulation of Fast Curving Fracture Tests Computational Mechanics ‘ 91, ICES Publications, (1991), pp.750-775. (7) Jeong-ho.Kim,Glaucio H.Paurino Simulation of crack propagation in functionally graded materials under mixed-mode and non-proportional loading,International Journal of Mechanics and Materials in Design. 1,(2004),pp.63-94 (8) C.-E.Rousseau and H.V.Tippur ,Compositionally graded materials with cracks normal to the elastic gradient,Acta Materialia 48(2000),pp.4021-4033 (9) Goldstein, R.V. and Salganik, R.L. Brittle fracture of solids with arbitrary cracks (1974), Int. J. Fract., Vol.10, pp.507-523
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