熊本大学工学部社会環境工学科平成 26 年度卒業論文概要 異なる試験法による破壊靭性評価 社会環境工学科 吉岡 伸吾 1.目的 現在,高レベル放射性廃棄物の地下処分場など従来にはなかった新しい岩盤構造物の建設や操業の計画が 進められている.これらの構造物は長期間安定性を保ち続ける必要があり,周辺岩盤の高精度でち密な安定 性評価が求められる.そこで、岩石の破壊過程を考慮した微視 的な岩石の強度指標である破壊靭性評価が重 要となると考える.近年になり、その岩石の破壊靭性に関する様々な研究が行われてきているが,未だ試験 条件やその個数は不十分である.また,岩石の破壊靭性を評価する試験法はいくつか提案されており,様々 な試験法で研究が行われている.しかし,異なる試験法による破壊靭性 評価を比較・検討しているものは数 少ない.そこで,本研究では異なる 3 つの試験法を用いて来待砂岩および熊本安山岩供試体で破壊靭性評価 を行い,異なる試験法によって得られる破壊靭性評価を比較 ,検討を行う.また,試験時の載加速度を変化 させ,各試験において載加速度の変化による影響も評価する. 2.試験方法 本研究では,来待砂岩および熊本安山岩を用いて,CB (Chevron Bend)試験,SCB (Semi-Circular Bend)試験 および SNDB (Straight Notched Disk Bending)試験を行い岩石の破壊靱性を評価した.各試験における載荷速 度を CB 試験では 0.01 mm/min の 1 条件, SCB および SNDB 試験では 0.001 ~ 1000 mm/min の範囲で 100 倍 ずつ変化させ 4 条件で試験を行った. 得られた破壊靱性値 K IC を来待砂岩,熊本安山岩に分けて,各試験 別にプロットしたものを図-3.1 に示す.来待砂岩を用いた場合で各試 験の破壊靭性値の平均値で比べると,図-3.1 を見て分かるように,CB 試験の破壊靭性値と SNDB 試験の破壊靭性値は約 0.6 MN/m3/2 で,ほ とんど変わらない値となっているが,SNDB 試験の破壊靭性値は,他 程低い値を示している.一方, 熊本安山岩の場合では,CB 試験の破壊靭性値は約 1.8 MN/m3/2 で最 も大きな値を示し,続いて SNDB 試験の破壊靭性値で約 1.3 MN/m3/2, 2 1.5 1 0.5 0 CB を記録して,最も小さな値を よって破壊靱性評価に違いが生じているが,図-3.2 のように各試験法 で代表寸法を定め,その代表寸法を用いて,既存の研 究で明らかにな っている SCB 試験による寸法効果と比較したものを図-3.3 に示す. この図-3.3 より,各試験で得られた破壊靭性値は SCB 試験による寸 法効果と同様の傾向を示すと考えられる.このことを考慮すれば,異 なる試験法による破壊靭性評価への影響は小さいと考える.なお,今 後の課題として CB 試験および SNDB 試験の供試体寸法効果を確認 する試験を行う必要があると思われる.また,図-3.4 に示すように, SCB SNDB (a) 来待砂岩 (KS) 3/2 示すことが確認された.このように,各試験法で供試体寸法の違いに 各試験で載加速度依存性も確認された. 2.5 2.5 2 IC SCB 試験の破壊靭性値が約 1.2 MN/m 3/2 Fracture Toughness K , MN/m の二つの試験と比べると 0.1 MN/m3/2 Fracture Toughness KIC, MN/m3/2 3.結果・考察 1.5 1 0.5 0 CB SCB SNDB (b) 熊本安山岩 (KA) 図-3.1 各試験での破壊靭性値 の比較 104-T4837 吉岡 伸吾 2 IC IC t = 20.0 mm r= 24.7 mm SCB SNDB 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 3 Fracture toughness K , MN/m 3/2 2 Fracture toughness K , MN/m (a) CB 試験 3/2 D= 50.0 mm 0.4 0.3 0.2 -4 -3 -2 -1 10 10 10 10 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 1 0.9 0.8 0.7 SCB SNDB 0.6 -4 -3 -2 -1 10 10 10 10 Loading rate, mm/min (a) (c) SNDB 試験 (b) SCB 試験 3/2 KS 0.8 0.6 CB SCB SNDB 0.4 0.2 0 50 100 150 200 Fracture Toughness KIC, MN/m 1 0 来待砂岩 (KS) 10 1 10 2 3 10 10 4 (b) 熊本安山岩 (KA) 3 KA 2.5 2 CB SCB SNDB 1.5 1 0.5 0 0 50 代表寸法, mm (a) 0 図-3.4 破壊靭性値の載加速度依存性 IC Fracture Toughness K , MN/m 3/2 図-3.2 各試験の代表寸法 10 Loading rate, mm/min 来待砂岩 (KS) 100 150 200 代表寸法, mm (b) 熊本安山岩 (KA) 図-3.3 代表寸法による破壊靭性比較 4.まとめ 本研究では、異なる 3 つの試験法を用いて破壊靱性の評価を行った.その結果,来待砂岩と熊本安山岩ど ちらの岩石においても各試験で違う破壊靭性値を示した.これらの違いは,各試験における供試体の代表寸 法の大きさの違いによって生じたものと論じた.また,その寸法効果は各試験で同様な傾向であることが確 認でき,このことを考慮すると各試験法による破壊靭性評価への影響は小さいことを示した.SCB 試験およ び SNDB 試験では,来待砂岩と熊本安山岩で破壊靭性評価の載荷速度依存性を明らかにし た. 参考文献 1) ISRM Testing Commission (F. Ouchterlony and coordinator): Suggested methods for determining the fracture toughness of rock, Int. J. Rock Mech. Min. Sci. & Geomech. Abstr., 25, 2) Chong, K.P. and Kurruppu, M.D.: New specimen for fracture toughness determination for rock and other materials, Int. J. Fract., 26, R59-62, 1984. 3) Lim, I.L., I.W. and Choi, S.K., Johnston, : Stress intensity factors for semi -circular specimens under three-point bending, Engng. Fract. Mech., 44, pp.363-382, 1993. 4) Lvent Tutioglu, Cigdem Keles, : Mode I fracture toughness determination with straight notchd disk bending method, Rock Mech. Min. 48 (2011) 5) Int. J. 1248 - 1261 M.D. Kuruppu, Y. Obara, M.R. Ayatollahi, K.P. Chong and T. Funatsu: ISRM suggested method for Determining he Mode I Static Fracture Toughness Using Semi-Circular Bend Specimen, Rock Mech Rock Eng (2014) 47 : 267 -274
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