力学における原子描像と

Multiscale Modeling;
Atomistic and Continuous Pictures in Mechanics
マルチスケール
— 力学における原子描像と連続体描像 −
Yoji Shibutani
Department of Mechanical Engineering, Osaka University
Center for Atomic and Molecular Technologies (CAMT)
渋谷陽二
大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻
工学研究科附属アトミックデザイン研究センター
Abstract / アブストラクト
連続体の変形や強度を考える場合に,連続体を構成する物体点(material point)を定義
する.この物体点は大きさを持たない一方,任意な位置 x において,時間に応じて変化し
てもよい密度ρ(x,t)のスカラー,変位ベクトル u(x,t)や応力テンソルσ(x,t)といった諸量が定
義される.その密度を測定する領域∆V を小さくしていくと,やがてその物質を構成する原
子に行き着き,その原子群の結合は原子核のまわりに局在化している電子により律され
ている.すなわち,その空間では,すでに密度が定義できなくなり,連続体が破綻している
ことになる(1).しかし,大きさを持たない,いわば∆V 無限小の物体点では密度が定義でき
る.ナノメートルのサイズ(size)を含めてスケール(scale)に応じた力学的挙動を考えること
は,この矛盾と壁をいつも抱えなければならない.
ものづくりに関わるシミュレーションの中でマルチスケールモデリングという言葉がにわ
かに流行言葉となっている.付加価値の高い製品を創り出すには「原子・分子からのもの
づくり」(2)が不可欠になってきた昨今であるが,力学挙動の中で見られるその原子描像と
連続体描像について考察する.
(1)
A.C.Eringen, Theory of Micropolar Elasticity, Fracture, edited by H.Liebowitz, pp.623, 1968.
(2)
http://www.camt.eng.osaka-u.ac.jp/