人間中心設計を体感分析できる 次世代の3D・VR仮想検証システム

人間中心設計を体感分析できる
次世代の3D・VR仮想検証システム
NECソリューションイノベータ株式会社
イノベーション戦略本部/森口昌和
NECグループの「ものづくり共創プログラム」では、人間中心設計(Human Centered Design:以
下、HCD)
を重要な要素の1つとしている。当社は、HCDに沿って体感分析できる
「没入体感型」
のVR仮想検証を開発した。本稿では、その特長を中心に紹介する。
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ユースケース例:タイ新工場設計
たとえば、1 年後にタイで新工場の建設が予定
されているとする。そのユースケースを例として、
まずは本技術の活用方法を述べる。
現地で 3D-CAD の設計が完成したようなので、
ヘッドマウントディスプレイ
(以下、HMD)
を付け、
バーチャルリアリティ
(以下、VR)
仮想検証システ
ムを実行した。すると、まるで実際のタイ工場に
いるかのように視界全体に現場が再現された。左
右を見る、見上げる、覗き込むなどの動作はもち
図 1 工場作業員としてライン作業をロールプレイ
ろんのこと、機材のサイズや距離感も確認するこ
どうやら今の部品の配置では同じ作業を繰り返す
とができる。タイ人の女性の平均身長に合わせて
のは手に負担が多く、効率が悪いようだ。そこで、
身長を 155cm に設定し、仮想の現場を歩いてみ
部品の配置をいろいろ変えながらロールプレイす
た。特に大きな問題はない。しかし身長を 180cm
ると、作業効率のよい最適な位置がわかったので、
にして歩いてみると、天井からぶら下がる工具に
現地のマネージャに伝えることにした。
アラートが表示された。
「工具に頭が当たり危険」
現地に連絡し、タイ人のマネージャに VR シス
ということだ。この仕様では問題があるため、設
テムにアクセスしてもらうと、仮想工場内にマネー
計を見直す必要がある。
ジャのアバターが出現した。実際にマネージャに
また、工場の作業員としてライン作業をロール
もロールプレイしてもらい、現場環境や配置の課
プレイした
(図1)
。目の前の生産ライン上に部品
題について認識を合わせ、設計を見直すことで合
がいくつか置いてあり、手を出して部品を掴み、
意した。すると、マネージャのアバターが工場内
別の場所へ運ぶ、置く、を繰り返してみる。何と
の掲示板を指さした。さらに、壁に設置している
か作業はできるが、手にアラートが表示された。
警告灯をチェックするかのようにメモ機能で空中
eizojoho industrial
June 2015︱83