PSA - 富士見高原病院

第42回 みんなの健康教室 平成27年5月20日
富士見高原病院 泌尿器科部長 小林史岳
前立腺がんの特徴
高齢男性に多い病気
進行が比較的ゆっくり
初期には無症状のことが多い
早期発見・早期治療が重要
確かな知識を持ち、
定期的に検診を受けることが大切
増えている前立腺がん
 欧米諸国では、非常に多くみられるがん
アメリカ:男性のがんで罹患数第1位・死亡数第2位
 日本では… 泌尿器科がんの第1位
もっとも増えているがんの一つ
2020年には、
男性のがん罹患数の第1位に!
雑賀公美子 ほか: がん・統計白書2012-データに基づくがん対策のために(祖父江友孝 監修), 篠原出版新社, pp63-81, 2012.
米国の男性における前立腺がんの状況
米国では罹患数第1位、死亡数2位
罹患数(部位別の割合)*1
死亡数(部位別の割合)*1
(2013年)
(2013年)
その他
38%
前立腺がん
28%
その他
42%
肺がん*2
28%
前立腺がん
10%
肺がん*2
14%
メラノーマ*4
5%
膀胱がん
6%
膵がん
6%
大腸がん*3
9%
肝がん*5
5%
*1: 基底細胞がん、扁平上皮がん、膀胱がん以外の上皮内がんを除いた集計
*3: 結腸・直腸がん *4: 皮膚のみ *5: 肝・肝内胆管がん
大腸がん*3
9%
*2: 肺・気管・気管支がん
Siegel R, et al: CA Cancer J Clin 63; 11-30, 2013.
米国におけるがんの部位別罹患率の推移
(年齢調整)
250
225
年
齢
調
整
罹
患
率
(男
性
10
万
人
対
)
30年以上前から
第1位を維持
前立腺がん
200
175
150
125
肺がん*1
100
75
大腸がん*2
50
膀胱がん
メラノーマ*3
25
0
1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009
*1: 肺・気管・気管支がん *2: 結腸・直腸がん
*3: 皮膚のみ *4: 肝・肝内胆管がん
肝がん*4
甲状腺
がん
診断年
Siegel R, et al: CA Cancer J Clin 63; 11-30, 2013.
日本における前立腺がんの罹患率と死亡率
前立腺がん罹患率(年齢調整)
前立腺がん死亡率(年齢調整)
人口10万対 Rate per 100,000
人口10万対(対数)Rate per 100,000(log scale)
140
200
120
100
胃
胃
100
肺
肝臓
80
大腸
大腸
10
60
肺
40
直腸
結腸
前立腺
結腸
肝臓
直腸
20
前立腺
0
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2007 (年)
1
1960
1970
1980
1990
2000
2011 (年)
がんの統計編集委員会 編: がんの統計’12, (財)がん研究振興財団, pp28-29, pp35-36, 2012.
2020年には男性のがん罹患数第1位
がんの部位別罹患数と将来予測
140,000
男 性(日本)
120,000
前立腺
100,000
胃
肺
罹
患
数
80,000
大腸
60,000
40,000
肝臓
膵臓
20,000
0
1975
~
1979
1980
~
1984
1985
~
1989
1990
~
1994
1995
~
1999
2000
~
2004
2005
~
2009
2010
~
2014
2015
~
2019
2020
~
2024
2025
~
2029
雑賀公美子 ほか: がん・統計白書2012-データに基づくがん対策のために(祖父江友孝 監修), 篠原出版新社, pp63-81, 2012.
男性のがんの中で増加率トップ(罹患数予測)
2020年には1995年の8倍以上に
前立腺
(105,800人/年)
腎・尿路
8.32
2.35
膵臓
2.05
肺
2.04
悪性リンパ腫
1.90
食道
1.82
膀胱
1.77
胆嚢・胆管
1.76
多発性骨髄腫
1.56
胃
1.54
白血病
1.37
肝臓*
0
0.96
1
2
3
4
5
6
7
8
9
*: 肝・肝内胆管
雑賀公美子 ほか: がん・統計白書2012-データに基づくがん対策のために(祖父江友孝 監修), 篠原出版新社, pp63-81, 2012.
前立腺がんは高齢になるほど増える
600
前立腺がんの年齢階級別罹患率(2007年)
500
罹
患
数
(
10
万
人
対
)
400
2007年(男性)
300
200
典型的な“高齢者がん”
1980年(男性)
100
0
0~ 5~
10~ 15~ 20~ 25~ 30~ 35~ 40~ 45~ 50~ 55~ 60~ 65~ 70~ 75~ 80~ 85~
年齢
がんの統計編集委員会 編: がんの統計’12. (財)がん研究振興財団, pp37-40, 2012.
前立腺がんが増加している背景
社会の高齢化
食生活の欧米化 診断法の進歩
(動物性脂肪の摂取量が増加)
(腫瘍マーカー:
PSA検査の普及)
日本および世界の前立腺がん罹患率
1990年前後、世界人口で年齢調整
オーストラリア/ニュージーランド
西ヨーロッパ
北アメリカ
北ヨーロッパ
カリビアン
南アフリカ
南アメリカ
南ヨーロッパ
日本
ミクロネシア/ポリネシア
中央アメリカ
中央・東ヨーロッパ
西アフリカ
中央アフリカ
メラネシア
東アフリカ
西アジア
東南アジア
東アジア
北アフリカ
南中央アジア
104.2
94.1
85.6
75.2
71.1
53.9
50.2
50.2
43.5
39.9
34.8
28.5
22.2
16.4
15.8
14.5
13.5
8.3
8.2
8.1
4.1
0
20
40
60
IARC GLOBOCAN 2008, http://globocan.iarc.fr/
80
100
120
(財)がん研究振興財団発行: がんの統計’12, p70-73, 2012.
前立腺がんの危険因子
年齢(高齢化)
遺伝・家系(家族性前立腺がん)
人種(黒色人種、白色人種、それ以外の人種)
食生活(脂肪の多い食事、緑黄色野菜の不足など)
性生活(早婚、若い時の頻回の性交、
性活動停止年齢がより早いなど)
など
ここまでのまとめ
1
前立腺がんは、世界中で増加している
2
わが国でも、罹患数、死亡数ともに増加傾向に
ある
3
前立腺がんの増加の背景には、「高齢化」、
「食生活の欧米化」、「診断法の進歩(PSA検査
の普及)」が関係している
4
前立腺がんの危険因子が、複数見つかっている
前立腺は、どこにある?
男性の膀胱の下にあるくるみ大の器官
膀胱
精のう
発生から増殖・成長に
男性ホルモンを利用
(男性ホルモン依存)
尿道
前立腺
精巣
前立腺の構造
3つのゾーンに分けられる
移行域+中心域
精のう
内腺とも呼ばれ、尿道や
射精管に接する内側の部分
膀胱
移行域
辺縁域
中心域
射精管
線維筋性間質
辺縁域
被膜近く外側の部分(外腺
とも呼ばれる)
前立腺の働き
前立腺液を分泌して、
精子の運動・保護に関与
前立腺がんと前立腺肥大症の違いは?
前立腺がん
前立腺肥大症
残尿
主に外腺
(辺縁域)に発生
精丘
外腺から悪性の腫瘍が
発生する
内腺
(移行域)が肥大
精丘
内腺に良性の腫瘍が発生して、
尿道や膀胱を圧迫していく
前立腺がんの症状
進 行
早期がん
無症状
 がん特有の症状はない
転移がん
前立腺肥大症と同じ
ような症状が出現
 尿が出にくい・残尿感
 排尿時に痛みを伴う
 尿や精液に血が混じる
骨転移に伴い
骨痛・四肢痛が出現
 腰痛
 四肢の痛み
−転移しやすい部位−
骨、リンパ節など
男性ホルモンとの関係
LH-RH
CRH
視床下部
LH
ACTH
下垂体
副腎
前立腺がん
前立腺
精巣
LH-RH: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
CRH: 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
LH:
黄体化ホルモン
ACTH: 副腎皮質刺激ホルモン
副腎性
男性ホルモン
(5%)
前立腺がんの多くは、男性
ホルモンによって増殖する
(男性ホルモン依存性)
精巣性
男性ホルモン
(95%)
ここまでのまとめ
前立腺は、男性の膀胱の下にあるくるみ大の
生殖器官である
2 早期の前立腺がんでは、自覚症状がない
場合が多い
3 前立腺がんの病期が進むと、生存率が低く
なる
4 前立腺がんの多くは、男性ホルモンによって
増殖する(男性ホルモン依存性)
1
前立腺がん検査・診断の流れ
スクリーニング検査
(一般検査)
確定診断
がんを確定するための検査
病期診断
がんの進行度(広がり)を
確認するための検査
 PSA検査(血液検査)
 直腸診(触診)
 MRI、経直腸的超音波検査
 針生検(前立腺組織を採取)
画像検査(CT)
骨シンチグラフィ
PSA検査(前立腺がん腫瘍マーカーの測定)
PSA(前立腺特異抗原)
前立腺に特異的なタンパク質の一種
PSA値と前立腺がん発見率
(%)
100
86%
(日本人の場合)
60
年齢
PSA基準値
64歳以下
3.0 ng/mL
65〜69歳
3.5 ng/mL
70歳以上
4.0 ng/mL
97%
75%
80
前
立
腺
が
ん
発
見
率
PSA検査の年齢階層別基準値
53%
前立腺がん検診ガイドライン 2010年増補版
42%
35%
40
28%
20%
20
6%
0
2~4
4~6
6~10
10~15 15~20 20~30 30~40 40~50 50~100
PSA(ng/mL)
PSA(ng/mL)
出典 (財)前立腺研究財団編: 前立腺がん検診テキスト
PSA値の分布(対象別での比較)
血清トータルPSA値
(ng/mL)
10,000
1,000
血
清
P
S
A
値
病期の予測
にも役立つ
100
10
1
健常男性
(217)
前立腺
肥大症
(121)
( )内: 症例数 測定: Tandem-R
偶発がん
限局がん
浸潤がん
転移がん
(n=15)
(n=16)
(n=42)
(n=77)
前立腺がん(150)
栗山 学 ほか: 泌尿器科紀要, 41(1): 39, 1995.より改変
直腸診(触診)
直腸壁ごしに前立腺の状態を確認
 大きさや硬さ
 弾性
 前立腺表面の凹凸
 触れると痛みがあるか
前立腺肥大症との鑑別にも有用
MRI検査
前立腺の大きさや、がんの広がりを確認
経直腸的超音波検査
前立腺の大きさや、がんの広がりを確認
超音波を出す器械を直腸に挿入
超音波を出す器械
前立腺生検(組織検査)
組織を採取し、がん細胞の有無やその悪性度など調べる
確定診断になる
 麻酔を行う
 当院では2泊3日
前立腺生検でわかること
・前立腺がんか否か
・局在、検体内でがんがしめる割合
・悪性度(分化度、Gleason score)
治療法の選択の材料に
病期診断
CT:がんの広がりを調べる
骨盤部CT画像
骨シンチグラフィー
:骨転移の有無を調べる
前立腺がんの病期分類
TNM分類 【T: 原発腫瘍
N: リンパ節転移 M: 遠隔転移】
限局がん(偶発がん)
局所浸潤がん
触知不能、または画像診断不可能
前立腺被膜をこえて進展
T1
T3
精嚢以外の隣接組織に固定、または浸潤
限局がん
前立腺内に限局
周囲臓器浸潤がん
転移がん
(リンパ節・骨など)
T2
T4
N1, M1
UICC TNM悪性腫瘍の分類 第7版 日本語版, 金原出版, pp230-234, 2010.
ここまでのまとめ
1
PSA検査は、血液検査だけで実施できる
50歳以上の男性は、PSA検査の受診が勧め
られている
3 PSA検査に、直腸診やMRI、超音波検査を組
み合わせて行うと、検査精度が向上する
前立腺がんの確定には生検が、病期の判定
4 には画像検査が行われる
2
病期による治療法の選択
早期には局所療法、進行すると内分泌療法が主体
病
期
局所進行がん(T3)
限局がん(T1, T2)
転移がん(T4, N1, M1)
N1
T4
T1a T1b T1c
手術療法
治 放射線療法
療 内分泌療法
法
T2
T3
あるいは
それらの
組み合わせ
内分泌療法
+
放射線療法
PSA監視療法
M1
内分泌療法
内分泌療法
ブルークローバー・キャンペーン運営委員会: 啓発パンフレット「前立腺がんからパパを守る」(一部改変)
http://www.asahi.com/blueclover/
PSA監視療法
定期的な検査で最適な治療開始時期を見極める
特 徴
PSA監視療法
 治療開始まで、生活の質(QOL)を
高く保つことができる
(3~6ヵ月ごと)
異常なし※
PSA検査
前立腺生検
適応(目安)
 限局がん(T1c~T2)の患者さんで、
異常あり
グリーソンスコアが6以下、PSAが
10ng/mL未満の方など
 高齢の方(平均寿命まで10年未満
の方)
注意が必要なポイント
積極的な
治療を開始
※: PSAの増加の様子や生検の結果などから判断
 治療開始が遅れる危険性がある
 がんに対する不安が強い場合には
適さない
手術療法(前立腺全摘除術: 開腹手術)
前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を吻合する手術
膀胱
精のう
特 徴
 早期であれば根治が期待できる
 手術時間は通常3~4時間程度
→2週間程度の入院
 恥骨後式(お腹側から)、会陰式
(股の間から)がある
尿道
適応(目安)
 限局がん(T1b~T2)の患者さんが
前立腺
主体
 全身状態が良好で、75歳以下の方
主な副作用
摘出部位
 尿失禁、勃起不全、出血、感染、発熱
 腸管損傷、吻合部狭窄など
前立腺全摘除術(腹腔鏡下手術)
腹腔鏡を用いて、開腹せずに前立腺を摘出する手術
12mm
5mm
腹腔鏡
(12mm)
12mm
特 徴
 腹腔鏡により、体内から細かな
様子を確認しながら手術を行える
 開腹手術よりも術後の痛みが
少なく、回復が速い
 適応は、開腹手術と同じ
5mm
• 5ヵ所の穴から、腹腔鏡や手術用具を体内に入れる
• 炭酸ガスでお腹を膨らませ、手術に必要なスペース
を作る
注意が必要なポイント
 肺の機能に問題がある方には適さ
ない
 がんの治療成績や副作用の頻度は、
開腹手術と同等
 腹腔鏡下手術に習熟した施設での
み実施できる
前立腺全摘除術(ロボット支援手術)
ロボットを活用した腹腔鏡下前立腺全摘除術
特 徴
 腹腔鏡による三次元映像と、操作性に
優れたロボットアームを活用した術式
 欧米では広く普及している
 適応は、開腹手術と同じ
 手術時間は長いが出血量は少ない
注意が必要なポイント
 2012年4月より保険適用
 日本では、限られた施設でのみ実施
写真提供:Intuitive Surgical社, 2008
可能
放射線療法 - 外照射法
体の外から前立腺付近に放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法
特 徴


従来から広く行われている治療法
外来で治療が可能
適 応
早期の限局がん(T1,T2)が主体
局所進行(T3)の患者さんや、局所
進行が予想される方では内分泌療
法と併用
 根治ではなく、除痛のために行うこと
もある


主な副作用
写真提供:京都大学 放射線腫瘍学・画像応用治療学教室


早期: 排尿痛、排尿困難、頻尿、
血尿など
晩期: 尿道狭窄、直腸潰瘍、勃起
不全など
外照射法-強度変調放射線治療(IMRT)
IMRT:Intensity modulated radiation therapy
放射線照射のイメージ
IMRT
従来の外照射法
特 徴
 放射線を、理想的な強さに変えて照
色の濃い部分: 細胞にダメージを与えられる線量
色の薄い部分: 細胞に障害はない線量
射できる
 前立腺への照射線量を事前に設定
し、コンピュータにより分布を最適化
 膀胱や腸などの線量を少なくでき、
副作用の発生を抑えられる
注意が必要なポイント
前立腺の形に応じて、高い線量の照射
ができる(色の濃い部分を前立腺の形
に合わせやすい)
前立腺の周りの臓器(膀胱や腸など)
には、放射線の影響を少なくできる
 2008年4月より保険適用
 IMRTを実施できる施設は限られて
いる
溝脇尚志: 医学のあゆみ, 212(12), 1057, 2005.
放射線療法-組織内照射法
みっぷうしょうせんげん
密封小線源治療
前立腺
前立腺内にカプセルに密封された放射線の小線源(ヨウ素
125)を埋め込み、がん細胞を死滅させる新しい放射線療法。
シードを充填したカートリッジ
適 応

シード挿入具
膀胱
(アプリケーター)
がんが前立腺内に限局している場合
(病期T2)で、悪性度が低い方
上記で適応になりにくい場合
探触子(超音波装置)
前立腺が非常に大きい
 前立腺肥大症の手術歴がある
 治療上問題となる合併症がある、など

直腸
アプリケーター針
線源(シード)の大きさと構造
 入院: 短期間
 挿入時間:1~2
時間程度
 シードは埋め込
んだままでよい
写真: 日本メジフィジックス株式会社提供
副作用
大きな副作用は少ない
 主なもの(ほとんどが一時的)
• 排尿困難、排尿痛、肛門痛、血尿、
血便、頻尿、
• 便意頻回など

内分泌療法(ホルモン療法)
男性ホルモンの働きを抑えて、前立腺がん細胞
の増殖を抑制する“全身的”な治療法
特 徴
 多くの患者さんに有効
 身体への負担が少なく高齢者にも可能
 ”抑える”治療
適 応
 進行、転移していても治療できる
 手術や放射線治療の前後に組み合わせることもある
内分泌療法の方法
1 男性ホルモンの分泌を
抑える方法
A. 精巣での男性ホルモン
の分泌を抑える薬剤を
投与[LH-RHアナログ
(アゴニスト・アンタゴニ
スト)など]
B. 手術で精巣を取る
2 前立腺細胞内で、
男性ホルモンの
作用発現を抑える方法
C. 抗男性ホルモン剤を投与
内分泌療法の作用メカニズム
LH-RH: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
注射薬(LH-RHアナログ)
(アゴニスト・アンタゴニスト)
女性ホルモン剤
前立腺がん
の退縮
副腎性男性ホルモン(5%)
抗男性ホルモン剤
両側精巣摘除術
男性ホルモン(95%)
主な内分泌療法の種類
作用
種類
男性ホルモンの
作用を抑制
男性ホルモンの分泌を抑制
両側精巣
摘除術
注射薬
LH-RH
アゴニスト
注射薬
LH-RH
アンタゴニスト
女性ホルモン
抗男性ホルモン剤
(抗アンドロゲン剤)
方法
手術で精巣
を取り除く
外来で皮下注射
主な
性機能の低下、
ほてり、性機能の低下など
副作用 ほてりなど
LH-RH: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
毎日経口投与
毎日経口投与
浮腫、女性化乳房、
性機能の低下、長期
投与による心血管系
の副作用、肝機能障
害など
女性化乳房、ほてり、
性機能の低下、肝機能
障害など
内分泌療法の変更
内分泌療法は次第に感受性を失うため、
PSA値を見ながら注射薬、内服薬を変更する
前立腺がんの薬
LH-RHアゴニスト
リュープリン®(1ヶ月製剤・3ヶ月製剤)、ゾラデックス®(1ヶ月製剤・3ヶ月製剤)
LH-RHアンタゴニスト
ゴナックス®(1ヶ月製剤)
抗アンドロゲン剤
カソデックス®、オダイン®、プロスタール®、イクスタンジ®(第二世代)
女性ホルモン製剤
プロセキソール®、エストラサイト®(抗癌剤との合剤)
男性ホルモン合成阻害剤
ザイティガ®
抗癌剤
UFT®、タキソテール®、カバジタキセル®
前立腺がん予防のための10ヵ条
1. 適正なエネルギー摂取と規則正しい運動を通じて、健康的な体重を保つ
2. 脂肪、とくに飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える
3. 1日に少なくとも5品目の新鮮な果物、野菜を摂る
4. 精白されていない穀物、パン、パスタから炭水化物や繊維を摂取する
5. 魚類を含んだ複数の種類の肉類を適切量摂取する
6. 適切な量の砂糖と塩分を摂取する
7. 適度のアルコールを摂取する
8. いろいろな種類の食べ物を適切な量でバランスよく摂取する
9. 各栄養素を1日所要量を超えて摂取しない
10. 安全性が証明されていない健康食品、食事療法は避ける
小宮 顕:改訂版 前立腺がんのすべて(伊藤晴夫編), メジカルビュー社, p18-20, 2004より
ここまでのまとめ
1 前立腺がんの治療には、「PSA監視療法」、
「手術療法」、「放射線療法」、「内分泌療法」、
「化学療法」などがある
2 手術療法や放射線療法でも、より負担の
小さい新たな治療法が普及してきている
(腹腔鏡下手術、ロボット支援手術、IMRT、
密封小線源治療など)
3 内分泌療法は、単独あるいは他の治療と
組み合わせて、多くの患者さんに実施される
覚えておいていただきたいこと
前立腺がんは、早期に発見できれば治る病気です
男性は50歳※を過ぎたら、
定期的に前立腺がん検診を受けましょう!
※ 人間ドックを受診する方や、ご家族に前立腺がん患者さんが
おられる方などは、40歳からの受診が勧められます。