掲載記事

C NSCA JAPAN
Volume 22, Number 3, pages 14-15
National Strength and Conditioning Association Japan
プロフェッショナル
∼ S&C 指導者 and/or アスリート∼
SINCE
1991...
NSCA会員の中には、現役もしくは元トップアスリートの方も多く
BRIGDING
THE GAP
所属している。彼らは、どのような軌跡を辿ってS&C指導者を目
指したのか。
競技生活のエピソードを交えてご紹介いただいた。
between science
し み ず ようへい
清水 洋平 CSCS, 栄養士
・ウエイトリフティング元日本代表
■No. 006
and practical
ウエイトリフティング種目を習得する
・56kg級スナッチ日本記録保持
・中央大学・帝京短期大学卒業
・合同会社Universal Strength
楽しさを様々な方へ適切に伝えたい
application
Q1 アスリート(ウエイトリフティ
因の一つかもしれません。
とができました。この頃に自分自身が
ング選手)になられるまでのいきさつ
大学でもウエイトリフティングを続
オリンピックに出たいという意識が生
をお話しください。
けようと思って中央大学に進学したも
まれたと思います。
清水 私は中学までは運動経験があり
のの、部内はもとより大学のウエイト
高校時代の部活動の顧問である島袋
ませんでした。進学した高校にたまた
リフティングのレベルの高さに圧倒さ
隆之先生も日本代表として国際大会の
まウエイトリフティング部があったの
れ、選手を辞めてマネージャーになろ
出場経験があり、大学時代の監督であ
ですが、当時はウエイトリフティング
うとも思いました。1 年生が終わるこ
る並木良憲氏もソウルオリンピック代
のことなど全く知らずに、ただ筋トレ
ろ、大学OBでもある三木功司氏(ミュ
表でした。世界を経験した方ばかりに
がしたいくらいの気持ちで入部しまし
ン ヘ ン オ リ ン ピ ッ ク 56 kg級 代 表・
師事していたので、自分が世界を目指
た。もちろんすぐにそれが違うことが
元 56 kg級スナッチ世界記録保持者・
そうと思ったのも自然な流れだったの
分かって辞めようと思いましたが、自
元日本代表監督)が山田政晴氏(アテ
かなと今は思います。
分の体重以上のバーベルを軽々と挙げ
ネ・北京オリンピック代表・現 56 kg
る先輩たちを見ているうちに、自分も
級ジャーク、トータル日本記録保持者)
Q 2 NSCA認 定 資 格 を 取 得 さ れ た
同じようにやってみたいという気持ち
を大学に連れてきて、階級が同じだと
きっかけについてお話しください。ま
に変わっていきました。
また、
メジャー
いう理由で私を山田氏の練習パート
た、取得後どのような場面で役立って
な競技ではあまりないことですが、ウ
ナーに指名しました。当然、練習につ
いますか?
エイトリフティングは競技人口が少な
いていけるはずもなく、器具付けや準
清水 NSCAのことを初めて知ったの
いので、県大会から始まり、一つ勝て
備など、付き人のような感じになって
は、2012 年に競技を引退する直前で
ば関東大会、インターハイと大きな結
いましたが、結果として日本のトップ
した。大学を卒業してから減量の失敗
果につながりやすいのが続けられた要
選手の指導と試技を毎日間近で見るこ
(体力・パフォーマンスの低下、脚の
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April 2015 Volume 22 Number 3
痙攣)が続き、それを栄養面から改善
動きを指導することだけでもその難し
経験から、技術だけでなく、楽しさや
するために短大に進学して栄養士の資
さを痛感しました。しかし、CSCSを
やりがいを伝えたり、食生活を豊かに
格を取得しました。その後、栄養面か
取得するための勉強をする過程で、
「こ
するための栄養士の知識が活かせると
らもウエイトリフティングの選手育成
ういうことだったのか」と自分の感覚
ころが自分の強みだと思っています。
に携わりたいと考えていたところ、国
と合致する部分がどんどん出てきて、
体の際にお世話になった岐阜県の小栗
指導の方法も徐々に変わっていきまし
Q4 ご自身の課題や今後の目標など
和成先生に、指導者になるつもりなら
た。
についてお話しください。
清水 指導者としてはまだまだ経験不
ウエイトリフティングだけでなく、ト
レーニングの勉強もしたほうがよいと
Q3 現在の活動の状況についてお話
足ですので、やりたいこと、学びたい
勧められたのがきっかけです。現在一
しください。
ことがたくさんあります。一般の方か
緒に活動させていただいている合同会
清水 現在は、病院で栄養士として働
ら競技選手の指導もできる恵まれた状
社Universal Strengthの方々と初めて
きつつ、トレーニング指導者やほとん
況にありますので、様々なクライアン
お会いしたのもその頃です。それまで
ど運動経験のない成人の方へのウエイ
トのニーズに応えられるように試行錯
はウエイトリフティングのトップ選手
トリフティングを軸としたトレーニン
誤を繰り返していきたいと思います。
を育成することしか頭になかったの
グ指導をしています。
また、指導をする中で学んだことを
ですが、NSCAのことを知り、他の競
ウエイトリフティングは競技とト
しっかりフィードバックして指導方法
技選手や一般の方への指導という選択
レーニングの両側面を持ち合わせてい
を確立するとともに、自分自身の記録
肢が増え、自分の中で視野が大きく広
ますので、それを純粋にやってみたい
をさらに伸ばすことにも挑戦していき
がった気がしました。
という人とトレーニングの手段とする
たいです。自分のこれまでの競技成績
選手として活動している際も、高校
人ではやり方を変えなければいけませ
や現在の活動に至るまでは、練習など
生や大学生のウエイトリフティング選
ん。ですから、その人にとって何が必
の努力よりも人とのつながりや縁によ
手を指導することはありましたが、彼
要かを見極め、クライアント自身に身
るものが大きいと感じています。
らのほとんどが、競技適性やそれを行
体や動きの変化に気付いてもらえるよ
これからもそのつながりを大事にし
なうための筋力や柔軟性を持っている
うな指導を心掛けています。
て、自分にできることで貢献していけ
という前提がありました。ですから自
S&Cコーチとして、目的を達成す
たらと思います。◆
分のやってきたことをそのまま教える
るためのトレーニングプログラムを提
だけでも良かった部分がありました。
供することは当然ですが、数字だけを
よってそれまでは指導の大半において
追いかけると、トレーニングも義務的
自分の経験談や感覚言語に頼っていた
なものになり、食事の面でも単なる栄
のですが、特に運動経験のない人に
養素の組み合わせになってしまうおそ
とっては当然その前提があるとは限り
れがあります。「ツライ・キツイ・つ
ません。リフティング以前に、自分自
まらない」というネガティブな印象が
身が何気なくやっていたスクワットの
強くなってしまいます。選手としての
五輪を経験された方々と
かかわらせていただいた
ことが私の競技人生を後
押ししてくれました。
ウエイトリフティング競技のための練習と
S&C としてのトレーニングの違いを学び、
現在はそれを活かして活動しています。
C National Strength and Conditioning Association Japan
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